【インタビュー】前売り完売の人気コンテンツを生み出し続ける元博報堂レスラー三富兜翔が、学生時代の縁を失った“しくじり”から学んだ成功する秘訣とは【後半】

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア

 新進気鋭のプロレス団体『P.P.P. TOKYO(以下PPP)』は、旗揚げからわずか2年で3万円のVIPチケットまでもが前売り完売するほどの人気興行となっている。
 『令和のバブル』をキャッチコピーにシャンパンタワーなど派手な演出や、Youtuber&セクシー女優の所属選手、音楽を流しながらのパリピ感溢れる試合などでプロレスを普段見ない女性層を大きく取り込んだ形だ。
 前半では三富兜翔総帥のPPPへの思いと女性層を取り込んだその手法を聞いたが、後半ではベースとなるマインドが生まれることになった実体験と失敗談を赤裸々に語ってもらった。

■経営論・クリエイター論は高木三四郎氏に学びました

――プロレスをやられる方ってリングの上でしか試合ができない方が多いですが、やっぱりそこはデビューされた団体のマインドが強いですか?
「その発想というかマインドっていうのは、やっぱり僕の中にイズムはありますよね。たぶん高木三四郎イズムは流れてて、あの人すごいなって思うのは100g/1万円の肉を料理するんではなくて、100g/100円のめちゃくちゃ安い肉を、どういう風にして調理すれば高級ステーキに見せられるかっていうところの勝負なんですよ。アイデア勝負じゃないですか?そこのマインドはめちゃくちゃ大事にしてます。だから今回もリングよりも輝けるステージだと思うんで、今回SARAさんでマジックミラー号ルームという世界に一つしかない空間ができあがるわけなんですが、他にもある様々な部屋を駆使してリングよりも輝けるステージを作り出して、どのように調理してお届けできるか楽しみにしててください」

――高木三四郎から学んで一番身になっていることはなんですか
「クリエイターとしての部分でいうと、何も戦力のない状態でいかにすごいものを作り出すか。材料がなくても最終的に如何に美味しい料理にするのかという部分はめちゃくちゃ学びましたね。もうひとつは、時効というか今だから言えますけど、僕は2017~19年にWRESTLE-1の経営の中にも入らせていただいてたんです。DDTさんがサイバーエージェントに買収される前まではWRESTLE-1の経営会議とかも一緒に入っていたので、高木さんってすごいコスト管理にシビアだったのでそういう数字の部分で学ばせてもらいましたね。やっぱりプロレス界ってどんぶり勘定すぎるので、WRESTLE-1の収支表とか決算書見てこれってヤバイだろって思ってましたし、高木さんがすごいのはそれを見て極力赤字を潰していく。どんなビジネスでも赤字出し続けたら潰れるじゃないですか?当たり前のことじゃないですか?でもやっぱプロレス界ってへんな文化があって、お金のある人から引っ張り出せばいいとか、お金のあるところにすり寄っていこうみたいな、寄生虫体質というかごっちゃん体質がめちゃくちゃあるんですよ」

――メジャーインディー問わずそういうマインドはありますね
「それがそもそも企業として存続していくマインドとしてはおかしいっていうのは、普通に考えて思ってたんですよ。だから、それをすごい経営会議の中で毎週学ばせていただいて。数字の見方という点ではとても高木さんに学ばせていただきました。それでいうとP.P.P.は、旗揚げしてからイベントベースで一回も赤字出したことは無いんですよ。でもそれって当然だと思うんですよね。それが、例えば大資本がついてて、興行を5回打った中の1回赤字で、でもそれは何か一回チャレンジすることがあってわざと赤字を出して投資として後で回収していくというスタンスはもちろん、ビジネスの考え方としてあると思うんです。でもうちなんかほんとに弱小企業という中で、一個一個ホントに大事で。一個一個のイベントをしっかり黒字を出して、信用と信頼を積み重ねてくってことしか大きくなる術はない気がするんです。だから僕はWRESTLE-1の経営会議で、地方興行とかなるべく毎回必ずどうすれば黒字が出るか考えてて。そうしたらやっぱり営業するしかないじゃないですか。地元の方と仲良くなってコツコツチケット売って、地方に行ってコンコンってドアノックしてポスター貼ってくださいってやった経験はめちゃくちゃ今活きてます。僕のこと角が立ってるように見えてる人がいるかもしれませんけど、そんな経験が無かったらこんなイベントできないです」

――P.P.P.のある意味前身とも言える歌舞伎町プロレスで学んだ部分はどこでしょうか?
「経営論・クリエイター論は高木さんに学びましたけど、イベントの作り方っていうのは歌舞伎町プロレスの緋咲レイラさんから学びました。スタッフの配置、情報連絡の共有、演者さんへのケア、マスコミさんへの対応とか。P.P.P.は経理業務とチケット以外は全部僕がやってるんです。渉外・交渉から企画、クリエイティブ、マスコミさんへのリリース・各種連絡、企業様への営業とか。広報的なことも全部やってるんですよ一人で。でもそれはレイラさんから学んだことが多いです。公式Twitterとか発表事とかは朝のうちに全部下書きを作っておいて、時間に合わせてTweetしてます」

