【インタビュー】俳優デビューを直前に控えたエル・デスペラードが感じた葛藤と挑戦!「プロレスラーが表現するのって自分の生き様なわけじゃないですか?俳優さんが表すのって他の誰かなんです」

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 『五等分の花嫁』原作者・春場ねぎによる週刊少年マガジン連載の新作漫画『戦隊大失格』が、アニメ化を経て実写舞台化が決定。『戦隊大失格 ザ・ショー』として9月11日~16日の間、東京ドームシティ・シアターGロッソにて開催される。
 本公演に新日本プロレスのエル・デスペラードが、主人公・戦闘員Dにとって重要な役となる戦闘員F役で俳優に初挑戦することが決定した。

 本公演に先立ち、9月9日新日本プロレス後楽園ホールの第0試合にて【『戦隊大失格 』ザ・ショー コラボマッチ~大戦隊軍vs怪人軍~】“大戦隊軍”永田裕志&田口隆祐 with レッドキーパー(武子直輝)vs“怪人軍”戦闘員Y&戦闘員N with 戦闘員D(富永勇也)&戦闘員F(エル・デスペラード)も決定。
 まさかの“俳優”エル・デスペラードとして新日本プロレスに登場することとなったが、現在稽古中のエル・デスペラードに本番に向けての思いを聞いた。


――まず舞台への出演のお話を聞いた時の心境をお聞かせください
「戦闘員Fという役をやってほしいと言われて、逆に僕でいいんだろうかと。作品名は知ってましたけど失礼ながら読んだことはなくて、まずアニメを見て『ああなるほどこの人か』というのがわかったうえで原作もう一回読んで。多分ここの部分のキャラクターの心情を表せる喋り方をしてほしいんだろうなというのはわかりました。僕は6月10日に『DESPE-invitacional(デスペ・インビタショナル)』という興行を後楽園ホールでやらせていただいて、その時に毎試合テーマというか、なぜこの試合を組んだのかみたいな説明を入れるナレーションを録ったときに、今回オファーしていただいた人が喋ることのちょっとした能力というものに気づいてくれて、それでFを活かしてくれと言っていただいたので、僕にできることだったらありがたいなという気持ちで受けました」

――戦闘員Fにシンクロする部分があるとのことですがどの部分に感じますか?
「原作を読まないで舞台からスタートしてくださる人にネタバレになっちゃうだろうからこの辺はふわっと飛ばしていただいていいんですけど(苦笑)そうですね、皆さんがもう原作を知っているていで話させていただくんですが、2.5次元は原作があってそれが舞台化する、アニメがあってそれを舞台化するというものだと思ってまして、やはり原作のファンの方が多く見てくれるのがこういう舞台なんだろうなと。門外漢なのにそんな事言って偉そうにすみません。原作でこのキャラクターに愛情がある、このキャラクターが好きだ、あの人にどういうふうに演じてもらうのかなっていう見方をする人がいっぱいいると思うんです。Fは原作とアニメでは結構落ち着いてるんですよ。その分、達観してるというかちょっと諦めてるというか。もう足掻いたってしょうがないじゃん、もうこうなっちゃったんだから諦めようみたいな、若干後ろ向きに前向きというか、これキープしてりゃいいじゃんっていう状態なんですね。でもDに触発されて行動おこしてっていう部分があって。僕もプロレスラーとして、どうしても一皮剥けないというか、人様に見に行こうと思ってもらえるようなものを提供できない時代が長くて、それって結構、Fと同じなんじゃないかな?僕はその時足掻いてはいたんですけど、結構な無力感というか、絶望までいかないですけどこれはもうしょうがないなと半分諦めてるような状態で。でも、やっぱりいろんな人の試合や活躍を見てジェラシーもあったし、実際尻を叩いてくれたり背中を押してくれたり上から引っ張ってくれるいろんな人がいて、前を向いて前に向かって進んでいって今のプロレスラーとしての僕があって、FもDに気づかされて行動を起こして、まあ言っちゃえばFは死んじゃうんですけど、死んじゃう時に最後に言った一言が、彼はそれで良かったんだろうなと思うんですよ。彼らの本当の目的は全然達成されてないんですけど、無駄にダラダラダラダラ、なんとなく毎週毎週やらなきゃいけないことをこなして、人間は無駄に生きているとかっていうのはないんですけど、戦闘員って死ねないわけじゃないですか?永遠の存在だから、本当に“無駄に生きてる“になってしまうんですよね。だからその無限のような無駄な時間を、ちゃんと有意義に終われたんじゃないかなと思うと、僕がどうしようもなく上がり目がなかったところからようやく人に見てもらえるステージに上がれたっていうことにすごく勝手にシンパシーを感じて、彼が思ってたこととか感じてたことって俺も表せられるんじゃないかなっていうのが結構大きくて。稽古中は、Dをやられてる富永勇也さんと演出の久保田悠来さんに相談させていただいて、僕がこれでいいのかなって、でもあの2人からステージに関して、漫画とかだと読んで休んで自分で自己保管するけど、舞台とかアニメってどんどん進むじゃないですか?だから自己保管してるんじゃなくて、与えられた状況で情報でしか自分の中で物語を構築できないと思えば、やっぱりそのFとDの関係値っていうのはこっちからバコン!て表さなきゃいけないってとこまで気づいてなかったんです。その時にこのお二人に、今のままだとちょっとDとFの関係が薄いと思うんですよね、そこを表したいんですけどどうしましょう、って相談をしていただいた時に、すごく嬉しくて。じゃあもっとやっていいんだ、じゃあこういうのはどうでしょうか?ああいうのやってみようと思います、って聞かれたことに対して自分からも提供できるようになってきました」

