コロナを乗り越えパンクラスフェザー級王座を争う王者・ISAOと挑戦者・中島太一が調印式を実施!「RIZINだけじゃないぞ、パンクラスのフェザー級は強いぞというところを見せたい」
5月26日午後、都内新宿区のサンエービル会議室にて、パンクラス・フェザー級タイトルマッチの調印式が行われた。新型コロナウイルスの影響から、テーブルにアクリル板の仕切り板が置かれた。
調印式には王者・ISAO(NEVER QUIT)と挑戦者・中島太一(Lotus世田谷)が揃って出席。廣瀬隆司コミッショナーの立会いのもと、出場誓約書にサインした。
ISAOは黒、中島は濃紺のスーツで出席。リラックスしたおだやかな雰囲気ながら、現在の心境やタイトルマッチに懸ける意気込みを熱く語った。
――新型コロナウイルスの影響で、パンクラスはこれが今年初の大会となります。DEEPや修斗が興行を行なってきた中、パンクラスはなかなか開催されませんでした。その間、どのような心境だったでしょうか。
中島「大会があると聞いていたので、それを望みに頑張っていました。もし5月にもやれなくて、6月、7月になってしまっていたら、ほかのところでやれるチャンスがあれば、ちょっと考えたかも知れません。でも、タイトルマッチは逃せない。そこのところで葛藤していました」
ISAO「なかなか開催されませんでしたが、そこまで深くは考えずにいました。さずがに夏までにはあるだろうと信じて練習に打ち込んできました。決まってよかったです」
――では、この試合に懸ける意気込みをお聞かせください。
中島「タイトルマッチなんですけど、タイトルマッチだから大事とか特別とかではなくて、全ての試合、1つ1つの試合が大事だと思っています。なので、今回も、試合に臨む気持ちは変わりません。堀江(圭功)戦(2020年9月)が終わってから、ずっとISAO選手との試合を考えて対策して、やることは全てやってきました。戦略もあるので、今回の試合が本当に楽しみです。ISAO選手は2012年(4月1日)にチャンピオンになってるんですけど、僕はその年にパンクラスデビューしました(同年4月28日)。その当時は2階級違ったので、対戦することはないと思っていました。でも、時間がたって、こうしてフェザー級で闘えることになったのは感慨深いです。ISAO選手はずっとチャンピオンで、僕の家族も「ISAO選手はすごく強い」と言っていて、僕の中では“パンクラス=ISAO”というイメージでした。その選手とタイトルマッチで闘えるなんて嬉しくて、すごくワクワクしています」
ISAO「パンクラスは今年初めての興行で、僕自身久しぶりの試合です。やってきたことをやり遂げて、しっかり防衛するのでよろしくお願いします」
――お2人とも落ち着いていて、ナチュラルな感じですね。
中島「僕は減量があまりないので、体調がいいです。それと、タイトルマッチですけど、だからといって緊張しているわけではなく、いつも通りです。だからナチュラルに見えるのかも知れません」
ISAO「もう試合も長くやってきているので(2009年デビュー)、あまり気負っていなくて、とてもリラックスしています。早く試合をしたい気持ちですね」
――前日計量ではなく試合の4日前という時期に顔を合わせてみて、どんな感じでしょうか。
中島「会場で見ているので、うわー! とか思わないです。これまでよく見ているので」
ISAO「中島選手もずっとパンクラスで闘って来ていますし、同じ興行にも出たことがあるので、今こうやって会ってみて特別にどう思うか、というのはないです。ただ闘えるのが感慨深いです」
――パンクラス参戦歴の長いお2人ですが、これまでのキャリアの中で、階級は違っても、お互いを意識したことはありましたか?
中島「僕の中で、ISAO選手はずっとチャンピオンで、すごく強い選手っていうのがありました。でも、階級が違うのでやることはないと思っていました。僕がACB(ロシアの格闘技団体)からパンクラスに帰ってきたとき、『フェザー級でやりたい選手は誰ですか』と聞かれてISAO選手と答えました。同じ階級になった時から、やってみたいという気持ちがありました」
ISAO「最初の頃は階級が違って、中島選手は1つ下のバンタムで闘っていたので、そんなに考えていませんでした。でも、僕がフェザー級に落として、中島選手はフェザー級に上げてきて、やる機会があるかもしれないと、少なからず思っていました」
――そんな中、お互いにどのような印象を持っていますか?また、警戒するポイントは?
