里村明衣子が30年のプロレスラー生活を終え引退!アジャコングが「お前との闘いは来世に持ち越しだ!」と永遠のライバル宣言

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 29日、東京都・後楽園ホールにてセンダイガールズプロレスリング『里村明衣子 THE FINAL』が開催。里村明衣子が30年の選手生活に幕を下ろした。

 里村は長与千種の弟子として1995年4月のGAEA JAPAN旗揚げとともにデビュー。
 GAEA解散後はセンダイガールズプロレスリング(仙女)を旗揚げし、 “女子プロレス界の横綱”の名をほしいままにする重鎮に。
 2019年からはWWE(NXT)の臨時コーチを務め、後にWWEとコーチ兼選手契約。NXT UK女子王座を戴冠するなどの活躍で “日本の女子プロレス”を世界に向けて発信してきた偉大な選手として世界に評価され続けている。
 昨年7月、里村は自身の30周年となる2025年4月29日の後楽園ホール大会での現役引退を表明。約9ヶ月の引退ロードを全力で駆け抜け、もうすぐ引退するとは思えない圧倒的な強さを見せつけてきた。

 里村の引退試合は、里村明衣子&愛海vs橋本千紘&アジャコングのタッグマッチ。
 対戦相手には永遠のライバルであるアジャと、仙女のチャンピオンであり後継者的存在の橋本。パートナーには、これから仙女の未来を背負っていく若手の愛海が抜擢。これは「ネームバリュー的に全然足りないのはわかってます。でもそれを裏切ってほしい。彼女にはそれができる」という里村の期待によるチョイスだ。


 里村の入場後には、“女子プロレス界の横綱”の異名の名付け親でもある小橋建太から花束が贈呈。
 里村の選手コール時に真っ赤な紙テープがリングを埋め尽くす中、橋本は涙をこらえつつも決意に満ちた表情で里村をじっと見つめる。

 試合は里村と橋本の対面からスタート。互いが歩んできた歴史を確かめ合うかのようなじっくりとした基礎に忠実なレスリングが展開されていき、静かな緊張感が場内を包む。その後は愛海が捕まる展開となるも、折れることなくドロップキック連打で猛反撃。愛海が腕固めで橋本をギブアップ寸前まで追い込む場面を作るなど意地を見せる。
 再び里村と橋本の対面となると、2人は真っ向からバチバチの殴り合いを展開。里村のデスバレーボムを受けきった橋本がフライング・ラリアットからパワーボムで叩きつけるもカウントは2。あとはオブライト狙うしかない状況であったが、橋本は泣きそうな表情で立ち尽くすばかり。アジャが「迷ってんなら帰ってこい!」と助け舟を出し、タッチを受ける。
 アジャが里村にバックドロップ3連撃。さらに近年は滅多に見せなくなっていたトップロープからのダイビング・エルボードロップを放つが、被弾しながらもこれをキャッチした里村が三角絞め。里村はスコーピオ・ライジングを狙うも、アジャが裏拳で撃ち落とす。さらにアジャが一斗缶を持ち込むと和田京平レフェリーがすっ飛んでくるが、アジャが「最後なんだから使わせろ!」と恫喝。するとなぜかOKが出たためレフェリーの眼前で里村の脳天へ一斗缶を叩き込む。耐えた里村がハイキックを見舞うも、アジャが倒れ際に裏拳を見舞ってダブルダウン。
 ここで迷いを吹っ切った橋本が「アジャ!来い!」とタッチを要求。アジャは試合権利は譲らず「持っとけ!オブライト!」と指示。橋本のオブライト+アジャの裏拳の合体攻撃を狙うが、ここに愛海が雄叫びを上げながら突っ込んできてドロップキックを猛連打。愛海が捨て身で作った隙を逃さず、里村がアジャにスコーピオ・ライジングを叩き込んで3カウントを奪った。

 里村の引退セレモニーが始まろうとしたところで、アジャが「ちょっとストップ!」と進行を止める。
 その後、アジャは「思えばな、お前との試合はいつもこうやってどっちかがぶっ倒れて、オメーがぶっ倒れたときは俺が上からマイク持って嘲ってたのによ、チキショー。最後の最後で……クソッタレが!だが言っとくぞ!お前との闘いは来世に持ち越しだよ!今世の闘いはこれで終わったかもしれないが、1つだけ。本当に1つだけ。お前の引退試合で悪いんだけど俺の最後のワガママ聞いてくんねーかな。5分、5分でいい!俺とお前で一緒のコーナーに並び立て!里村明衣子とアジャコングが組んで試合させてくれよ!俺と里村が自らの意志で組むんだよ!相手は誰でもいい。やりてー奴出てこいよ!」とぶち上げる。

 橋本が対峙する意志を見せると、試合を見守っていた暁千華、YUNA、彩羽匠、岩田美香もリングに乱入。アジャが「まとめて全員かかってこい!」と吼え、2vs5のハンディキャップマッチ5分1本勝負が緊急決定。これからの女子プロレスを背負っていく若者たちが里村&アジャと対峙した。


 試合内容はグチャグチャの一言。しかし、各々が我先にと飛び出していって里村への思いをガムシャラにぶつけて行く光景にはこの日一番の大歓声が飛び、最も観衆の心を揺さぶる試合となった。
 この試合中には引退試合の定番であるサヨナラトレインも繰り出されたが、突然乱入してきたシン・里村明衣子の攻撃のみ失敗し、里村のデスバレーボム&アジャのダイビング・エルボードロップを被弾してKOされるというユーモラスな場面も見られた。
 橋本がアジャ&里村をダブルラリアットでなぎ倒し、里村にパワーボムを狙う。これをアジャが一斗缶でぶん殴ってカットし、裏拳で追撃。アジャが橋本をガッチリとホールドしながら「里村!俺ごと来い!」と咆哮。里村がアジャごと橋本にスコーピオ・ライジングを叩き込むと、ここで時間切れ引き分けを告げるゴングが鳴った。

