【試合詳細】6・15 天龍プロジェクト新木場大会 【IJ王座】TORUvs佐藤光留 鈴木秀樹vs矢野啓太 佐藤耕平&拳剛&渡瀬瑞基vs河野真幸&近野剣心&吉田和正 新井健一郎&レイパロマ vs谷嵜なおき&児玉裕輔

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『WRESTLE AND ROMANCE』 シリーズ第3戦
日程:2022年6月15日(水)
開始:19:00
会場:東京・新木場1stRING
観衆:未発表

▼シングルマッチ 30分1本勝負
○仁木琢郎(2AW)
9分18秒 フロッグスプラッシュ→エビ固め
●椎葉おうじ(フリー)

▼シングルマッチ 30分1本勝負
○菊タロー(フリー)
8分41秒 サムソンクラッチ
●SUSHI(フリー)

▼タッグマッチ 30分1本勝負
○新井健一郎(DRAGON GATE)/レイパロマ(ダブ)
12分55秒 エビ固め
谷嵜なおき(ダブ)/●児玉裕輔(フリー)

▼6人タッグマッチ 30分1本勝負
○佐藤耕平(フリー)/拳剛(フリー)/渡瀬瑞基(ガン☆プロ)
16分49秒 ラクダ固め
河野真幸(フリー)/近野剣心(ダブ)/●吉田和正(大日本)

▼シングルマッチ 30分1本勝負
○鈴木秀樹(フリー)
15分52秒 ダブルアーム・スープレックス→片エビ固め
●矢野啓太(ワラビー)

▼インターナショナルジュニアヘビー級選手権試合 60分1本勝負
【王者】○佐藤光留(パンクラスMISSION)
27分15秒 腕ひしぎ十字固め
【挑戦者】●TORU(TTT)
※第23代王者が3回目の防衛に失敗。佐藤光留が第24代王者となる

光留がTORUからIJ王座を奪取し天龍源一郎が「天龍プロジェクトが本当に見せたいプロレス」と絶賛!鈴木秀樹が矢野啓太との激戦を制し『プロレスしようぜ』

 天龍プロジェクト『WRESTLE AND ROMANCE』シリーズ第3戦となる大会が6月15日、新木場1stリングで開催され、メインでインターナショナルジュニア(以下IJ)シングル選手権試合が行われた。これが3度目の防衛戦となるTORUが挑戦者に指名したのはパンクラスMISSION所属にして“ミスター天龍プロジェクト”の佐藤光留。王者・TORUの執拗な左ヒザ攻めで挑戦者・光留はロープに走れないほど追い込まれるが、執念の左腕狙いから隙を突いてのバックドロップ、ミドルキックから延髄。さらに水車落としと攻め続け、最後は腕十字でギブアップを奪った。

 27分を超える激闘を見届けた天龍源一郎は「この2人の戦いこそが、天龍プロジェクトが本当に見せたいプロレス」と絶賛。勝利した光留は「天龍さんにそう言ってもらえればもちろん嬉しいけど、その言葉を聞いたらもう次。次の天龍プロジェクトのタイトル、歴史に向けてスタート。昇り竜だから、下り竜じゃないんで。じっとしていないし、昇っていく」と、王者として次の歴史、次の戦いへ向けてタイトルマッチの熱気そのままに気炎。破れたTORUも「チャンピオンTORUは今日で終わったかもしれんけど、挑戦者の立場でIJはもちろん、IJタッグ、6人タッグも強気で狙っていきますよ。何も背負うものなくなったんでね。また次から、ガンガンいきますよ」と、いち挑戦者としてまた這い上がる覚悟をみせた。

 セミファイナルでは元WWEコーチの鈴木秀樹と天龍プロジェクトの守り神・矢野啓太がシングルで激突。つかみどころのない動きのように見せながら先を読んで攻め込む矢野と、身を任せつつも相手の体力を削り、チャンスを狙う鈴木のせめぎ合いが展開された。最後は矢野のスリーパーが解けた一瞬の隙に、体格で勝る鈴木がすかさずバックブリーカーからダブルアームスープレックス。その説得力に天龍も「あんなにきれいにダブルアームが決まったのは何十年ぶりに見た」と賞賛した。

