パンクラス初代女子アトム級女王決定4人トーナメント最後の参戦選手はV. V Mei!「負けたら引退」背水の陣に挑む思いを語る!
10月2日午後、都内新宿区のパンクラスにて、『PANCRASE 340』にて開催される初代女子アトム級女王決定4人トーナメント最後の参戦選手が発表された。
既報のとおり、初代アトム級女王決定4人トーナメントの開催と参戦選手は9月11日に発表され、ジェニー・ファン(AACC/同級1位)、沙弥子(リバーサルジム横浜グランドスラム/同級2位)、SARAMI(パンクラスイズム横浜/初参戦、第2代修斗女子世界スーパーアトム級王者)の3選手が意気込みを語っている。
4人目の選手はV.V Mei(フリー)。当初、パンクラスは残り1枠には海外の選手を考えていたが、先の会見後、数日してMeiのマネージャーから「残り1枠、まだ空いていますか?」という問い合わせがあった。その際に聞いたMeiの“なぜこのトーナメントに参戦するか”という理由を非常に重く受け止めたという。その時点では外国人選手で予定をしていたためいったん保留となったが、検討したのち、Meiの参戦を決定した。Meiは2011年、パンクラスに参戦、WINDY智美、ベティコにいずれも勝利している。
V.V Mei
「V.V Meiです。このたび初代アトム級女王決定4人トーナメントに参戦させていただくことになりました。最初にトーナメント参加選手3名が発表されたとき、4人トーナメントだから、まだ空いているのかな。未定なのかな、と思いました。あの発表があってから、パンクラスに参戦させていただいていた時のことを色々と思い出しまして。11年ぐらい前だったと思うんですけども、WINDY智美選手と試合をさせていただきました。まだ男子のカードの中に女子のカードが入ってくるっていうことがあんまりない時代でした。そういう中で、パンクラスで初めて女子の試合をメインイベントにしていただいたことをすごく思い出したんです。最初に発表された時、自分の名前が一番上にあったので、この大会は第1試合が一番上に書いてあるのかなって本気で思ったんです。そうしたら、いやメインイベントですって言われて。WINDY選手がパンクラスの選手だからっていうのもあったと思うんですけども、パンクラスは本当に女子を評価してくれて、男子の試合の中に女子のカードを組んでいった。他の大会ではなかったことだと思いますし、そういったことが、すごく色々と思い出が浮かんできました。
しかも、あの大会は、(東日本)震災のすぐ後だったんですね。そんな時期だったので、どこのジムも練習できないことが多くて。もうジムが全部閉まってたんです。 そういう中で、パンクラスは開催されるって信じて練習を続けていた状況だったんですよ。延期する大会とかも他の団体であったと思うんですけども、パンクラスは開催されて。あの頃は、みんながすごく一生懸命生きてたと思うんですけど、選手も自分にできることを精一杯やるしかないっていう状況で日々を過ごしていたと思うんです。試合で闘う姿を見せることで元気とかパワーを皆さんに届けるっていうのが、格闘技の選手にできる一番のことだと思うんですけども、あの時パンクラスは選手にそういう場を与えてくれました。素晴らしいなと私はずっと思っていたんです。そういったことを思い出しまして。ここから長い年月が経って、女子がどんどんフューチャーされるようになってきました。他の団体でも選手がいっぱい出てきているんですけども、そういった中で、私もいろんなところで試合をさせていただきました。そこで、このトーナメントが発表されたので、あ、これは、このトーナメントには私はぜひ参加させていただいて、今までパンクラスから始まっていろんなところで学んできたものを全てを出し切りたいなと思ったんです。もちろん絶対に優勝してベルトを獲るっていう思いで闘います。もちろんベルトを取ったら、防衛し続けられる限りは防衛します。ただ、負けたらそこで引退しようと思います」
――「負けたらそこで引退」というのは、たとえ1回戦で負けても引退するということか
「そうですね。それぐらい自分にプレッシャーをかけて、必ず勝たないともう闘い続けられないという気持ちで臨みたいです」
――他の3選手についての印象は
「SARAMI選手とジェニー選手は対戦したことがありまして、沙弥子選手はないんですけれども、みんなそれぞれ勢いがある選手だなと思いますし、コンスタントに試合をしていますし。対戦経験のある選手も、前回とはまた全く違った技術や色々なものを身につけていると思うので、誰と対戦してもすごく楽しみです」
――それぞれ闘った時の違いは
