【試合詳細】5・26 PANCRASE新木場スタジオコースト大会 【フェザー級KOP統一】ISAOvsナザレノ・マレガリエ 小川徹vsマモル 田村一聖vs摩嶋一整 近藤有己vs郷野聡寛

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『PANCRASE 305』
日程:2019年5月26日
会場:東京・新木場スタジオコースト
観衆:2019人(満員)

【第25回ネオブラッド・トーナメント】
▼第1試合 ストロー級 3分3R
―御代川 敏志(パラエストラ八王子)
試合中止
―川端康太(ALLIANCE)
※川端が体調不良のため試合辞退、御代川が決勝に進出。

▼第2試合 フライ級 3分3R
○猿飛流(リバーサルジム川口REDIPS)
判定3-0
●三澤陽平(ALLIANCE)

▼第3試合 フライ級 3分3R
○赤﨑 清志朗(香取道場)
2R 2分52秒、TKO
●下田洋介(和術慧舟會総本部)
※スタンドのパンチ

▼第4試合 バンタム級 3分3R
●山本敦章(パラエストラ千葉)
判定1-2
○上野惇平(ハイブリッドレスリング八戸)

▼第5試合 バンタム級 3分3R
○平岡将英(KRAZY BEE)
判定3-0
●永井佑虎(CAVE)

▼第6試合 フェザー級 3分3R
●齋藤拓矢(ALLIANCE)
3R 1分54秒、肩固め
○葛西和希(マッハ道場)

【プレリミナリーファイト】
▼第7試合 バンタム級 3分3R
○後藤丈治(TRIBE TOKYO M.M.A)
3R 2分59秒、TKO
●聖王DATE(Team DATE)
※スタンドのパンチ

▼第8試合 バンタム級 3分3R
●工藤修久(禅道会 小金井道場)
判定0-3
○関原 翔(リバーサルジム東京スタンドアウト)

▼第9試合 バンタム級 3分3R
○前田浩平(GRABAKA)
判定3-0
●宮川 峻(リバーサルジム東京スタンドアウト)

▼第10試合 フェザー級 3分3R
○渡辺謙明(パラエストラ東京)
1R 1分25秒、KO
●加藤泰貴(rodeostyle)
※スタンドのパンチ

▼第11試合 ライト級 3分3R
○友實竜也(ゼロ戦クラブ)
判定3-0
●山本雄希(Y&K MMA)

【本戦】
▼第1試合 バンタム級 3分3R
○坂野周平(マルワジム横浜)
判定2-1
●花レメ紋次郎TK(リバーサルジム新宿Me,We)

▼第2試合 ストロー級 3分3R
○宮澤雄大(K-PLACE)
判定2-1
●リトル(GUTSMAN)

▼第3試合 フェザー級 3分3R
○杉山和史(TURNING POINT MMA/Hybrid Fighter)
1R 2分59秒、TKO
●川那子 祐輔(秋本道場jungle junction)
※グラウンドのパンチ→レフェリーストップ

▼第4試合 バンタム級 5分3R
○米山千隼(マルワジム横浜)
2R 1分43秒、TKO
●ジョーイ・ボーイ(Spike 22)
※グラウンドのパンチ→レフェリーストップ

▼第5試合 バンタム級 5分3R
○大橋悠一(P’sLAB大泉)
1R 0分41秒、TKO
●ディションバイ・バキトベック(Sport Club Attila)

▼第6試合 バンタム級
●福島秀和(BLOWS)
判定0-3
○春日井 寒天 たけし(志村道場)

▼第7試合 ウェルター級 3分3R
○近藤有己(パンクラスイズム横浜)
判定3-0
●郷野聡寛(GRABAKA)

▼第8試合 フェザー級 5分3R
●田村一聖(KRAZY BEE)
3R 3分41秒、肩固め
○摩嶋一整(毛利道場)

▼第9試合 セミファイナル フライ級 5分3R
○小川 徹(TRIBE TOKYO M.M.A)
判定3-0
●マモル(シューティングジム横浜)

▼第10試合 メインイベント キング・オブ・パンクラス タイトルマッチ 5分5R
●ナザレノ・マレガリエ(TEAM TAVARES/第7代王者)
判定0-3
○ISAO(NEVER QUIT/暫定王者)
※ISAOが第8代王者となる。

ISAOが統一戦でマレガリエを制してKOP戴冠&二階級制覇を達成!小川がマモルを完封しKOP奪取に向け前進!13年ぶり3度目近藤vs郷野戦は近藤に軍配!

