【ボクシング】「日本刀のようにズバっと切って落とします(ニヤリ)」8.27OPBF東洋太平洋タイトルマッチに挑む和氣慎吾インタビュー!
2006年デビューから18年、今も激戦のスーパーバンタム級で戦い続ける"ナイスリーゼント"和氣慎吾。あくまで世界へのステップだと語る不屈の男に改めてお話をお聞きしました!(聞き手:スレンダーKG)
――いきなりですが細川バレンタインさんとのyoutube、面白かったです(笑)。バレンさんとは以前から面識が?
「ふふ、ありがとうございます。やっぱお互いボクシングやってると会場で会ったりとかするし、そしたら『あ、知ってる』で挨拶もするし、試合会場で席が隣になって普通に喋ったりとかですね」
――「バカっぽい感想」とか言いながらもちゃんと分析してたり、ものすごく楽しそうでした。終盤のピーピー部分もぜひあれこれ想像して欲しいですね(笑)
「もうね、あれ僕も言った直後に『あ、これ絶対駄目だな』と思ったんですけど、収録終わりで速攻向こうの編集の方から『あれちょっと使えないっすね(汗)』って(笑)」
――今回のOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチ、連勝で勢いに乗る中での挑戦になります。
「勢いはそんな気にはしてないんですけど、普通に、純粋に相手を見て、全然勝てる自信はあります。実力差ですね。勢いとか関係なくもう全然実力的に自分の方が上だなっていう自信はあるんで」
――中島選手はハードパンチャーの印象があります。しかしひとつ前の試合は何かテクニカルというか、出入りを使うような感じでした。
「対戦相手によって戦いのスタイルって変えてかなきゃ勝てないんで、そういう意味で前回の試合はああいう戦い方になったと思うんです。でも大きく自分のファイトスタイルを変えるって難しいんです。ボクシングのスタイルって『アウトボクサー』『ボクサー』『ボクサーファイター』に『ファイター』と大きく四つぐらいに分類されるんですけど、めちゃくちゃファイターのやつがアウトボクシングできるかってのは絶対できないし、ファイターのやつがボクサーファイターぐらいにはなれるけど、いきなりアウトボクシングは無理だしっていう。だからチャンピオンの動きから見るとそんなに変化はないだろうなと」
――かつて保持していたベルト(2013年3月戴冠、5度防衛の後返上)、思い入れはありますか。
「言うたらもう11年前に獲ったベルトではあるから、正直そこまでこだわりは無いです。これが初めてのタイトルマッチだったら、思い入れとかすごい変わってくるかもしれないですけど、既にそこを経験してクリアして、世界を目指してやってたんで。もう一回世界を目指す、そのための今回かなって思ってます」
――2013年から11年、今もトップランクにいてタイトルマッチという。
「今回ね、東洋太平洋タイトルマッチではあるけど、自分的にはもうそこは関係なくその先を見てるんで、世界に行くためのステップアップとして今回のタイトルマッチがあるっていうだけです。これに勝てば世界ランクにも入るだろうし、そしたら一気に(世界に)近づけるんでね」
――大人の10年、11年ってもうその間に道を変える人がいっぱいいるじゃないですか。維持するだけでもそれはそれは。
「いやいや、でもやっぱりこの11年間で自分もいろんなね、挫折を繰り返してきてるし、順調に行ってるわけじゃないからそれはやっぱりね、いろいろありますよ」
――「世界を目指してやってみた。けどまたやり直し」という、それをくじけずやり続けるのが凄いなと思っています。
「それが自分の強さだと思います。それこそ自分の歴史をたどると、2013年に東洋チャンプになりました。それから5回防衛して返上、2016年に世界タイトルマッチに挑戦、そのときランキング世界1位だったんですね。そこで負けて世界ランク外れて1年間休養して、ジムも変わったりで再起して。そっから連勝バーってして世界ランカーにも勝ってランキングもまた世界2位ぐらいまで上がったんです。その『次は世界タイトルマッチだ』っていう時に、フィリピン人選手呼んで試合やったんですけど失神KO負けしちゃって。1ラウンド2ラウンド圧倒してみんなが『そろそろ勝つな』と思った瞬間にKO負けされて世界ランク外れた。そっからまた再起してバンバンって勝って今度は井上拓真です。WBOアジアという地域タイトルマッチが決まって、これもやっぱ自分も勝ったらまた世界に近づけるっていうのでもう燃えて。でもそれに負けてまた落ちて。そっからまた這い上がってる時に肩脱臼してまた負けて。二、三年かけて上がってってまた一瞬で落ちてるっていうのを繰り返してます。でもやっぱり自分の中でここまできたらもう、簡単に諦められないですよ」
――ああ、ぐっとくる…。
「脱臼して負けたときも、正直もう辞めるだろうと思った人もいっぱいいたと思うんですよ。でも自分の中じゃ、これじゃあやめれないしまだ出来ると思ってるし、みんながまた期待してくれてるし、だから『やろう!』と。自分が出来るって思っててもみんなが期待してくれてなかったら、結局プロのリングなんで応援してくれる人がいなかったらリングに上がれなくなるんです。でもみんなが応援してくれてる、期待してくれてる、じゃあ自分がまだ動けるんだったらやるしかない。っていう感じで続けてます」
