2月に引退の花月が愛弟子・中野たむとの一騎打ちで敗北も「下の子達に色々勉強させてもらって感謝しか無い」と笑顔
19日、東京都・後楽園ホールにてスターダム『スターダム9周年記念日』が行われ、花月と中野たむが最後のシングルマッチを行った。
花月は里村明衣子に師事して2008年にセンダイガールズプロレスリングでデビューし、後にフリーとなってからスターダムに定期参戦。2017年には木村響子の引退によって大江戸隊の新リーダーとなりスターダムに正式入団。昨年6月に赤いベルトを獲得した際には約10ヶ月で計8回の防衛を重ねる実績を残しているだけではなく、裏ではその確かな技量を以て若手選手の指導にあたりスターダムの選手力底上げに大きく貢献してきた選手だ。
花月は先月24日の後楽園ホール大会で岩谷麻優の持つ赤いベルトに挑んで敗北し、翌日の記者会見で花月が1月26日をもってのスターダム退団&2月に引退することを発表。
花月は「1年半くらい前からしっかりと考えた上で、この新体制になるということをきっかけに、『今かな』っていう思いで決断しました。私もいまの時代でいうと古くさい考えを持った人間なので、そういう私みたいな考えの人がいないスターダムというのは、やっぱり新体制にとって一番すごい大事なこと」とその引退理由を語っている。
そして、花月の現役最後の後楽園ホールとされるこの試合で、花月は対戦相手に中野たむを指名。
たむは2017年7月に突如スターダムマットに現れ参戦を直訴。当時フリーとして参戦していた花月はすぐにたむに目をつけ、即座に大江戸隊へ勧誘。査定マッチを行った末にたむを仲間に引き入れた。
たむは同年10月に首を負傷して長期欠場に入るが、花月はたむが欠場に入る際に「『何があっても大江戸隊で面倒見させてくれ』と会社に頼んだ」と後ろ盾になり、同年11月1日付で花月とたむはスターダムへ入団。
しかし、たむの復帰戦であった2018年1月の7周年記念大会で行われたユニット追放マッチで敗れたためたむは大江戸隊を追放されることに。花月はたむを追放することを不本意としつつも復帰までを見守ったことで役割を終えたとし、「今後のことはお前自身が決めればいい」と別の道を歩みだしていた。
月日は流れ、2年後の9周年大会前の記者会見で、花月は「私が大江戸隊のリーダーになってから初めて勧誘したのが中野たむだったのもあるし、彼女がこのままリタイアしてしまうんじゃないかというくらいの怪我で長期欠場したときに私は『なんでこんなに頑張ってる子がこういう想いをしなくてはいけないのか』と家で涙を流した時があったんですよ。でも彼女は『絶対リタイアしないでやりたい、復帰したい』って言ったんですよ。だから私はそれを聞いたときに、『彼女を何が何でも必ず復帰させよう』って思ったんですね。それくらい彼女に対して特別な思いがあります」とたむへの想いを語った。
一方のたむも花月の想いを受け止め「私が選んだ道が正しかったのかどうか、この試合を通して、そのお返しとして、そして私から花月さんに贈れる最後のたった1つの餞別になると思ってます。過去を振り返るのではなく、花月さんにとっても私にとっても未来のための試合にしましょう」と語り、両者はしっかりと握手を交わしていた。
両者の3度目のシングルマッチとなるこの試合は、互いが積んできた練習の成果を確かめ合うような基礎に忠実なグラウンド戦やアームドラッグの応酬に始まり、花月が得意の場外戦に引き込もうとするもたむは花月のトペ・スイシーダをかわして逆に場外プランチャを敢行。さらにたむはデスティニーハンマーからバックドロップと攻勢をかけるが、花月はけろっと起き上がり不敵に笑うタフさを見せつけ、花月が“たむの技”という名前で使っているバイオレット・シューティングを叩き込み、たむもお返しの本家バイオレット・シューティング。たむはさらにどどん.tamからタイガースープレックスを狙っていくが、花月はえびす落としから大江戸コースター。これを意地で返したたむがタイガースープレックス・ホールド、バイオレット・シューティング3連発、新技であるトワイライト・ドリームを決めて花月超えを果たした。
試合後、たむが号泣しながら花月に感謝の言葉を述べると、花月は「たむ、大江戸隊から抜けて、あなたが自分で選んで進んできた道は、間違ってなかったよ。花月様からこうやって勝ったんだから。白のベルト欲しいんだって?白のベルト獲って、スターダムのトップに行ってほしいけど、トップじゃなくても中心に立ってください。(たむが首を振る)えっ?トップに立ちたい?(笑)じゃあ、トップに立ちつつ中心でいるところを、私はテレビの前で見ています。本当にありがとう!」と語り、たむと固く抱き合った。
バックステージに戻った花月は、「選手として私が彼女に劣っているところってほぼほぼ無い!って私は断言できるんですけど、ホントに気持ち、体力的にもたむの成長を感じましたし、彼女自身が持っているもの、背負っているものを大きく感じました。右も左もプロレス界のことをわからない子がひょこひょこスターダムに来て『上がりたいんですぅ』って言ってきて、『コイツすげぇ度胸してるわ』って思って、その場で勧誘しましたからね(笑)そういった、自分が持っていないものを持っている子なんだなって感じたんで、私のもとで育てたいと思ったんです」とたむとの思い出を振り返る。
そして、これが現役最後の後楽園ホールであったことに話が及ぶと、「私は比較的昔から後楽園ホールのメインに立たせてもらうことが多くて、すごく緊張する、プロレスの聖地ってやっぱり緊張するなって思うんですけど、スターダムに来て私と対戦する子の方が緊張している姿を見ると、なんか私が緊張してる場合じゃないなって(笑)そういう思いがあったスターダムの2年間だったなって思います。(デビューしてから)8年間ずっと下っ端でやってきて、スターダムでは急に一番上のトップのポジションに君臨することになって。私が下を育ててきたとか、私が教えてきたとかはあると思うんですけど、私が下の子達に色々勉強させてもらって、ここまで成長というか“花月”という存在を大きく見せてもらったなって。逆に本当に感謝しか無いですね、下の子達に」と穏やかな表情で後輩たちへの感謝の言葉を述べた。
花月のスターダムラストマッチは今月26日にエディオンアリーナ大阪第二競技場で、そして花月がプロレスラーとしてのフィナーレを飾る自主興行『花月引退興行~many face~』は、2月24日にエディオンアリーナ大阪第二競技場にて行われる。