 また、第3試合では先月光留&矢野組からベルトを奪取しIJタッグ王者となった谷嵜なおき&児玉裕輔組が、レイパロマ&新井健一郎組と対決。自ら先攻し王者組と渡り合う覚醒・パロマの戦いぶりに、アラケンも奮闘。タッグチームとしての連携で上回る王者組だったが、パロマを止めようとした谷嵜がうっかりロングタイツを引っ張ってしまいお尻を露出。まさかの光景に困惑しマッドスプラッシュを自爆した児玉をパロマのTバックが捕獲し、アラケンに3カウントを許してしまった。児玉は決着後も息絶え絶えのグロッキー状態。新たなIJタッグ王者チームとして突き進もうとする王者組の防衛戦線に、まさかの暗雲が立ちこめる結果となった。

第1試合


 天龍プロジェクトのリングで頭角を現しつつある椎葉と仁木の初シングル。5.20でTORUの持つIJシングルのベルトに挑戦も破れた仁木にとって、再び王座挑戦権を得るためにも負けられない一戦となる。雄叫びとともに入場した椎葉は、仁木のタックルを切り、手首を取る。落ち着いた様子で試合を運んでいく椎葉、仁木はボディスラムを制して逆に投げ返し、低空ドロップキックから連続してカバー。徐々に仁木ペースに持ち込んでいく。

 椎葉も負けじと串刺しエルボーからボディスラム、ダイビングフットスタンプ。仁木は椎葉のキックをかわし、空を蹴らせて延髄からバックドロップ。椎葉は飛びつきDDTからバズソーキックを放ってダブルノックダウン。先に立った椎葉がフットスタンプを放つが仁木が逃れる。ならばと椎葉は丸め込み2連発からウラカンラナ。仁木はカウンターのドロップキックからハリケーンドライバー。フロッグスプラッシュからのエビ固めで粘る椎葉を退けた。
 試合後、リング上で握手を交わした2人はコメントで共闘を宣言。ライバルとして切磋琢磨しながら上を目指していくと語った。

<試合後コメント>
仁木琢郎
「試合後、見てもらったら分かるように、これからは2人でこの天龍プロジェクトのリングを盛り上げていきます。シングルいったっていいし、2人でタッグいったっていいし。もういいでしょ、おじさんたち。俺たち若い人間がこのリングを変えていく、それだけです」

椎葉おうじ
「今後仲良しこよしでやっていくとかじゃなくて、いちライバルとしてお互い高め合うために組んだら面白いんじゃないかと思って、握手させてもらいました。これから仁木選手と僕と、若い力でこの天龍プロジェクトのリングを面白くしていけたらと思います」

第2試合


 天プロ名物の第2試合、タッグでも3WAYでもないシングルマッチ。菊タローとSUSHIは久々の一騎打ちとなる。
 手首をねじられてうめき声をあげる菊タロー。幾度かギブアップを聞かれるが、ノーを貫く。しかし徐々にダメージが蓄積してきたか、場外に逃走。鉄柱に隠れて「飛んでこい」と挑発、さらにはお客さんをタテに「来い!」と挑発を繰り返す。

 場外へ追いかけたSUSHIをヒラリとかわした菊タロー、ロープで急所攻撃に持ち込み試合を自らのペースへ。レフェリーに押されたタイミング(?)でさらに追撃と、度重なる急所攻撃でグロッキー状態となったSUSHI。しかし菊タローの攻撃がすっぽ抜けて形成逆転へ。トラースキックからエビ固めを放つもカウント2。菊タローは蹴り足を掴んでドラゴンスクリュー、シャイニング菊ザード。カウントはSUSHIが返す。ならばSUSHIを抱え込んでブレーンバスターへ持ち込むも、いつものように口上が長すぎてSUSHIが逆転、串刺しラリアットからダイビングヘッドを食らってしまう。瀕死かと思われた菊タローだったが、フィニッシュを狙うSUSHIをすかさず丸め込んで一瞬の3カウント。悔しがるSUSHIをよそに、コーナーから堂々勝利をアピールする菊タローだった。

