【RIZIN】まさに“クルリンパ!”。進化していたRENA
(文/フリーライター安西伸一)
4月21日(日)、神奈川・横浜アリーナで開催された「RIZIN.15」で、RENAが久々の勝利を飾った。
相手は昨年の大晦日に対戦するはずだったフランスのサマンサ・ジャン=フランソワ。
RENAのグラップリングの技術に磨きがかかり、寝技になってもあわてず臆せず、サマンサとやりあっているように見えた。
2ラウンド中盤には、サマンサに投げられた時、冷静に左足を使い、相手の体を巧みに下から反転させ、“クルリンパ!”とリング中央で見事にマウントを取ってみせた。
ストライカーのRENAが、なぜこんなに器用なグラウンドの動きが試合で出来たのか。練習したことを身につけて使える“勘”が、よほどいいとしか思えない。
本人は「首投げされたら返し返され、体重移動とかあると思うので。やられたな、あ…できたな、っていう感覚です。練習でもちょいちょいある事なので。体が勝手に動いてるだけですね」と言うが、誰にでも試合で出来る事なら、もっと試合でこういうシーンがあるはずだ。
そもそもRENAはMMAデビュー戦で、飛びつき腕十字を決めたが、あんな大胆な技は熟練者だって、実戦でそう決められるものではないはずだ。“運”も味方はするだろうが、“運”だけではかたずけられない、天性の才能がRENAにはあるとしか思えない。
スタンドでの打ち合いになった時、低い位置からえぐるように決めるボディブローの迫力。あれほど見事にレバーブローで相手を沈められる選手が、MMAの世界で男女を通じてほかにどれほどいるだろう。
打撃の世界で強さを掴んだ運動能力は、グラウンドの世界でも同様に活かされていて、RENAをコンプリートファイターに近づけている気がする。
マウントを取ったあと、下からブリッジで抵抗するサマンサに対し、RENAは巧みに脱力して相手の体を乗りこなし、ポジションを大きく崩すことはなかった。
バックマウントの体勢になるとパンチを打ち、下にもぐって二度に渡り腕十字を仕掛けている。サマンサは防御して決めさせなかったが、RENAが本格的なMMAファイターに変貌を遂げようとしているのがよくわかるシーンだった。
そして3R。RENAはスタンドで二度、レバーブローを打ったが決定打にはならず。
結果は3-0の判定勝ち。リング上でRENAは「シュートボクサーながらMMAファイターに近づけていますでしょうか!? これからもっと寝技もしっかり頑張って、一本取れるように、トータルファイターを目指して一生懸命頑張りたいと思います!」とマイクでアピールした。
私見を言えば、RENAがMMAを闘う以上、グラップリングに長けるのは良い事に決まっているけれど、レバーブローでMMAで勝てる選手なんてそうそういないのだから、この個性だけは大事にしてほしいと思っている。
MMAの世界では、チョークや腕十字、三角絞め、肩固めで勝ちを狙うのは、いわば定石だろう。でも、みんながそうする必要はない。
RENAの最大の武器、自分の個性、自分の得意な決め技で勝てる技量があるのなら、最後にはそれが活きる闘いにも期待したい。
だってRENAはシュートボクシングの、女王なのだから。