11.1パンクラス271で阿部博之と初代ストロー級K.O.Pを争う砂辺が、高校生キックボクサーの那須川天心からヒザ蹴りを伝授される
10月27日午後、都内豊島区のTARGETで、砂辺光久(reversal Gym OKINAWA CROSS×LINE)が公開練習を行なった。砂辺は11月1日(日)東京・ディファ有明で開催される『PANCRASE 271』にて、同級1位・阿部博之(ドラゴンテイルジム)と初代ストロー級キング・オブ・パンクラシストの座を争う。
砂辺は公開練習を「各分野のチャンピオンから必殺技を伝授されるシリーズ」として行なっており、尾崎魔弓、勝村周一朗、所英男、KENTAら様々な選手から技を教わってきた。記念すべき第10弾の今回は、高校生キックボクサー・那須川天心(TARGET)に白羽の矢が立った。
弱冠17歳の那須川は、今年8月「BLADE FG JAPAN CUP 2015 -55kg」に最年少でエントリー、3KOで見事に優勝を果たした。プロ戦績9戦9勝(8KO)を誇る若き気鋭のキックボクサーだ。砂辺と那須川は同じreversaLのスポンサード選手という縁で今回の公開練習が実現。今日が初対面の両者だったが、仲間意識からかすぐに打ち解け、伊藤会長も交え阿部対策を講じた。
那須川がいくつか動きを見せる中、足をつかまれた状態で放つヒザ蹴りを教わることに。タックルを得意とする阿部対策だ。砂辺は那須川のヒザ蹴りをたっぷり味わったあと、自身も挑戦。軽々と跳び、ヒザを打ち込む。見た目にも派手で、砂辺にぴったりの技だ。砂辺が「使えると思います。頭をしっかり掴んで体重を乗せると跳びやすくて当てやすかったですね」と話すと、那須川はアマチュア時代に何度か試合でこの技を出したことがあると言い「相手に体を預けて、自分で跳ぶというよりは相手の力を利用する感じです」と砂辺にアドバイスした。しかし、この技にまだ名前はなく、2人は「先にこの技で相手を倒した方の名前を付けよう」と笑った。
砂辺は「映像でも生でも試合を見ていますけど、ヤバイ高校生だと思いましたね。目の良さ、タイミング、勝負強さが、この若さにして半端じゃない。日本の宝ですね。僕は中2の頃にパンクラスを知ってからこの競技を始めましたけど、那須川選手は子供の頃から空手もやっていて、環境もよかったと思う。うらやましいですね」と絶賛する。11月8日、RISE後楽園大会でマイク・アラモス戦を控える那須川は「総合格闘技の人って怖い感じがしていましたけど、そんなことないんですね。総合の試合も見てみたいです」と、この公開練習が刺激になったようだ。「相手はムエタイ系で、何をしてくるかわかりませんけど、初めての外国人との試合で楽しみです」と一層気合いが入る。
さて、砂辺にとってこの試合は、3階級制覇のかかる重要な試合だ。「ベルトが出来たなら、獲りに行くのが当たり前。パンクラスを面白くする」。日頃、パンクラス愛を口にしている砂辺だが、調印式では阿部も「僕もパンクラスが大好きです」と話した。パンクラス愛対決になるのかと訊ねると、砂辺は「(阿部は)最初からパンクラスをやっているわけじゃないですから」と一蹴。「阿部選手はもともとシューターでしょ。アマチュア修斗からやって、途中からパンクラスに来て。でも、僕は最初からパンクラスをやっている。アマチュアパンクラスから始めて、格闘技人生すべてをパンクラスに懸けている。パンクラスは今テレビもやっているし、勢いがあっておいしいと思っているんだろうけど、年季も思いも違いますから」とパンクラスにおけるキャリアと愛の深さの違いを強調した。パンクラス軽量級のパイオニアと言われる砂辺としては、絶対に譲れないところだ。
これまで、ベルトを巻くたびに目の前の風景が開けてきた。プロレス参戦、参謀・勝村周一朗、コーチ・松根良太との出会いをはじめ、さまざまな人々との出会い。地元・沖縄で念願のジムを開き、仲間も増えた。今年7月には、パンクラスのレジェンド・伊藤崇文との対戦も実現した。この試合で新たなベルトを巻いたら、今度は何が見えてくるのだろうか。砂辺は「僕は54kgでやっていて、“彼”は52kgでやっている。この試合に勝てば、“そいつ”と闘う権利ができると思います」と話す。“そいつ”とは修斗世界フライ級王者・内藤のび太(パラエストラ松戸)だ。昨年9月、内藤が室伏シンヤを破り新王者となったとき、砂辺への挑戦話が飛び出し、会場にいた砂辺がリングサイドに上がり「パンクラスで待ってるよ!」とマイクパフォーマンス、会場が沸いたという経緯がある。砂辺は「他のイベントや大晦日の話もある。でも、僕が闘う舞台はパンクラスだけ。パンクラスで闘わなければ意味がない」と言う。砂辺はベルトを手にし、内藤を引っ張り出すことが出来るか。パンクラスと修斗の王者同士が闘う、新しい夢が実現するかも知れない。
【写真・文/佐佐木 澪】