<試合後コメント>
菊タロー「ズバリでしたね。勝ったと思ったでしょ、SUSHIは。その瞬間を私は逃しませんでした。それが今日の全てじゃないですかね。SUSHIはジュニアの中やと大型やから投げ技も決まらんし、技も重いしでやばかったですけど、そこに活路を。試合前からね、やるなら気を抜いた時と思ってたんでね。なんとか体が動いてよかったですね。(ガッツポーズで)よし。よし! あー、久しぶりにシングルで勝った」

第3試合

 

 IJタッグ21代王者組とアラケン&パロマ組が激突。これまでの第2試合を飛び出してパロマがどう暴れるか。王者揃いの中で幾分緊張した表情のパロマ、アラケンが押しとどめるも聞かず、自ら先攻を買って出る。会場からの手拍子でノリノリのパロマを冷たい目で見る児玉。リストの取り合いからすかさず背後を取るパロマ。児玉はすぐに離れるが、パロマはグラウンドに引きずりこんで恍惚を狙いにいく。丸め込みで返すも意外なものを見る表情の児玉。パロマは気にせず堂々と「お前も来い」と谷嵜を呼び込む。

 足をすくって倒すと、谷嵜の足を狙い早速チャンスを狙いにいくパロマ。反撃する王者組の連携にパロマはボディへのパンチから飛び込んで頭突き。谷嵜は痛みをこらえながら引き込んでパロマを倒し、ミドルからストンピングを返す。さらに児玉から逆片エビと王者組のいたぶりに息も絶え絶えとなるパロマだったが、ブレーンバスターを意地で返すとパンチを返してニールキック。ダブルパロマボンバーで王者組へ自ら反撃する。

 タッチを受けたアラケンと谷嵜の対峙。アラケンのニークラッシャーから4の字の体勢になると、パロマが出番を譲れとアピール。譲ったアラケンが児玉を抑えているすきに、リング中央で恍惚を極めてみせるが、これは児玉がカット。パロマの奮闘にアラケンも火がついたか、児玉へダブルアックスから串刺し攻撃を放つも、谷嵜がカットして地獄の断頭台。アラケンへのフィニッシュを狙う児玉を、パロマがカット。そのパロマを制するべく谷嵜が引っ張った際にタイツがずれ、Tバックが露出。動揺しマッドスプラッシュを自爆に追い込まれた児玉の顔面に、パロマのお尻がさく裂。すかさずアラケンがエビ固めを決め、王者組が敗れるまさかの結末となった。
 パロマのお尻の顔面で受けたダメージはすさまじく、悶絶する児玉はリング用消毒液を自らの顔面に噴射。谷嵜も汚れを祓うかのように消毒液を浴びて退場した。

<試合後コメント>
谷嵜なおき&児玉裕輔
児玉「(アルコールスプレーを手に、コメントブースで倒れる)」
谷嵜「何してくれてんだよ! おい大丈夫か、コダやん。コダやん。大丈夫か。何だよあのケツ。(児玉にアルコールスプレーを吹きかけながら)前回の新木場でベルト取って大喜びして興奮してたのに、今日はなんだ。くそ!ちくしょう、チャンピオンとして恥かかされた。コダやんにも、俺にも借りができた。(虫の息の児玉に)大丈夫かコダやん……ちくしょう、死にかけてんぞ、おいコダやん。おい、早く帰ろう、シャワーしよう。ちくしょうアイツら……救急車! 救急車!」

