PANCRASEとONE Championshipがパートナーシップを締結!
都内新宿区のホテルサンルートプラザ新宿において、パンクラスとONE Championshipのパートナーシップ締結会見が行われた。
ONE Championship(以下、ONE)はシンガポールの格闘技団体で、アジアを中心に活動。ムエタイ、キックボクシング、総合格闘技、空手、シラット、散打、ラウェイ、テコンドー、サブミッションレスリングなど全ての格闘技を網羅する世界最大級の格闘技団体として知られている。日本からも数多くの選手が参戦し、青木真也(ライト級)、大石幸史(フェザー級)、鈴木信達(ウェルター級)などの王者も生んできた。
このONEが、初の日本大会開催(3月31日、両国国技館)を目前にパンクラスとパートナーシップ契約を締結した。2019年4月から発効し、契約期間は3年間。
ONE日本代表の秦“アンディ”義之氏は「パンクラスは世界標準を掲げ、120人もの選手を抱えて、スポーツMMAを推し進めている。ONEと同じ方向を見ている」と、パートナーシップ締結の理由を語った。
今回のパートナーシップの3本柱は
①パンクラスでタイトルマッチを行い、王者として認定された選手はONEに出場できる
②ネオブラッド・トーナメント優勝者は「ONE Warrier Series」への出場権が与えられる
③ONEによって選出されたパンクラスのアマチュア選手に、シンガポールのメガジム「Evolve MMA」で1年間のトレーニングの機会が与えられる
というもの。いわゆる「ピラミッド型」のヒエラルキーが形作られ、選手たちが世界を目指して闘っていくという構図をよりハッキリさせた。
さらに秦氏は「パンクラスと複数契約を結んでいるトップランカーがONE進出を希望すれば、全面的にバックアップしていきます」と付け加えた。
同席した酒井正和・パンクラス代表は去年からONE代表のチャトリ・シットヨートン氏と意見を交換してきており、今年1月の会見でも「考えの方向性が似ており、尊敬している」と語っていた。今回の会見でも「ONEは相対的なプラットフォームを持っており、格闘技において難しいスポンサー獲得や選手の生活の基盤作りをビジネスとして成功させている、世界に類を見ない団体だと思う。マーシャルアーツはアジアならではの文化であり、これを世界に広めていくサポートをするとともに、パンクラスに上がっている選手が生活していけるようにするビジネス化を見据えている」と今回のパートナーシップ締結について話した。
ONEは、先ごろ日本の格闘技団体・修斗ともパートナーシップを結んでいる。これについて秦氏は「ONEが目的とするのは、あくまで選手たちに世界で闘う舞台を用意すること。イーブンな形で平等にチャンスを提供していく。その過程で、それぞれの団体がいままで培ってきたものの基盤をさらに強くし、それぞれのカラーの違いを進化、活発化させていくことが狙い。ONE側で特にパンクラスと修斗を交流させる考えはなく、それぞれの経営基盤をしっかりさせて行くことを中心に考えている」と話した。
これまで「選手が行きたいところへ行くサポートをして行く」と語っていた酒井代表だが、今回の締結により、王者はONEに上がる道をつけられたことになる。しかし、そうなると、他の団体へ上がることを希望している選手はどうなるのだろうか。これについて、酒井代表は「パンクラスでは、選手が行きたいというところに関しては、ずっと“どうぞ”というスタンス。それはこれからも変わらないが、パンクラスがONEとパートナーシップを結んだのは、ONEが作ったプラットフォームを日本でも実現させるため。ファンや選手の意思を無視する意味ではないし、強制はしないが、ベルトを巻いた選手にはONEへの出場を啓蒙して行く」と答えた。
そうなると、現在、UFCに代表されるユニファイドルールをベースとしたルールで試合を行なっているパンクラスがルールを変更する可能性もあるのだろうか。これに関して酒井代表は「現行ルールを今すぐ変えるつもりはないが、将来的にはわからない。パンクラスが目指すのは、選手が世界で闘えるようにすることなので、今後、柔軟に対応して行きたい」
と話すにとどまった。これには今後の格闘技界の流れも大いに関係していくことだろう。
ちなみに、パンクラスは昨年、キックボクシングの団体「REBELS」と提携しているが、今回のONEとの提携はMMA限定となり、キックボクシングには及ばない。
ここで、「PANCRASE 304」(4月14日、スタジオコースト)でアントン・クイバネンのタイトル挑戦を受ける久米鷹介(ALIVE/ライト級)と、「PANCRASE 305」(5月26日、スタジオコースト)でナザレノ・マレガリエと王者統一戦を行うISAO(NEVER QUIT)が登壇。2選手は勝てばONEへの出場が約束されることになる。
久米は「提携が決まったのは素晴らしいこと。選択肢が増えたと喜んでいるが、まずその前に、4月の試合に集中して取り組んでいる。ONEは世界じゅうから強い選手が集まってきている。もし自分が上がるとしたら、常に挑む気持ちで闘いたい。挑む立場でいきます」、
ISAOは「提携によって新たに道が増えたのは素晴らしいこと。5月に統一戦でしっかり勝って、次につなげたい。ONEはすごく勢いのある団体。世界各地から選手が来て、北米に負けない勢いとレベルの高さを持っている。自分も、もし出ることになったら、朝鮮の心を忘れずに闘っていきたい」と述べた。
続いて、3月31日のONE初の日本大会「A NEW ERA 新時代」(両国国技館)に出場する若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)が登壇。若松は、UFCから電撃移籍した、初代UFC世界フライ級王者、デメトリアス・ジョンソン(以下、DJ)との対戦が決まっている。「こういう機会をいただけて、感謝している。多くの人は無理だと思っているかも知れないが、一通りDJの試合を見たが、ONEだったら負けていたかも知れないと思う試合もあった。それにプラスして、自分の闘い方はONE向きだと思っている。DJはグラウンドでコントロールスルタイプだが、自分はどんな状態でも殴って行くタイプ。当たれば絶対に倒れる。みんなUFCのDJしか知らないけど、この大会は、僕がスターになる大会だと思っている。KOで勝ちます」と自信のほどを語った。
秦氏は「日本初開催ということで、日本に対する敬意を持って準備を進めている。会場を両国国技館にしたのも、日本の武道に対する敬意から。日本に対する敬意を表現しながら、ONEの原点を伝えていくことを考えている」と語った。まずは、お手並み拝見といったところか。
日本の格闘技界では、選手が格闘技で生活して行くのは非常に難しい。ひと握りの選手を除き、ほとんどの選手が仕事を持ちながら練習をしている状態だ。格闘技は、選手として過ごせる年月がそう長くはない競技と言える。それだけに、選手が格闘技のみに集中できる環境を作ってあげたいと思うファンや関係者は少なくない。
ONEとの提携によって、格闘家がより闘いやすく、また生活の基盤や身体のケアを含め、活動しやすい環境が整うよう期待したい。
(写真・文/佐佐木 澪)