【インタビュー】小川徹が3・26の引退試合で昨年引退の清水清隆と対戦!小川と清水がそれぞれの心境を語る!

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 昨年、引退を発表した小川徹が、3月26日『PANCRASE 332』(ニューピアホール)で引退試合を行う。3分1ラウンドのエキジビションだが、その相手はなんと、同じく昨年引退した清水清隆に決定した。清水を目標にTRIBE TOKYO M.M.Aに入った小川。最後の最後で大先輩とケージに上がる。
 最後の計量を終えた清水と小川に、現在の心境を聞いた。

【清水清隆】
 清水は昨年、引退を表明し、パンクラスと修斗、2つの舞台で引退試合を行ったばかり。ファンにとっては嬉しいサプライズだったが、自身の引退試合からあまり間隔を置かずして、再びケージに上がる気持ちにさせたものは何だったのだろうか。

――ご自身の引退試合が終わった後は、どのように過ごしていらっしゃいましたか。
清水「犬と遊んでました、ハハハ。毎日、犬と遊んでます」

――今回の試合のための練習はどのようにされていたのでしょうか。
清水「運動はほぼ毎日していました。でも、MMAの練習はしていなかったので、MMAの練習をちょっと入れて……って感じですね」

――同門対決になりますが、練習場所は?
清水「(TRIBEで)なるべくかぶらないように。もともと、かぶる時間帯はプロ練だけだったので、お互いプロ練しか被っていなかったので。今はもうお互いプロ練に出ていないから、かぶることはほぼないって感じでしたね。特に申し合わせとかもしてないです」

――まさか、また試合をすることになるとは、という感じでしょうか。
清水「恥ずかしながら帰ってきました(笑)」

――今回のオファーがあった時は、どのようなお気持ちでしたか。
清水「後輩の頼みを聞くのが先輩の役割だと思うので、承諾しました」

――思いがけず清水選手の試合をまた見られて、喜んでいる人は多いと思います。パンクラスさんの粋な計いというやつで。
清水「それをみんな解ってくれればいいんですけど、全然知らない人は、なに、復帰すんの? もう復帰すんの、みたいな。舌の根も乾かないうちに、みたいな。いやいや、そういうことじゃないんですって説明するのがめんどくさくて、『お恥ずかしながら』って。これだけです、って」

――同門対決というのはなかなかないですけど、お2人のTRIBEに対する思いが溢れる試合になるのかな、という気がします。
清水「うーん、そうですね。(長南)代表が納得しないと思うんで、殴り合いですよね(笑)。殴り合い、蹴り合いですね。間違ってヒジ打っちゃうかもしれない(笑)」

――今回はヒジなしのルールですもんね。
清水「(ヒジが出そうになっても)当てなかったらいいんですよ、ハハハ」

――どのような試合にしたいですか。
清水「殴り合いとか蹴り合いでしか伝えられないことがあると思うんで。僕らは特にそうですよね。それが贈る言葉というか。僕も辞めた側ですけど、送る側になれるのもいいなと思っています」


【小川徹】
――とても楽しそうな表情をされていますね。
小川「まさか、またここ(計量会場)に来るとは思わなかったので(笑)」

――引退を発表されてから少し間がありましたけど、その間はどうされていたのでしょうか。
小川「そうですね、その間はいろいろ模索してました」

――お仕事はされていますよね。
小川「はい、デザインの方は継続してやっていて。(最後の試合となった昨年)12月の試合は、この試合が終わったらもう辞めるって思っていた試合じゃなくて、その後も続けようと思って臨んだ試合だったんです。でも、負けたら辞めようとは思っていて、それで負けちゃったんで。あ……終わっちゃったよ、みたいな」

――驚きました。
小川「寂しい気持ちもあったんですけど、でもいつかは来ることなので」

――引退を決意したのには、どこか体調が良くなかったとか、そういった理由もあったのでしょうか。
小川「いや、全然。どこもケガもなく」

――では、気持ちの問題ですか?
小川「そうですね。負けが続いちゃって、そんなに自分の中では歳とかっていう感じでもなかったんですけど、でも、周りにいる20代の選手、若い選手からしたら、あまり良い背中を見せられていないのかな、と思って。
 僕が20代の頃は、先輩や年上の方を見ていて、しがみついてやってる、というふうに見えてしまっていたんですね。もちろん目的はそれぞれ違いますし、続けるのも辞めるのも人それぞれなんですけど、僕自身にとっては、ああいう感じは違うなと感じていたんです」

――潔く、というタイプなんですね。
小川「そうですね」

――TRIBEの選手はみんな、先輩後輩の絆が強い感じがします。そこにはやはり、後輩には良い背中を見せなくてはいけない、というところがあるんですね。
小川「そうですね」

