【永島編集長の”他流試合” 】健介との和解。WJ崩壊以降顔を合わすことのなかった二人が13年の時を経て遂にこの日を迎えた
- 2018-10-6
- 永島編集長の他流試合
佐々木健介と、なんと13年ぶりに美しい庭園のある店で二人っきりで食事をした。WJプロレスで不本意な決別をして以来だから、俺自身なんともいえない複雑な気持ちと同時に感動する4時間だった。「オヤジ、俺も嬉しいよ。もっと早くこんな場面があってもよかったよね」俺の胸にズシンと入った健介の第一声だった。
WJで迷惑をかけた部分を詫びながら色々と昔話に花が咲いた。健介はマサ斉藤の葬儀を取り仕切っていたが、猪木、坂口からも感謝の言葉をかけられたことも明かしてくれた。健介の人柄が素直に猪木らにも伝わったことは俺も大変嬉しかった。
新日プロ時代の話になると健介の目が俄然輝きだした。俺は彼の試合でベストマッチの一つは東京体育館でやった橋本真也とのシングルマッチだと思っている。両者は自分のすべてを出し尽して闘った。俺はマッチメーカーとしても涙ながらに試合を見守っていたものだ。
俺のプロレス哲学として言っておくと「プロレスには心の闘いと顔の闘いがあると思っている。心のプロレスは見えないプライドを発揮するもので、顔のプロレスは自分のメンツ、見てくれを重視するものと思っているんだ」なぜ、ここでこんな表現をしたかといえば、健介のプロレスは正に心の闘いに徹したものだったということだ。
この橋本戦でも観客はコブシを握りしめる連続だった。それだけ「目に見えない」闘いだったんだ。勝ち負けは関係ない。「俺が引退を決めたのは、中嶋勝彦との試合が終わって、ああ俺にはもうあんな闘いが出来ないと思ったからだよ。オヤジ」健介は早すぎる引退と言われた現役最後について語ってくれたが、俺は改めて思ったものだ。「健介はやっぱり俺の気持ちをわかってくれていたんだ。プロレスラーとは一体なんなんだという自分なりの結論を持っていたんだ」と。皆さんもチャンスがあったら、この健介vs橋本の一戦を見てほしいな。
俺は新日プロ時代から長男がシンヤ、次男が健坊という付き合いをしていたから、尚さら孝行息子を持ったことに感謝と感動をしたな。
俺は今のプロレスが決して「顔のプロレス」を重視しているとは思っていない。新日以外でもプロレスを追及しているレスラーはたくさんいると思うし、今後も本物を追及してほしいと願っているよ。
それはともかく、9月17日の健坊と俺の4時間の食事は俺に新たな勇気をくれたんだ。大げさに言うわけではないが、俺も平成30年をプロレスに関わった人間として一つの区切りだと思っているしね。健坊の口から出るひと言づつは闘った者でしかわからない「味」を秘めていたしね。いろんなエピソードは、またの機会に書かせてもらうとして、「人間にはいつか真実を語り合うチャンスは必ず来る」ということを肝に銘じたいと想っている。
ありがとう、健坊!