【インタビュー】PANCRASE 317に出場の神酒龍一、荻窪祐輔がコロナ禍を経た決戦を前に想いを語る!「コロナ期間で自分を見つめ直せた」「闘いを通して“荻窪ストーリー”を見てほしい」

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 8月23日、『PANCRASE 317』の前日計量が行われた。
 その第6試合は、神酒龍一(3位)と荻窪祐輔(11位)の対戦だ。
 神酒は修斗第4代バンタム級王者にして、第3代フライ級KOP。言わずと知れた実力者だ。
 2017年から2年ほどケージを遠ざかっていたが、そのブランクが神酒を変えた。2019年、復帰初戦は秋葉太樹に判定負けを喫したものの、6月の井上学戦、続く上田将竜戦と連勝。特に、初代バンタム級KOP ・井上との対戦では、スタンドの膝蹴りでのKOという激勝で会場を大いに沸かせた。

 対する荻窪は2012年より参戦。2014年のNBTスーパーフライ級で優勝を飾り、パンクラスで闘い続けてきた。端正な顔に似合わない泥くさい闘いと食らいついて行く根性が身上だ。
 常に自分を磨き続ける荻窪だが、現在2連敗中。しかし、元KOPにして3位の神酒との対戦は大きなチャンスだ。

 ファイトスタイルもキャラも全く違う両者だが、世界を襲い、格闘技界にも打撃を与えたコロナ禍の中で、歩みを止めず刀を磨いてきた。さらにその中で、新たに自分を見つめ直してきたという。その成果がどのように出るのか。両者に話を聞いた。


神酒龍一
「コロナで対人練習ができなかった期間、ジムが閉まっていましたし、練習はどうしても限られてないようになってしまいました。そういうこともあって、自ずと自分の意識が向いて、自分について見つめ直すことができました。
自分が本当に得意なものは何か。不得意なものは何なのか、引き出しの整理ができました。
 その作業をすることによって、相手との闘い方が見えてきました。その結果、相手へのアプローチとしては、いつもと入りが逆になりましたね。
荻窪選手に対しては、最初、ボヤッとしたイメージであまりつかめていなかったんですけど、だいぶ固まってきました。
 多分、多分ですけど、(荻窪選手は)勝ち方のパターンがあまり見えてないんじゃないでしょうか。そんな印象です。
 パンチが当たったり、首を絞めたりっていうのはあるけど、そこへ行くには、まずこうして、その次はこうしてというフローチャートがありますよね。そのチャートが、荻窪選手はボンヤリしてるんじゃないかなというように見受けられます。
 荻窪選手は身長が高いですよね。リーチが長い選手はインファイトすると尺が余ってしまいますし、逆にリーチが長い選手は距離を取りすぎてはうまくいかない。ファイトスタイルが自分にマッチしているのかどうかが大切です。
 また、心理的な部分もあります。気持ちのまま行ったほうがいい選手もいれば、冷静にやったほうがいい選手もいる。マインドと、やれることのマッチングがボヤッとしているような、何をやりたいのかなという感じがします。
 フィニッシュの形が見えてないんじゃないかな、というのは仮定の話ですけど、荻窪選手に関してのこれまでのキャリアなどを見ると、おそらくこうなんじゃないかとピントが合って来ました。でも、あくまで自分の中でそう思うだけで定かではないので、ある程度のラインを作って来ました。ラインがあれば、そこから多少はみ出してもいいと思っています。
 脳みそって、身体が動いた後に動くらしいんですよ。
 楽しいから笑うんじゃなくて、笑うと楽しい気持ちになる、というように。だから、極力考えずに済むように型を作ったんです。

 そんなことを考えて、僕も自分を整理したんです。そうしたら、自分もそんなにやれることは多くないよねと思いました(笑)
 でも、整理ができるようになりましたね。一歩引いて見られるようになったというんでしょうか。試行錯誤を嫌がらなくなったのかな。
 昔は、とにかくやってしまえばいいだろうという気持ちがあったので、ケガもいっぱいしました。今は、とりあえず落ち着いていますね。
 いいと言われるものを口に放り込んでいるだけじゃ、アジャストしていかないです。ハウツー本を鵜呑みにして、そのままやっているのはバカバカしい。タコが空を飛ぼうとするようなものです。人の身体はみんな違いますし、精神の波だってあります。自分には、自分の持っているカードがある。必要なカードがなければ出来ないことだってある。全て、出発点は「自分」なんです。

