巡業バスとの接触事故で亡くなった21歳のプロレスラーへ選手たちが涙のメッセージ「長尾一大心が愛したこの全日本プロレス、僕も愛していいですか?」

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 15日、東京都・後楽園ホールにて全日本プロレス『第12回 王道トーナメント【準決勝・優勝決定戦】』が開催。今月7日に亡くなった長尾一大心さんの追悼セレモニーが行われた。

 長尾さんは北海道・釧路市出身の2003年9月13日生まれ。2024年10月22日のデビュー時には164cm・75kgとジュニアヘビー級の体型であり、柔道の他に中学までアイスホッケーをやっていたというプロレス界では一風変わったスポーツ歴を持っていた。
 後楽園ホールでのデビュー戦後には「まず世界ジュニアを獲りたいです。最年少(での戴冠)を目指したいです」と展望を語り、目標とする選手の名を聞かれると「目標とするレスラーはいません。僕は唯一無二を目指していきたいと思います」と即答する大器の片鱗を見せていた。

 だが5月31日全日本プロレス道場付近の路上付近で長尾さんと巡業バスが接触。横浜市内の病院に運ばれ治療を開始した。腹部が圧迫されたことによる外傷性ショックによって集中治療室で予断を許さない状況となり、9月6日早朝に容態が急変。9月7日に敗血症により亡くなった。

 再発防止策として、外部の運転手への委託により運行していた巡業バスを、事故発生後は外部のバス運行会社に委託する形に変更することに。またバスの乗降は周辺を十分確認し、安全の確保を第一での運行を徹底する形へ。本案件は日本プロレスリング連盟に本件の報告を行い、周知啓蒙する形となった。


 人懐こい性格や愛嬌で先輩たちに可愛がられ、ひたむきに上を目指す長尾さんはファンから強く愛されており、長尾さんの訃報にはプロレス界に衝撃が走った。選手たちだけでなくファンも心の整理がつかない中で開催された今大会では長尾さんの献花台が用意され、試合開始前には追悼セレモニーが行われた。

 この日の出場選手たちは、長尾さんのコスチュームカラーであった緑のリストバンド等を身に着けて登場。
 リング上には選手会長である宮原健斗が長尾さんの写真を持って、長尾を“先輩”として慕っていた鈴木秀樹が御遺骨を持って登場。ファンのすすり泣く声がこだまする中で追悼の10カウントゴングが鳴らされ、観衆は大・一大心コールで見送った。


 今大会のメインイベントでは、宮原健斗が歴代最多3度目の王道トーナメント優勝。
 マイクを取った宮原は「一大心はこの全日本プロレスのプロレスラーであることに誇りを持っていました。だから僕たち全日本プロレスは一大心が誇ったこの全日本プロレスのリングをさらにキラキラしたものにしていくんだと言う気持ちで前を見ていきます。プロレスファンの皆さんに1つお願いが。プロレスラー・長尾一大心のことを胸の中に思い出して日々を過ごしていただけると嬉しいです。また明日から一緒に前に進んでいこうと思います。やっぱり一大心にとってカッコいい先輩でいなきゃダメだと思うから」と胸中を吐露。
 最後は「全日本プロレス、そして長尾一大心!最高ッ♪」と長尾さんに捧げる最高マイクで大会を締めた。

 宮原はファンの前で長尾さんへの思いを語ったが、今大会の試合後インタビューでは多くの選手が長尾さんについて言及していた。

 大森北斗は「アイツのことを思い出すとな、アイツは常に笑顔だったんだよ。常に笑顔のアイツしか思い出せないから、正直言ってまだ実感するのには時間がかかる。だけどさ、アイツしかいないよ。ロビーで俺と羆嵐が呑んでるときによ、やっぱみんな変な奴を見る目で、なんならゴミを見る目で見てくるような奴もいるのに、アイツだけはさ、笑顔で俺に『僕も一緒に呑んでいいですか』なんて言うんだよ。だから、アイツのことが本当に好きだったんだよ」と長尾さんへの思いを述懐。


 そして、ひときわ熱い気持ちを語ったのはOSW所属の小藤将太。
 小藤は全日本にレギュラー参戦中であり、他団体の選手ながらキャリアや年齢の近い長尾さんとライバル関係であると同時に絆を育んできた間柄。長尾さんの生前最後の試合となった5月18日の大田区総合体育館大会ではシングルマッチで対戦して敗れている。
 
 他団体選手で唯一長尾さんの火葬に立ち合って見送ったという小藤は、涙で声を詰まらせながら「俺は、アイツの代わりにはなれないかもしれないけど、これからもアイツの永遠のライバルとして、アイツは俺の心の中で永遠に生き続ける。いつだって俺を鼓舞してくれる。それが長尾一大心です。全日本ファンの皆さん、そして全日本の皆さんに1つだけ聞きたいことがあります。彼が、長尾一大心が愛したこの全日本プロレス、僕も愛していいですか?」とファンに問うた。

 他にも、ライジングHAYATOは長尾さんと一緒に練習していた変形スイングDDTを“ナガオDDT”として使い続けることを宣言したり、鈴木秀樹が「僕がこういうこと言うと一大心喜ぶと思うんで。くっだらない見出しをつけるクソマスコミはぶっ飛ばそうと思いますね。バーカ!って言ってやりますよ。お前らなんか取材させねーよ、バーカ!って」と寂しそうに笑いながら一部メディアを批判したりと選手たちの心のなかにはそれぞれ様々な感情が渦巻いている様子が見て取れる。

 警察の調査が入っていることもあり、現時点ではまだ今回の件の全貌を明らかにすることは出来ない。
 不十分かつ不完全な情報を基に今回の件を論じたり、心に傷を負った選手たちの内面に土足で踏み込んだりすることなく、前に進もうとしている選手たちを後押しするような形での応援を心がけたい。

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