【インタビュー】“暴走女“海乃月雫が考える団体愛とプロレスでハッピーとは

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 女優として活動を行っていた塚田しずくは、2020年に舞台で女子プロレスラー役を演じることに。役作りのために初めて見たプロレスに魅了され、その場で直談判し練習生になった。家庭の事情で一度はプロレスラーを廃業したものの、プロレスへの愛は変わらず2022年12月に海乃月雫(うみのつきな)の名で再デビュー。
 押さえきれないプロレス愛を持つ海乃は、今のプロレス界と大好きな団体の現状に我慢ができず“言葉を選ばず”主義主張を行っている。
 時に“暴走“と捕らえられる彼女の本心はどこにあるのか?旗揚げ当初からアイスリボンを取材している記者がその思いを聞いた。

■“廃業”の文字のインパクトが強かっただけ

――まず初めに、海乃選手にとってのプロレスとはどういうものなのでしょうか?
「見ている人に笑顔とかもそうですけど、興奮とか色んな感情を湧かせるものだと思います」

――そう思うのは、ご自身がそう感じていたから?
「そうですね」

――ファン時代に特にそれを感じていた団体や選手は
「あんまり私今、それは言えないです。古巣とかになったりするんで(苦笑)ちょっとあんまり大きい声では……」

――海乃選手は一度はプロレス界から離れた。なぜ戻ってこようと思ったのか
「今アクトレスガールズにレンタル移籍している朝陽だったり、退団してフリーでやってる石川奈青だったりが、『アイスリボンで改めてやろうよ!』と声をかけてくれたのがキッカケで。あとは藤本つかささんが、私が辞める直前に言ってくれた言葉で救われたなっていう部分があったりして。アイスリボンにはお世話になっていたので。それで、『またやるんだったらアイスリボンでやりたいな』と思ってアイスリボンに入りました」

――前の団体を離れる際には『退団及びプロレスラーを廃業』と発表された。『廃業』という表現は最近では中々見ない表現だ
「私、アレはGAMIさんの仰るとおりだなって思うんです。5ヶ月しかやってないのに引退とかおこがましいわなって。別に何の不満もなくて。まあ、そうっすよねって(笑)別に説明聞いても『そのとおりです』としか思わないんで。まあ、バンッ!て“廃業”の文字のインパクトが強かっただけで、別に私は何も気にしてないです」

――ここ数年は選手の出入りを含め女子プロレス界に大きな変革が起き続けているが、今の女子プロレス界をどう見ているか
「変革があったって言っても、そんなに変わった気がしないなっていうのが個人的な印象です。なんか雑な言い方すると、やってることそんな変わんないなっていうのは感じてます」

――それは、自団体・他団体通しての印象?
「そうですね。それこそ人が減った、増えたとかありますけど、本質的にプロレスやってることには変わりはないし。コロナ禍が明けたからお客さんをいっぱい入れられるようになったとか、声を出せるようになったとか、そういう変化はあるんだろうけど……メッチャ変わったなっていうことは特に無いっていうイメージですね」

――復帰前と復帰した今ではどういう違いがあると自身の中で感じているか
「あんまり変わらないかな。プロレスが好きでやってるっていうのは変わらないので、心持ちとして変わったかと言われると変わらないなっていうのがあるんですけど、前よりはキャリアが近い人達が多いので、ワイワイキャッキャキャッキャしてるなっていうのはなんとなくありますけど(笑)」

――入ってみて、アイスリボンのほうがアットホームに感じますか?
「まあでも、元々舞台の人間なので。劇団とか無数にあったので、そこの劇団の色……プロレスで言えば団体の色なので、そういうところじゃないかなと」

■試合中にストレスで耳が聞こえなくなっちゃった

――演劇界出身のプロレスラーがよく違いとして挙げる、360度から見られるリングという場についてはどう感じたか
「当時の私はプロレスラーの役をやるっていうので、欠片も興味が無かったプロレスを見に行ってみるかと思って。そのときに共演したことがあったのが前の団体の社長だったので、そこを見に行って。その1回で『プロレスってスゲー!』と思ってその場で『練習生になりたいです』って言いました。それで本当に練習生になってデビューして。すごい衝撃的でしたね、初めて見たときは」

――実際にリングに上ってみて、難しさは感じた?
「いや、もっちろん!(笑)まず闘うという部分ですら全然出来てなくて。そこに加えてプロレスには“魅せる”って部分も必要だし。中々それも出来ないなあっていうので。まあ、未だに出来てるかわからないですけどね(苦笑)」