第1試合


 坂野は2017年のNBTでパンクラスに初参戦。その後1戦したが、昨年、シンガポールのMMA団体Rebel FCに参戦、肩固めを極めタイトルを獲得した。しかし、Rebel FCが活動休止状態となり、再びパンクラスに戻ってきた。

 対する花レメは、もと大阪の総合格闘技道場コブラ会所属で2011年よりパンクラスに参戦していた。しかし、2015年の大阪大会のあと、仕事で中国に転勤したため、試合の場から離れていた。
 しかし東京に転勤が決まり、リバーサルジム新宿Me,Weに移籍。最初は、格闘技は続けても、試合に出るつもりはなかったというが、東京の格闘技に刺激され、また周囲からも勧められて約4年ぶりの復帰戦に臨むこととなった。

 1R。パンチ、蹴りを出していく坂野。さらに大きくパンチを振る。打ち返した花レメは片足タックルからケージへ押し、尻餅をつかせる。ヒジを連打する坂野。
 花レメはさらに押し込み、左足をパス。殴るが、坂野を完全に寝かせることはできない。花レメがボディを連打して終了。

 2R。花レメはフェイントをかけ、ボディを打つ。坂野はバックブロー。坂野がバックに回るが、花レメは立ってケージ際へ。ヒジを打ち込む坂野。花レメは持ち上げて尻餅をつかせ、さらに上になり殴ったところで終了。花レメはブランクのせいか、やや疲れが見えるか。

 3R。お互いパンチを出し合う。ローからプレッシャーをかける花レメ。さらに花レメのパンチで坂野がフラッシュダウン! 花レメはケージへ押し込むが、坂野が投げてバックを取る。坂野はさらに背中に乗っていき殴る。立ちたい花レメ。さらに殴る坂野。残り時間は20秒。
 花レメが上になり殴るが終了。
 判定は2-1で坂野が辛勝した。

 4年のブランクのある花レメだが、動きにはそれを感じさせなかった。東京で格闘技の新しい面白さを知ったという花レメ。今後の展開を楽しみにしたい。

第2試合


 昨年8月からパンクラスに上がっている宮澤。初戦は今回の相手であるリトルだった。1Rわずか15秒でTKO負けを喫し、ほろ苦いデビューに。同年10月には御代川敏志に判定で敗れたが、12月に7位の前山哲兵を破り、一気にランキング入りを果たした。今回はリベンジを果たせるか。

 リトルは2014年からパンクラスに参戦。キレのいいファイトが身上だ。昨年は宮澤戦のあと、12月にオ・ヒョプチャンに1RでTKO勝ち。ひと足先にランカーとなった宮澤を抑え、ランキング入りしたいところだ。

 1R。宮澤がローから右のパンチ。リトルもパンチ、ローを返す。宮澤がタックル、テイクダウン! 脱出しようとするリトルだが、宮澤はバックに回りヒザを入れる。
 パンチを振って離れたリトルは、さらにパンチを打って行き、連打で宮澤にヒザをつかせる。リトルがそのままパンチで押して終了。

 2R。リトルがパンチで出る。受け止めた宮澤はバックに回り、抱えて鉄槌。リトルは立ってアッパーを放つが、宮沢のパンチでぐらつく。さらに宮澤がタックルをたたみかけるが、リトルが上に。ヒジ、パンチを落として終了。

 3Rもパンチを振って出るリトル。宮澤がタックルからバックを取る。リトルが立って離れる。リトルはパンチ、ハイキックと攻めていく。宮澤はバックに回り引き倒すが、立つリトル。宮澤は足をかけて倒したい。ヒザを入れ、パンチで離れて再びタックル。これを切ったリトルは、さらにパンチで出ていくが、疲労の色が濃くなっていく。
 宮澤がタックル。付き合わないリトル。両者殴り合う。逆にリトルがタックル! 宮澤は尻餅をつくが立つ。リトルは最後の力を振り絞るようにパンチ連打、ヒザを入れたところで終了。
 判定は2-1で宮澤が勝利。連勝でリベンジを果たした。

