『読む栄養ドリンクなんで』引退試合の相手が決まった翌日に写真集発売イベント!疲れない男・棚橋弘至が語った新日本プロレスとファンへの特別な思い

棚橋弘至引退前最後の写真集『ACE/100』が10月23日に発売された。プロレスカメラマンではなく、世界で活躍するフォトグラファーが撮った今までと違う切り口の写真集であり、舞台裏やプライベートに迫るインタビューも掲載されている。
今回その発売記念サイン本お渡し会が11月10日に開催され、前日に引退試合の相手がオカダ・カズチカに決定した棚橋が今どんな思いでいるのか、写真集の見どころも含めて語ってもらった。
■『あぁ俺こんな顔するんだ』みたいな新たな気づきはありました
――早速ですが、社長になられて写真集を出す方ってあんまりいないと思うんですけど
「確かにその切り口は(笑)社長としての棚橋と、プロレスラーとしての棚橋は同時に住んでるんで。これはもう、そういったプロレスラー棚橋の最後の写真集という切り口なんで、僕は今の今まで言われるまで特に違和感を感じなかったです(笑)」
――実際完成したものを見られてみてどういう思いでしたか?
「撮られるのを意識すると、顔を作ったり、決め顔をしたりみたいなのがあるんですけど、今回は試合中や試合前後の素の棚橋を撮っていただけたと思いますね」
――今おっしゃられたように、普通の写真集ですと髪がセットされて衣装を来て、バッチリとグラビアみたいなものだと思うんです。今回躍動感を中心とされたような写真集でこういうのは珍しいですよね
「そうですね。今まであるようでなかった、そのリアルな棚橋の感覚を味わってもらえるんじゃないかなと思います」
――プロレスのカメラマンじゃない方に撮られるということで、撮られるときの自分の違いであったりだとか、その写真を見たときにプロレスマスコミの写真を見た時と違う感覚というのはありましたか?
「本当に撮られることを意識してなかったので、柔らかい表情など『あぁ俺こんな顔するんだ』みたいな新たな気づきはありましたね」
――写真集内には普段とは違うインタビューもあり、試合とは違う棚橋弘至も詰まっていました
「引退した後も、ファンの方のご自宅の本棚に残ってずっとあり続けるものだとしたら、時々開いてもらって棚橋を思い出してくれれば棚橋の存在っていうのは消えないので。こんなプロレスラーがいたんだって時々見返してほしいです」
――ご家族の反応はいかがでした?
「まだ見せてないんですよ!娘と息子の反応気になりますね」
――今回プロレス業界とは違う業種のカメラマンが撮影しているということで、この写真集自体がプロレス業界の外にも波及されると思うんですけど、その部分でプロレスファンじゃなくても楽しめたり、ここを見てほしいみたいな要素はありますか?
「うーん、そうですね・・・プロレスっていう競技を知らなくても、ただただビジュアルがいいので(笑)写真集を通じてこういうプロレスラーがいた、ということを形に残せたのが嬉しいです」
――以前写真集を撮られた時とご自身のビジュアルを見てみて、良いところと悪いところや変わった部分はありましたか?
「身体も少なからず衰えていると思いますけど、それもプロレスラーとしての年輪みたいなものかなと思っているので。今の棚橋を受け入れて、これでもこうやってこのタイミングで写真集出せたっていうのは、東京ドームに向けてモチベーションになりますね」

■太陽が沈んじゃったら作物は育たないから
――この写真集のイベントが引退試合の対戦カードの発表翌日ということで、その前日に突然オカダ選手が来て、突然会見があり、続けて写真集イベント、その気持ちの移り変わりっていうのはご自身の中でいかがでしたか?
「現役中はずっとそういう生活なので、当たり前の日常が続いている感じです。だから引退後、そういった日常がなくなる方が寂しく思いますね」
――社長業のみになってしまうっていう寂しさはもうすでに心の中にある
「はい。でもまだイメージできないんですよ。やっぱり1月5日を迎えてからじゃないですか。1月5日の朝に目が覚めて、俺もうプロレスラーじゃないんだって思うんだろうな、というのはあります」
――太陽の天才児として照らしてたものが次の世代に引き継がれていく。そうなった時に、次の世代の中で一番プロレス界の太陽になれそうだと感じている選手っていうのは誰になりますか?
「確かに太陽が沈んじゃったら作物は育たないからね。でもそれは、東の方を見て待っていてください。誰かが上がってきますので」
――対戦カード発表会見でも引導を沢山渡されたという話はありましたけど、その在庫がある引導の中で一番強烈だった引導っていうのは?