新井健一郎&レイパロマ
アラケン「(パロマに)どうした。何があった」
パロマ「やりましたね、俺、最初に言ったでしょ、大丈夫だって。俺の大丈夫は大丈夫だから」
アラケン「お前アレだろ、定期的に天龍プロジェクトさんに呼んでもらって、東京で都合のいい女でも見つけたんだろ」
パロマ「そんなことカメラが回ってる前で言うんじゃねぇよ! 分かるだろう気持ちは!」
アラケン「だろうな。いいとこ見せたかったんだろう。まぁ動機はなんでもいいよ。この新井健一郎が23、4年やってるけど、お前の世界観に乗っかってみるのもアリだな。なんたってピッカピカのIJタッグチャンピオンに勝っちまったんだからよ。いく?」
パロマ「いきましょうか! 今日の戦いを見ると、あのベルトはまだあいつらの腰になじんでねぇから。ヌルヌルだ、ヌルヌル!今日脱げ落ちちまったから、俺たちがしっかり、やりますよ! ベルト引っかけますよ!」
アラケン「あとは天龍さんと代表がどう判断するか」
パロマ「忙しくなるぞー! ベルト欲しいからな俺も、そろそろ!」

第4試合


 前回の大阪大会でWAR6人タッグ王者のベルトを防衛した耕平と河野がこの日はコーナーを背に対峙する。耕平への雪辱を果たすべく闘志を燃やす近野、大日本の吉田、河野が青コーナー。6.12のCyberFightさいたま大会後、DDT軍へ再戦を直訴するため自ら頭を丸めたガンプロ・渡瀬は坊主頭でリングへ。前回に続いて渡瀬とタッグを組む拳剛、最後に耕平が入場する。

 先発を買って出た吉田は「来い耕平」とアピールも、拳剛がリングイン。素早くポジションを取り合う両者、フロントネックロックを狙う吉田に拳剛はエビ固め。コーナーに押し込まれた吉田は近野へタッチ。

 呼びかけに応えた耕平がリングへ、ロープ際に押し込まれるも落ち着いた様子で見返す。マウントポジションから腕を取った近野だったが、耕平は落ち着きはらった様子で足を取り返し、自軍コーナーへ引き込んで渡瀬と股割きへ。渡瀬は河野に逆水平、河野は背後を取るとスリーパー。エスケープで逃れた渡瀬、拳剛がリングイン。河野とエルボーの打ち合い。続いて吉田が拳剛を投げようと組み合うが、逆に投げ返されてしまう。

 耕平がリングイン、吉田のエルボー連打を一撃で返すと渡瀬へタッチ。背中にミサイルキック、河野、近野へエルボーを放ってから吉田をダウンさせる。吉田がいたぶられる展開から拳剛がロープに走ったところへドロップキック。反撃に転じた河野が拳剛をニー、すかさず飛び込んだ渡瀬に一撃、コーナーの耕平にも一撃と乱れ打ち。リング中央で拳剛へ4の字、渡瀬がセグウェイで強引にカットすると河野へジャンピングニー。河野もニーで返すと近野へ。渡瀬が捕まりエルボー、ニー、ミドルと波状攻撃を食らってしまう。

 近野と渡瀬、近野がミドルからエルボー。互いに引かないエルボー、ミドルをかいくぐった渡瀬がジャーマン、エルボー。耕平と吉田、吉田が意地で耕平をショルダータックルで倒す。河野のアシストを受けて耕平からのピンを狙う吉田、スパインバスター。耕平はニーリフトからロー、カウントを返されるとファルコンアロー。粘る吉田へ逆片エビ固め。最後はラクダ固め(キャメルクラッチ)でギブアップを奪った。
 握手の手を差し伸べた耕平の手を払いのけ、四方の観客に一礼。観客からはその健闘に拍手が送られた。

