【インタビュー】折原が今だからこそ明かすウルティモとの相容れない関係性とは?
- 2016-6-21
- コラム
- リアルジャパンプロレス
後縦靭帯骨化症という難病を患い、一時は引退の危機を囁かれた折原昌夫だが、復帰を果たしてもうすぐ5年になる。その突貫ファイトは昔と変わらぬままで、リアルジャパンマットでも活躍。タイトル戦線に絡むだけでなく、時には若手選手の鬼教官としてストロングスタイルのリングを守ってきた。
そんな折原に現在の体調やリアルジャパンマットの印象、『初代タイガーマスク黄金伝説~LEGEND OF THE GOLD Ⅴ』6・23後楽園ホール大会への意気込みを聞いた。今大会ではケンドー・ナカザキと組んで、ウルティモ・ドラゴン&ヒート組と対戦する。折原が今だからこそ明かすウルティモとの相容れない関係性とは? そして、リアルジャパン参戦の決まったケンドー・カシンに言いたいこととは?
「今はあの時に病気が発覚してよかったと思っています」
――ちょうど来月で、後縦靭帯骨化症という難病から復帰してちょうど5年になります。その後、首の状態はいかがでしょうか?
「病気発祥の前年11月の相模原大会で首を痛めたんですよね。控え室が凄い暑かったのを覚えてますよ。首の骨にヒビが入って病院に運ばれ、それで病気だということがわかったので、怪我の功名というのは間違っているかもしれませんけど、その時に怪我したのは今考えると良かったのかなって。あのままこの病気がわからずにやっていたら、今頃はどうなっていたのかなと」
――首を痛めたことによって、後縦靭帯骨化症だったことが発覚したわけですからね。
「そのまま気づかずに5年経っていたら、たぶん僕はここにいないと思うんですよ。手術は成功したんですけど、今でも調子が悪い時だと左手をポケットに入れると痛いぐらいですけど」
――全快するわけではなく、ずっと病気と突き合っていかなくてはならない状況だと。
「医者には『こんなよくなるとは思わなかった。手術が終わっても車椅子だと思っていたから、プロレスができるのは信じられない』と言われました。体の麻痺もないし、普通に喋れますし。今の症状とはずっと付き合っていかなくちゃいけないですけど、今はあの時に病気が発覚してよかったと思っています」
――とはいえ、昨年の6月大会でも首に大きなダメージを負って動けなくなる場面がありました。
「あの時は意識が完璧にあったんですけど、体がほとんど動かなくなって。正直、凄く恐怖もありましたし『手術した時に引退しておけば良かったのかな』という後悔がありました。対戦相手を見ても、まさかああいう試合になるとは思わなかったですから。コーナーからムーンサルトを決めようと思った時、相手がコーナーの内側に避けたんですね。それでも上手く落とそうとして小さく回転したんですけど、頭から突っ込んでしまって。それでも試合は続行となりましたけど、あの時もウルティモ・ドラゴンが対戦相手にいましたが、試合中のアクシデントを目にしても、彼の攻撃は厳しかったですね。下から撃墜されたドロップキックはみぞおちに入って、そっちの方がきつかったぐらいでしたよ」
――非常事態が起きても、ウルティモ選手はただただ勝利を狙ってきたんですね。
「プロレスって本来そういうものなんですよ。右手にテーピングを巻いてきたら、その右手に集中攻撃するし、パッと見て動きが悪いなと思ったら、今がチャンスだってなりますよ。勝負に繋げるという意味では、ドラゴンが厳しくきたのは的確な判断だったのかなと思います」
――今でも恐怖感は残っています?