第3試合


 2013年よりパンクラスに参戦している杉山は42歳。2016年〜2017年にかけて3連勝していたが、2017年7月に鈴木琢仁、同年11月、堀江圭功に連敗を喫した。その後、昨年は12月に冨田翔市にTKO勝ちし、連敗を止めている。
 今年はこれが初戦。連勝して勢いに乗りたいところだ。

 対する川那子は36歳。パンクラスには古く2009年から参戦している。中国の格闘技団体LEGEND FCのフェザー級王者となったが、団体が活動を休止。2014年よりパンクラスに復帰した。その後、怪我もあり、再びブランクが空き、昨年12月にパンクラス2年半ぶりの復帰戦でDARANI DATEに判定勝ちを納めている。
 ベテラン対決は、どちらに軍配が上がるか。

 1R。飛び込んでパンチを打つ川那子。杉山は右フックを放つ。川那子はタックルからテイクダウン。しかし、杉山はすぐに立つ。
 川那子が左まぶたをカット、出血したためドクターチェックが入る。
 再開。杉山は重いパンチで川那子を押していく。川那子はバックブロー。杉山がケージへ押すと、川那子は入れ替えて立つ。離れ際にバックブロー! しかし、杉山のパンチが入り、川那子がダウン! 杉山はすぐさま追撃に入る。亀になった川那子にパウンドを落とすと、川那子の動きが止まり、レフェリーが試合を止めた。

第4試合


 米山はGRACHANでは同級3位。昨年12月、パンクラスに初参戦し、得意とするチョークスリーパーで後藤譲治に勝利している。

 対するジョーイ・ボーイは、DEEPで2017年10月に長倉立尚、2018年6月にオーロラ☆ユーキと対戦し、いずれも敗れている。パンクラスでは、同門のカイル・アグオンがフェザー級次期挑戦の切符をつかんでいる。新天地、また初めてのバンタム級でどのような闘いを見せるのか。

 1R。ジョーイがロー。米山は足払いでジョーイをこかせて上に。ヒジ、パンチを落とす。ジョーイは立ち正対するが、米山が投げ、尻餅をつかせて上に。ジョーイはヒジを連打してなんとかしのぐ。逃れたいジョーイだが、米山は立たせず殴る。粘り強く攻め、反撃の隙を与えない。背中を向けたジョーイの首を狙う米山。これは極まらず終了。
 ジャッジは二者10-9、1人が10-8で米山を支持。

 2R。体を振りローを打つジョーイ。米山はプレッシャーをかけていく。ジョーイの蹴り足を取り、ケージへ押す。米山はパウンドを連打し、さらにチョーク狙う。なんとか外したジョーイだが、米山は立たせず殴り続ける。さらにバックマウントになりパウンドを連打すると、レフェリーが止めた。
 ジョーイに何もさせず圧勝した米山は、まだ23歳。ランカーとの対戦が組まれるのも遠くなさそうだ。

第5試合

 大橋は、昨年のネオブラッド・トーナメント同級優勝。初戦と準決勝では1本、TKOで勝ち上がり、決勝は判定となったものの、激戦。寝技、打撃ともに高いポテンシャルを見せ、会場を沸かせた。国際戦は2度目。

 対するバキトベックは、キルギス共和国出身で、自国のMMAイベント「WEF Global」のバンタム級チャンピオン。レスリング、サンボ、キックボクシング、柔術がベースのファイターで、キルギスでは非常に有名な選手だという。
 パンクラスやPRIDEなど、日本の格闘技イベントをよく見ていたバキトベックは、日本で闘うのが夢だったという。大橋に、どう立ち向かうのか。

 1R。大橋がローを打つ。バキトベックは左ハイ。プレッシャーをかけていく大橋が放ったパンチがヒット、バキトベックがぐらつく。大橋がさらにヒザ、パンチを入れると、バキトベックは膝を着いてしまう。すぐさまかぶさってパウンドで追撃する大橋をレフェリーが止めた。
 大橋が、バキトベックに文字通り何もさせずに圧勝した。

 試合前には「自分がやって来たことを余すところなく見せるため、15分間闘いたい」と話していた大橋だったが、まさかの(?)秒殺劇となった。試合に備え、寝技にも力を入れてきたという大橋。その成果は、次戦を楽しみにしたい。