――実際に稽古に初めて入ったときの印象ですとかプロレスにどういった影響を与えるかは
「まだ舞台というものをちゃんとお客さんの前でやっていないので、今例えば舞台をやったと仮定してリングに復帰したとしても、どうなるっていうのはまだわからないです。多分舞台を経験して体を取り戻す練習をしてリングに戻った時に初めて感じるはず。今は正直想像もつかないんですけど(苦笑)、多分たくさんこうやって稽古場でいろんなことを相談させてもらっていろんな資料をいただいて、一緒にやることが多い仲間たちとワイワイやりながらいろいろやってることが絶対何かプラスなことを与えてくれているはずなんですけど、それを自分でわかってるかというとまだわかってない状態です。僕が稽古に合流させてもらった時に、一番最初に海田波知くんが喋ってくれてよろしくお願いしますって言ってくれて、もちろん稽古場のみんながすごくフランクに話してくれるし、プロレスに関しても練習の仕方や食事とかについてすごく気さくに話してくれて。初日から助かるな、楽しいなって思えたんですけど、一番最初に声をかけてくれた波知くんが、オープニングとエンディングの相当難しい部分をもうつきっきりで何十回も一緒にやってくれたのはすごく助かりましたね。」

――元々舞台に興味があって見ることはあったんですか?
「舞台を見ること自体はとても好きで、最近で言えば、すごい残念なことにウマ娘の舞台のチケット買ってたらコロナの影響で一週間ぐらいその舞台が中止になってしまって。「DESPE-invitacional」の翌日にリコリス・リコイルの舞台を見る約束してたら身内の都合で行けなくなって。2.5次元見る前に出ることになりました(笑)」

――自分が先に出ちゃったと
「おかしいなと思って(苦笑)2つとも配信で見てるからいいんですけど」

――そこに自分が出ることを自然と受け入れられた
「戸惑いはありましたね。そもそも稽古場の作法が分からないんですよ。分かることっていうか、僕が何を分からないのかが分からない、という状態になっちゃって。だからマネージャーと話して、稽古に参加する前にレッスンに行って本読みとか心構えを教えてもらってという段階は相当踏みましたね。」

――ちょうど欠場期間に被って、欠場期間を有意義に過ごせてるという意識は
「目的意識を持って動けるというのはすごくありがたいですね。復帰までに身体を戻そうというのは結構ゴールが決めづらくて、モチベーションに響くんですよね。ウエイトトレーニングもやるけど、それよりやっぱり動く練習がとにかくしたい、という風になって来た中で、舞台で脳みそ使う、導線を切られている、人がいる、殺陣がある、自分がやるFという役がその時何をどういうふうに考えてこんなこと言ってるのか、セリフを読んで自分の中で構築して、とかすごく充実してます。リハビリを続けながらの稽古は、正直身体的にはシンドいです。だけどそれを超えてめちゃくちゃ楽しいです。プロレスラーが表現するのって自分の生き様なわけじゃないですか?俳優さんが表すのって他の誰かなんですね。それってすごいなって。実際やってみてFになるというか、Fだったらこう考えるっていうのを自分でやる作業自体が、新しい試みですごく楽しいです」