「残ってますね。あの時までは『手術が上手くいったんだ。暴飲暴食をしても問題ないし、大丈夫じゃないか?』って甘く考えてしまっていたんです。でも、それからは変わりました。今は月に多くても4試合ぐらいですけど、以前はひどい時だと1日で2試合3試合してたことがあるんです。今は1試合1試合を大事にして、オファーが来た時に『いかに僕のキャラクターが必要とされているのか?』を考えて、選んで受ける形になっています。団体の大きさではなく、意味のある試合をしたいんですよね」
「先輩たちの凄さが余計にわかるようになった気がします」
――選手生命にかかわる怪我を負っても、復帰してリングに向かう。そういう道は先人のレスラーたちが歩んできた道でもあります。
「僕はそんな立派なもんじゃないですよ。僕はジュニアですから、グラン浜田さんや百田光雄さん、それからもちろん佐山先生に目が行きますし、ヘビー級だとこの前引退した天龍さん、長州さん、藤波さん、藤原さん……。皆さん、それぞれどこかしら大きい怪我をして、死ぬか生きるかの問題からリングに復活している方もいらっしゃいますが、僕から見て、下積み時代の練習は相当なものだったんだろうなって思いますね。30歳をすぎて暴飲暴食をすると、頭の中で考えていた動きがリングの中でできなくなってくるんです。それを維持していけるのは、若い頃にしっかり作った筋肉があればこそで、相当厳しいトレーニングをされたんだろうなって。僕は先輩たちと同じとは思えなくて、まだまだ甘い部分もあると思うんですが、病気を経て、皆さんの凄さやリングに立っている意味が余計にわかるようになった気がします。今は自分の体を大事にしていますよ」
――トンパチと言われた折原選手らしからぬ発言にも聞こえますが。
「いやいや(苦笑)。僕はこんな感じのやり過ぎたレスラーなので、トレーニングジムは受け入れてもらえなかったんですけど、個人で予約できるジムに行けるようになりまして。体力的にも元に戻りつつあるし、自分でも納得できるようになってきました。最近は自分を大事にしているなって自分で感じますね。昨日もガッツワールド(新木場大会)で、初めて見る名古屋のほうから来た若手2人組(岩本煌史&石田慎也)とやったんですけど、試合中から元気だなあって感じて。動きに付いていくのがやっとかなと思ったら、試合の後にそんなには疲れてなかったんですよ。最近は若い子たちとの試合を終えた後に、変な自信が出てくるんです。まだ俺は行けるかなって」
――折原選手はメビウスとしても定期的に興行を行っていますが、それ以外の動きも模索されているとか。
「最近ですね、プロレスのリングをたくさん作りまして、いわゆるリング屋さんですか。そっちのほうも今年の夏以降に動きとして出して行こうかなと。プロレスの団体だけでなく、テレビ関係や学生の人たちに安く提供していって、プロレスの面白さを伝えられたらなって。あとは子供たちですね。僕がこういうことを言うのはおかしいですけど(苦笑)」
――そんな(笑)
「今年も9月にお台場のメキシコフェスティバルに参加するんですけど、子供たちにリングに上がって楽しんでもらえたらなって。僕がメキシコに行っていた時も、子供たちがリングに上がって遊んでいる姿をよく見てたんです。日本のプロレスではそういうのってあんまりないじゃないですか。怪我した時に誰が責任を取るんだとか、そういう問題もあるんですけど、枠を越えてね。プロレスは血なまぐさい勝負だけのリングじゃなくて、小さい子供たちに興味を持ってもらえるようなものにしていきたいなって。学校とか、市町村とかに安く使っていただいて、楽しさをわかっていただきたいなと思っているんです」
「ドラゴンとはプロレスの試合の中でウマが合わないんですよ」
――リアルジャパンという団体にはどんな思いがありますか?
