【RIZIN】那須川vs堀口、激突!異種格闘技の魅力

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(文/フリーライター安西伸一)

9月30日(日)は夜、首都圏に台風上陸が予告されていた。それでも『RIZIN.13』が開催される、さいたまスーパーアリーナにはたくさんの観客が詰めかけ、熱気にあふれていた。

帰宅する観客のことを考え、主催者側がメインのカードを大会の中盤に持ってきたが、それさえもメインの那須川天心vs堀口恭司に対する異様な盛り上がりをそこなう事にはならなかった。

大会前の28日(金)、午前0時55分から放送された今大会の“見どころ紹介番組”の中で、那須川は堀口のことを、短い言葉でこう表現した。

「そんな打たれ強くないと思う」。

那須川はここに、堀口の弱点を見い出していたのか。

そして那須川のお父さんは、このように言った。

「たぶん世間ではまあ、堀口君が勝つんだったら、1Rで天心を倒すだろうっていう感覚だとは思うんですよね、一発がある選手なんでね。僕は当たらないと思いますよ。逆にこっちが当てて、その一発で切ってやることは可能ですよ」。

那須川陣営は、勝敗に関してはかなりの自信を持てたはずなのだ。

でも、堀口には相手の自信を凌駕するような身体能力があり、総合格闘技の試合の中で見せてきた、キックボクサーにはない遠い間合いから的確に飛び込んでくる、鋭い打撃があった。

まさに異種格闘技のぶつかりあいという緊張感のある、この試合。ルールは3分3ラウンド、インターバル1分。3ノックダウン制で、ヒジによる攻撃は不可。ワンキャッチ、ワンアタックと呼ばれる、相手の蹴り足を掴んで殴ったり、足を払ったりする攻撃は、1回の攻防につき1回は有効。それは首相撲の場面でも、同様に認められる。また3R終了時に判定で2票以上の差がない限り、延長戦をするという、RIZINキックボクシング特別ルールで行なわれた。

試合は、1Rから素早く激しい攻防が見られたが、どちらもダウンにまで至ることはなく、2Rになると堀口が2度、下腹部の急所に那須川の蹴りが入ってしまうアクシデントが。それでも堀口の動きに陰りが見えない。那須川も攻撃の手を緩めず、激しい打ち合いが続く。

でも3R、2分経過直前、那須川が放った胴まわし回転蹴りで、那須川の左の足の裏が堀口の左側頭部にヒットしたことで、堀口は劣勢に立たされた。苦し紛れだったのか胴タックルに行き、那須川を後方に倒したことで、いっとき打撃の攻防が途切れたが、時間をかせいでも以降の堀口の劣勢は明らかで、ロープを背にするシーンが多くなった。

3Rでは那須川の方が、堀口の動きを見切れていた気がする。判定は3-0で那須川の勝利。

もしこの試合が5ラウンドだったら。もしヒジ打ちが解禁されていたら。別の決着が訪れていたかもしれない。でもそう考えていくと、この試合が3ラウンドで、特別ルールだったことが、両者のギリギリの攻防を引き出した“妙”だった、と言える気もするのだ。

格闘技の試合は、勝敗が全て。勝者が全て栄光を独り占めにする、というのが僕の考えだ。でもこの試合は、そうはならなかった。負けをローブローのせいにせず、相手を責めることもせず、リングで笑顔まで見せた堀口は、日本の格闘技界を照らして、リングを下りた。

満員の館内は高揚感に満ちていた。素晴らしい対戦だった。

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