第6試合


 2014年より参戦している福島は、大阪のイメージが強いが、実は東京での試合が半分以上を占め、東京のファンにもおなじみの顔。昨年は2連勝し、現在4位につけている。

 対する春日井はHEAT二回級(第2代バンタム級、初代フライ級)王者。現在は両タイトルを失い、パンクラスからも2017年4月の翔兵戦を最後に遠ざかっていたが、2年ぶりに参戦。どのような闘いを見せるか。

 1R。パンチを振っていく春日井。福島はローで応戦する。春日井のパンチで福島がぐらつく。春日井はさらにパンチを打ち込み、福島がダウン! 春日井は上に。福島は突き放すが、春日井はかぶさりパウンドから首を狙う。しかし、福島は返してボディを殴り、ハーフから首を狙うがこれは極められず。
 春日井はタックルから首を抱えるが、サイドを取られてしまう。残り30秒。寒天が立とうとしたところで、福島がバックマウントからチョークを狙う。しかし、春日井はすぐに返し、上になって終了。
 ジャッジは三者10-9で春日井。

 2R。春日井はロー、パンチ。春日井はパンチで前に出て、ケージへ押す。しかし福島は離れてロー。春日井のパンチで福島が尻餅を着くが、すぐに立つ。パンチを打ち合った後、春日井が組んでケージへ。福島はヒザ連打。
 いったん離れ、福島がパンチ、春日井がパンチ、前蹴り。春日井がパンチを当てていく。福島はパンチからケージへ押し込みヒザ。しかし、すぐ離れる。
 パンチを出していく春日井。福島は春日井の蹴り足を掴むが展開できず。また福島が片足を取りに行くが、春日井は付き合わない。お互いパンチを打って終了。
 ジャッジは三者10-9で春日井。

 3R。パンチを打ち合う。福島が組むが、春日井は離れる。お互いパンチを出し合うが、春日井は疲労の色が見え、福島は手数を出し、前には出ているものの決め手に欠けるまま終了。
 判定は三者29-28、3-0で春日井が勝利。
 勝ち名乗りを受けた春日井だが、内容には満足できず、笑顔を見せず、ファイティングポーズも取らないままケージを下りた。

第7試合

 近藤有己と郷野聡寛。パンクラスのオールドファンにとって、この2人の対決は特別な意味を持っているのではないだろうか。
 2000年、船木誠勝の引退後、生え抜きのエースとしてファンの期待を一身に集め、パンクラスを背負ってきた近藤。
 郷野は、菊田早苗率いる新興勢力GARABAKAの顔として闘ってきた。パンクラス本隊の選手たちを倒していくだけでなく、試合後のマイクで激しく挑発した。ベビーフェイス軍団であるパンクラスに初めて現れたヒール。その存在は衝撃的であり、刺激的だった。
 パンクラスとGRABAKAの抗争が激化する中、2001年12月、パンクラス対GRABAKA対抗戦が行われ、ついに近藤と郷野が激突した。
 郷野のテイクダウンから何度も立ち上がり続けた近藤がグラウンドのパンチを浴びせ、菊田がタオル投入。郷野は右眼下底骨折の重傷を負い、長期の欠場を余儀なくされた。会場は、まさにこれ以上ない熱狂に揺れた。
 二度目の対戦は、2006年12月だった。大晦日のPRIDEで再戦し、スプリット判定で郷野がリベンジを果たしている。
 それから13年――。年齢を重ね、それぞれの道を歩んできた両者が、いま再びあいまみえる。

 1R。近藤が前に出てミドルを入れる。郷野はその足を掴み、ミドル。近藤は下がらずゆっくりと前に出て行く。近藤が飛び込んでパンチ。郷野はかわし、まだ様子を見ている。近藤はペースを崩さずミドル、ローを出して行く。郷野は組みにいくフェイントから左パンチを振るが、空振りに。近藤がロー、郷野がバックブロー、パンチを見せて終了。
 インターバルではいつも椅子に座らない近藤だが、今回は座っている。しかし疲れた様子は見られない。郷野は立ったままセコンドのアドバイスを聞く。

 2Rも近藤がじわじわと出てローを入れていく。近藤は左パンチを振るが、郷野はもらわない。郷野が組むと、近藤はケージへ押していくが、郷野が突き放す。郷野の右パンチがヒット。近藤は距離をつめてパンチ連打、そしてミドル。残り10秒で郷野がバックブローを放つが、近藤はもらわない。全体に近藤が出て蹴りとパンチを打つ展開となった。

