「一瞬一瞬を大事に生きて、全部プロレスに捧げて」崩壊したアイドルユニットの同期がプロレスラーとなってリング上で人間ドラマを紡ぐ

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 27日、東京都・品川インターシティホールにてスターダム『プロレスファン必携アプリSTOMPING Presents NEW BLOOD 20』が開催。中野たむと神姫楽ミサがシングルマッチで対戦した。

 たむとミサは、かつてソフト・オン・デマンドが手掛けていたアイドルグループ『カタモミ女子』に所属する同期であった。

 2015年にカタモミ女子が紆余曲折の末に解散し、たむは2016年からアクトレスガールズに入門してプロレスラーの道へ。大仁田厚とともに電流爆破マッチに明け暮れたり、スターダム入団後には異色のプロレス団体『スターダム★アイドルズ』を旗揚げして夢潰えたりと泥水をすすりながらプロレス界でのし上がっていき、2度の赤いベルト(※ワールド・オブ・スターダム王座)戴冠を果たすなど女子プロレス界を代表する選手の1人となっていった。

 一方、ミサはTAKAみちのくとの出会いからJUST TAP OUT(JTO)に入門することでプロレスラーの道へ。
 2020年11月11日にデビューするも、同月14日にはたむが今も尚続く超人気ユニット【COSMIC ANGELS】を結成して一気にトップへ駆け上がるキッカケを作っており、2人のプロレスラーとしての格は天と地ほど離れていた。
 どうしてもたむを意識してしまうというミサは、いつかリングで再会することを夢見て努力を続ける。自団体で初代JTO GIRLS王座を、アイスリボンでインターナショナル・リボンタッグ王座を戴冠するなど実力と実績を積んでいった。

 2024年12月にリング上で初対決した2人であったが、その際はたむがミサを圧倒。
 それでも食い下がったミサはたむとの一騎打ちを要求。この試合は本来ならば今年1月のJTO後楽園ホール大会で実現するはずであったが、ミサの怪我によって流れてしまっていた。

 時は流れ、たむは上谷沙弥との抗争に敗れてスターダムを退団。4月27日には引退をかけた試合が迫っている。
 そんな中でついに実現することになったたむvsミサのシングルマッチ。2人の長年の思いがぶつかり合う試合であり、もしかしたらこれが最後の試合になるかもしれないというドラマ性がこの試合の注目度をさらに上げていた。


 試合開始前の握手は無く、ゴングが鳴ると2人は距離を詰めながらじっと見つめ合う。
 ミサのがむしゃらなエルボーから闘いは始まるが、たむはビクともせずに両手を広げて受け切る。冷徹な表情で鋭い打撃を放った直後に顔面を踏みつけながらあざといぶりっ子ポーズで笑顔を浮かべるなど、たむが圧倒的な格の違いを見せつけるかのような展開が続いていく。
 たむが小刻みに頬を張りながら「ミサ、今日もドタキャンするかと思ったよ」と挑発すると、ミサが渾身の張り手を顔面に見舞って反撃開始。雄叫びを上げながらビンタ&エルボーを打ち合い、得意のラリアット。場外戦でもたむのプランチャを受け切ってブレーンバスターを決めるド根性を魅せる。


 ミサはラリアットやはれときどきミサ(※ダイビング・セントーン)で畳み掛けるが、たむはカウンターのトラースキックからハイキック。さらにバイオレット・シューティングを突き刺し、最後はタイガー・スープレックス・ホールドで3カウントを奪った。

 マイクを取ったたむは「ミサ、今日はちゃんと来たね。たむが引退しそうだから急いでカード組んでもらったの?でも安心して。4・27は必ず勝って引退しないから。だからもっともっと今一瞬一瞬を大事に生きて、いっぱい悔しい思いして、全部かけてプロレスに捧げて、もっと強くなって……フリーのたむにまたオファーしに来て!」と微笑みかける。

 ミサは号泣しながら「すべてに於いてたむには敵わないし悔しい思いでいっぱいだけど、今日たむが今この一瞬を今の神姫楽ミサに向き合ってくれたこと、本当に感謝します」と深々と座礼。
 ミサが「私のことなんか、中野たむの女子プロレスラーとしての道の記録にも全然残らない1人だと思ってたけど、こんなにしっかり向き合ってくれてくれた。私は今日この場があったから、今日ここからもっとちゃんと強くなろうと、自分自身にも誓います」と決意を語るが、さらに感謝の言葉を重ねる中で観客の1人がポツリと発した「長いな……」という小さなつぶやきが静寂の瞬間と重なってリング上にも届いてしまう。
 ミサが慌ててマイクを打ち切る中、たむが「たむよりマイク長い人初めて見た!(笑)」と笑い飛ばして空気を変え「待たないから早く来てね!」と微笑みながらしっかりと握手を交わした。


 バックステージに戻ったミサは「リングの上でたむと全力で闘って、リングの上でも自分の想いいっぱい伝えたからもう言うことは無いんですけど、また中野たむとは絶対にシングルマッチするので、それは私も中野たむに、みんなに約束します。絶対にまた中野たむに1人でたどり着きます。そのときは絶対に私が勝てるように約束します」と泣きながらも真っ直ぐ前を見据えてコメント。

 たむは「1月に直前に試合が無くなって、アイドルのときもワンマンライブ直前でいなくなって。今日も来ないかと思った。来たね。人生ってさ、思ってるより長いようで短くてさ。あっという間に過ぎちゃうんだと思う。だからこの一瞬一瞬を本当に大切に生きて、大切な人との時間もいつの間にか遠いものになっちゃったり、いつかやろうって思ってたものがいつの間にか出来なくなっちゃったりする。だからたむは、この一瞬一瞬に全部をかけて闘いたい。ミサとのこの一瞬も向き合えてすごく良かったと思う。……なんか、『引退するかもしれないからカード組んでもらった』とかやめてくれるかなぁ?!もっと強くなったミサと闘えるの楽しみにしてるから、早く来てね」と人生訓を語るとともにミサへの思いを吐露した。

 4月27日にたむが勝利すれば、引退を回避するだけでなく赤いベルトの王者としても返り咲く。たむとミサの再戦は頂上を争うものとなるのか、そもそも再戦は実現できるのか。リアルタイムで進んでいく人間ドラマの行方に注目していきたい。

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