「やっぱり一番記憶にあるのはレインメーカーショックの日ですかね。僕自身、ドーム大会を終えて、連続防衛もしていて、むちゃくちゃ充実してた時期でしたからね。それだけオカダとの因縁はそこから始まりましたので」
――リングに現れた姿がAEWのオカダ・カズチカではなく、当時の黒シャツで外道さんを連れてきたっていうのは、ご自身のある種トラウマだった
「傷口をえぐってきたのかなっていうのはありますけど、まだレインメーカーショックの傷口が癒えてないので、最後に倒すことによって完全に克服しますよ」
――今までのレッスルキングダムの中で多分最大集客数になるだろうという人数になっていて、武藤さんの引退試合の人数も超えるっていう状況にはなるんですけど、今ファンの支持をそれだけ受けてるっていうことに対してはどう感じていますか?
「そうですね、全力で生活してきて、良い時もあってブーイングの時もあってという中で、これだけの方が注目してくださるっていうのはとても嬉しいことですし、ちゃんと棚橋の足跡が残ってるんだなっていうのを思います。2000年代にプロレスを見てたけど棚橋が最後だから見に来てくれる方も非常に多いと思うので、そういった方に今現役でトップを張ってる20代、30代の選手がしっかり記憶に残ることによって、今のプロレスも有望な選手がいっぱいいて、新日本プロレス面白いじゃんと思ってほしいし、そういった意味でバトンを渡して終わるというか。それが真の目的ですね」
■棚橋はその当時、新日本プレゼントにとっては毒でもあり、薬でもありっていう形だった
――ちなみに後楽園ホールに300人ぐらいしか入らなかった新日本プロレス低迷期について、棚橋さんは何を感じられていたんでしょう?会社に対しての不満であったりとかはありましたか?
「不満は全然ないです。自分の実力不足だと思ってたので。僕がもっと有名になって強くなれば、集客できると思ったので」
――当時はマスコミからも「愛してます」なんていうチャンピオンは新日本ではないという風潮もありましたが
「ビジネスが下がっていて、今までと同じことをやってても何も変わらないと思っていたので。だから僕は特効薬というか劇薬というか、僕がチャンピオンになって新日本を見なくなったファンの数よりも、僕がチャンピオンになって新しく興味を持ってもらったファンの数が増えればいいだけだと思っていました。棚橋はその当時、新日本プレゼントにとっては毒でもあり、薬でもありっていう形だったんじゃないですかね」
――当時のマスコミや過激な新日本プロレスファンに思うところはないと
「もうありがとうの気持ちしかないですから、僕は。エンターテインメントもスポーツもたくさんある中で、プロレスを好きになってくれるのはものすごい確率だと思うので、感謝しかないです」
――総合格闘技ブームが終わって、プロレスにこれだけのファンが戻ってきたっていうのは、やっぱり棚橋さんが支えてくださったからだと思うんですよね
「僕のおかげだと自分から発信するものではないですけど(笑)、皆さんがそう言ってくださるのは嬉しいです。でも、唯一新日本プロレスにとってラッキーだったのは、僕のビジュアルが良かったことですね」
――本当に特撮ヒーローのような
「仮面ライダーも好きだったので、完全懲悪の世界観が作れたのかなと思います」

■中邑とはこの間飯食って喋ったんで、お互い最後までまあ頑張れよっていう話をしました
――インタビューでは趣味や家族の事が主軸で、写真はほぼ試合のみですがその対比は
「棲み分けですね。新日本プロレスの試合への意気込みとか感想を聞きたかったら、オフィシャルサイトや週刊プロレスなど専門誌がありますし、今回は棚橋のパーソナリティを掘り下げることに意味があると思ったので、何を考えて、どう思って、どう動いてきたかっていうところが主になっています」
――写真集のタイトルにACEを入れた一番の理由っていうのはあるんですか?
「野球部だったので、エースという存在がいれば、それを中心にライバルがいたり、先輩後輩がいたりという相関図が生まれると思っていて、エースという言葉を使い始めました。そういう存在がどんどん出てきて欲しいんですけど、エースは僕の引退とともに持っていっちゃおうかなと思ってます」
――もうプロレス界の絶対エースとして永久欠番みたいに(笑)
「でも新日本からエースがいなくなるのは社長としては非常に困るんですけどね」
――ご自身がいなくなった後の新日本って、大きく景色は変わると思いますか?