 そう思うようになったのは最近で、格闘技以外のことをやるようになってからです。昔は、格闘技以外のことをやるのに罪の意識があったんです。格闘技をやるなら、格闘技バカであれ、と。でも、その格闘技バカが深層心理に入ってしまって、視野が狭くなってしまっていたんですね。
 だから、ケガはするし楽しくない。チャンピオンになっても嬉しくない。ただホッとしただけでした。そんな世界観がどこから来たかというと、視野の狭さからだったんです。
 いろんなことを経験して、それを落とし込んで行ける能力がないといけない。だから、格闘技だけやってちゃダメなんです。これは青木さんの言葉ですけど。

 アクション俳優をやらせていただいたこともそうですし、いろんな仕事をやりながら影響を受けたり。今後は、本を書いたり映画を撮ったりしたいです。何をやってもプラスになると思います。
 それを格闘技に昇華していきたいですね。格闘技はただの運動じゃない。空間芸術であり、総合芸術です。だから、何をやっても格闘技に活かせるんじゃないかと思います。
 将棋も好きなんですけど、決まった形を覚えるのが面倒で素で指していました。阿久津(主税)っていう棋士がいたんですけど、将棋部なんて不健康なところだと思っていました(笑)。今思えば、阿久津にやらせてもらえばよかったな。

 格闘技は、展開が速くて、一瞬一瞬がギャンブルみたいなもの。のるかそるかで、一瞬一瞬に全財産を賭けるようなものだと思います。
 今、格闘技自体すごく楽しいです。やればやるほど未熟者度が浮き彫りになって行って、いくらやっても底が見えません。でも、この身体は有限である、そこがまた、いい。
 昔は、30歳になってチャンピオンになったら辞めようと思っていましたけど、今は自分の中にそういう縛りはありません。果てがなく、ゴールもなく、めまいがしそうな感じですね。でも、90歳まではできないと思います。
 格闘技だけでやれたらいいなとも思いますけど……アメリカに行って練習して、とかできたらいいですけど、自分はそうじゃない。
 今は独身で、好きなことを勝手にやれている。いろんな選手がいるけれど、もし連れ合いがいたら、僕の性格としてはそんなことはできないと思います。
 今、この状況や、家族、ジム、周りの理解があってできている。僕は超運がいいんです」


荻窪祐輔
「コンディションは普通です。メッチャいいとか悪いとかじゃなく、いつも通りです。
 コロナのことはありましたけど、練習はできていました。さすがに出稽古はできませんでしたけど。
 相手の三木選手は元チャンピオンですし、経験値がすごいですし。全体的なチャートを見ても平均以上で、ほぼ円に近い形です。普通にやったら勝てないと思います。
 そこを勝つためには……。前回負けて、もう一回、自分の長所を見つめ直しました。ランカークラスに勝つためには、もう一度強く見つめ直して、そこを出せるようにひたすらやって来ました。

 前回(今年2月、猿飛流戦/判定負け)、自分で作戦があって、練習でも自信があって、倒せると思っていました。でも、試合の中で倒すっていうのは、すごく難しいんだと思いました。そこが自分のストロングポイントではなかったんですね。試合は結果が全てです。駄目だったことを、また次の相手にやっても駄目だと思います。下の方の選手には勝てても、上の選手とやった時には勝てない。だから、大幅にシフトチェンジしました。その内容は、今はまだ言えません。
 言えるとすれば、今回は今までより、より「荻窪感」が強い試合になると思います。もっと器用にやろうと思えばできますけど、僕にとっての格闘技はそうじゃない。言葉にすると軽くなっちゃいそうだし、言うのは照れくさいですけど、僕の生き方とか、格闘技への思いを見てもらいたいです。
 試合を見にきてくれた友達で、たまたま1回だけ見てくれた人は「もっと殴ればいいじゃん!」って言う人もいるんですけど、長く見ていてくれる人は「前より良くなったね」「テイクダウンが良くなった」と言ってくれる。いろんなタイプの選手がいますけど、僕の場合、闘いを通して僕という人間を理解して欲しい。長い「荻窪ストーリー」を見てほしい、そんな感じです。
 口はばったいですけど、僕の生き様を見せたい。明日は、そういう試合にしたいです」

 闘い方も生き方も違う2人だが、格闘技を愛する気持ちは変わらない。
 格闘技は、裸で人前に立ち、道具を使わず自分の力だけで相手を倒す競技だ。そう言う競技だからこそ、その選手の人間力が色濃く出てしまうのもまた、格闘技の魅力のひとつだろう。
 明日は、それぞれのカラーがどうぶつかり合い、どんな色と光を生むのだろうか。見逃せないカードだ。

▼第6試合 フライ級 5分3R
神酒龍一(CAVE/56.85kg)
VS
荻窪祐輔(K-PLACE/57.0kg)

※8月23日(日)、14時40分よりYouTubeにてリアルタイム配信あり。

(写真・文/佐佐木 澪)

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