「ジェニー選手は2回闘ったことがあります。ONE Championshipですね(2017年6月・2019年10月)。常にすごく一生懸命な選手ですね。本当に常に一生懸命な試合をするので、見ていてもすごく気持ちがいい選手だと思います。今は、対戦した時よりも全然技術が上がっていると思います。
SARAMI選手は、格闘技歴がかなり長くて、ずっといろんな団体でも見ていますし、練習も一緒にしたことがあるので、彼女の強さっていうのはよく分かっています。もう1回対戦すると面白いかなっていう感じですね。沙弥子選手は、試合を見たことがあります」
――組み合わせは誰か来ても大丈夫か
「そうですね、誰が来てもいいように準備します。今まで、すごく強い選手と対戦する時に、自分も同時に引き上げられるような部分があったんですけど、そういうふうに相手によりけりだなんていうのではなくて、いつでも面白い試合ができないといけないと思っています」
――以前VALKYRIEのベルトを持っていた(第2代フェザー級王者)が、パンクラスのベルトに対する思いは
「歴史のある団体のベルトを巻くっていうのは、本当にすごいことだと思うんですよね。これだけ長く大会が続くっていうのは、やはり素晴らしいものがあるんだなと思いますし、運営する人々の思いがあって、ちゃんとしたものでないと絶対に続かないと思うので。そういう歴史があって、非常に信頼のある大会のベルトは価値があると思います」
――他の参加選手3人の中で意識する選手は
「全員同じぐらいですね。誰が来ても、女子の試合でこれ以上のものはないだろうっていうものを残したいなと」
――ちなみに、現時点でこれ以上のものはないと思うような試合は
「アンジェラ・リーVS山口芽生の1戦目、2戦目です」
――その作品を超えるような作品を残したいと
「そうですね。超えたいですね」
――それは、アンジェラ選手が引退したことも関係あるか
「いや、引退したからっていうのは関係ないです。色んな試合がありますけど、私は自分の試合を見るのってあんまり好きじゃないんですよね。全然満足いかないところが色々見えてしまうので。だから、あんまりそういうのは見たくないなって思うことの方が多いんです。でも、あの試合に関しては、自分で見られるかなと思います。実際に評価もしていただていますし。たとえば技術が荒かったりとかそういうところがあっても、お互いのハートをぶつけ合ったというのはすごくあったと思うんですね。あそこまでもお互いの気持ちを出している試合っていうのは他ではないような気がして。それは、アンジェラとの相性ともあると思いますけど、相手が誰であっても、自分をそこまで出し切りたいなっていうのは1つの目標なので」
――負けたら引退、ということだが、現時点で体力や技術などで、限界だなみたいな気持ちがあるのか
「体力は意外とあるんですよね。長くやっていると、多分そういったものがびっくりするほど衰えるということはなくて、色々技術でしのいだりとか、そういう調整もできるんでしょうけど、まああまり終わりを決めないでダラダラやるっていうのは、私はあんまり好きじゃないなって思って。もちろん長くやっている選手もたくさんいますし、続けるか辞めるかは個人の自由で全然いいと思います。ただ、私自身に関しては、期間をちゃんと決めてチャレンジしていく方が、自分を引き上げられるなと思います」
――負けたら引退を確実に決めたぐらいの時期と、引退をおぼろげに考え始めた時期はいつごろか。なぜ、その時期に決定的に負けたら引退って思うようになったか
「そうですね……はっきり“いつ”っていうのは、あんまり覚えてないんですけど……。海外でやっていた時期が長くて、そこで、いい思いもあれば、厳しいこともありで、そういったことを乗り越えながらやっていたけれども……。まあ嬉しいこともあったけれども、きついことの方がはるかに多くて。で、そんなに続けるよりも、最後、有終の美を飾って辞めた方が、自分を大事にすることだと思ったんです」
――アンジェラ選手が27歳で、あの理由(※実妹の死去を受け、メンタルヘルス活動に取り組むため)で、 あれだけできる選手が、そして、Mei選手と2度の激闘があった選手がこのタイミングで引退するっていうことに関しては、Mei選手自身はどういう風に捉えているか