 3Rも近藤がマイペースで前に出ていき左ハイキック。郷野は大きく右パンチを振るが、近藤のローがローブローとなりタイムストップに。しかし、すぐに再開される。
 近藤は、変わらずロー、ミドルで出ていく。郷野もミドル、そして右パンチがヒット。しかし、近藤はパンチを打ち込みヒットさせる。ペースを保ち続ける近藤だが、蹴りがローブローとなり二度目のタイムストップ。近藤には口頭注意が与えられて再開。近藤が右こめかみから出血している。タイムストップ直前の攻撃でカットしたか。しかし、ペースを変えずに前に出ていく近藤。郷野はバックキック、右パンチと攻めるが終了。
 ケージ際で抱き合う両者。判定は3-0で近藤が勝利した。
 勝ち名乗りのあと再び抱き合い、お互いを讃える両者。郷野の肩に手をおき、真摯な表情で語りかける近藤。負けた郷野には満足げな笑みが見えた。

 試合前、「もちろん勝ちにいきますけど、どうしても勝ちたいとは思っていない」と話していた郷野と「前回負けているので勝ちたいです」と話していた近藤。
 大会開始前のケージチェックでは、郷野が終了間際にチラリとケージに入っただけだったのに対し、近藤はマットを手で触ったり大の字になったり、丁寧に慈しむように時間いっぱいを使ってチェック。周りが本番さながらに激しく打撃練習やサブミッションを行う中、近藤はマイペース。まるで近藤の周りだけ、音もなく、ゆっくり時間が流れているようだった。

 どこまでも対照的な両者だが、ふたを開けてみれば、試合への想いは同じだった。
 四半世紀にも及ぶ格闘家生活。ここまで現役を続けている選手は多くない。さらに、自分たちだけでなく、周りもライバルと認め、13年もの時を経ても対戦を望まれる選手であり続けることは、奇跡に近いことかもしれない。
 それは、格闘技そのものを人生とし、休むことなく闘い続けてきた2人だからこそ――。
 13年ぶりの対戦は、両者の歴史と人間味がにじみ出る、味わい深い一戦だった。そして、「格闘技界のレジェンド」は、決して歩みを止めた化石などではない。両者は、これからも新しい伝説をつくっていく。

第8試合


 2015年よりパンクラスに上がっている田村は、蓮實光、タクミを破って2016年4月、タイトルマッチに挑戦。牛久絢太郎を破り、第6代KOPとなった。しかし、2017年3月、ナザレノ・マレガリエに敗れ、王座陥落。その後は鈴木琢仁、堀江圭功らを下し、若い選手の高い壁となって立ちはだかった。しかし、昨年9月、中島太一に僅差の判定負け。連敗をまぬがれ、再び勢いをつけたいところだ。

 対する摩嶋は柔道をバックボーンとし、修斗を中心に闘ってきた。パンクラスには2014年12月、大阪大会に参戦し、川端和哉を破っている。
 昨年4月、Rebel FCに参戦、ホドルフォ・マルケスを裸絞めで破り、フェザー級のベルトを巻いた。パンクラスには約4年半ぶりの参戦、ベルトを手土産に東京に進出してきた。11試合で1本勝ちを挙げている摩嶋は、元KOPを破ることができるのか。

 1R、田村が重いパンチを出して行く。片足タックルに入る摩嶋だが、田村は堪える。摩嶋はケージへ押していきテイクダウン! ケージ際まで押して行く。ハーフからマウントへ!
 立ちたい田村だが、摩嶋はバックを取っている。田村が脱出し、立ち上がってケージへ押すも、摩嶋が入れ替える。田村は正対するが、摩嶋が足をかけて倒したところで終了。
 ジャッジは三者10-9で摩嶋。

 2R。パンチを振っていく田村。摩嶋はタックルからテイクダウン! バックを取りチョークを狙う。しかし田村は一気に抜け、上になる。なかなか足を抜けない田村。摩嶋が立ってケージへ。倒そうとするが、田村が踏ん張る。しかし摩嶋が上になって終了。
 ジャッジは三者10-9で摩嶋。田村は思うように攻められず、防戦一方になっている。

 3R。パンチで出る田村。もう倒すしかない。しかし、摩嶋はタックルからテイクダウン。細かく殴りながらケージ際へ身体をずらしていく田村。
 摩嶋はハーフマウントから殴り、サイドに移行。パウンド、ヒジを落とす。さらに肩固めが極まり、田村がタップアウト。田村は鼻から出血し、呆然とマットに座り込んだ。