「変わると思います。群雄割拠の世界観が生まれると思います」
――壁になられていた方々が、移籍や引退となってしまいますね
「でも今の選手層はかつてないほど充実してるんですよ。ヘビー級選手だけでも、海野翔太、成田蓮、辻陽太、上村優也、大岩陵平、ボルチン・オレッグがいて、本当に群雄割拠なので。一番面白い状態なんじゃないかなと思います」
――社長としてはAEWが生まれたことで、だいぶ団体としても群雄割拠になったと思うんですけど、そこはやっぱりビジネスとしてはだいぶ敏感になるというか
「AEWは、オカダをはじめ主力選手や外国人選手も含めて移籍しましたけども、共同開催の大会もありますし。オカダや内藤哲也あたりが下の世代を受け止めていくというのが理想ではありましたけど、こういった状況は新日本プロレスの歴史でも過去何度もありましたので。今は頭数が揃っているだけ、明るいニュースかなと思います」
――引退試合の対戦相手がオカダ選手になられて、やっぱり求められている選手って何人かいたと思うのですけど、中邑真輔選手、内藤選手の2人に関しては今どんな思いを
「中邑とは少し前に飯食って喋る機会があって、お互い最後まで頑張れよっていう話をしました。内藤に関しては、どれだけ新日本プロレスのことが好きか、愛してるかっていうのは理解してるつもりなので、ここから先は本人次第かなと思いますけどね」
――今回サイン本お渡し会はジュンク堂書店さんでやられましたけど、これから先も棚橋選手に会える機会はあるのでしょうか?
「はい、引退まで撮影会などイベントは今後もあります」
――社長業に注力されるということですけど、そういう形でお客さんの前には今後出ていきたいのか、それとも一歩引いて会見の時しか出てこないのかだと
「出ていきたいと思っています」
――こういう写真集を棚橋さんは過去も出されてきましたけど、そういう文化を後輩たちにもやらせていきたいとかは
「無理強いはしないですけど、出したいと思っていてほしいですね。プロレスファンとのタッチポイントだけではなくて、こうやって書店に並べていただいたら、フラッと見に来た方の目にも留まるし、プロレスに興味がない方にいかに届けるかっていうのが、プロレスというジャンルを広げる唯一の方法なので。プロレスラーとしての進化や変化は、野心を持ってプロレスをどう広げていくか考えて、考えて、考えるというプロレスに費やした時間と比例すると思いますね。僕は現役生活中、24時間プロレスのことを考えてきたので。時々仮面ライダーは見てましたけど(笑)」
――今後俳優業とかを社長業の合間にとか
「そうですね、まあ主演映画もありますんでね(笑)とはいえ、社長を任されたからには、しっかり新日本プロレスを盛り上げていく使命がありますから、社長業をしっかりやりたいと思います。プロレスラーだけの時は、所属選手、その家族を全員食わしてやると思ってましたけど、社長になったら、選手とその家族、そして社員、その家族と責任が倍になりましたので。さらに頑張るしかないです」
■棚橋の写真集は読む栄養ドリンクなんで(笑)
――これからプロレス業界を目指される人の中には、学生プロレスの人たちも多いと思うんですけど、スターダムの社長と新日本プロレスの社長が両方とも学生プロレスの出身になってある種夢がある世界です
「選択肢の一つにあってはいいと思いますけど、せっかく立命館とか同志社まで行ったんだったら、いいところ就職した方がいいかなと思いますね(苦笑)でもやりたいことやるのが一番です」
――自分の中での学生プロレスの思い出みたいなものは
「そうですね・・・まあ原風景ですよね。プロレスをやることが楽しかったという記憶があります。90kgで新日本に入門して、デビューまで10kg増やして101kgになったのですが、誰よりも体を作ってスパーリングをしっかりやっていれば、過去どういう道を通ってきたかは関係ないって思ってたので、より練習に熱が入りました」
――1・4も様々な王座戦やスターダムの試合もあります。その風景はどう感じていらっしゃるのでしょうか?
「ベルトはそれぞれの役目はありますが、最終的にはIWGP世界ヘビー級王座がトップの一番のベルトなんで、ヒエラルキー自体は変わっていないですし、特に問題はないかなと思います。スターダムに関してはグループ会社なので、女子プロレス好きな方には男子プロレスも見てほしいし、新日本プロレスのファンもスターダム面白いじゃんって思ってもらえたら、やっぱり同じグループ企業の意味があるので。お互いうまく作用していければと思っています」
――そろそろお時間になってしまいました。最後に改めてこの写真集を買ったファンの方が周りにこういう風におすすめしてほしいなどアドバイスを
「そうですね。現役の棚橋を見てたという事実は皆さんの記憶に残ってるし、熱中してた時の感覚は、多分この写真集を開くたびに戻ってくると思っています。棚橋は疲れないし、落ち込まないし、諦めないので、頑張りたいなとか、エネルギー欲しいなという時に見てもらうと、その写真からエネルギーを感じてもらえるんじゃないかなと思います。棚橋の写真集は読む栄養ドリンクなんで(笑)」
棚橋弘至 写真集『ACE/100』
発行:小学館集英社プロダクション
撮影:大野隼男
定価: 3,850円(10%税込)
発売日:2025年10月23日
https://books.shopro.co.jp/?contents=9784796874625
