――そこまで一人でやるのは大変だと思うんですがどんな意図があるんですか?
「一つは僕の脳みそにあることをクリーンに発信したいからっていうのはありますね。経理・チケットは全信頼できるスタッフが一人いるんですよ。その他は人にお願いしたこともあったんですけど、やはり100言っても60しか伝わってなかったり。あとは人件費のカットという理由が大きいです。黒字を最大化していくという意味で、削れる部分は削れるんですよ。そこに割ける人件費というのは避けることができるものなんですよね。反面、適正な人材を配置することも考えていて、映像班は絶賛募集してますし、レスリングのコーチとしては土肥さん(土肥こうじ)にお願いしてますし、僕はコーチとしての適正はないんですが広報としての適正はあって引き続き僕がやってます。これらは最大限の費用対効果を考えてのことですね」

■人間としてその人が好きとか嫌いとかどうでもいいんですよ。仕事は適材適所って学ぶんです

――昔に比べて仲間が増えて助けられていることもあると思います
「めちゃくちゃあります。めちゃくちゃあります!もうほんとに、僕ね、人生30年ちょっと生きてきて、今マジで仲間の大切さ、ありがたさを感じてて。立ち上げた当初は一人プロモーションだったんですよ。今はスタッフもいて、所属選手の八須拳太郎もいて、大谷譲二もいて、ちゃんよたもいて、土肥さんにコーチになってもらって、マジでメンバー増えてスゴイ助けられてて。何がって具体的なことはめちゃくちゃありすぎるんでどれがって言いきれないですけど、だからこそよりこの数年、P.P.P.というワードのPについての想いが強くなったんです。今年1年のテーマは『with'P'』なんですよ。それはどういう意味かというと、やっぱ『Party(パーティ)』なんですよ。宴会って意味の他に仲間って意味もあるんですね。仲間と共に。次に『Passion(パッション)』、情熱ですね。仲間と共に情熱を持ってって。最後に『Philosohy(フィロソフィー)』、哲学。哲学を追求していく。一人じゃできないってこともかなりあるんで、いろんな人に仕事をふるようになるっていうのも僕の中の学びですね。一人で抱え込んじゃうタイプだったんですけど、ちゃんよたも八須もみんな精力的にコレやります、アレやりますってやってくれるから振れるんですよ。例えばうちの八須ってめちゃくちゃバカなんですけど、めちゃくちゃ真面目なんですよ。練習に関しては一回も休んだことないし練習のとりまとめは彼がやってくれるんです。土肥さんがコーチをやって彼がとりまとめをしてくれるという人材育成のべースができたんですよ。だから僕がノータッチでもそこは回っている。うちにまた練習生が二人入ってくれたんですよ。そういう子たちを育てられる環境が出来たんですよね。プロモーションに関してはちゃんよたっていうめちゃくちゃ数字持ってる子がいるわけで。彼女も精力的にやっていこうってスタンスを見せてくれるんで。団体の長として人に仕事を振るってことが出来てますね」

――スタッフの子や大谷譲二など学生プロレス時代の人脈というのも活きてるのではと思えます
「今やッてることも学生プロレスサミットやってる時とマインドは一緒ですよ。大人になってお金のこと、人とのコミュニケーションの大事さとかも分かったし。当時は自分の我が出てましたけど、今はもう自分の信念を共通するということだなって心持ちが変わりましたよね。そりゃあもう大人になっていろいろ揉まれて、ただやってる仕事のフローと言うか原点はそこにありますから」

――今学生で団体を持ちたいとか起業したいという若者に、やっといた方がいいよってアドバイスはありますか?
「そういう子たちはより多くの人を巻き込むイベントをやった方がいいですね。やってみたら分かりますけど、よほどの知名度が無いと一人でイベントなんて出来ませんから。となるとチームが必要じゃないですか。仲間が必要じゃないですか。そこで、仲間と共に協業することを学ぶんで。協業してる時にもう一個学ぶのは、人間としてその人が好きとか嫌いとかどうでもいいんですよ、仕事は適材適所って学ぶんですよ。で、人間には必ず適正っていうのがあって、リーダーが向いてる人もいれば、広報が向いてる人もいれば、営業が向いてる人もいれば、逆に裏方に回ってパソコンをひたすらいじって映像を作るクリエイターもいれば、それぞれの適正って見えてくるんですよ。じゃあそれぞれの適性があればいいかっていうとそうじゃなくて、それを取りまとめるコミュニケーターが必要になるんですよ。そういう存在っていうのを気づくようになって、それがすべてかみ合って、同じベクトル向いた時に必然的に集客ってものができるっていう、この感動体験っていうのを体験して欲しいですよね」

――実際に学生プロレスサミット後楽園ホール大会を成功させた潮吹豪こと三富総帥ですが、『我が強かった』という当時の大きな失敗や反省点は振り返ってみていかがでしょう?
「我が強かったこと自体がまず反省点なんですけど、我が強いことによって他の人とのコミュニケーションに溝が出来たんですよ。そこを埋められなかったっていうのはめちゃくちゃ反省事項ですよね」