 元王者から何度もテイクダウンを奪い、何もさせなかった摩嶋。最後はきっちり1本を取り、完封勝利を挙げた。

摩嶋 ケージ上コメント
「緊張して、思っていたより疲れました。(パンクラスに)継続参戦とかよくわからないですけど、流れで闘っているので。ただ、決まった試合には勝ちたいです」

第9試合


 小川は2014年よりパンクラスに参戦、翌2015年ネオブラッド・トーナメント スーパーフライ級で優勝している。後輩で同級の若松佑弥は一足先にタイトルマッチ挑戦、さらにONE参戦を果たしており、小川もステップアップしたいところ。
 現在、小川が闘うフライ級は、王者・仙三がONE参戦中のため、7月に翔兵と上田将竜が暫定王者の座をかけたタイトル戦を行うことが決まっている。小川は両者ともに敗れているが、マモルは第4代KOPだ。勝てばタイトル挑戦に一歩近づく。

 一方のマモルは2015年よりパンクラスに参戦。仙三、ルイス“ペタオ”ノゲイラらを下し、2017年3月、神酒龍一からタイトルを奪取した。しかし、同年8月、初防衛戦で仙三にタイトルを奪われてしまう。さらに、昨年7月、若松にKO負けを喫して以来10ヶ月ぶりの試合となる。ベテランの凄味を見せ、出る釘は打っておかねばならない。

 1R。プレッシャーをかけるマモル。小川はフェイントをかけながら飛び込んでパンチをヒットさせる。小川はヒット&アウェイで距離を取り、マモルにパンチをもらわない。さらに体を振りフェイントをかける小川。リズムをとらえきれないマモルに左ミドル、さらに左パンチ。終始、小川のペースで終了。
 ジャッジは三者10-9で小川を支持。

 2R。小刻みに体を振る小川。マモルは詰めてくるが、小川は距離をとり入らせない。ほとんど手が出ていないマモルに会場からマモルコールが沸き起こるが、攻めあぐねる。マモルは一気に入ってパンチ。しかし、小川は動き続け、つけ入る隙を与えない。小川がパンチ、バックブローを放ったところで終了。
 このラウンドもジャッジは三者10-9で小川。

 3R。タックルを試みるも入れないマモル。小川は前蹴り。マモルは間合いを詰めパンチを当てようとするが、捕まえることができない。再度タックルを試みるが、小川は入らせない。マモルは風向きを変えられないまま残り30秒となる。
 小川が飛び膝。マモルは捕まえてバックに回るが、小川は抜け、パンチで攻めて終了。
 判定は3-0、マモルにほとんど何もさせず小川が完封。

第10試合


 正王者、暫定王者の統一戦。
 正王者マレガリエは2016年、パンクラス初参戦。高谷裕之、ガイ・デルモを破り、2017年3月、田村一聖を下して第7代KOPとなった。
 その後、同年8月にISAOを相手に防衛戦が組まれたが、マレガリエの負傷で延期。さらに、昨年はPFLに上がっていたため、パンクラスには2年2ヶ月ぶりの参戦となる。

 対するISAOは元ライト級王者。昨年4月、松嶋こよみと暫定王者の座を懸け対戦したが、グラウンドでの顔面膝蹴りで眼窩底骨折という大怪我を負った。反則勝ちでタイトルを獲得したものの長期欠場を余儀なくされ、1年1ヶ月ぶりの試合となる。

 1R。距離を取り、様子をみる両者。ISAOが重そうなローを放つ。マレガリエは距離を詰めてボディブロー。さらにロー、ミドルを蹴る。
ISAOはプレッシャーをかけてジャブ。ローでマレガリエがバランスを崩す。しかし、大きな展開はなく終了。
 ジャッジは二者が10-9でISAO、1人がマレガリエと割れる。

 2R。ISAOがロー、左ミドル。マレガリエはパンチを振っていく。パンチを合わせるISAO。マレガリエは左フック。パンチの手数を増やしてきた。マレガリエは組もうとするが、ISAOは付き合わない。ISAOが入ってボディブロー。さらにローでマレガリエがバランスを崩す。お互いパンチを出して終了。
 ジャッジは二者10-9でマレガリエ、1人がISAOと再び割れてイーブンに。

