PANCRASE292で久米と徳留がディファ有明でのラストマッチでライト級王座戦!互いを意識する二人は静かに鋭く闘志を燃やす!

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 12月8日夕、都内新宿区のパンクラスで、ライト級キング・オブ・パンクラス調印式が行われた。
 この試合は「PANCRASE 292」(10日、ディファ有明)のメインを飾る。長く会場として使われてきたディファでの大会はこれが最後。そして、2017年締めくくりの試合でもある。

 現王者・久米鷹介(ALIVE)と挑戦者・徳留一樹(パラエストラ八王子)は、1年3ヶ月前は逆の立場だった。徳留が王者として初防衛戦に臨んだが、久米にTKO負けを喫し、王座陥落してしまったのだ。
 当時も「日本ライト級最高峰の闘い」との呼び声が高かったが、それは1年経った今も変わっていない。お互い試合を挟んでいるが、素晴らしい内容で勝利しており、強さを見せつけている。
 先に席に着いた久米は、談笑し天真爛漫な笑顔を見せていたが、徳留が入ってくると表情が変わった。徳留はハッとするような厳しい表情。まさに闘いに挑む男の顔だ。一気に室内の空気が変わり、緊張感で張り詰めた。
 意気込みを聞かれた徳留は「試合が決まる前から、必ずリベンジすると決めていました。試合が決まってすぐに気持ちを集中して練習できました。試合を見てもらいたいです」と静かに話した。
 対する久米は「徳留選手の強さは知っています。タイトルマッチ後の試合を見ても納得いく内容で勝っています。自分は王者ですが、挑むつもりで行きます」と話した。

 前回のタイトルマッチより前から、両者が日本ライト級におけるトップファイターであることは誰もが認めるところだった。実際に闘って見て、実感もしただろう。しかし、そこにとどまらず、お互いに進化を続けている。
 徳留が「ベルトを失って、格闘技を辞めようかと思ったこともありましたが、弱い気持ちを切り替えることができました。強くなった自分を出せたらいいと思っています」と話せば、久米も「前回は、先に自分が型にはめることで勝てました。でも、それはそれ。全ての局面でレベルアップしなくてはいけないと思って練習してきました。誰と闘うからということでなく、自分のレベルを上げるつもりでやってきました」と語った。

 試合が終わっても、お互い目が離せず意識しあってきた。相手について改めて尋ねると、徳留は「自分に勝ったからというのではなく、前回のクロアチアの選手との試合(今年4月、マティヤ・ブラジセビッチ戦)を見ても本当に強いです。キープ力も優れていますし、日本人選手の中でトップだと思います。そういう選手と闘うための準備をしてきました。前回のようにならないようにやるつもりですが、同じようになったら、自分は直せないということ。キッパリ(格闘技を)辞めます。そのくらいの気持ちで、全局面で上に立てるようやってきました。自分の動きができれば勝てると思います」と、不退転の決意でやってきたと話す。
 久米は「前回、肌を合わせて、徳留選手の強さは身にしみて感じました。その後も強さを増していますし、それを想定して勝てるように作り上げてきたつもりです。いかに自分の動きをできるか、作り上げてきたものを出せるように勝負したいです」と、自信をアピールした。

 徳留には塩田歩氏、久米には鈴木洋一氏という名参謀がつく。試合はチーム戦という側面もあり、ここも見どころだ。
 徳留は「前回は、“チーム一丸”ができていると思っていましたが、話し合った結果、できていなかったということがわかりました。今回は、この試合が決まる前から、大宮司(進)さん、塩田館長、クリスMANと、よりしっかり話し合って対策を立ててきました」と言う。
 さらに徳留は、妻や愛息とも距離を置き、練習に集中してきた。「子供がそばにいたら、試合のことを考えられない。そばにいない方がいいのかな、と思って。家族がそばにいると、家族のことを考える時間が増えてしまう。悪いけど、しばらく実家に帰っていてくれ、頼むと言って、帰ってもらいました。この試合は、それぐらいの気持ちで行かないと勝てないと思ったので」と明かした。今年4月のアキラ戦では、勝利して愛息・司(つかさ)くんをケージで抱き上げたシーンを覚えているファンも多いだろう。そのときは「子供という存在も大きかったです。このごろ笑ったりするようになって。勝ってケージに上げられて良かった」と語っていたが、その司くんと離れてまで集中してきたのだ。徳留の、並々ならぬ覚悟が強く伝わってきた。
 久米も「鈴木社長、日沖(発)さん、サポートについてもらいながら、前回以上にグレードアップするよう作り込んできました。当日はそれを全て出したいです」と万全の体制だ。

 もちろん、お互いフィニッシュを狙う。「できればKOで勝ちたいですけど、そんな簡単な相手じゃないです。希望としては……やるにしてもKO、やられるにしてもKOが一番かっこいいと思います」と言う徳留の言葉から、再び覚悟がにじみ出た。
 久米は「できればフィニッシュしたいです。でも、どんな状態になっても勝利を掴みたい」と語った。

 口にできることも、できないことも、たくさんある。王者にも、挑戦者にも、外からはわからない、それぞれの思いがある。
 確かなことは、両者が、いつか再び相まみえることを頭におき努力してきたこと。そして両者が以前よりさらに強くなって闘うということだ。
 最後のディファで行われる2017年最後の大会のメインは、必ずや素晴らしい試合になること間違いない。両者が悔いなく闘えるよう、静かに祈りたい。

(写真・文/佐佐木 澪)

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