――数年単位の上がり下がりでこのメンタル、やっぱりすごいと思います。
「特にね、ボクシングって17歳でプロテスト受けて以前は37歳で定年っていう、17から37の最大20年間しかボクシング人生ってないわけなんですよ。今はもう定年撤廃されたから別に関係ないんですけど本当に競技人生がめちゃくちゃ短い。まあ17でプロボクサーになって37までやる選手もなかなかいないですけど、本当に20代半ばで引退する人ばっかりだし。だから競技年数はもうみんな10年もないんじゃないかなっていう」
――現役わずか10年、確かに短いですね。そんな中で和氣選手は18年やり続けてます。
「それこそ僕が東京出てきてプロボクサーになった時に産まれた子たちが今18歳ってことですからね。もしかしたらその子たちと試合する可能性だってあるわけで。面白いっすねそう考えたら(笑)」
――上手くいくこともいかないこともある、でも諦めなければチャンスは来るんだと体現する凄く良い試合になりますね。
「でもやっぱりそれはね、『チャンスが来るんだよ』じゃなくて『チャンスを掴んでそれを叶えるんだよ』っていうところまで見せなきゃいけないと思ってます。リングに上がって終わりじゃなくて、リングに上がって勝ってそこでひとつ完結する。今回の試合はしっかり勝つことが大事だなって思ってます」
――YouTubeでは「戦闘服を新調します」と。
「そうですね、戦闘服は東洋のベルトに挑戦したときに新調したのが最初で。あの時は相手が無敗でもうめちゃくちゃ勢いのある日本人選手で、すごい強くてこいつは絶対世界チャンピオンになるって言われてる選手に、ランキング入りたての自分が挑戦するっていう構図だったんです。普通に考えたらもう8:2もしくは10人中10人がチャンピオンが勝つって言うぐらいの下馬評だったんですよ。そこで今の会長、当時は全然ただのボクシングファンだったんですけど、『和氣の晴れ舞台やし』ってトランクスとかいろいろ新調してくれたんです。黒ベースでちょっとかっこいいのを。どうせ負けるだろうけど、ダサイ格好して負けるよりかは、ちょっとイイ格好させてやりたいという想いで作ってくれたんです。そこでバーンて勝って。日本タイトル挑戦したときも黒で勝ってるし、やっぱ青コーナーって黒系、挑戦者。赤コーナーは白系、チャンピオンじゃないですか。だから今回も挑戦者という立場でしっかり黒でバシっと決めてっていう感じで作りました」
――刺し色は鋭く光るシルバーですね。
「このシルバーは日本刀の色ですから、ズバっと切って落とします(ニヤリ)」
――おお!左右で刺す・切るファイトスタイルに合ってると思います!
「ふふふ」
――衣装繋がりでもないんですけど、実はワンちゃんのアパレルも展開されていますよね。
「はい、イタリアングレイハウンドっていう犬種のアパレル(イタグレ服【Pippino】)をやってますね。プロボクサー和氣慎吾と直接結び付かないんで強力にプッシュしてるわけでないんですけど(笑)。トレーニングウェアとかだったら結び付きますから」
――リーゼントとも結びつきませんし(笑)。イタリアングレイハウンドに特化してるんですね。
「もともと僕が10歳になる子を飼ってて、10年前ってあんまりイタグレも見かけない状態だったんです。イタグレ自信が毛も短いし寒さに弱くて、冬何て震えちゃって服を着させなきゃ散歩も出来ないんですよ。その頃はイタグレ専門の服屋さんなんてほんとに数える程しかなかったし、なんかカッコイイのも無かったんですよ(笑)。でも専門店があるだけでも嬉しいんです、着せれるから。それを買って着せたりはしてたんですけど」
――もうちょっとスタイリッシュなやつが欲しいなと思っていた。
「ちょうどうちのジムの会長と試合のトランクスとか作りに行った時に、その制作会社の社長といろいろ話をしてる中で『犬の服とか作れないですかね?』って聞いてみたんですよ。そしたら『もう全然やりますよ』みたいな。『え?ホント!?』つって(笑)。帰り道で会長が『(自分も)犬飼ってるし犬好きだし、イタグレの服屋さんやろうよ』って言ってくれて、一緒に立ち上げて4年目ぐらいですかね。だいたいのデザインは会長と自分で決めつつ、デザイナーさんと話して生地選びからやってますね」
――イタグレのファッションも諦めない!それもまた会長きっかけだったんですね。
「そもそも今の会長と自分の付き合いが古くて。会長は赤井っていうんですけど、自分で印刷関係の会社をやってて、ボクシング全く興味ないけどたまたま後楽園ホールで見た時に感動してボクシングにはまった。そっから後楽園ホールに通いまくって。何かボクシングに恩返しできることないかなって思って、印刷関係の仕事してるし、フリーペーパーをやり出したんですよ。で、カメラマンに『アパレルもやろうと思ってるから誰かモデルやってくれる人いないかな』って相談したら、そのカメラマンが僕の知り合いで『和気選手どうですか?紹介しますよ』っていう始まりなんですよ。同じ岡山出身で、そっから応援してくれ出して、後援会作ろうよって動いてくれて、そうこうしてるうちに2013年の東洋タイトルが決まったんですよ」
――フリーペーパーからジム経営に?