「人それぞれですね。続けるか続けないかは本当に個人の自由なので。本人の気持ちを一番尊重して。それはそれでいいんじゃないかなって思いますね。なんかね、何があったかっていうのは分からないですけど。続けてほしいっていうのは、ファンだとか見てる人ははすごく思うかもしれない。ちょっとどこまで言っていいのか分からないですけど、団体を背負ってあそこまでやってきたというのはものすごいプレッシャーだったと思いますし、お互いの立場も違うけれど、背負ってきたものとか葛藤っていうのはすごかっただろうなと思うんですね。私としては、アンジェラはすごくいいライブを受けて、家族でみんなこう一緒になって素晴らしいな、羨ましいなとか思わないこともなかったです。でもそれは、その裏にはすごい葛藤があって、もしかしたら向こうから見たらMeiはいいな、入ってチャレンジャーとしてやってていいなっていう風に、もしかしたら思ったかもしれないですし。お互い1つの時代を闘ってきて、今思うと、いろんなことがあったんだろうな、お疲れさまアンジェラ、っていう風に思います。私は素直に、自分がやりたいことをやった方がいいよって」
――ここ1〜2年の勢いがある選手たちに対して『私はこの闘いでこういうことを見せられる』という思いがあれば
「そうですね。今"DJ Mei"として、Meiの遠い親戚のリングアナとして、いろんな大会をリングアナの席という、もう本当に特等席で、繰り広げられる闘いを目の前で毎週のように見せてもらってるんですけど、やっぱり若い選手がどんどん上手くなってるんですよね。それはそれでいいんですけど、別にお客さんは上手いのだけ見たいわけじゃないと思うんです。それよりも、下手くそでもいいから、ぐちゃぐちゃになってガムシャラに行くのが見たいんだよっていうことを伝えたいし、あとは、なんでフィニッシュ行けるのに行け行かないんだろう、そういう試合もたくさんあるわけですよ。でも、そういうこと全部に、私がなんで行かないのって言っても、自分がそういう試合を見せてなかったら言えないなと思いまして。で、引退しても、いつの時代でも、若手を励ましたり、もっとガムシャラに行っていいんだよとか、そういったことを自信を持って言えるように、自分も精一杯出し切ってっ終わりたいなっていう風に思って。あと、若手の選手は練習だけしてる子とかたくさんいるんですよ。私とか、同じ時代を闘ってきた選手は、みんな働きながら練習して。それでも格闘技が好きだから続けてきたわけです。当時はそんなのが当たり前だったんですね。だから、練習だけしている子たちは、私たちなんかあっという間に越していかなきゃいけないんです。なんか昨日も若手の選手がすごくいい報告してましたけども、あれは『すごいね』じゃなくて『当たり前』にしていかないといけないし、本人たちもそういうつもりでいてほしいです。(本来なら)40代のおばさんたちがずっと出てきちゃいけないんですよ。もうあっという間に越えていってくれないと。日本の格闘技がすごいものにならないといけないので。それでも、そこを踏ん張って頑張っている選手は、自分より年上の選手でも、どの世代でもものすごく刺激になりますし、見ている人もめちゃくちゃ感動すると思うので、そういった選手たちと頑張っていただいて。そして、私は最後にしっかりといいものを残して終われるようにしたいと思います」
――野望や勝つイメージ、そういうものはあるか
「はい。やっぱり若い頃のガムシャラな気持ちとか、何がなんでも勝つとか、そういった気持ちをもう1回思い出して。もちろん、試合運びですとか、技術の面大事にするべきこともありますけど、それでもやっぱり、フィニッシュをとにかく狙いに行く姿勢とか、途中でもう息切れしてもいい、スタミナが切れてもいいと思って、全てを出し切って、見ている人の心を動かすような、フィニッシュを狙いに行く試合をしたいと思います」
――パンクラスが最後の参戦団体になるということについての考えは
「こういった本当に歴史のある団体で最後を迎えられるのはありがたいですし、もうそれしかないですね。もちろんいろんな団体でベルトを獲るっていうのは素晴らしいことですけど、私的には一番歴史の長いところで、そういう団体のベルトが一番重みがあると思うので、終わってからも多分すごく大事にできると思います。とにかくガムシャラに全てを出し切ってベルトを獲りに行きますので、皆さんぜひ見てください」
グリーンの爽やかなシャツに身を包んだMeiは、穏やかな口調で、しかししっかりとこのトーナメントに懸ける熱い思いを語った。 2007年、SMACKGIRLでデビューし、VALKYRIE、DEEP JEWELSの2本のベルトを巻いたMei。PXC、ONE、RIZINなど、さまざまな団体を渡り歩いてきた。まさに、女子格闘技の歴史を作ってきた選手の1人だ。そんじょそこらの若手とは気合いと根性が違う。最後の団体となるパンクラスで、3本目のベルトを巻けるか。V.V Meiの格闘技への思いが爆発するこのトーナメント、ますます見逃せない!
(写真・文/佐佐木 澪)