「私は少し時代遅れになってしまったのかもしれない」4年半ぶりに赤いベルトに挑戦を果たしたビー・プレストリーが激痛を堪えながら語った熱いスターダム愛

6日、神奈川県・横浜武道館にてスターダム『ミツカン「鍋THE WORLD」presents STARDOM TO THE WORLD』が開催。上谷沙弥がビー・プレストリーを破ってワールド・オブ・スターダム王座の5度目の防衛に成功した。
上谷はアイドルとして培ってきた美貌と運動神経でベビーフェイスの道を突き進んで来たが、自身のユニット【Queens Quest】の事実上の崩壊、ファンからの誹謗中傷問題などもあり、心の傷を広げた上谷は闇堕ち。刀羅ナツコ率いる悪の軍団【H.A.T.E.】に加入し、残酷で傲慢で妖艶な女王様と化してしまった。
狂気を深めていく上谷は師でもある中野たむとの因縁抗争を展開し、昨年12月にはたむを撃破してついに赤いベルト(※ワールド・オブ・スターダム王座)をその腰に巻く。その後はたむと最後の因縁の炎を巻き上げ、今年4月にたむを介錯する伝説の引退試合を行い歴史にその名を刻んだ。
一方、上谷はリング外でも活躍。TBS系の朝番組『ラヴィット!』にレギュラー出演し“女子プロレス”そのものを全国のお茶の間にアピール。プロレス界が長年対峙してきた“対世間”という闘いに於いて今日の時点で先頭を走っているのは間違いなく上谷であると言える。
この日、上谷が5度目の防衛戦の相手として迎え撃ったのは、AEWから帰還したビー・プレストリー。ビーはかつてスターダムに所属し、赤いベルトも巻いた実力者。上谷とはかつて【Queens Quest】でともに闘った仲間でもある。
ビーはWWEスーパースターとしてスマックダウン昇格も果たしたが、今年2月に退団。リーグ戦『5★STAR GP 2025』で4年ぶりにスターダムに参戦し、優勝は逃したものの上谷に土をつける活躍を見せる。さらに先月24日にスターダム再入団が発表されており、ビーは所属一発目の大一番として絶対に負けられない闘いに臨んだ。

試合は荒々しいロックアップから取っ組み合いになり、そのまま濃厚なグラウンドの応酬に。これを優位に進めたビーだったが、H.A.T.E.のセコンド陣が足払いをかける介入を行い、上谷が場外戦で幾度も観客席へと叩き込んで大暴れ。
しかし、ビーもエプロン上の攻防を制して背中へのダイビング・フットスタンプを決め、以降は徹底した背骨攻めを展開。上谷もスワンダイブ式プランチャで逆転の糸口を掴むが、トップロープ越しの奈落式ブレーンバスターを狙ったところをビーに道連れにされて双方大ダメージを負ってしまう。
満身創痍の2人がよろよろとリングに戻るが、上谷が雄叫びを上げながらニールキック、ノーザンライト・スープレックス・ホールドと畳み掛けてスター・クラッシャーを狙う。しかし、強靭な足腰で耐えたビーがロコモーション式ジャーマン・スープレックス・ホールド3連撃。さらにドラゴンスクリューからえげつない角度の逆片エビ固めで絞り上げて上谷の背骨にトドメを刺しにかかるも、上谷は絹を裂くような悲鳴を上げながらもこれを耐え抜く。
ならばとビーはコーナーに上っていくが、上谷が雪崩式フランケンシュタイナーで切り返して旋風脚、スター・クラッシャーと連撃。これを返したビーは顔面に右ストレートを叩き込むが、上谷も怯まず顔面にスピンキック。上谷はウラカン・ラナを狙うが、ガッチリとキャッチしたビーがコーナーへの投げっぱなしパワーボム。さらにカミゴェから串刺しビー・トリガーを突き刺し、クイーンズ・ランディング。完璧に決まるも、これがまさかのカウント2。
信じられないといった表情を浮かべるビーだったが、慌てずもう1発クイーンズ・ランディングを狙いに行く。上谷はこれを変形モモ☆ラッチで切り返し、顔面への右ストレートからバイシクルキック。さらにスター・クラッシャー、カミゴェ式ビッグブーツ、旋回式スター・クラッシャーと畳み掛けて3カウントを奪った。
マイクを取った上谷は「ビー!ユー・アー・ザ・イチバン・ショッパーイ!」とビーの決めセリフを拝借して絶叫。
しかし、ビーは穏やかに微笑みながら「カミタニ、私はスターダムが大好き。私がスターダムを離れるときには温かく送り出してくれて、私が戻ってきたときにはまた温かく歓迎してくれた。私はスターダムが大好き。私はスターダムをイチバン・レスリング・ホームにしたい。ここが誰もが楽しめる良い場所であり続けるために闘いたい。でも今日の私はもしかしたら失敗したかもしれない。アイ・アム・ショッパーイ……。でもイチバン・ダイジなことは、カミタニ、貴女にリベンジすること」と真摯な思いを語り握手を求める。
上谷がその手を握ろうとするも、その手と手が触れ合う寸前に両者同時に中指を突き立てて微笑み合った。
その後、退場していくビーと入れ替わるようにAZMがリングに登場。
AZMは、5★STAR GPで優勝間違いなしと言われた上谷を決勝トーナメント初戦で破って自らも優勝決定戦に駒を進めていた。

