PANCRASE285出場の外国人選手3人が公開練習!三者三様のMMA論を語る
3月8日、10日の両日、「PANCRASE 285」に出場する外国人3選手が、都内渋谷区の和術慧舟會HEARTSで公開練習をおこなった。
9日に公開練習を見せたのは、タテキ・マツダ(Team Sityodtong Boston)と、ビクター・ヘンリー(UWFUSA/Hybrid Figheter)。マツダは仙三(FREEDOM@OZ)と、ヘンリーは上田将勝(パラエストラ東京)と対戦する。
“逆輸入ファイター”マツダは、パンクラス2度目の参戦。スパーリングに入る前、キャップのツバにゴム紐でつないだ柔らかいボールを打つ独特なウォーミングアップを見せた。パンクラスでの試合は、アメリカで試合をするのとあまり変わらない環境で闘えると言い、再びのオファーを喜んだ。
静かな語り口ながら、しっかりとした格闘技観を持つ印象。あくまで謙虚に、試合に向かう気持ちを語った。
「ボールをパンチで打つのは、簡単なウォームアップ。身体の力を抜いて、パンチを無意識にパッパッと出せるようにするためのトレーニングです。コンディションは、前回よりはいいかなと思います。何事も経験ですね。経験を活かしてベストパフォーマンスを見せたいです。前回は、勝つことで精一杯でした。内容は受け止めるだけです。もちろん反省は活かさなくてはいけないと思っています。曹(竜也)選手はすごく良い選手で、いい経験になりました。
今回の相手は、まずリーチが長いなという印象があります。試合がトリッキーですね。僕は、自分のペースで闘って、相手の試合をさせないことが勝利につながると思っています。金網際でも真ん中でも、場所を選ばずにガンガン攻めてKOか1本で仕留めたいです」
――仙三は2位なので、勝てばタイトルも見えてくるが?
「そういうことは全然考えていません。胸を借りるつもりで闘います。自分にとっては、1戦1戦がいっぱいいっぱいです。この試合のこと以外は考えられないです。練習は、特に変わったことはしていません。ただ、僕の階級の練習相手がいないんです。今回は、最悪、1階級上の選手と練習しました。今はボストンオープンが迫ってきているので、もっと上の階級の選手とレスリングもしました。普段はスパーリングや打撃が中心なので、ある意味バランスがとれたんじゃないかと思います。
良かったことは、時差ぼけを解消する道具を見つけたことです。ライトを当てることで、日光を浴びるのと同じ間隔で、体内時計をリセットするんです。最後に大事なのは睡眠なのに、前回は本当に時差ぼけが酷かったです。でも、言い訳無用でやっていきます。
パンクラスの雰囲気ですか。「特にない」というのが感想です。でも、これは僕の中では褒め言葉なんです。パンクラスは『世界標準』を掲げて、いろいろなことをしていますよね。アメリカは移民の国なので、いろいろな国の人と触れ合う機会があって、他国の話をすることが多いんです。話していると、日本からのオファーを受けたことがあるかどうかとか、リングなのか、ヒジありなのか、みたいな話題になるんですけど、パンクラスはそういうところが心配なく闘えると思っています。UFCのスタイルに似ていて、UFCをロールモデルにしている感じですね。だから、すごくやりやすかったです。
つまり、ある意味『いつも通り』。だから、特にないっていうのが褒め言葉なんです。
選手としての目標ですか? 格闘技をやっているのは、自分が格闘技が好きで、格闘技が自分を成長させてくれるからです。毎日の練習で鍛えて、それを試す試合という機会がある。勝てば次のレベルへ行ける。格闘技は、自分の成長を形として見られるんです。限界に挑戦する、という気持ちもあります。そして、有名になって、注目を浴びて、選手としての価値を上げること、それが今のモチベーションですね」
ヘンリーは、上田との再戦となる。前回は2015年2月、GRANDSLAM 2 -Way of the Cage-で、ヘンリーが膝十字で1本勝ちを収めている。リベンジに燃える上田に対し、ヘンリーは「また勝つだけ」とクールに語った。
「リマッチだが、前回よりもより良い闘いを見せて、また勝つだけ。自分は、前回よりも1人の格闘家として成長した。いろいろな選手と練習して、色々な技術も身につけている。前回の自分とは違う。試合では、新しい技術も、今までの技術も、両方見せます。今回、ジョシュがUWFUSAというチームを作って独立した。CSWとは違うジョシュの元で練習している。CSWでやってきたこと、学んだことを引き継いだ上で、ショシュと新しいスタートを切り、新しい活躍を目指す」
――上田は、試合が決まったとき怖く感じたと言っているが
「上田は、本当は怖いと思っていないと思う。リマッチしたがっているのだから。でも、自分は前回極めて勝っている。リマッチしても、上田は思うようにならないと思う」
――勝ったら、昨年11月、判定負けしているハファエル・シウバへのリベンジを狙う?
