12・28『巌流島』でジョシュ圧勝。アウレリオは危険な勝利
(文/フリーライター安西伸一)
東京・両国国技館で開催された『INOKI BOM‐BA‐YA × 巌流島in両国』が、12月28日(水)に終わった。
久々来日のジョシュ・バーネットはシビサイ頌真と、巌流島ルール(3分3ラウンド)無差別級(グラウンド15秒)で対戦。
スタンドではジョシュがパンチのラッシュ。シビサイはヒザ蹴りで反撃。でもジョシュが2度目のグラウンドでタコ殴り。下になったシビサイは両手で顔を覆うばかりで、足を使って反撃をまったく試みない。
シビサイなら下からの反撃の方法を知らないわけがないのに、展開は一方的で、1ラウンド1分20秒、レフェリーストップのTKOでジョシュが勝った。
シビサイはスタンドでいいパンチをもらっていたのか、どこかを痛めたのか、理由はわからない。でも最後は、気持ちが折れてしまったように見えた。
ジョシュは、転落という独特のルールがある巌流島を想定して、土俵際の攻防の練習もしてきたそうだが、練習では夢中になって、相手に突き落とされる展開になったこともあったという。
でも試合では、そこまでの展開にならなかった。
80年代、90年代のクラシックアニメが、シリアスでハードだから好みなのだというジョシュ。現役のMMAファイターとしては、もう卒業してもよい年齢だが、まだ日本で活躍するチャンスはありそうだ。
戦慄が走ったのは、カポエイラのマーカス・レロ・アウレリオと、テコンドーの江畑秀範の一戦だ。
正面に立つアウレリオの右腕が江畑の股間から入り、そのまま左足を抱え込むと、アウレリオは左手を江畑の右の腰に回し、抱え上げた。そして土俵の端から場外の雲海に向かってジャンプ!
プロレス技でいうノーザンライト・ボムのような形で、江畑の上体をスモークの中に叩きつけたのだ。
煙の下はマットが1枚。198センチの長身で、手足の長い江畑の体が、大きく宙を回り、真っ逆さまになって落ちていったように見えた。
本当にビックリした!!
アウレリオは、相手がケガをしたとは思っておらず、すぐに闘技場にあがって臨戦態勢。でも江畑は動けない。
上体のどのあたりから叩きつけられたのか、スモークで見えなかったが、ドクターが駆け寄り、続行不能と判断。試合はわずか1ラウンド22秒で、ドクターストップに。
この試合は打撃系の選手同士の試合なので、ラウンド内・転落3回によるTKO決着はなく、転落した回数は判定にのみ影響するという、84.0キロ契約、3分3ラウンドの巌流島特別ルール(寝技15秒)だったが、試合はまさかのTKO結末をむかえた。
敗れた江畑はやがて立ち上がり、セコンドと共に歩いて控室に戻ったので、無事であることが客席に伝わる。本当にホッとしたシーンだった。
試合後、ドクターに聞くと、右肩と首を強く打ったけれど大丈夫。骨折箇所があるかどうかは、わからないとのこと。
本人に聞くと、転落の瞬間のことは思い出せないそうで、でも笑顔を見せ、普通に話してくれたし、会見にも応じてくれた。
江畑は急きょ、代役での参戦決定。アントニオ猪木の「いつ、なんどき、誰の挑戦でも受ける」という言葉にも後押しされての出場だったが、巌流島ルールに慣れたアウレリオに挑むのは、準備が足りないまま出陣してしまったと言われても、これは仕方がない。
初期のUFCを会場で見てきたが、当時でも、これほど「危ない!!」と思ったシーンはなかった。
一度、場外転落しただけでは、通常なら闘技場に戻って試合は再開されるので、場外へ落としたとき、相手にダメージを与えられれば、以降は有利に展開できるのは確かだ。でも、頭や首から強く転落させるやり方が許されていたら、ひどい危険と背中合わせだ。
主審を屈強な男性2人にして、無謀な転落になりそうになったら、主審が体を張って止めるとか、見込み一本のように、転落の成功を見越してストップをかけるか、あるいは危険な落とし方を禁止とするか。
巌流島は発展途上のルールで、近年、大会が開催されないままになっていたが、今後復活するなら、めったに起こりえないシーンも想定しながら、転落についてはルールを整備せざるを得ないだろう。