「僕がなんでリアルジャパンに上がっているかというと……。プロレスラーになったのは初代タイガーマスクに憧れて、刺激を受けたからなんですね。皆さん知っての通り、僕は失踪事件を起こしたことがあって。自分をダメにした時に、なぜか佐山先生は僕を見つけてくれて。『腐っている場合じゃないから、うちに練習に来なさい』と言ってくださって、それで救われたんです。そのままの流れで、リアルジャパンをキッカケにリングに戻ることができた。だから、僕の第三の故郷というか。第一は全日本プロレスですし、第二はメキシコだと思っているんですけど、第三以降はもうないでしょうね」
――リアルジャパンのリングではウルティモ・ドラゴン選手と絡むことが多いですね。今回もケンドー・ナカザキ選手と組んで、ウルティモ&ヒート組と対戦します。
「正直、僕は佐山先生に憧れてこの世界に入ったんですけど、次に憧れたのが浅井(嘉浩)さんだったんですよ。天龍さんが『雑用係でいいからこいつを使ってくれ』と言ってくれたから僕はSWSに入ったんですけど、選手としての扱いじゃなかったんです。だから、メキシコに捨てられるように行って、何とか帰ってきて。その頃から浅井さんを意識してました。初めてウルティモ・ドラゴンが日本に来る前に、僕は何とかSWSでデビューしたんですけど、グレート・カブキさんに『お前、ファイヤー(解雇)されるぞ』って言われた時があって。『お前、何かできるのか? メキシコから小さくてカッコ良くて凄いヤツが来るよ。その前に何か自分の持っているものをアピールできないか?』って言われたんです。ちょっと物腰柔らかく言われたんですけど、そういう時って厳しく怒られるよりもつらいじゃないですか。これはまずいと思って、浅井さんがずっと大切にしていたラ・ケブラータをやってしまおうって思ったんです。もちろん練習はしたことがなかったんですけど、やったらできたんですね」
――その時のウルティモ選手の反応は?
「向こうは怒りましたよ。僕もこういう性格なんで『なんだバカ野郎! じゃあ、俺はお前よりももっと凄いことをやってやる』って、鉄柱越しのダイブをやるようになって。それをやったら、向こうもわかってくれたみたいで『わかった。死なないように頑張れよ』って言ってくれました。ドラゴンは僕に対して『この野郎!』という気持ちはあると思います。実は仲が悪いわけじゃないんですけど、普段から別に連絡は取り合わない。まあ、腐れ縁なんですかねぇ」
――不思議な縁で繋がっていますよね。
「ただ、プロレスの試合の中ではウマが合わないんですよ。ドラゴンも『お前のレスリングセンスは俺と違うけど、認めてはいる』と。僕もウルティモ・ドラゴンの試合は大好きだし、カッコいいと思います。でも『俺ら2人ではどうにもお客さんに見せる試合はできないな』って酒を酌み交わして話したことがあるんですよ。僕の感覚とあの人の感覚があまりにも違いすぎて、いい試合ができた思い出がないんです」
――ウルティモ選手は「自分は常に70~80点の試合をするように心がけているのに、折原は200点の時もあるけど、20~30点の場合も多い」と仰ってました。
「それは僕も直接言われましたよ。その時に『お前に点数なんか付けられたくない!』と怒っちゃって。そうじゃないですか。一応先輩と後輩ですけど、リングに立ったら同じ立場。この世界はそうじゃないですか。『俺の30点ってなんだよ!』と言ったら、向こうは『話にならない!』と。個性がお互いに強いので、やっぱり感覚の違いなんでしょうね。最近は入場の時にドラゴンがお客さんを煽ってリングに入ってくるじゃないですか。僕はあの時点でキレてますから。『早く上がってこいよ』と」
――未だに相容れないものがあるんですね。
「僕はウルティモ・ドラゴンの試合動画をよく見ているんです。やっぱり相手の動きを知っておかないと自分の怪我にも繋がるし、どうにかしてドラゴンの感覚の中に入っていきたいなって自分もいて。でも『30点』とか言われるとね。そういう折原がいいんだってお客さんもいるわけじゃないですか。そこがわかり合えないんだよなあ。やっぱりウマが合わないんですよね。反対に、今まで話したこともないのに、バッチリとウマが合った選手が大谷晋二郎。彼と新日本でやり合った時は、気持ちの面でまったく同じ線にいたなと思うし。彼も今は代表になって頑張っていると思うし、いつかはシングルマッチで戦いたいなと思っているんですよ。その時が来るまで僕も頑張っていきたいと思いますね」
――試合の話に戻します。そんなウマが合わないウルティモ選手とどう戦いますか?
