【コラム】1・24全日本プロレス後楽園ホール大会…三冠王者・諏訪魔がこれほどまで認めている芦野祥太郎の「諏訪魔のみが知る」凄さ。そして「芦野のみが知る」諏訪魔の凄さ
1/10全日本プロレス千葉大会のメインイベント直後、諏訪魔と芦野祥太郎に話を聞いた。
両者は1/24後楽園大会にて、諏訪魔の三冠王座に芦野が挑戦するという形での一騎打ちを控えている。千葉では6人タッグマッチで前哨戦がおこなわれた。結果は芦野が諏訪魔のパートナーの田村男児にタップアウト勝ち。1/24後楽園決戦はもう目前だ。両者のコメントを交互に読み進めていくと、この試合が非常に特殊で唯一無二な戦いとなるであろうことが皆さんにも予感できるのではないだろうか。
諏訪魔「芦野の何が凄いかって、身体能力が凄まじいよ。レスリングのベースにある無尽蔵の体力と、あと、強くて絶対に譲らないハート。アイツとの対戦ではいつも序盤にレスリングで勝負するんだけど、そのさいいつも『絶対に負けねえ』という頑なさを感じる。いつもそこが崩せないんだよ、なかなかね」
芦野「諏訪魔さんは、同じレスリング出身者としてその凄さをビンビン感じます。諏訪魔さんのパワーが凄いだとか、そういうのはレスラーでないファンにでも、それこそ誰にでも分かることだと思うんですけど、諏訪魔さんの本当の凄さを本当に理解できるのは戦った者だけです。それもレスリング出身者にしか、その凄さの奥底までは絶対に分からないと思います。そういう普通の人には分からない…レスリング出身者にしかわからないポイントというものがあって、それがマックスに触れている人。それが、諏訪魔さんというレスラーなんです」
諏訪魔「戦ってると相手の人間性が垣間見えるんだけど、芦野は我が強い人間なんだなって。芦野という男は面白い人間だなっていつも思うよ。きょうも序盤さ、あいつの土俵のグレコローマンスタイルでいったんだけど…負けちゃったよ!俺はフリースタイルだからさ!だけど負けちゃった!ああいうプロレスはレスリングやってた人間にしか絶対にできない。芦野は、いままでの全日本にはいなかったタイプのレスラー、それは俺が断言する。コイツ、これまでしっかりやってきたヤツなんだなって。俺はレスリングでそこそこの記録を持ってるけど、アイツも日体大でやってたっていうことは…日本一厳しいとこでやってたっていうことは、俺にも劣らないことをちゃんとやってきてるヤツなんだなって」
芦野「これは、レスリング出身者にしかわからないかもしれないんですが…そういう、レスリング出身者にしか感覚的に理解できないであろう尊敬。そういうものがあるんですよ、諏訪魔さんには。去年の春から全日本に上がり始めて、初めて諏訪魔さんと触れ合った瞬間、生まれて初めて『あ…勝てない』という感覚を持った相手なんです。そんな相手はこれまで一人もいなかった。『コイツは凄いけど、こうすればなんとか勝てるな』と、いつもはそう思えてこれたんです。だけど、諏訪魔さんは初めてそうではなかった。『これは勝てない』という恐怖心を、生まれて初めて抱いた相手なんです。それはいまだに…本当のことを言うと、毎回毎回続いています」
諏訪魔「無観客でやったときの芦野との戦い。正直に言うよ。あの戦いを…たくさんのお客さんの前でやりたかったというのが俺の本音なんだよ。いま、あのときと同じ緊急事態宣言の真っ只中だけど、今度は是非ともたくさんのお客さんの前で芦野と戦いたいんだ。あの無観客の試合。あそこまで、投げて、首壊して、足首取るだけのことに終始した試合はそうそうない。あんなプロレスをやれるヤツは最近いない。自分もそういう、投げて、首壊して、足首取って、それと同じことをやってた時期があったし。あれはもしかしたらレスリングやってた者にしかない一つの形なのかな、と。あれ以降、俺の中でそういう思いがどんどん強くなってきている」
芦野「無観客でやった三冠戦は、これまでの自分のキャリアでのベストマッチだったとは思うんですけど、お客さん不在で反応がなかったのでよくわからない部分もありました。全力を尽くしたはずなんですけど、お客さんがいなかったので手応え不明というか。そして、一つ分かったんです。プロレスというものは、お客さんと共に作っていくものなんだなと、そう感じました。だから今度は是非ともお客さんがいる前で…今回も、もしかしたら無観客でやるのか?と思ったんです。だけど、もう大丈夫そうなんで。それが本当に、素直に嬉しいですね」
※諏訪魔「確かに芦野は外敵で外様だけど…今後さ、うちの宮原とかジェイクとか青柳とか、いま、これからの全日本プロレスの看板になるようなヤツらが何人もいるんだけど。芦野という男はそういう連中の間にガッツリ入って、プライド持って、噛みついて、ガンガンやり合っていくような、そんな人間なんじゃないかと俺は思うよ。外様だとか何だとか言ったってさ…そもそも俺らのエヴォルーションだって、崖っぷちで生きてるギリギリな人間が集まってるわけだしさ。そういう小さい、細かいことは俺は一切気にしないし。一切抵抗ないんだよね」
※筆者は諏訪魔のこの発言を、インタビュー時、あえて芦野に振らせていただいた。
芦野「諏訪魔さんがそういうことを言ってたんですか?それは正直、嬉しいですね。これまでは自分以外全員クソ喰らえでしたよ。プロレスに関してはもう、全員蹴落とすつもりでしたけど。諏訪魔さんには、そういうものが全然ない。少しでも認めていただけていることは素直に嬉しいです。だけど、そのうえで、諏訪魔さんを倒したいです。純粋に、あんなに凄い人と徹底的に戦ってみたい。いままでアンファンとして全日本に参戦してきましたけど、今回だけは個人として、芦野祥太郎として、正々堂々と諏訪魔さんに挑みたいんです。もう一度言います。正々堂々。これが俺の中での重要な部分です。自分一人で。正々堂々。諏訪魔さんと戦って、必ず勝ってみせますよ。今回は、男と男の戦いなんです」
そして最後に、諏訪魔は以下のようにつぶやいた。
諏訪魔「今度の後楽園で芦野ともう一度凄い戦いができたら…その先…その先の全日本プロレスには…どんな光景が広がるのか見当もつかないな。想像できないね。それくらい凄い戦いになるんじゃないかな?今度の三冠戦は。そして、芦野祥太郎という男は、それくらいの逸材だと俺は思う」
もしかすると諏訪魔は、芦野のような男が目の前に現れることを待ち望んでいたのではあるまいか?それは芦野にも然り。認め合う凄い男同士による正々堂々たる戦い。この戦いが、全日本プロレスの歴史的ターニングポイントとなる可能性は非常に高いと予測した。
文…日々樹アキラ