AZMが「上谷、来ちゃったぁ~♪5★STARでAZMに負けたこと、覚えてる?その赤いベルトに挑戦しに来たんだけど……十分資格あるよね?」と挑戦表明を行うと、上谷も「もちろん覚えてるよ。ただお前さ、ベルト持ってるよね、もう1つ。あの紫のベルト。お前がそのベルトをかけるなら挑戦受けてやるよ」とAZMのSTRONG女子王座とのダブル王座戦を要求。
これも織り込み済みだったのか、AZMは「いいよ。私の大事なSTRONGベルトかけて、ダブルタイトルでやろう」と即答。上谷から勝った縁起の良い場所である9月27日の後楽園ホール大会を決戦の日に指定し、両者はベルトを掲げて睨み合う。
別れ際に上谷が「ビビって逃げんじゃねーぞ、AZMぱいせー……」と軽口を叩こうとするが、言い終わる前にAZMがマイクを奪って「あんまりチョーシ乗んなよ?」とドスを効かせて威圧。小さなベテランが怖い怖いパイセンぶりを覗かせた。

そんな2人のやり取りが行われる中、ビーは脇腹を押さえながら苦悶の表情を浮かべてよろよろとインタビュールームに登場。
ビーは「肋骨を折ったかもしれない。スター・クラッシャーは本当に痛かった。今日の私は本当にショッパイのかもしれないね(笑)でも嘘はつけない。本当に楽しかったの。また赤いベルトをかけて闘うことができるなんて。前回の赤いベルト戦(2021年4月)で私は詩美に負けた。そして今日、上谷は詩美と同じくらいの闘志を見せた。だから、私は少し時代遅れになってしまったのかもしれない。少し自分を変える必要があるのかもね。だって、私は昔はここでトップだったのに。正直に言って、もう自分が最強だなんて言えない。でも、努力は決してやめない。負けるたびに学ぶことがある。だから、来週の後楽園に向けて頑張ってみようかな。私は大会を欠場するタイプじゃない。もし身体が壊れたとしてもレスリングをする。でも、スターダムは本当に大好きなの。たくさんの苦しみが伴うけど、同時にたくさんの報酬とたくさんの尊敬を得ることができる。みんなも私みたいに、スターダムの所属を経験する幸運に恵まれたらいいな。明日(※ベルサール新宿大会)もみんなに会えるのが楽しみ。そして、来週(10日)は後楽園に見に来てくれると嬉しいな」と痛みを堪えながらも最後は微笑んでファンへ語りかけた。