<試合後コメント>
佐藤耕平&拳剛&渡瀬瑞基
耕平「いやー、面白かった。今日のパートナーは俺が普段身をもって強さを感じてるから。横にいると安心して試合してられる。ありがとうございました」
拳剛「俺、若手の頃、耕平さんから『ハナクソ』って呼ばれてたんですよ。その頃を思うと今のお言葉は本当に感慨深い。ありがとうございました。でもやっぱりこれぞ新生・天龍プロジェクトって感じで、めちゃめちゃ面白かったですね。おい河野コノヤロー、今日が始まりやぞ俺たちの。めちゃくちゃ楽しかったから、またやってください。お願いします!」
耕平「(坊主頭に)渡瀬、どうした、サッパリして」
渡瀬「これは気合いの現れでもあるんですよ。今日は耕平さん味方だったけど、俺は耕平さんのベルトを狙ってるし。いつでもどこでも耕平さん、やってやるし。河野さん、チャンピオンっすよね。全然今日やり足りなかったからまたジャンピングニー、ブチ込んでやりますよ」
耕平「いいね、ジャンピングニーで倒してみて」
渡瀬「ぶっ倒します、次」
耕平「おもしろかった。ありがとう!」
拳剛、渡瀬「ありがとうございました!」

吉田「ありがとうございました。いやー、くそ。何も言葉が出てこない。それくらい、ただ楽しかった。それにつきます」
近野「僕がヤキモチやくくらいバチバチやってたんで、悔しさもありつつ。でもナイスファイト!」
河野「次は、勝とう」
吉田「次は絶対勝つぞ。また組んでください。また組んでください!」
河野「こうやって面白い選手がいるから。チャンピオンとしては、吉田選手も剣心選手も、パートナー連れてきたらいつても防衛戦やれるから。連れてきて。タイトルマッチやろう。ありがとう」
近野・吉田「ありがとうございました!」

第5試合


 4月大会ではタッグで対峙した矢野と鈴木の初シングルマッチが実現。タッグで肌を合わせた時には矢野に対して「日本にもああいう選手がいるんだなと思いました。いい意味で」と語っていた鈴木を“天プロの守護神”矢野がどう迎え撃つか。
 スタスタと足早にリングインした鈴木に対し、じらすようにゆっくりとリングインした矢野、コスチュームにはユニオンジャック。ゴングが鳴ると警戒したような動きから素早く鈴木の背後をとる。足を取られるとすぐに離れ、手四つで力比べに。競り勝って倒す鈴木、矢野は低いタックルから足を畳み、鈴木に苦悶の表情をさせる。離れて押しつぶそうとする鈴木だったが、矢野は肩を浮かせてかわすと、両腕で顔を挟みダメージを与えていく。切り返そうとする鈴木がフルネルソン、矢野は足から抜け、試合ペースを握らせない。

 5分経過、引き倒して手を踏む矢野に対し鈴木は素早く踏み込み、エルボーで崩しダウンさせる。いったん場外へ離れ、再度鈴木の左手に狙いを定め、ジワジワと粘り強く攻め込む矢野。スタンディングアームロックで絡みつき、観客に鈴木の苦しむ様を見せつける。前に投げて逃れようとする鈴木を許さない矢野。互いの出方を伺いながらロープ際で両者離れる。
 リング中央、反撃の鈴木が矢野の足をヒザ折り固め。続いてヘッドシザースで矢野の首をガッチリと捉える。ブリッジで切り返し、アッパーカットエルボー。その場跳びドロップキックからスリーパーでガッチリ捉える。15分経過、投げられてもホールドを解かない矢野。鈴木は背後のコーナーに押しつけて強引に技を解くとバックブリーカーからダブルアームスープレックス。一瞬の勝機を逃さなかった鈴木が勝利を奪った。