 アジャは「里村明衣子、最後の最後に俺のワガママ聞いて並び立ってくれてありがとうございました。ただ!やっぱりお前は横にいたら気が合わない。やっぱり向かい合ってなきゃ無理だ。だからさっき言った通り、続きは来世だ。今日、里村明衣子というプロレスラー、選手としてのリングは1回降りるかもしれない。でもセンダイガールズを率いてこれから色んなもんをどんどん世に送り出していくんだろ?だったら俺はまだお前との勝負はまだ終わってないと思ってる。お前が送り込んでくる奴ら全員、これからもどんなボロボロになろうが俺はこのリングでぶっ飛ばし続けるよ。俺がお前に出会って30年、俺がここまで生き残ったのは、里村明衣子、お前の責任だからな!お前がアジャコングをここまで生かし続けたんだ!それだけ忘れんなよ。こんなバケモンで亡霊みたいになってもいるのは、里村明衣子、お前と出会っちまったからなんだよ!後輩のクセに何やったって気持ち折れねーで、どんだけぶっ壊してやろうと思ってもぶっ壊れねーで、ムキになればなるほどもっとムキになって返ってくる。こんな打てば響く奴、同期や先輩にはいたけど、39年間やってきた中で後輩にここまで生かされるとは思わなかった。それは里村明衣子、お前だからだったよ。そこに関してだけは本当にどうもありがとうございました!」と言葉をかけて座礼。里村も涙で顔を歪ませながら向かい合って座礼で返し、しっかりと抱き合った。


 その後は改めて里村明衣子引退セレモニーが開始。
 まずは、スクリーンにカイリ・セイン、イヨ・スカイ、ASUKA、棚橋弘至、中邑真輔、デビル雅美さんからビデオメッセージが映し出される。
 その後、里村のご両親から花束を贈呈。続いてKAORU&永島千佳世&シュガー佐藤&カルロス天野&加藤園子&伊藤幸子&植松寿絵&輝優優&水波綾&沼尾マキエ&シン・広田さくら&松本麻依子が合同で花束および記念品を贈呈。
 続けて、ブル中野、北斗晶、ライオネス飛鳥、長与千種が登場し花束を贈呈。長与がライオネス飛鳥を呼び込み、クラッシュ・ギャルズの2人で里村を挟んで記念撮影を行うと、場内からは大歓声が上がった。
 大トリを飾ったのは新崎人生。センダイガールズの生みの親とも言える2人は目に涙を浮かべながら2人だけの世界で言葉を交わし合った。

 最後に里村は「今日は私の最後の引退試合にご来場いただきまして本当にありがとうございました。今日は私がデビュー時からお世話になった大先輩と、そして育ててくださった先輩方、同期、そして後輩。皆さんにこうして出場していただいて、そして皆さんにこれだけ盛大に応援していただいて本当に幸せだったんだなと思います。私がデビューして30年間、まったく思いが変わらないのは、プロレスって素晴らしいって、プロレスの世界って素晴らしいなって、ず~っと思ってきました。自分がデビューした頃は先輩方の輝く姿を見て『自分もスターになりたい!』『自分がこの業界を引っ張っていくんだ!』と決めて頑張ってきました。10年目にして団体は解散しましたが、またセンダイガールズという道を創ってくださった新崎人生さんに導かれて仙女をこうして引っ張っていく立場になり、そこから20年。うまく行かない時もありましたが、それでもプロレスって素晴らしいなって思いながら、もっともっと良い世界にしてやる、みんなが誇れる世界にしてやるってずっと思ってやってきました。自分自身、夢以上のものをいただきました。本当に人に恵まれました。でも、叶わなかったこともあります。レスラーとして叶わなかったことは次のステージに行ったときに必ず実現してみせます。私はこれからもプロレス界に人生を捧げていきます。今日からプロレスラーではなくなりますが、もっともっとみなさんと夢を見ていきたいです。センダイガールズ、これから引っ張っていくのは実は後輩じゃなくて自分自身がもっと頑張らないといけないなと思ってるので、明日からまたプロレスに人生をかける里村でいますので、これからもよろしくお願いします。本当に、30年間皆様応援ありがとうございました!」と挨拶。
 引退の10カウントゴングから最後の選手コールが行われ、再びリング内外を埋め尽くす赤い紙テープが舞った。


 試合を終えた里村は「まだまだ出来ますよ。もっと頑張ったらもっと色んなチャンスがあるんじゃないかなと思います。でも、これからの人生、次のステージのほうがだいぶ長いんで、身体が元気なうちにそっちに切り替えたいっていうのがありますね。私のスタイルって怪我のリスクが高いんで、なにかあったときに責任取れないです。だからこうして何もどこも怪我のない状態でリングを降りられたっていうのは本当にありがたいですね」と晴れやかな表情で語る。
 “次のステージ”について話が及ぶと「緊張感とかプレッシャーとか、立場を背負うことをずっとやってきましたけど、明日からはそのプレッシャーを違う方向に注ぎ込みます。背負うものってこれからも一緒だと思うんで、プロレス界の裏方に回る気はあんまり無いですね。リーダーとしてちゃんと牽引していきます。今日クラッシュ・ギャルズのお2人が並んだときに、すごい歓声だったじゃないですか。やっぱりあの時代は本当にすごいんですよ。女子プロブームを起こしたいですね。そのためにスーパースターを育てるのが目標です」とビジョンを語った。

 リング上で闘う者としての里村明衣子は今日で引退したが、里村のプロレス界での闘いはこれからもまだまだ終わることはなさそうだ。

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