「動けなかったというより“動かなくした”」試合中の事故で緊急搬送された大ベテランが最悪の事態を回避した状況判断を語る

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 2日、北海道・ガトーキングダム・サッポロにて『Marigold Fantastic Adventure 2024』が開催。高橋奈七永がSareeeとの前哨戦後に緊急搬送された。

 Sareeeはマリーゴールドの至宝たるマリーゴールド・ワールド王座(※真紅のベルト)を巻く外敵王者。マリーゴールドのアイコンたるジュリアを制しての王座戴冠を果たしたことでその地位を絶対的なものとした。
 マリーゴールド旗揚げ以来無敗を貫いていた最強のSareeeは181cm・91kgの“大怪獣”ボジラにシングルリーグ戦で初の敗北を喫するも、真紅のベルトをかけた再戦ではボジラから初のギブアップを奪って完勝。Sareeeの覇道を止める者はいないのではないかと思われた。

 しかし、Sareeeにはまだ倒さねばならない相手がいた。シングルリーグ戦で時間切れ引き分けに終わっている高橋奈七永だ。
 奈七永は完全決着を求めてSareeeの持つ真紅のベルトへ挑戦を表明。Sareeeも二つ返事でこれを承諾し、11月14日の後楽園ホール大会で決戦が行われることとなった。

 Sareeeは若手時代から奈七永とバチバチやり合ってきた間柄。現在も奈七永は高い高い壁であり続けているが、SareeeもWWEへ行ったり故・アントニオ猪木さんから闘魂を継承したりと実力も格も日々向上中。この闘いの結果次第で女子プロレス界で新たな“格付け”が為される可能性もあり、期待が高まっている。

 この日は、2人の最初で最後の前哨戦として林下詩美&高橋奈七永vsSareee&青野未来のタッグマッチが実施。
 詩美はシングルリーグ戦の覇者であり、来年1月3日の大田区総合体育館で真紅のベルトへの挑戦が決定済み。青野も純白のベルトと真紅のベルトの2冠王を目指すことを宣言しており、トップ戦線のホットスポットとも呼べるカードとなった。


 しかし、試合の中心となったのはやはりSareeeと奈七永のバチバチの殴り合い。
 Sareeeが「奈七永ェーーッ!」と叫びながら強烈なエルボーを打ち込んでいけば、呼び捨てが気に入らない奈七永が「奈七永じゃねェーーッ!」と叫びながらビンタで顔面を張り飛ばす意地と意地のぶつかり合いを展開。パワーでは奈七永が勝るも、Sareeeは容赦なく顔面にドロップキックをぶっ刺すえげつなさで勝り、勝負は拮抗。
 奈七永はSareeeにナナラッカからワンセコンドEXを狙うが、着地したSareeeが延髄斬り。耐えた奈七永がラリアットを放っていくが、キャッチしたSareeeが裏投げ。奈七永は受け身が取れない形で頭からぶっ刺さってしまう。Sareeeは意識朦朧の奈七永を引き起こそうとするが、ここで15分フルタイムドローを告げるゴング。

 奈七永は自力で起き上がれない状態であり、詩美やレフェリーが慌てて駆け寄って容態を確認。
 そんな中でマイクを取ったSareeeは「今日はドロー。メチャクチャ悔しいよ。ウチららしい前哨戦、出来たんじゃないの?おい、高橋奈七永。私と貴女のプロレスのプライドかけて、正々堂々、11月14日、1vs1でみんなに見せつけてやろうよ、ウチらの闘い。みんなに届かせようよ」と真摯な態度で語りかける。
 これを受け、なおも起き上がれない奈七永は大の字になったままマイクを要求。「ちょっといいのもらっちゃって、悔しいけど立てない。立てないけど、何度倒れたって立ち上がってきたんだよ、私の人生。知ってんだろ、少しは?Sareee。だからそうやって言えんだろ。見せつけてやろうよ。そして、お前の心に、一番に高橋奈七永の強さを刻んでやるよ。11月14日、覚えとけ」と言葉を絞り出し、詩美に背負われて退場。そのまま救急車で搬送されていった。

 団体から奈七永の欠場が発表されて心配の声が集まる中、奈七永は大会から一夜明けて自らのSNSで現状を報告。
 奈七永が語った「投げられた際に首から落ちて強い痛みと衝撃を感じ、その後はどちらかというと動けなかったいうよりかは今までの経験上動かなくした、という方が正しいです。頭部を激しく打った場合など救急の際、動かさない、という鉄則があると教わってきたり、自分も何度も試合中のアクシデント動けなくなって救急車にも乗ってきたのでどのようにした方がいいかを自分で全て判断しました。首は痛い、けど手足は動く、なども確認しバックステージに運ばれてからも私は元々首のヘルニアなどがありかなり悪い状態という自覚があり、遠征中しかも週末だからすぐに病院行ける状態ではないのでそれなら救急車を呼んでもらった方がいい、という判断をしました。レントゲンとCTを撮ってもらい、骨に異常はなく緊急性がある何かはない、けれど元々悪いと思うので都内に帰ってからMRIを撮った方がいい、という事だったので連休が終わったら再度病院に行き検査をします」という冷静な現場判断には称賛の声が続々と上がっている。

 キャリア28年の奈七永が“女子プロレス界の人間国宝”と呼ばれる所以は、リング上での魅力だけではない。こうした状況判断能力やアクシデントに対する対応力といった奈七永の経験値そのものが“プロレス界の国宝”たり得る。こうした知見を下の世代に伝えて行くことが出来れば、女子プロレス界はより安全に高みを目指していけるだろう。

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