――その結果何が起きたんですか?
「今誰とも連絡とってないですよ、当時のメンバー(笑)今CWP(社会人プロレス団体)やってる人たちとは関わりが無いです(苦笑)先輩はまだ話できますけど、僕が指揮を執った後輩は全員僕のことダメでしょうね」

――今となってはちゃんと自覚があるんですね
「あります。その反省があって、今は仲間たちとの絆は深いと勝手に思ってますよ。仲間というのはリングの中だけじゃなくてリングの外にも多くて。さっきも言ったRINKOさんとか伊織さん、P.P.P.ガールの子たち。イケマッチョの義田大峰さんは僕盟友だと思ってて、彼も自分で事業立ち上げて一人でやっててすごく、同じ企業家マインドっていうのがあって親和性もあるし。あとは俺のことを応援してくださる企業の方々って皆さんやっぱり、一緒に感動を作り出してこうっていうマインドが似通ってるんですね。慶応の先輩方っていうのもすごく応援してくださってて。方向性が同じ人たちと同じ方をむいて共に歩めてます。「with'P'」で」

――プロデュースと言えば、六本木にあった常設リングの飲食店でプロレスを行ってましたね
「コロナ禍で週二回試合を提供してギャラもちゃんと支払って、あの時はプロレス界に社会貢献したと思うんです。あの案件もほんとにご縁で、飲食を多角的に経営されている方とお会いして、インバウンド需要に対していろんなコンセプトのクラブを作りたいと。毎日戦いが見れるというコンセプトのクラブを六本木に作るということで、連日稼働させるならプロレスはどうでしょうかとプレゼンさせていただいて。P.P.P.も見ていただいて納得してもらって、合同会社P.P.P.でプロデュースを請け負う形になりました。OPEN直後にコロナが直撃しちゃいましたけど、コロナがなかったらインバウンド需要をとれたと思うんですよね。何も考えずに店に入ったらDJが音楽かけててプロレスやってるっていう。歌舞伎町のギラギラガールズみたいな海外の人が来て熱狂するようなコンテンツを作りたかったんですよね。お店の方は無くなってしまいましたけど、新進気鋭のエンターテイメントとして、海外の方が熱狂するような形でまた時が来たらやりたいと思ってます」

――そういう想いが2024年のTDCホールに繋がっていくと
「もちろんです!P.P.P.TOKYOは引き続き公演を開催していきますけど、副産物的にいろんな事業を展開して、複次的なコンテンツP.P.P.TOKYOに集約しながら、ロードtoTDCとして向かっていきたいなと思いますね」

――今の時点で成功させる自信はありますか?
「自信だけはあります!やってみてね、大コケするかもしれませんけど、また地方プロレスの時のように一文無しになるとか(笑)でも一文無しになっても胸を張れるぐらい、充足感はあります。それはやっぱり仲間たちの存在が自分を強くしてくれてますね。2024年、2年後4,000人、あの会場に僕は入れます!入れるしかないかなと思ってます。夢を見られなくなってる時代だからこそ、僕らが見せなきゃいけないなと思ってます。それは僕がプロレスというジャンルに夢を見せられたからだと思ってます」

――ありがとうございます。最後にこれを読んでる令和を生き抜く若手経営者やこれから自営を考えている人たちにメッセージを
「それぞれ目指す業界は違うと思うんですけども、どこの業界でも入ってみると、訳の分からない業界内ルールとか見られ方に苦しめられることが往々にしてあります。例えば『それは〇〇さんが良く思わないから』とか。でもよく考えたらその〇〇さんに良く言われた・思われたことでこの業界良くなったの?なってるの?って思います。だったら自分の信念を貫いた方がいいと思います。その信念を貫くにはその業界・ジャンルへの愛とリスペクトを持つこと。その愛とリスペクトを持ってコツコツ積み上げること。ぼくらの業界でいえば一個一個のイベントを成功させること。積み上げるには一生懸命取り組んで信用と信頼を得ること。信用と信頼の証が仲間です。老害に負けず仲間たちと共に情熱を持って己の哲学を体現して下さい!」

『P.P.P. TOKYO ハウスショー~狂乱麗舞。いざ、萌ゆる心と共に。 ~』
日程:2022年5月30日(月)
開始:19:00
会場:東京・新木場1stRING

<決定対戦カード>
▼~マジックミラー号マスク争奪戦~
マジックミラー号マスク
vs
植木嵩行

▼ちゃんよた軍vs夏すみれ推薦軍
ちゃんよた/真琴/バンビ
vs
雪妃真矢/高瀬みゆき/松本都

▼Special One~with “P”arty~プレミアムタッグマッチ
三富兜翔/土肥こうじ
vs
大谷譲二/羆嵐

  • はてなブックマークに追加
  • LINEでシェア

関連記事

サイト内検索

日別

2024年4月
« 3月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

月別

ページ上部へ戻る