【コラム】大阪から全日本プロレスの頂点へ…ゼウスは再び三冠を巻くか?!

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10月17日、ゼウスは大阪で諏訪魔の持つ三冠ヘビー級王座に挑戦をする。
ゼウスという選手は全日本プロレス所属でありながら、大阪の地域密着型レスラーと言えるかもしれない。
今なお大阪在住で、全日本プロレスでの試合がない時は自身のジム経営を行う。

プロレス人生において、ひいてはゼウス自身の人生において大阪抜きには語れない。
ゼウスは大阪に生まれ育ち荒れた青春時代を過ごすも、更生しボディビルの道へ進む。
そこで数々の大会で優勝を果たすなどの結果を出したゼウスは、スペル・デルフィン率いる大阪プロレスから声がかかり、デビュー。
新人らしからぬ身体でハッスルにも参戦し始めると、一躍全国区の選手となる。
2009年にはプロボクサーとしての活動の為にプロレスを休業したが、翌年復帰。
ゼウスにとっては中々結果の出ない時期でもあったが、この頃はプロレスへの愛情を再確認させてくれた、今となっては大事な時期でもあった。
その後、全日本プロレスに入団。
過去に三冠ヘビー級、世界タッグのベルトを初めて巻いたのはいずれも大阪だった。
この辺りからも大阪で開催される試合においての、並々ならぬ勝利への執念が感じられる。

実際、ゼウスにとって大阪とは、大阪での試合とはどんなものなのか?

「大阪は自分が生まれた街であり、これから先も生涯生き続ける街ですね。試合やタイトルマッチはどこの地でも特別なモノ。その中でも大阪は、妻や両親、友人や沢山の方々が応援してくださるので、勝ちたいという気持ちはさらに強まります。」

しかしながら、2019年7月28日エディオンアリーナ大阪第二競技場にて行われた三冠戦では、第62代王者・宮原健斗に挑むが惜しくも敗退。
この時の気持ちをこう語る。
「試合に負けた悔しさと、大阪での試合だったので地元の応援してくださる皆さんにとても申し訳なかった。」

ゼウスが大阪でここまで結果を追い求め続けるのは、他にも理由があった。
関西では、大阪プロレス旗揚げ以降団体が増え、沢山の選手がその地に根を張り活動を続ける。
その選手たちはゼウスにとっては仲間であり、兄弟のような存在だ。
しかしながら地理的条件もあり、関東以外の地域はプロレスマスコミの日の目を浴びにくい。
ゼウスは、そんな場所で頑張り続ける仲間たちにもエールを送る。

「全国に名を轟かす実力のあるレスラーになって欲しい。皆さんの活躍を心から願っています。」

ゼウスが全日本プロレスで活躍することによって、彼らにも目を向けさせることが出来る。
その思いもまた、勝利に向けゼウスを突き動かす。

妻の為、両親の為、応援してくれる、仲間たちの為、地元で頑張り続けるレスラー仲間たちの為。
あらためて、ゼウスに大阪で叶えたい夢を聞いてみた。

「大阪で叶えたい夢は、三冠王者になること!!」

そして、ゼウスにはもう一つのタイトルマッチが控えている。
10月24日後楽園ホールにて開催されるアジアタッグ選手権試合だ。
三冠戦では挑戦者として臨むゼウスだが、こちらは大阪プロレス時代からの先輩であり盟友であるイザナギとのタッグで、ライジングHAYATO(愛媛プロレス)、フランシスコ・アキラの挑戦を受ける。
ライジングHAYATOは愛媛プロレス所属の21歳。
愛媛プロレスのコーチを務めるスペル・デルフィンの指導も受けながらキャリア五年目を迎える。
現在は年間120試合を行う愛媛プロレスの試合をこなしながら、今年1月から全日本プロレスにもレギュラー参戦を果たしている。
今回のアジアタッグ戦が、全日本プロレスでの初めてのタイトルマッチとなる。
先日行われた記者会見では、この一戦に懸ける思いをこう語った。

「ローカルレスラーでもこの東京というレスラー激戦区、ここで頑張れば、結果を残せば、ベルトや色んな勲章を手に入れられるんだという証明をしたい。」

ライジングHAYATOもまた故郷・愛媛への想いは強い。
愛媛プロレスは基本的に愛媛県内で興行を行い、地域密着のローカルインディー団体というカテゴリーに属する。
前述の様に、ローカル団体は関東の団体と比べ、マスコミが取材をしに行く機会も少なく、メディアにも取り上げられにくい。
地元では熱狂的な支持を得やすいが、全国的には浸透しづらいのが実情だ。
全日本プロレスに参戦し始めるまで、HAYATOの名前を知っているプロレスファンもあまり多くはなかった。
今回のコメントは、もちろんHAYATOにとっていちレスラーとしての欲もあろうが、その奥底にある地元愛とそこで頑張る仲間たちへの想いが集約されたものなのだ。

そこにはゼウスの大阪に対する思いと共通するものがある。
ゼウスは、三冠ヘビー級の歴史の中で初めてローカルインディー団体出身者としてそのベルトを巻いた男でもある。
ゼウスにとって愛媛プロレス・ライジングHAYATOという選手は一体どのように映っているのか。

「(ライジングHAYATOの姿勢は)素晴らしいと思う。自分自身、元々大阪プロレス出身から三冠王者になり、チャンピオンカーニバル覇者になった。彼にもこの全日本プロレスで活躍してほしい。」

ゼウスはHAYATOにかつての自分を重ねる。
しかしだからこそ、簡単に乗り越えられる低い壁であってはならない。
家族・仲間・故郷への想いをその背中に乗せ、プロレスラーは今日も闘う。

文:鈴木みたらし

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