「分かり合いたかったけど、もうアイツにそんな心は無いんだな」タイチが元盟友・金丸義信からKOPWを防衛も切ない別れの言葉
21日、東京都・後楽園ホールにて新日本プロレス『JRA有馬記念 presents Road to TOKYO DOME』が開催。タイチが金丸義信との壮絶な酒宴を制してKOPW2023覇者となった。
KOPWとは、オカダ・カズチカが提唱して創設された新日本プロレスのタイトル。特殊ルールでの闘いを経て勝利した者にタイトルが移り、その年の最後の段階で保持していた選手が覇者となる特殊性を持つため、通常のプロレスの強さとはまた違うプロレス脳が求められるこの試合には毎大会注目が集まっている。
最初はトロフィーを奪い合うという立ち位置が曖昧なタイトルであったが、鷹木信悟ら歴代保持者たちの強い働きかけによって2023年よりベルトが追加で創設。現在は正式に“王座”として扱われている。
現王者・タイチと挑戦者・金丸義信は、かつて鈴木軍やJust 5 Guysで長年ともに闘い続けてきた盟友であったが、今年9月に金丸が突然HOUSE OF TORTURE(HOT)に寝返ったことで友情に終止符が打たれた。その後も2人の因縁は続いていたが、今大会ではついに今年のKOPW覇者を決める闘いで決戦が行われることになった。
今回のKOPW争奪戦のルールは、“ウイスキーボトルラダーマッチ”。
天井から吊るされたウイスキーボトルをラダーを使って取った選手が自由に使用を認められ、時間制限や場外カウント無しの完全決着ルールだ。
試合開始直後から金丸がラダーを駆使して大暴れしつつも的確な足攻めを積み重ね、ウイスキーボトルを奪取。喜びの一杯から追いすがるタイチの顔面へウイスキーミストを噴射し、ラダー上からのウイスキーボトルアタックを仕掛けるも、タイチが下から急所蹴り。
激高した金丸はさらに苛烈な足攻めを行い、足4の字固めで捕らえながら顔面へのウイスキーミスト噴射。さらにグロッキー状態のタイチに無理矢理ウイスキーを飲ませていくが、これは悪手。飲み込まずに耐えていたタイチが逆襲のウイスキーミストで逆転の狼煙を上げる。
タイチは痛む足で蹴りを放ち、デンジャラス・バックドロップ。次の一手で決着かというその瞬間、突如会場の照明が消えて暗転。明かりが戻るとともにHOTのEVIL、ディック東郷、SHOがリングになだれ込んで来てタイチを袋叩きに。
さらに、高橋裕二郎&SHOが業務用ウイスキーボトルを持ち込んでバケツの中へなみなみと注いでいき、タイチの頭をその中に突っ込んでいく。
急性アルコール中毒不可避の極悪攻撃で窮地に陥るタイチを救ったのは、リング上になだれ込んできたJust 5 Guysの面々。再び1vs1の対面となると、タイチはふらつきながらもアックスボンバーの連打から「オーッ!」と天に拳を突き上げてからのバックドロップ・ホールド。なんとか返した金丸が丸め込み地獄に引き込んでから垂直落下式ブレーンバスターさらにラダーの上にタイチを寝かせてのムーンサルト・プレスまで見せるがカウントは2。
ならばと金丸はラダーを立ててその上からディープインパクトを発射も、タイチがマンハッタンドロップで迎撃。金丸は東郷が再び用意したバケツいっぱいのウイスキーに手をかけるが、タイチがバケツを蹴り上げてウイスキーをぶちまけ、天翔十字鳳からブラックメフィストで叩きつけて3カウントを奪った。
今年最後のKOPW戦を制して見事今年の覇者となったタイチの手にはベルトが返ってくるとともに大トロフィーが贈呈。
マイクを取ったタイチは、「一言だけ。みんなのお陰でやっと覇者になることが出来ました!ありがとうございました!今日はこの試合、ウイスキーの痛みと苦しみを味わって、また来年からも精進していきたいと思います。今日はありがとうございました!」と爽やかなマイクで試合を締めた。
バックステージに戻ったタイチは、「他の人間にしたら、訳のわかんねぇベルトだ、トロフィーだって馬鹿にするかもしんねえけど、俺にとっては色んな闘い、色んな友たちがここに散っていって、ここに魂が入ってんだ。俺にとっては偉大なものだ。ベルトとトロフィー」と守り抜いた栄冠を抱き寄せる。
そして、「最後キッチリ締めて気持ちよく終わりたかったけど、ポッカリした気持ちっていうか……。金丸とは最後、身体で分かり合いたかったけど、アイツにはもうそんな心は無いんだな。少しだけ、少しだけ期待していた俺が馬鹿だった。これで俺もきっぱりケジメついたし、金丸とはこれで泣いても笑っても最後だから。最後ああいう形で終わったけど、全部に対して礼を言うよ、金丸。長い間、世話になった」と、寂しそうな表情でかつての盟友に別れの言葉を贈った。
なお、この試合の後には大量のウイスキーがぶち撒けられたリングマットの交換および清掃作業が実施。『有馬記念』の冠スポンサーロゴが入ったマットが大会中に剥がされてしまうという珍事に見舞われた。