「フリーペーパーもやってるし、結構ボクシング界にどっぷり浸かってきてボクシング関係者からも『お前、そんなにボクシング好きならジムやれよ』って言われ始めて。元々山上ボクシングジムだったところをご縁もあってFLARE山上ボクシングスポーツとして運営させてもらうことになったんです。その時僕は違うジムに所属してたんですけど、ジムを移るってことになった時に大手ジムよりも信頼関係のある赤井さんところに行きますって言って移籍したんです。だから選手と会長っていう上下関係で始まってないので、練習ではしっかり切り替えてやるんですけど、ちょっと面白い関係なんですよ。僕よりあの人取材した方が面白いかも知んないな(笑)」
――アップダウンあろうがずっと一緒にやってきたからこそ、youtubeでは和気あいあい感がにじみ出てるんですね。
「たまたま自分は続けられてるだけであって、元々そういう続けれるような人間ではなかったです。その都度、何か救ってくれる人がいたり、手を差し伸べてくれる人がいたりとか。4回戦で負けたときに、『もう辞める。田舎帰るわ』って親父にメールしたら、親父から『わしがこうやって仕事頑張ってるのはお前のボクシングを見るために、お前のボクシングがわしの生きがいなんじゃ』って。そう言ってくれた言葉がすごい胸に響いたんです」
――父親にそう言われちゃうと(泣きそう)
「やっぱ10代にやんちゃして警察にも捕まって親にも相当金銭的にも迷惑かけてやってきてるのに、そんな親父にそこまで言わせるって俺って親不孝やなって。だったらやれるところまでやろうかってまた続けられた。でもそういう言葉がなかったら、普通の親だったら『もう俺、東京で無理じゃ。帰るわ』って子供に言ったらそれこそ早く帰ってこいって言いますよね。そしたら多分本当に辞めて帰ってただろうし、いろんなところでいろんな人に救われて認められて使われて続けられて、やっぱそういうふうに続けてると自分も強くなるんで、多少の挫折でも『まだ頑張ろう』って思えるようになってきたんですよね。やっぱりいきなり挫折が目の前に来ると、まだ頑張るっなかなか思えないと思うんです」
――大きな経験値ですね。最後に来場を迷ってる方が一歩踏み出すような、決意のメッセージをお願いします!
「映像で見るのも手軽でいいかもしれないですけど、やっぱね、会場で見るのって本当に全く別もんだと思うんですよね。それこそ自分が世界戦やったときに、もう本当にボコボコにやられて負けてもうどうしようもなくすごい落ち込んだ時に、テレビで全国生放送してもらったこともあって、いろんな人からSNSにもうめちゃくちゃメッセージが届いたんですよ。負けた俺の試合を見て『感動した』とか『勇気もらった』とか、勝った試合を見て思ってくれてるんだったらありがとう!なんですけど、負けてボコボコになった俺を見て感動したとか勇気もらえたとか俺も明日から頑張るとか、まだまだこんなとこじゃ俺も挫折できないって思わせてもらって。自分が自分のためにやってるボクシングが人のためになってるっていうのがすごい感じられたんです。だからこそ今は『自分の試合を見てくれたら絶対に何かのプラスになる』って、強く自信持って言えます。疑心暗鬼かも知れないけれど、ぜひ観に来てください!」
『Lemino BOXING PHOENIX BATTLE 120』
日時:2024年8月27日(火)
開始:17:45
会場:東京・後楽園ホール
チケット:RS席33,000円/指定A席22,000円/指定B席16,500円/指定C席11,000円/指定D席6,600円/
※チケットのお買い求めは所属ジムまでご連絡を!
FLARE山上ボクシングスポーツ
TEL:0422-26-4560
火~土 10:00~12:00、14:00~22:00
日 10:00~12:00、14:00~18:00 月定休
■プロフィール
和氣慎吾(わけしんご)
1987年7月21日岡山県生まれ、第41代OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者、第41代日本スーパーバンタム級王者。FLARE山上ボクシングスポーツ所属。
instagram:@shingo_wake
youtube:和氣慎吾 リーゼントボクサー
<イタグレ服【Pippino】>
和氣慎吾が愛するイタリアングレイハウンド専門のアパレルショップ。あなたと愛犬の毎日を豊かに彩るブランドを目指し「上質な信頼できるクオリティ」をテーマにカジュアルで機能性にもこだわったイタグレスタイルを提案中。
instagram:@pippino.italian_greyhound
オンラインショップ:https://pippino.base.shop/