――練習開始から本番まで約1ヶ月ですね
「必死も必死ですよ(苦笑)普通に出てくる紗幕という単語が分からない、その他の舞台用語がわからない…。紗幕とは?と聞けないし…本当はよくないですけどね。ちゃんと知ってないと、使ってみたら違ったみたいな」

――SNSでは菊タロー選手から『舞台の経験はプロレスに活かされる』という言葉もかけられていましたが、稽古中に実感することはありましたか
「まだ舞台の稽古をしてからプロレスをしていないので、こればっかしは復帰しないと(苦笑)練習しても多分出てこないと思うんですよね。お客さんのいる前でロックアップして受け身とって、その時初めてわかるんじゃないですかね。自分で実感するかどうかも怪しいです、変わったって言われるかもしれないですけど。」


――俳優エル・デスペラードとして9日に新日本プロレスでコラボマッチにセコンドとして登場されますが、外の業界とこういう形でコラボレーションを行うという事に関しては
「嬉しいですよね。業界を全部ひっかきまわしたいです。プロレス界を外に広げたいですし、今回やってわかったんですけど、舞台でやっておられる周りのアンサンブルの仲間たちとか、主演の富永さんだったり、一緒に試合のセコンドにつくレッドキーパーの武子直輝さんだったり、すごい人たちでかっこよくて面白くて。どちらの業界にももっと開かれてもっと見つかっていいはずだっていうのは非常に感じました。もっともっとみんなが人に見つかって欲しいという意味で、二つの業界が一つの興行に、例え第0試合で、10分15分それぐらいしかないかもしれないですけど、新日本のリングでそういうことが起きるというのは大きいんじゃないかなと思っています。」

――新日本にもそういう外からの人間だったり外から見られる要素っていうものを取り込んでいきたい
「そうですね。新日本プロレスが守るべきラインというものを守りつつ、その業界いろんな業種とのミックスアップっていうのはあっていいと思っています」

――先ほど舞台リコリス・リコイルのチケットを買っていたという言葉もありましたが、そのリコリス・リコイルの舞台を手掛けているOffice ENDLESSから声がかかって出演という形になりました
「振り付けの先生が振りを教えてくれてる時に、立ち位置の資料をタブレットで見せて下さって必死で見ていたんですが、パッと横見たらリコリコのステッカーが貼ってあってそっちばっかり気になっちゃって(笑)ダメダメって思いながら、稽古が全部終わって上がらせてもらう時に先生に『リコリコお好きなんですか?』って言ったら、『舞台の振りやったの私なんですよ』って言われて、見に行けなかったんですって話をしました(笑)」

――『戦隊大失格』の原作に対しての印象は
「僕が中学校ぐらいの時に思ってたことをそのまま具現化されているなと思いました。僕はどちらかというとウルトラマン見てても怪獣が好きなんですよね。毎週デザインが違うし、やることも結構えげつなかったり。そして目的意識がちゃんとはっきりしてる。どちらかというと感情移入というか熱を持って見てたのはダークサイドの方で。仮面ライダーBLACKも、BLACKよりシャドームーンの方が好きでした。この作品はそこをここまで掘り下げていて、どっちかというと戦隊の方がやってることえげつないじゃないですか?こんな作り方するんだっていうのは面白かったですね」

――作品としても見方を変えて戦隊と怪人達のあり方みたいなものの根底をひっくり返していて、デスペラード選手も”ならず者ルチャドール”として「DESPE-invitacional」も目線を変えた所から引っ掻き回していて共通点があるのかなと感じました
「これ多分おふくろのせいなんですよね。僕昔から絵描くのとか好きだったんですよ。でも、普通のものを描くとつまらないって言われたんですよ。おふくろに。正面から見たものしか描いてないからつまんない、もっと色んな見方しなさいと言われて。実際絵を描く時に物質を色んな方向から見るというのもそうなんですけど、物語っていうものを表から裏から考えて読んでみろって言われたんです。小説書いてる人はこれを見て欲しいってものをちゃんと書くじゃないですか?だけど、それで描かれていないそのシーンにいるはず、登場してないけど存在しているはずのそのキャラクターたちがその時何をしてるんだろうと考えるのが、物の考え方だと言われて。与えられたものをそのまま受け取るんじゃなくて、お前が考えろ、変えてみろって言われて、それを小学生の低学年に言うのってどうなのって思うんですけど(苦笑)そこからすごく物の見方はヒネくれましたね。だから佐藤光留さんのことも好きなんでしょうね」

