【インタビュー】DEEPライト級王者・北岡悟が王座戦を目前に意気込みを語る!「ラストスパートだと思っていた時より、今は速度を上げて走っている自信がある!」
「DEEP 86 IMPACT」(10月27日、東京・大田区総合体育館)ではDEEPライト級王者・北岡悟(パンクラスイズム横浜)が、デビューから1年、7戦無敗とハイペースで試合をこなし駆け上がってきた新鋭・武田光司(BRAVE)の挑戦を受けるタイトルマッチが行われる。デビューから18年、5度目の防衛戦となるが、北岡は今も全くギラつきを落とさない。何より、そしてひたすら勝負にこだわる――そんな“北岡節”が存分に聞かれた。
――DEEPライト級王座5度目の防衛戦となる、「DEEP 86 IMPACT」(10月27日、東京・大田区総合体育館)が1週間後に迫りました(取材日は10月20日)。
「練習は終わりでもうスパーはしないです。松嶋(こよみ)のセコンドで1週間弱ジャカルタへ行っていたんですけど(※パンクラスイズム横浜所属の松嶋が9月22日のONE Championshipで元ONEフェザー級王者のマラット・ガフロフに初回TKO勝利)、それ以外はずっとやれたので、全然いいんじゃないかと。“仕上がってないんじゃないか”とかそういう切迫感がある時もありますけど、今回はそれがないです」
――今回の試合は防衛戦となりますが、他の試合の時と心境が違ったりするのでしょうか。
「あんまり気にならないというか、別に普通の単なる試合です。ただ、DEEPに出る時は防衛戦じゃなきゃ嫌だという風に、もうベルトを獲った後ぐらいに言ったことがあります」
――その言葉通り、DEEPには前回の防衛戦(16年6月、下石康太に判定勝ち)以来、2年4ヵ月ぶりの出場となります。
「あれがジム(パンクラスイズム横浜)を作って初めての試合だったんですよね。あの時はジムを持って試合をするということが分からなかったから、その恐怖みたいのが、全否定される可能性がありました」
――その試合は判定勝ちで王座を守り、ジムとしても船出を飾った訳ですがいかがでしたか。
「もう意地というか、“肯定するために勝ちたい“みたいな感じでした。でも、その年はよかったんですけど、去年が2連敗で、今年が1勝1敗。ジムを持ってからで考えると4勝3敗で、まだとても肯定とは言えないなっていう話です。最初に勝った時は“これで肯定された”みたいに思ったけど、結局戦いってずっと続いていくものだから、甘くはないなっていうところじゃないですか」
――ですが、ジム所属の選手たちは先ほど名前が出た松嶋選手のように結果を出しているのではないですか。
「いや、ようやく松嶋がONEで一勝をあげてというだけで、まだまだ全然ダメでしょう。逆に言うと3、4月はうちの選手がDEEPやパンクラスで3人タイトルマッチをやったんですけど、全員負けたんです。だから、まだまだですけど時間の問題だとも思うし、結果を出すことはできるっていう自負はあります。まだ途中なだけで、やるべきことをやって積み上げてきているから、結果がもっと出続ける時期も来るんじゃないかなとは思ってます。僕自身は全然途上、途中っていう気持ちです。上がって行っている途中だっていう」
――ジムを持った当初、「選手たちには勝負にこだわってほしい」と話をされていたのが印象に残っています。
「そうですね、今はそんな綺麗なレコードじゃないし、まだ力の至らなさを感じるけど、そこに対する思想的な部分は変わっていないです。選手たちに対しては“絶対勝て”というより、勝利に対して頑張ってくれたら、ベストを尽くしてくれたらそれでいいかなとは思います」
――北岡選手のそうした勝負、勝利にこだわる気持ちというのはデビューの時から一貫してあったものなのでしょうか。
「どうでしょう。どんどん磨かれていったものだと思います。自分でこんなに長くやって、こんな風になるなんて思っていませんでした。それこそ20代で辞めちゃうぐらいに思ってましたよね」
――それが2000年10月のデビューからちょうど18年、キャリアも20年に及ばんかとしています。
「そうですね、なってしまいますね。パンクラスを一旦出たのが8年前、2010年の10月だったんですけど、もうその時に30で、もうそろそろ終わりだろうと思っていましたし」
――たしかにそういった種の発言をしていた記憶があります。
「そういうつもりでしたよね。でも翌年青木と戦うことになって、思ったより早くクライマックスが来ちゃったし、まだ好きだし、他にやりたいこともないし、やろうみたいな感じで。“もうラストスパートかな”みたいな気持ちで、5年前にまたパンクラスに戻るというか20周年興行に出て(13年9月)、その後で徳留(一樹)に負けて(15年11月)、あの時ももうラストスパートぐらいのつもりでしたよね」
――それが今も戦い続けて、先ほど途上・途中という言葉も聞かれました。
「なんか結果的に終わらなくてっていう。ちょうど徳留戦をやる直前にここがなくなるっていう話を聞かされて、その時にふと自分が戻ってここでジムをやるっていうのが降りてきちゃったんです。“これだ”みたいな。“これが俺のやるべきことだ”みたいなのが、勝手にビビビみたいな感じですよね(苦笑)」
――ではジムを持ったことがその後の北岡選手のストーリーを続けさせることになったと。
「そうですね、結果的に自分の続編みたいのを作っている状況ですよね」
――現在はどうでしょう、そういった段階を経てまたラストスパートという感じですか?