 鈴木は大の字になった矢野に手を差し伸べ、助け起こすと握手。一礼する矢野に対し、首を振って勝った鈴木も頭を下げ、握手を交わした。

<試合後コメント>
鈴木「(矢野との初シングル)ちょっときつかったかな。いつも通り、僕は僕のペース、矢野さんは矢野さんのペースで。ばれてるというのは変だけど、僕がこういうふうにやるというのはもう。先手を取ってるフリで、僕がカウンターを取ってくるというのは絶対わかってて、その先を取るというか。矢野さんてなんか、イメージが掴めないというか、対戦したのがこの間がはじめてで、タッグを組んだのももう10年くらい前なんで、実体験がないんですよ。映像とかで見る限り、時代時代でファイトスタイルが変わっていて、どれが本当の矢野啓太か分からなかったんで、ノープランでしたね。体重差もありましたから僕のほうが力押しができるというか。矢野さんが疲れているのも分かったから、体力勝負になると体重が重たい僕のほうが有利な部分はあるから、そこで勝負をすると。
面白いとか面白くないとか、ないですよ。厳しいもんですからね。こめかみも絞められましたし。こめかみ……。毎試合しっかり勝負してるから、勝負させられるようなマッチメイクだから、負けるのもそうだし恥ずかしくない、プロとしてどういう試合をするかと。リング上は言い訳ないので、今こうして喋ってることですら、リングを降りた段階でもう違うんですよね。僕はリング上で矢野さんに『ありがとうございました』と言いました。次はやっぱりレイパロマさん、SUSHIさん。このへんの天龍プロジェクトのアイコンってある人が言ってたんですよね。避けては通れないでしょうね。危険な匂いしかしないし……その2人とやっぱ『プロレスしようぜ』って言いたいですね。なんかおかしいですか? はい。プロレスしようぜって。プロレス、しましょう」

矢野「完敗です、完敗。でも、本当の意味でプロレスリングを教わったって感じですね。リング上で、実戦で。まぁ、悔しいですね。前回大阪で勝ちきれなかったんでね、今日はもう早く勝ちに行って。やっぱり奥が深いです。This is 天龍プロジェクト、ザッツ・プロフェッショナルレスリング。……以上、ノーコメント。ありがとうございました」

第6試合


 IJ王者・TORU自らの指名により実現したタイトルマッチ。佐藤光留は保持する全日本ジュニアのベルトは持たず、挑戦者として先に入場する。TORUの腰にはベルト。ゴングを前に握手の手を差し伸べた光留、TORUは見返すだけで握り返さずに試合スタート。

 ファイティングポーズで距離を取る光留、TORUも警戒してすぐには組み合わず。ローを先に放ったのは挑戦者、続いての蹴り足をTORUが取ってグラウンドへ。探り合いから足を取り、うめき声をあげた王者がエスケープ。再び対峙、蹴り足を取って接近も光留が腕を取り返す。すかさずTORUも取り返し、背後にねじり上げた後フェースロック。光留がヒジを放つとロープに走りショルダーアタック。
 離れ際の隙を突いて、すかさず光留が腕十字。攻めた左腕にエルボー連打、ミドルキック。場外へ逃れようとするTORUの腕をロープに絡めて蹴りで追撃。リングに戻ってからも追撃を加え、休む隙を与えない。ならばとTORUは左足を取ってコーナーでドラゴンスクリュー。ダメージに悶絶する光留、先ほどのお返しとばかりに今度はロープに絡めて逆足を攻めるTORU。エスケープを許さないTORUと光留の間にレフェリーが割って入る。

 徹底した左ヒザ攻撃から逃れられない光留。痛みでコーナーに走れない。スピニングトーホールドから4の字、勝利を確信したかのように腕を上げるTORU。セコンドがリングを叩き光留を鼓舞する。ロープに手を伸ばすもTORUは技を解かず、両者もんどりうって場外へ。ダメージで立ち上がれない光留に対し、TORUは左腕をかばいながらも先にリングイン、光留は場外カウント9でリングへ。

 TORUが光留のヒザに狙いを定めれば、光留もまたTORUの左腕を徹底的に攻めていく展開。光留がバックドロップから痛めた足でミドル2連発、延髄から水車落とし、腕十字。エスケープからTORUがガットショット、4の字固め。光留は平手打ち連打でなんとか技を解かせる。

