「彼女って言われて性転換してよかった」誹謗中傷を乗り越えトランスジェンダー選手が性転換手術をして女子レスラーへ現役復帰!
10日、東京都・新宿FACEにてPPPTOKYO『SPLASH CARNIVAL―宴・解放戦線―』が開催。第4試合ではエチカ・ミヤビ復帰戦としてエチカ・ミヤビ&夏すみれvs世羅りさ&まなせゆうなが行われた。
『PPPTOKYO』は慶應義塾大学卒の元・博報堂レスラー三富兜翔が総帥としてプロデュースし、『BreakingDown』に出場した筋肉系YouTuberのちゃんよたや“胸毛ニキ”八須拳太郎も所属する団体。
そんなPPPから2022年9月にデビューした生え抜き選手第3号が“トランスジェンダー女子プロレスラー”エチカ・ミヤビ。
エチカは高校生までは男性として過ごしていたが、今は女性として人生を歩んでいるトランスジェンダー。元々ちゃんよたが働いているマッスルガールズバー『筋肉女子・マッスルガールズ』でともに働いており、ちゃんよたの試合を見て憧れてPPPへ入門。小学校まではソフトボール、中学では軟式野球に打ち込み、高校では硬式野球で投手として140km/h近い速球を投げた過去もあるなど高い身体能力を持っている。
自らのアイデンティティに悩み、デビュー後もプロレスファンから様々な言葉を投げかけつけられてきたエチカだったが、今年1月から性別適合手術を受けるためにプロレスラーを休業。約8ヶ月ぶりの復帰が決まった際の記者会見でエチカが涙ながらに語ったのは、復帰の喜びよりも周囲の人間への感謝の言葉。復帰が叶ったのは自分の力だけではないと力説した。
一般的には、術後約8ヶ月の今頃がようやく運動を始める時期なのだという。術後半年程度から運動を再開し2~3ヶ月でプロレスラーとして復帰するまでに至るエチカの身体・精神の強靭さはまさに“超人”と言える。
また、エチカは自身の性別に対する賛否両論・毀誉褒貶について言及。
「トランスジェンダーという立場も分かってはいたので、たくさんの批判があることは覚悟していたんですけど、やっぱり罵詈雑言・誹謗中傷がすごくて、予想していた以上にブワ~ッと……色んな嫌な言葉を見てしまって落ち込んだことを今でも覚えてます」と誹謗中傷の被害について告白しつつ、「私がどれだけスゴいプロレスをするかっていうのを是非リアルで見てもらいたいと思っております」と強い心を見せつけていた。
この日行われたエチカの復帰戦は、エチカ・ミヤビ&夏すみれvs世羅りさ&まなせゆうな。エチカを取り巻く3人は“プロレスラー”としてのエチカを形作ってきた選手たちであり、術後の心の支えになっていた仲間たちだ。
試合が始まるとエチカが猛攻を仕掛け、まなせと世羅を2人まとめてブレーンバスターで豪快に投げ捨てる。さらにエルボーから投げようとするが、まなせが逆にブレーンバスターで叩きつけると世羅がダブルニーの連撃。なんとかエチカもチョークスラムで反撃するが、世羅はファルコンアローで突き刺すとダイビングダブルニードロップを投下し3カウント。
デビュー戦の相手を努めていた世羅は「度胸が全然違う。デビュー戦の時なんてわたわたわたわたしてんなこいつって思ってたけど、今日はがっしりどっしり」と高評価。
夏は「今後もっとプロレスやっててよかったなって思うこともあるし、でもその反面、もうプロレスなんか出会わなかったらよかったのになってこともきっとあると思う。でも大変なしんどい思いを乗り越えてここに戻ってきたエチカなら、それくらいどうってことないはずだから。この先もリング上の嬉しいも楽しいも悲しいもむかつくも、もう殺してやりたいも、抱きしめてやりたいも全部!一緒に感じていきましょう」とエール。
エチカは「試合の前までは80ぐらい緊張だったんですけど、いざ上がってお客さんとか見て喜びしかないと思いました。前のコスチュームの特攻服って自分自身の素性というか、ちょっとやんちゃしてた時もあるのでそれをモチーフにしてたんですけども、やっぱり女性になって、そういう感情よりはカッコカワイイをできたらと思いました。可愛くなりたかったです(照笑)プロレス業界の方は優しくて、彼女、英語で言ったらSheって言ってくれました。改めて言われて性転換してよかったなと、プロレスやってて良かったなと思いました」と笑顔を見せた。
性転換手術をしてレスラー復帰した現役日本人女子レスラーはエチカのみ。ジェンダーを越えた彼女の活躍は1つの希望だ。