「まずは、今回勝つことが大事。しかし、ハファエル戦だけでなく、石渡(伸太郎)戦も宿題です」
続いて、翌10日、和術慧舟會HEARTSにて、三浦彩佳(TRIBE TOKYO M.M.A)と対戦するマグダレナ・ソルモバが公開練習をおこなった。
初来日のソルモバは、まさに日本に着いたばかり。宿泊予定のホテルにもチェックインせず、ジムに直行した。少々、疲れた様子ではあったが、コンディションは悪くなく、体重もあと1kg落とすのみという。チェコから来たソルモバは、なんと現職警察官。女性版ミルコ・クロコップだ。警察学校を卒業し、現在は駆け出し警察官として修行中だという。
「長いフライトで、いま来たばかり。少し疲れていますが、日本で闘えることに興奮しています。パンクラスは1993年から長い歴史と、多くの大会を開催していると聞いています。
相手の試合は1試合観ました。戦績は私と同じくらいですね。グラウンドが得意な選手という印象を持ちました。あとは、インターネットで戦績などを見て、1本勝ちをしているんだな、と。それ以外の情報はなく、あとは実際に闘うだけです。
私は2013年にプロデビューしていますが、確かに4戦というキャリアは少ないですよね。実際、試合の予定はあったのですが、相手の怪我や、プロモーターの都合でキャンセルになることが多かったんです。1年で1試合しかしていない年もありますが、実際には4〜5試合オファーはあったんです。
これまでのスポーツ歴は、16歳からやっていたカポエイラですね。でも、ダンスみたいなもので、格闘技とは思っていません。あとは小さい頃にやっていた合気道くらいです。また、バレエもやっていましたが、今はやっていません。
MMAを始めたきっかけは、警察学校でMMAの技術を学んだことです。MMAは色々なスポーツを混ぜているところに惹かれました。私はプラハに住んでいるのですが、そこにあるジムに入りました。新しいことにチャレンジしたくてMMAを始めました。どちらかというとグラウンドが好きで、リアネイキッド・チョークには自信があります。
今はチェコでもMMAの人気が出始めています。テレビでThe Ultimate Fightingのようなリアリティ番組が放送されて、人気を博しています。地元の選手が出るときは、みんな大会にも足を運ぶようになっています。私の所属するジムにも、ビクター・ベスタというヘビー級の選手がUFCにでています。私もMMAが好きで、もしも警察か格闘技か、どちらか選ばなくてはならない状況になったとしたら、MMAのプロを選ぶと思います。警察には、MMAのあとに専念します。
もちろん、今後もパンクラスには継続参戦したいです。この場所で闘うことは素晴らしいです。そのためにも、日曜日には、観る人が楽しんでくれる、喜んでくれるような試合がしたいです。最善を尽くして、ベストな試合をお見せします」
三者三様の言葉ではあるが、格闘技への情熱は同じだった。3月12日、ディファ有明で開催される「PANCRASE 285」で、それぞれのMMAを表現してくれることだろう。
(写真・文/佐佐木 澪)