 20分経過、エルボー合戦から光留が平手、TORUも返す。ふらつきながらの張り合いから光留が延髄、TORUが逆水平。光留のフロントネックロックを王者が担ぎ上げてブレーンバスター。光留の足に非情のドラゴンスクリュー2連発。3発目から足関節を狙ったTORUを光留が蹴り上げて頭突き。TORUが強烈なドロップキック、Dガイスト。光留は執念で立ち上がり腕十字からアンクル、バックドロップと猛攻。デスバレーを返されると腕十字。クラッチが切れるとついに王者がギブアップ。光留が勝利を決めた。

 勝利した光留に認定証が授与され「新チャンピオンは佐藤光留」のコール。ベルトを巻いた光留が試合前と同じく握手の手を差し伸べる。TORUがその手を押しとどめ、深く額をつけて一礼すると場内からは大きな拍手が送られた。

 試合後、リングインした天龍源一郎は「皆さん、今日のこの2人が、天龍プロジェクトが本当に見せたいプロレスです。拍手をお願いします。これからも天龍プロジェクトをよろしくお願いいたします」とマイク。
「コロナ禍でも会場に足を運んでくださるお客様に、レスラーが一番感銘を受けていると思います。これからもプロレスをあきらめないで、ずっと選手を応援してあげてください。よろしくお願いいたします。今日は本当にどうもありがとうございました」と続け「7月から声援OKになりました。今日のような試合で声援を送ってくださるように、選手たちも頑張りますので忘れないでください」と次回大会より声を出しての声援がOKとなると発表。最後はいつものように「エイエイオー」で大会をしめた。

<大会総括>

TORU「いかがでしたか。面白かったですか。面白くなかったですか。見ている人が決めてくれたらいいんですけど、僕は、僕しか歩めないチャンピオンロードを歩んできたと自負してますし、後輩2人タイトルマッチかかって、渡瀬もこんなん言うたらダサいけど、俺が覚醒させたようなもんでしょ。自分が自分のチャンピオンロードに自信もって歩んでたはずなのに、どこか不安を感じてしまって、ミスター天龍プロジェクト佐藤光留を指名したのも事実。まぁでもスッキリ、言い方はあってるのか分からないですけど、スッキリ、ベルトを落としましたね。落とすつもりはなかったですけど、後悔もないし悔いもない。勝ちたかったですけどね。でももう終わったこと、終わったことなんで、チャンピオンTORUは今日で終わったかもしれんけど、まだまだチャンピオン狙ってますし。挑戦者の立場でIJはもちろん、IJタッグ、6人タッグも強気で狙っていきますよ。何も背負うものなくなったんでね。また次から、ガンガンいきますよ」

天龍「今の俺の気持ちはね、松下電器の創業時の気持ちだよ。あれが将来的に大きな“National”になるなんて、誰も思っていなかったと思う。そういう心意気だよ。今日の試合は感動的だったね。何回か前に『天龍プロジェクト、見たか!』っていう言葉を吐いたけど、今日はまた違った意味で、よその団体から出張ってきてくれるのに、よくあれだけ素晴らしい戦いをしてくれるよね。本当にありがたいです。チャンピオンも挑戦者もどちらも素晴らしかった。あれをうまいことマッチメイクするうちの代表というか、執行部もまたすごいけどね。プロレス界、埋もれた逸材がまだいっぱいいるということですよ。多分そういう逸材は、会場に来ている人の中で、密かに、この子たちはこんなんじゃないんだよってほくそ笑んでるファンがいっぱいいるだろうから、そういう人たちが満足できるマッチメイクを提供していきたいね。
 チャンピオンが手こずるような相手を、埋もれた逸材から当てていって、思いのほかに『意外とすごいね』ってできたら、天プロもしめたものですよ。(面白かった試合は)やっぱりセミとメイン。言葉は悪いけど、街角のあんちゃんだったTORUがチャンピオンになって、佐藤耕平とかを破ってチャンピオンになって、あのしたたかな鈴木みのるの下にいた佐藤光留が挑戦者になって、どんな試合になるのかなって。全然合わないと思ったら意外に熱戦になって、脱帽ですよ。逆に言えば、やっぱりみんなプロだよね。他の団体の、その光る奴にスポットライトをあびせていない、あてていない奴らに、俺はがっかりするよね。
(セミの鈴木VS矢野)あれ面白かったね。随所にビル・ロビンソンのムーブを出す、鈴木秀樹はシブいね。見てて『あ、あれロビンソンの技だよ』って、ほくそ笑んでたのは俺だけかもしれないけど。鈴木も憎いね。あれはクール・ビューティっちゅうやつですよ。フィニッシュのダブルアーム、あんなにきれいに決まったのを何十年ぶりに見たよ。藤波さんの息子もダブルアームやるけど、息子より、鈴木秀樹のほうがうまいかな」