――ちょっと違った目線の作品にジョインをしていくっていうのはなんかすごく意味があるというか整合性があるなという印象です
「これはありがたいことにご縁で参加させていただくんですけど、出る作品に整合性があるって言ってもらうのはすごく嬉しいですね」


――俳優業をやるにあたって、稽古に入る前の時点で舞台の世界のこういうところを見てみたいだとか、こういうところを吸収したいなと思っていた部分は
「なんか盗んでやろうというのが正直なくて、全力でとりあえずやらないと失礼だ、ということしかない。なんか持って帰ろうっていうのはなくて、やったことが結果自分のプラスになることはあるんでしょうけど、これをもってプロレスに帰ってプロレスで役にたてようっていう発想は今のところ一個もないです。それは帰った時に何か見えてくれたらいいなと思うんですけど、僕がこの舞台に上がらせていただくことの価値は、この舞台に上がれたことで完結するので、おまけとかは正直いらないです。舞台に上がれて、今のこのメンツと初舞台というものをやらせていただくっていうのが、僕の『戦隊大失格』ザ・ショーのゴールなんで。これでリングに戻った時に戦闘員なみに弱くなってたら、ザ・ショーのせいだと思ってください(笑)」

――試合と同じく目の前のことに集中して全力投球というかそういう気持ちで
「これ言うとなんかちょっと変に受け取られるのも怖いですけど、今はこの舞台のことしか考えてないです。もちろんプロレスラーなんで、体のつくりのことも考えるんですけど、逆に稽古でクタクタなんで、今はウエイトとかは一切やってないです。一生懸命稽古して、本当くたびれてるんで。ちゃんとご飯食べて、ちゃんとリハビリもして。稽古前にみんな腹筋とかストレッチを、ウォーミングアップとしてやってるんです。息上がるぐらい。それに僕も一緒に参加させてもらって、一緒にプランクやったりとか、プッシュアップやったりとか、腹筋ローラーやってみたりだとか、皆で楽しく自分のためにやっていて、それに参加して、あくまでこの舞台を一生懸命やるっていうところで今完結してますね」

――最後に9日のコラボマッチと舞台への意気込みをお願いします
「ストーリー前半の結構重要なことを言わせていただくというか、Dにとって結構大きなことができると思うと、初舞台でこんな大事な部分をやらせていただくなんて本当に嬉しいし光栄です。今回コラボマッチで後楽園ホールに武子さんと富永さんが来ていただきますが、逆にこっちは僕のステージなんで、何も分かんなくて右往左往していた僕をすごく優しくケアしてくれた2人のことを、僕がケアできたらなと思っています。第0試合でプロレスとしてちゃんと面白くて、それが『戦隊大失格』ザ・ショーに興味を持ってもらえるきっかけになったら嬉しいなと思いますし、実際のショーはもう稽古場では100点出してステージに上がるのは当たり前だと思っているので、それを目指して今頑張ってます」

『戦隊大失格』ザ・ショー
日程:2024年9月11日(水)~9月16日(月・祝)※全10ステージ
会場:東京ドームシティ・シアターGロッソ
【公式HP】https://officeendless.com/sp/daisentai_show/
【主な出演者】
富永勇也/菊池修司/まるぴ/関隼汰/宮脇優/エル・デスペラード/高橋光/武子直輝/他

【回替わりゲスト】※全日程回代わりにて特別ゲストが出演
中村嘉惟人(手裏剣戦隊ニンニンジャー:キニンジャー役)/鈴木裕樹(獣拳戦隊ゲキレンジャー:ゲキレッド役)/横山涼(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー:パトレン2号役)/タカハシシンノスケ(暴太郎戦隊ドンブラザーズ:ソノザ役)/松本寛也(魔法戦隊マジレンジャー:マジイエロー役)/渡辺碧斗(王様戦隊キングオージャー:トンボオージャー役)/谷口賢志(救急戦隊ゴーゴーファイブ:ゴーブルー役)/細貝圭(海賊戦隊ゴーカイジャー:バスコ・タ・ジョロキア役)/南圭介(宇宙戦隊キュウレンジャー:ホウオウソルジャー役)/久保田悠来(仮面ライダー鎧武:仮面ライダー斬月役)

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