中島「ISAO選手はトータルファイターなので、全て気をつけないといけないです。特にここに気をつけるべきポイントというのはいくつかありますけど、今は言いたくないです。でも、弱みも強みも理解しています」
ISAO「中島選手も全部できる選手ですし、5分5Rというのもありますし、スクランブルとか小さなこと、わずかなことにも注意していかないといけないと思っています」
――ISAO選手は、KRAZY BEEへの出稽古もされていますね。
ISAO「毎回、試行錯誤して、いろいろ考えて取り入れて、常に自分がレベルアップするためにどうしたらいいか、いろいろな人にアドバイスをいただいています。結果、いろいろなところが伸びていると実感しているので、それをしっかり出したいです。試合期間は空きましたが、その間、しっかりレベルアップできるように取り組んできたので、そこをしっかり出したいです」
――中島選手は、今日は黄色のネクタイにソックス。赤のイメージがありましたが、珍しいですね。
中島「黄色ってオシャレじゃないですか? チャンピオンのカラーが赤ですし、スーツに赤ってハデ過ぎかなと思って。黄色はオシャレですし、好きな色です」
――パンクラスのベルトに対する思いをお聞かせください。
中島「『デビューしてから無敗で王者になる』と言っておきながら、いっぱい負けて、自分の考えが甘かったと思い知りました。キャリア10年目でやっとタイトルマッチに挑戦します。パンクラスのフェザー級で強かった人たちがONEなどに行って選手層が薄くなって、やっとたどりつけたチャンスです。ここを逃したら次はないと思って闘います」
――昔は、試合前に遺書を書くというお話もありましたね。
中島「思い出すと恥ずかしいです!(笑)。結婚して子どもも生まれたので、もう遺書は書きません」
――ISAO選手、久しぶりの興行でのタイトルマッチ。どのような試合にしたいですか。
ISAO「今年初めての興行ですし、タイトルマッチなので、ド派手にかましたい、というところもありますけど、着実に勝って防衛したいです」
――フェザー級の選手がONEに流出したり、ISAO選手が2016年9月のVTJで勝っている斎藤裕選手がRIZINフェザー級王者になったりと、フェザー級が注目されています。RIZINでは、秋にフェザー級のワールドGPが開催される予定です。
中島「RIZINだけじゃないぞ、パンクラスのフェザー級は強いぞというところを見せたいですね。ハイレベルな技術の攻防も見せたい。RIZINに出たいとか、今は考えていないですけど、にわかファンの人にも届くような試合がしたいです」
ISAO「大舞台に目が行きがちですけど、自分はずっとパンクラスでやってきたという自負があります。中島選手となら、パンクラスを盛り上げる試合ができると信じています。いい試合をして『パンクラスもあるぞ』と知っていただけるような試合にしたいです」
――フィニッシュのイメージは?
中島「早く(勝負を)決められる可能性もありますし、僕は後半戦が得意なので、最後で決められるかも。今回は極める練習をしてきているので、これまでと違ったスタイルを見せられると思います」
ISAO「どんなところでも、隙があればフィニッシュを狙っていければと思います」
――さて、このベルトの先にあるものは?
中島「年齢もあるので、ステップアップしたい気持ちもあります。でも、僕は流れを大事にしているので流れに身を任せます。『ここに出たい』というのはないです。オファーが来たら、そこに出ます」
ISAO「とりあえず、この試合に懸けています」
キャリア10年目にして、タイトルマッチに初挑戦する中島。試合当日、1歳になる長女も応援に来るという。愛娘のことを聞くと、一瞬、目が柔らかくなり、お父さんの顔になった。「もう、ヤバイですよ。かわい過ぎて。試合ではかっこいいところを見せたいです」と、さらに気合いを入れていた。
なお、この日は本計量前の体重申告日にあたるため、会見後、参考計量も実施された。中島は69.25kg、ISAOは71.75kgで、両者ともにキレのあるところを見せた。リミットは65.8kg。本計量までに、さらに絞り込んでくるだろう。
ISAO12年、中島9年。それぞれキャリアを積んで来た2人の、“大人の闘い”に期待したい。
▼フェザー級キング・オブ・パンクラシスト タイトルマッチ 5分5R
ISAO(NEVER QUIT/第8代王者)
VS
中島太一(Lotus世田谷/1位)
(写真・文/佐佐木 澪)