「今回の試合は相手にヒートがいるじゃないですか。彼もくせ者でプライドの高いタイプなんですよ。それ以上にウルティモ・ドラゴンもプライドが高いので。僕の相方もマスクマンのケンドー・ナカザキ。僕だけ素顔なんですけど、マスクマン3人が揃うと、ドラゴンはマスクマン王国で育っていますから、その中で一番目立つ術を知っているんです。自分がどれだけ目立って、どれだけカッコいい場面を作れるか。それしか考えてないと思いますよ。ドラゴンってそんなヤツです(笑)。いっそのこと、僕は体を休めて、大親友のサスケ・ザ・グレートを呼んで代わりに出てもらおうかとも考えたんですけど、やっぱり俺が出ていこうかと」
――定番のカードではありますし、何ともない絡みかもしれませんが、お二人の話を聞くと、対戦が楽しみになってきますね。
「僕はサラッと勝ちたいですね。勝ってマイクを掴みたいんですよ。それは目の前にいるウルティモ・ドラゴンやヒートへのアピールじゃなく、ケンドー・カシンに言いたいことがあるんです。はぐれIGFとして初めてのリアルジャパン参加で、これから定着するのか、ケンカを売ってくるつもりなのか、それはわからないですけど、カシンが参戦しているのに、そこと絡めないのは歯がゆい気持ちですね」
――過去には何度も対戦してますからね。
「彼も物凄く変わった人間なので。でも、しっかりとしたレスリングテクニックを持っていますから、地味ではあるんですけど、素晴らしいものがあります。地味に効く技をいっぱい持ってますから、それが勝負に繋がっていくんですよ。だから、カシンに対してアピールしたいですね」
長年に渡り、数々の激闘を繰り広げてきた、折原昌夫とウルティモ・ドラゴンのお互いに対する思い。「相容れない」「ウマが合わない」中で、闘う男同士だけが持つお互いへのリスペクトを感じることができた。その2人の関係論を頭に入れて大会を捉えると、本対戦への期待が更に膨らんでくる。この熱い男たちの「名勝負数え歌」に注目したい。
初代タイガーマスク リアルジャパンプロレス 佐山サトルプロデュース
『初代タイガーマスク黄金伝説~LEGEND OF THE GOLD Ⅴ』
■開催日時:6月23日(木)開場/17時30分 試合開始/18時30分
■会場:後楽園ホール
■主催:有限会社リアルジャパン、リアルジャパンプロレス、掣圏真陰流本部 興義館
▼6人タッグマッチ 30分1本勝負
スーパー・ライダー/小笠原和彦(PRO-KARATE 押忍闘夢)/間下隼人
vs
倉島信行/山本SAN(COMBO)/“力道山3世”力(フリー)
▼シングルマッチ 30分1本勝負
タカ・クノウ(チーム太田章)
vs
LEONA(ドラディション)
▼タッグマッチ 30分1本勝負
ウルティモ・ドラゴン(闘龍門MEXICO)/ヒート(フリー)
vs
折原昌夫(メビウス)/ケンドー・ナカザキ(国籍不明)
▼『須麻比』デモンストレーション
初代タイガーマスク
vs
ミノワマン(フリー)
▼6人タッグマッチ 60分1本勝負
スーパー・タイガー/長井満也(ドラディション)/アレクサンダー大塚(AODC)
vs
ケンドー・カシン(はぐれIGF軍団)/鈴木秀樹(はぐれIGF軍団)/将軍岡本(はぐれIGF軍団)
▼佐山サトルプロデュース レジェンド選手権試合60分1本勝負
【第9代王者】関本大介(大日本)
vs
【挑戦者(第8代王者)】船木誠勝(フリー)
(記事・写真提供 リアルジャパン)