「ラストスパート感はなくなりました。でも、ラストスパートだと思っていた時が何回かあったけど、その頃よりも今は速度を上げて走っているっていう自信はあります。だから面白がってもらっているのかもしれないですよね。RIZINでは結局3連敗なんだけど、どうやら、また見たいって思われているようですし、それって、そういうスピード感だったり臨場感のおかげなのかなとは思うので、やっぱりそこのところはプロとしては胸を張っていますし、自負はあります」
――でも、まさに「ラストスパートの時より速度を上げている」ではないですが、北岡選手は今もずっとギラギラした感じが無くならないですね。
「ありがとうございます(笑)。それはメチャメチャあると思います。もう意地やツッパリです(笑)。ただ、ここでジムをやって近くで見て、僕の姿勢だったり僕の格闘技に対する姿勢をよいと思ってやってくれている選手たちがいる訳なので、それに対して恥ずかしいことはできないですよね」
――そういった中でデビューから1年で駆け上がってきた7戦7勝の新鋭・武田光司選手を相手に防衛戦を行います。武田選手の印象を聞かせてください。
「レスリングで培ったスキルやハートがあって、気合いの入った、頑張ることができる選手ですよね。強いと思います」
――勝つためにキツいことをやる、頑張るというのは北岡選手の信条でもあると思いますがいかがでしょう。
「そういう厳しい、シンドい試合だと思います。18年やっていようが、1年やっていようが、本当に関係ない。その時強い奴が勝つものなので」
――北岡選手はこれまでの発言で、一本や判定といった勝ち方にこだわりはない、とにかく勝ちたいと言われてきました。
「それはどこでも変わらないです。何か熱い試合をしようとしているとか、そういう誤解をされている部分がありますけど、そういう気持ちは一切ないです。僕の勝ちたいっていう執念が勝手に熱いものを作っているだけでしょう」
――勝つのであれば、勝ち方にこだわりはない?
「勝ち方は問わないです。DEEPのタイトルマッチで5ジャッジだから、3-2でも別に構わないと思うし」
――では、戦いはいつも厳しいものになると楽観視しておらず、今回の武田選手は頑張る選手ですから、なおさらハードな試合となりそうですね。
「いや、すごくシンドい、きわどい試合になるんじゃないですか」
――では、そう思っているからこそしっかり練習してきたし、準備は万端だと。
「はい、そうですね。前回ノックアウトされたのでどうなることかと思いきや、全然問題はなかったです」
――7月RIZINでの敗戦の後は、今後について「ちょっとどうしたものか」というコメントがあったので、気になっていました。
「そうですね、そういう気持ちもありました。でも、練習したらすぐにケロっとしていました。試合(=日曜日)の後は水曜まで休んで、木曜日にはもう動いたんじゃないですかね」
――先ほど、かつての心境を表して「ラストスパート」という表現がありましたが、現在を言い表すとどうなりますか?
「さっきも言いましたけど「途上」ですよね。「駆け上がっている」とは言わないですけど、上がっている最中。でも、それこそ、今度の挑戦者は駆け上がっている“つもり”なんじゃないですかね。けど、どこにも辿り着かないだろ」
――DEEP王座5度目の防衛戦となる今回の試合へ向け、最後に改めて意気込みをお願いします。
「結局DEEPのチャンピオンじゃなくても、“北岡悟”は“北岡悟”で活躍できるとは思うんですけど、僕は「DEEPのチャンピオン」でありたい。DEEPは好きだし、日本の格闘技のここ10数年のあり方を見せてくれている団体だから。そこは誇張する気はないけど、僕の、だからこそのこだわりです」
(取材・文:長谷川亮)