「お前はあの団体のレギュラーだからダメだ」プロレス界の“大人の事情”を乗り越え王座挑戦も厳しい現実の前に散る
19日、東京都・新木場1stRINGにてTTTプロレスリング『CREATION 6』が開催。ガッツ石島が定アキラを相手にインディー統一無差別級王座の初防衛に成功した。
TTT(TOTAL TRIUMPH TEAM)とは、故・ターザン後藤さんに薫陶を受け、ミスター雁之助を師に持つ黎明期インディープロレスの後継者的存在であるガッツ石島が2020年1月に“インディープロレス統一”を掲げて旗揚げした団体。
90年代インディーの空気を色濃く残したディープなメンバーが参戦している他、都内の商店会と協力してプロレスでの町おこしに協力。老若男女にプロレスの楽しさを伝える草の根運動を展開している。
TTTの至宝たるインディー統一無差別級王座は、TTTの代表であるガッツ石島が保持。
初防衛戦の相手は定アキラであることが発表されたが、定は今回がTTT初参戦であり、挑戦者の人選について一部ファンから疑問の声が上がっていた。
定は小学1年生時からU.W.F.スネークピットジャパンで修練を積み、15歳の若さで故・アントニオ猪木さん率いるIGFでデビュー。29歳にして15年弱のキャリアを誇る若き古強者だ。
現在、定はかつてガッツが所属した“某団体”にレギュラー参戦中。ガッツはその団体を“円満退団”しているが、その後は不気味なまでに関わることが無い。
TTTとは別のリングでガッツと対面した定は、「TTTに出してくださいって旗揚げ当時から言ってるんですが、ガッツさんはいつも『お前はどっかの某団体のレギュラーだからダメだ』って言います。関係ねーっすよ」と参戦への思いを直訴。
しかし、ガッツは「なんだそのベルトは」と当時定が保持していた“某団体”のタッグベルトを指して渋い顔。
定は「あなたの前でこのベルトを持つのはちょっと抵抗があります。もういいや、これ」と“某団体”のベルトを投げ捨て「なんの因縁もないし、ライバルでもないし、いがみ合ってるわけでもない。ただ正々堂々あなたのすべてを体感して、あなたのベルトを一発で獲るのでタイトルマッチお願いします!」と握手を求める。
笑顔になったガッツは「お前とはちゃんとした場所で闘いたいとずっと思っていた」と握手で応え、因縁なき闘いの炎がヒートアップすると同時にファンの期待度もゴーイングアップ。定がベルトを放り捨ててから10日後に同王座から陥落したこともあり、2人に間になんのしこりもない状態で決戦当日を迎えた。
120kgのガッツと105kgの定の純ヘビー級同士の試合は重厚なグラウンドレスリングに始まり、定がガッツの巨体を見事な裏投げで叩きつけたことで試合が動く。
定はガッツの両ヒジ&両ヒザを入念に踏み潰してパワーを削いでいくが、ガッツはフライング・ニールキックや延髄斬りなど軽やかな動きで反撃。しかし、必殺のラリアットを放った際に定がカウンターのスパインバスターを決め、後頭部をしたたかに打ち付けたガッツは意識朦朧。
定はフロントハイキックからトラースキック、ジャンピングニーからのランニングニーと鋭い蹴撃で畳み掛けるも、ガッツがカウンターのパワースラムで流れを断ち切る。最後はガッツの伝家の宝刀・ゴーストバスターからラリアットで叩き伏せて3カウントを奪った。
初防衛に成功したガッツが「俺はさあ、俺が目指してるインディー統一、お前はそれの鍵を握る男だと思ってるからさ。本当に今日は試合が出来て良かった。そして、また舞台が整ったらやろうじゃないか!」と定を称えると、定は「どっかの社長と違って、心も身体もデカくてとても満足しました」と爆弾発言を残して退場。
ガッツが「コメントしづらいこと言うなあ?!俺はね、あの、こう見えて平和主義者だから……。リング外はあんまり、こっ、こ、事を荒立てたくないっていうね……?」としどろもどろになっていると、19日(今大会当日)に“某団体”からの退団が発表された酒井博生が登場。
酒井は見るからにカタギでなさそうなスーツに身を包んでレクサスで会場に乗り付けて登場しており、有り余る闇の資金でTTTのチケット販売権を買収。「俺はな、今日こんな権利書だけを買いに来たわけじゃねーんだ。この団体ごと乗っ取りに来たんだよ」という地上げ宣言とともに、金で雇った鉄砲玉として“バラモン兄弟”バラモンシュウ&バラモンケイを召喚。
シュウまたはケイがガッツの持つインディー統一無差別級王座に挑戦することが決まった。
あまりにも生々しいリアルな人間模様がダイレクトに反映され、団体間のギスギスが不可避なリング模様。この先どうなってしまうのか誰も分からないスリリングなドラマの行方に注目していきたい。