【インタビュー】『PANCRASE 328』で北方大地が待望のパンクラス・ストロー級防衛戦!「次からニックネームは“獅子王子”か“絶対王者”と。みんながそう呼ぶにふさわしいような試合を見せたいと思っています」
『PANCRASE 328』(7月18日、ベルサール高田馬場)で、待望の北方大地防衛戦が行われる。
北方がベルトを巻いたのは2019年7月、その後、パンクラスには相手がいないと他団体に闘いの場を求め、防衛戦を行うことはなかった。
しかし、昨年12月、初防衛に成功。宮澤雄大(K-PLACE)を完封し、王者の貫禄を見せた。今回は2度目の防衛戦で、挑戦者は若手ホープの呼び声高い山北渓人(リバーサルジム新宿Me,We)だ。試合を前にした北方の心境を聞いた。
――前戦は初めての防衛戦、そしてスタジオコースト最後の大会でした。そこで宮澤(雄大)選手とのあの激戦は強く記憶に残っています。今、あの試合を振り返っていかがですか。
「あの試合に行くまでに、RIZINでの欠場、家庭内でのゴチャゴチャ、首の病気がありました。あの試合に到達するまでにすごくいろんな思いがあって、それがあったからこそ、絶対に最高の試合にしたいという思いがありました。もちろん、いつも最高な試合にしたいと思っています。でも、あの試合は、その思いが過去一番強かった。
で、結果、ああいう試合ができたことに一安心しました。何か嬉しいとかいうより、とにかく一安心。ああ良かった、と。ここ数年で一番大きい一安心でしたね」
――前戦は、北方選手の強さ、怖さ、そして勝利への執念を感じる試合でした。周りのご家族や、練習仲間の反応はいかがでしたか。
「家族や周りの人たちは、とにかく『最高やった』と。僕のプライベートのことを全部知っている人ほど、感激してくれましたね。心の底から『良かった』と、みんな言ってくれて、もうそれに尽きますね。息子は100点満点をくれました」
――息子さんからの100点満点。めちゃめちゃ良かったと。
「はい。『もう、何も悪いことがなかった』と。それを聞いた時に、ああ頑張って良かったと思いました。
試合は12月にあったんですけど、そこにたどり着くまでにいろいろあったので。病気になったのが去年の4月なので、僕は(試合まで)8ヶ月間闘ったと思っています。その8ヶ月間の闘いが報われたと感じました」
――今年3月のRIZINでも、適正階級より上のフライ級で勝利。パンクラス王者の存在感をアピールできたのではないでしょうか。
「そうですね。やっぱりRIZINで勝負することによって、『パンクラスのチャンピオン・北方大地』であるということを、広められるって言ったら大袈裟ですけど。僕は、RIZINをそういった意味で活用して……と言ったら上から目線ですけど、そういったメリットがあってRIZINで試合をさせていただいているというのがあるので。
やっぱり、ベルトの価値は自分で高めるしかない。ベルトの価値を高めることはチャンピオンの仕事やと思ってるんで、そういった意味では前回のRIZINフライ級の試合は価値があったなと思います」
――今回、パンクラスでの防衛戦です。この試合が決まった時の心境を聞かせてください。
「この試合が決まった時は、テンションは上がらなかったですね。
やっぱりRIZINフライ級のトーナメントだったりとか、ストロー級でもやるんだったら、もっと価値がある選手とやりたいというのが本音だったんで。裏話を言うと、ちょっと渋ったんですよね。『やりたくない』と。もっと、次期挑戦者決定戦とか、相手の価値がもっと上がってからやりたいと思ったんですけど。
でもやはり、チャンピオンとしての仕事をしないといけない。防衛戦というのはチャンピオンとしての仕事なんで。その、チャンピオンにしかできない仕事を最高の形でするっていうのを課題として自分に課して、今回の試合に臨もうと思います」
――相手の山北選手は無敗のチャレンジャーです。印象はいかがでしょうか。
「坊主で、ちっちゃくて、頑張り屋さん。それ以外は、無敗というレコードを持っている。無敗というのは、誰が見ても感心できるレコードですよね。格闘技がわからなくても、寝技や打撃がわからなくても、無敗だということは強いんだろうなと連想させられると思うので。そういったレコードで僕の前に立ってくれたことには『ナイスやな』と。
無敗やからこそ価値があるんですね。もし彼が無敗じゃなかったら、やらないんで。そういった意味で、無敗がある彼にはちょっとホッとしてます」
――相手は無敗ならではの勢いで、がむしゃらに挑戦してくると思われますが、そのあたりはいかがでしょうか。
「彼は無敗ですけど、僕はもう9敗か10敗ぐらいしてるんですよ。彼は負けてないから怖いもの知らず。僕はプライベートも格闘技も、いろんなことを含めて傷つきまくって(その結果)、今チャンピオンとして存在してるんで。生物としてのタフさが全然違うから。
あくまでも新人レベルの無敗の彼と、チャンピオンクラスの僕の戦績では、正直、格闘家としてのモノが違うんですよ。だから、それを彼に教えることになるし、ファンの人も知ることになるなと思います」
――今回は、どんな試合内容になりそうでしょうか。
「前回と同じなんですけど、ああ、やっぱりチャンピオンの北方大地はメチャクチャ強いよ、とみんなが思うような試合になると思います」
――ズバリ、どんなフィニッシュになると思いますか。
「フィニッシュは、全てがあり得ます。パンチでのKO、キックでのKO、僕が寝技で首を絞める、パウンドアウトする、判定で勝つ、全てのフィニッシュがあり得ます。
なので、当日どうなるかは僕もわからないです。相手がどこで折れるか次第です」
――少し話を変えて、先頃、北方選手の尊敬する前田吉朗選手が引退されました。このことについて、今思うことは?