――先ほど、清水さんも「後輩の頼みを聞くのが先輩の役割」とおっしゃっていました。
小川「まさか、試合で殴り合うとは(笑)。恐縮すぎますよ」

――この試合が決まったのは、どういうところだったんでしょうか。
小川「きっかけは、パンクラスさんの方から、引退セレモニーをやっていただけるという話をいただいて、長南(亮・TRIBE TOKYO M.M.A代表)さんに話したら『清水とやれよ』みたいな」

――さすが長南さんですね。
小川「はい(笑)。そんな感じでした。僕は、いやそんなに…、大丈夫です、みたいな感じだったんですけど(笑)。僕の最後の試合も『引退試合』の形じゃなくて、いきなり辞めたんで、そういうのもあって、しっかりと締めろという意味でも手配してくださったんだと思います」

――引退試合なしで、いきなりセレモニーだけというのは寂しいですから、よかったと思います。
 さて、同門対決になるわけなのですが、この試合に向けて練習はどのようにされていたのでしょうか。
小川「プロ練はもう参加しなくなったんですけど、普通にTRIBEに通ってトレーニングをやったり、ミットを持ってもらったりとか、マススパーリングをしたりとか、運動はずっとしてました」

――お2人とも最後の試合から時間が経っているのに、すごくお元気そうだし、調子も良さそうだし、と思って拝見していました。
小川「ちょうどいいダイエットになった、みたいな(笑)」

――明日の試合はすごく楽しみですけど、3分1ラウンドは短いですね。
小川「短いですね。最初、契約書が来た時に内容が間違っていて、5分3ラウンドって書いてあったんですよ。マジ!? みたいな。もう2人ともヘロヘロになるわ、って(笑)。
 3分はあっという間なので、いろいろやって悔いが残らないようにしたいです」

――明日は、お2人のTRIBEに対する思いが溢れる試合になると思うのですが、TRIBEに対する思いはどのようなものでしょうか。
小川「やっぱり長南さんの愛情ですかね。僕はTRIBEで本当に育ててもらったので。もし僕がTRIBE所属じゃなかったらチャンピオンにもなれていないし、今回のようなところにも行けていないと思うし、長南さんをはじめとしたTRIBEに育ててもらったなと。
 TRIBEって、学校みたいな感じなんですよ。厳しいけど、その中に長南さんの愛があって。清水さんもずっとTRIBEで、で、僕が入って、後輩たちも育って、学校みたいな感じですね」

――ちなみに、どうしてTRIBEに入られたんですか?
小川「(即答で)あ、清水さんがいたからです」

――そうなんですね! 清水さんのファンだったんですか?
小川「僕がアマチュアパンクラスだったとき、当時、スーパーフライ級だったんですよ。その時のチャンピオンが清水さんで、僕もそこを目指してたんで、それだったら一番近い人と同じ環境で練習した方が強くなれると思って」

――その人と、この試合をされるというのは感慨深いですね。
小川「はい。最初、TRIBEを見に行った時に、清水さんの練習風景を見て、もうとんでもない人だなと思いました。スタミナ無尽蔵で、ずーっと動いてるし、強いし、あ、これがチャンピオンなんだ、みたいな。違うなあと思いましたね。
 それで、清水さんと一緒に練習させてもらったりして、より目標が明らかになりましたね。清水さんのところ(レベル)まで行ったら、もしかしたら自分にもチャンスが来るかもしれないと思って、自分も頑張りました。その選手と最後に殴り合うなんて……ね」

――さて、今後はどのようにしていかれるのでしょうか。
小川「今後はまだ迷走してる部分はありますけど、ブランドをやっていて、格闘技の後輩とか選手を、そういう関連で応援したいなと思っています。
 それと、子供たちのところに行って定期的にイベントをやっていて、格闘技の選手たちが、子供たちに格闘技を教えたりとか、そういうものを作っていきたいなと思っています」

――次の世代につなげて行ってくださるんですね。
小川「そうですね。つなげていけたら」

――格闘技も、コロナでちょっと細々となってしまったところがあるので、若い世代に格闘技界を盛り上げてほしいですね。
小川「そうですね。練習する時間がなくなったので、そういう方面に回す時間もできたので、やっていきたいと思っています」

――今後のご活躍にも期待しています。

 計量後のコメントでは「TRIBEらしい試合をしたい」と話していた両選手。尊敬する先輩ではあるが、全力で倒しにいく覚悟の小川。もちろん清水も後輩の引退だからとて、花を持たせる気などさらさらない。
 明日の試合は、2選手の格闘技に対する思いと、TRIBE愛に溢れた至高の3分間になるに違いない。

(写真・文/佐佐木 澪)

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