佐藤光留「(天龍も絶賛していたが)いろいろ考えさせられますね。目指してやってきたんですよ、ベルトを。これが天龍プロジェクトだなんて、天龍さんに言って頂けたら、もちろん嬉しい。だけど、今、9時34分。試合終わって15分後、その言葉を聞いたらもう次の天龍プロジェクトのタイトル、歴史に向けてスタートなんだって、だからこの瞬間だけ喜んで、また。竜は、昇り竜ですから。下り竜じゃないし。じっともしていない、昇り竜ですから、上っていきます。天龍さんの前で約束します。天龍プロジェクトを見ている人の前で約束しますよ」

佐藤光留「(今が松下電器だとしたら……)令和4年に松下だパナソニックだって……天龍さんが言うならそうですけど。AppleやWindowsじゃないんですかね。でもほんと、何百年先も生き残ってるトヨタ目指して。俺、三菱の車乗ってますけど、登り竜ですから。竜のかっこだけつけて、竜頭蛇尾でいられないですから。登り続けたから、今があるわけで。登り続けますよ。いつか宇宙に行ったら、そのときはパナソニックですね。(挑戦者としてTORU選手とやりあった)これに関しては全員ですよ。レイパロマだってそうですよ。去年、龍魂杯でTORU選手に負けて、一回戦あたったパロマも、あのレイパロマじゃないんだって、その磁場が天龍プロジェクトにはあるんだってことです。7月から声だしOKになって、いまは東京と大阪でやってますけど、お客さんも増えて、天プロどんなもんじゃいっていう人をもっと増やして。そのためには吉田も仁木もタッグのベルトとられたあの2人も、矢野啓太も、全員ですよ。おいてかれないように必死ですから。その先頭ですけど」

天龍「(新しい王者は頼もしい)さすが鈴木みのるの教えを受けていただけのことはあるよ。上に立っている人がポリシーを持って引っ張っていってくれなきゃ困る。それは望むところですよ」

佐藤光留「僕がなんで天龍プロジェクトでこういう試合ができるかって、天龍さんが現役のころ見てて、天龍さんが言葉だけじゃなく自分の体で証明してきたの、間近で見ているからですよ。受けてからですよ、ラリアット。天龍さんは覚えてなかったけど。僕、全日本の大会で、ボコボコに天龍さんを蹴って怒られたんですよ。いいから謝ってこいって言われて、天龍さん、階段を手すり使って降りながら『すいませんでした!』って僕が言ったら『俺がもう10年若かったら、お前のこと殺してるよ』って。負けてたまるかって未だに思っていますから。天龍源一郎はリングに上がらないかもしれないけど、あの魂を持った人間はここにいっぱいいますから。“僕は鈴木みのるだけじゃない”っていうのはハッキリ言っておきます。信じてください」

天龍「……これが青春だよ」

佐藤光留「ありがとうございました!」

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