 3R。ISAOが蹴り。マレガリエがパンチを振ると、ISAOが一瞬バランスを崩す。しかしすぐに立て直し、距離を詰めていく。マレガリエが組むと、ケージへ押し込むISAO。マレガリエは投げようとするが、こらえたところでブレイクがかかる。
 離れると、ISAOの左パンチがヒット! マレガリエは間合いを詰めていき、組んでケージへ押し込む。お互い入れ替え合い、マレガリエがヒザを打ち込んだところで再びブレイク。
 パンチで出るマレガリエ。ISAOは組んでケージへ押すが、すぐに離れる。パンチを打ち合って終了。
 ジャッジは二者10-9でマレガリエ、1人がISAOと、三たび割れる。

 4R。ISAOはロー。入ってボディブロー。お互い組むが、すぐに離れる。マレガリエが片足を掴みテイクダウンを狙うが、切ったISAOに会場から拍手が起こる。
 お互い組む動きは見せるが、すぐに離れ、それ以上の展開にはならない。
マレガリエは組むが、すぐに離れてパンチ、アッパー。ISAOはパンチからロー、ミドル、さらに組んでケージへ持っていくが、離れるマレガリエ。ISAOがパンチを出して終了。
 ジャッジは三者10-9でISAO。

 いよいよ最終ラウンド。出てきたマレガリエに、ISAOがタックル! ギロチンを仕掛けたが、マレガリエはケージに押し込んで外す。お互い入れ替える。ISAOは投げようとするが、マレガリエに投げられてしまう。しかし、ISAOはすぐに立ち、パンチを打ち込む。ISAOのパンチがヒット。しかしマレガリエも打ち返してくる。
 ISAOは組んでケージへ押し込む。殴るマレガリエ。膝を入れて離れるISAO。左ハイから入れたローが効き、マレガリエがぐらつく! ISAOはさらにパンチを効かせる。タックルに入ったマレガリエがケージへ押し、引き込んで足関節! しかしISAOはパウンドを落とし、足を抜いて上に。マレガリエは立つが、バックを取っているISAOがパンチを入れ、離れたところで終了。
 判定は49-46、48-47、48-47の3-0でISAOが勝利。第8代KOP獲得ならびに2階級制覇を果たした。

ISAOケージ上コメント
「最後まで集中して闘うというのをやりきることが出来ました。偏らずに、全部混ぜて削っていこうと思っていました。
 (王者はONE参戦のチャンスもあるが)今後のことは、じっくり考えて行きたいです。
 前回の試合では、手術をするような大怪我になってしまい、またケージに戻って来られるか不安でした。そのとき支えてくれたチームのみんなや、応援してくれたたくさんの人たちに本当に感謝しています。こうして戻って来られました。また強くなった姿を見せます」

ISAO 試合後コメント
「迎え撃つというよりは、挑戦者という気持ちの方が大きかったです。
 正王者になれたのは、本当に嬉しいです。やっぱり暫定は暫定ですから。これで、胸を張って自分はKOPだと言えます。
 パンクラスは日本の団体ですけど、最近は外国人の王者が増えているので、日本人として獲らないと、という気持ちもありました。

 最初は慎重にインローで、無理にグイグイいかずにちゃんと見て、ペースを作って慌てないようにしました。距離感を間違えたら持っていかれると思ったので。上下に散らして、うまいことやろうかなと。
 相手は、思っていたよりそんなにグイグイきませんでした。自分が削れている感じもありました。
 1Rは取りましたけど、2R、3Rは割れて、でも4Rで取り返せたのでよかったです。ラストは、取るところは取っていくという感じでした。寝かされるのと、変な一発には気をつけました。

 とにかく色々混ぜていけば、相手は嫌がるだろうと思いました。変にあれをやろう、これをやろうと考えすぎないようにやりました。

 怪我のあと、久しぶりの試合だったので、ちょっと楽しみでした。試合での独特の緊張感を味わえました。チームのみんなはすごく励ましてくれたので、絶対復活してやる! と、この1年のフラストレーションをぶつけました。試合中も、いろんな人の応援が聞こえていました。

 今後は、まだどうなるかわからないです。全然考えていなかったので。チームのみんなと相談して決めていこうと思います」

(写真・文/佐佐木 澪)

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