「責任感が強くなりました、吉朗さんが引退することによって。
格闘技を始めた時からの師匠、尊敬する一人の男がプレーヤーとして去ってしまうということで、僕の心に穴が開いた。でも、開いた穴は自分でしか埋められないので、代わりに尊敬する人間を立てるのではなくて、自分が強くなることで、その開いた穴を埋められると思います。
そういった意味で、その穴を埋める理由として責任感が芽生えたんで。『よーし、じゃあ俺が』と。第二の前田吉郎になるつもりはないんですけど、責任感が芽生えましたね」
――改めてお聞きしたいのですが、北方選手にとって前田吉朗という人はどんな存在なのでしょうか。
「強い男。簡単に言うと、それです。
そして、僕の思う“昭和のタフないい男”。すごくわかりやすくて、すごく強い。尊敬するに値する人だと思います」
――前田選手の引退後、北方選手は関西圏のニューリーダーの1人だと思います。このような立場になっていることをどう感じていますか。
「関西のニューリーダーというのはピンと来てないですけど、関西のMMAファイターの中心であることは間違いないと思うんで。関西というか西日本ですね。ベルトを持っていることも含めて、キャリアも実績も含めて。
その中で、僕がどういったパフォーマンスを出して、どういった言葉を発して、どういった行動をするかっていうのが下の子たちに見られていると思うので、そこはチャンピオンらしく、そしてトップ選手らしくいきたいなとは思っています」
――今後、北方選手が目指す未来を教えてください。
「うーん。今は、コロナっていうのもあって、次の手が読めないじゃないですか。次の時代が。そういった中で、今目に見えている部分を一歩一歩、できる限り最高のものにして、次のステージでも最高のものを積み重ねて。
だから、思い描くとかっていうことは特にないんですけど、引き続き、最高を追い求めて1つ1つ積み重ねていって、最終的に自分が想像を遥かに超えるぐらい、最高のものを積み重ねたんだと振り返れたら最高かなと。そういうことをイメージしながら、今目の前のことに集中したいと思っています」
――では、最後に、この試合への意気込みをお願いします。
「パンクラス・ストロー級は北方大地が絶対王者やと。次からニックネームは“獅子王子”か“絶対王者”と。みんながそう呼ぶにふさわしいような試合を見せたいと思っています」
昨年4月に国の指定難病後縦靱帯骨化症を発症した北方。現在、手術をするしか治療法がないが、手術をすれば、それだけ試合ができなくなってしまう。そこで、北方は手術しない選択肢を取った。トレーナーと相談し、体の使い方から変え、首に負担がかからないような動きを研究した。実際、昨年12月の試合は、今目の前で闘っている人が難病にかかっているとは思えない素晴らしい動きだった。
また、今年3月のRIZINでは村元友太郎に勝利。さらに4月には師匠・前田吉朗の引退記念大会でエキジビションの相手も務めた。
今回も鍛え上げられた身体をSNSに掲載した獅子王子・北方。ライオンは小さなウサギを狩る時も、全力でかかるという。獅子奮迅の闘いは必見だ。
(聞き手・撮影/三宅健一、構成・佐佐木 澪)