――ちなみに、その“プロレスラー役”というのはどこでやったんですか?
「今アクトレスガールズで蛇道衆にいる(元JDスターの)MARUさんが主催する『コルバタ』っていうプロデュース企画に出させていただいたときに、普通に『出てほしい』ってオファーをいただいて。スケジュールが合ったので『出ます』ってお返事をした後に『ちなみに何の役ですか?』って聞いたら『プロレスラーの役』って。『ほぉ~、プロレス見たことねえなぁ~』と思って、『分かりましたぁ~』って言ったあとにプロレス見に行って(笑)脚本自体もMARUさんオリジナルの作品で『フィリピン人の父に、投げっぱなしジャーマン』っていう。すごかったんですよ、出てた人が。朱里さん、なつぽい(万喜なつみ)さんが主演で、尾崎妹加さん、デビュー前の東京女子プロレスの遠藤有栖が出てて、あとはアクトレスガールズの岩井杏加。ゲストに確か田中稔さんも出ててすごく豪華でしたね」

――それは、プロレスの興行として見ても豪華な顔ぶれですね
「当時はプロレス知らないから『へぇ~そういう人たちが来るんだ~』って感じでしたけども、今考えたらとんでもなく豪華ですね(笑)」

――今もお芝居はやられている?
「役者としてはやってないですけど、たま~にスタッフの方は今までのツテとかでお手伝いとかは呼ばれたり行ったりするくらいで。見にもたまに行くかな。でも最近はもっぱらこっち(プロレス)が忙しくて行けてないですけど」

――ご自身の中では、「演技よりもプロレスがやりたい」と思うようになったのか、それともまだ演技もやりたいのか
「あ、いや、全然演技よりプロレスになりました。というか、プロレスを初めて見たときに『やりたい!』って思ってから演技よりプロレスになったので。役者はもう金輪際やらないんじゃないかな……?いや、お仕事いただけるなら別ですけど、自分からやりたいみたいのは特に無いです」

――そこまでの思いがあって、なぜ1度は“廃業”という決断を下したのか
「プライベートでちょっと色々あって。それで精神疾患を発症しちゃって。それでも前の団体の方とかはなんとか試合に出られるようにとやっては下さってはいたんですけど、試合中にストレスで耳が聞こえなくなっちゃったりとかがあったんですよ、実際。だからもう、『流石に危ないし、やらせられないです』ってことで、私もそれは仕方がないなと思って。それで、本当に自分も戻ってくるつもりがなくて。『出来なくなったからこれで終わりだ』って思っていたので」

――プロレスが嫌いになっていたわけではない?
「全く!好きでした。でも、やりたくなりそうだったから見ないようにはしてました。で、見たら案の定やりたくなりました(笑)」

――再びプロレスをやりたくなって、アイスリボンに入団した
「ちょうど、『つくしさんが引退されるしおいでよ』って言ってもらって、去年の5月4日の横浜武道館大会に行って。ホントに7~8ヶ月ぶりくらいに見て『やっぱやりたいなぁ』って思ったけど、なんとなく『やりたいです』とは言えずにいたけど、強引に『ほら!練習行こ!』って引っ張っていかれたので(笑)その強引さに救われました」

――アイスリボンは、本業などが他にあっても『プロレスをやりたい!』という思いがある人を数多くすくい上げて来た歴史のある団体。海乃選手もその1人になった
「ホント、まさに」


■ベルトが無いとプロレスとしてストーリーを作れないっていうのは、ただの怠惰

――今回の本題ですが、復帰後にまだ1年経っていない中で、アイスリボンのモットーである“プロレスでハッピー”について波紋を呼ぶ発言をした。海乃選手の中での“プロレスでハッピー”とはどういうものなのか
「なんか、やってる本人たちがハッピーじゃなかったらハッピーじゃないと思うんですよ。お客さんをハッピーにさせられない。やってる本人たちがハッピーじゃないから辞めて行っちゃう人がいるのかなっていうのもあるし、自分のことを引き戻した2人が今いないっていうのもありますけど、『みんながハッピーになれないなら意味ないんじゃない?』ってちょっと思ってる……いや、ちょっとどころではなく思っているところがありますね」

――それは、今の選手たちに不甲斐ない部分があると思うのか、今のアイスリボンという団体に“プロレスでハッピー”がないと思うのか
「みんなが十人十色で考えること違うと思うので、私が思っている“プロレスでハッピー”と他の人が思ってる“プロレスでハッピー”でぶつかるんであったらぶつかるで、それをプロレスとして試合してやればいいわけで。別にそういうのも無いし。それでみんな黙って、急に爆発して辞めていくみたいな。そういう感じじゃないですか?そんなふうになるんだったら、『“プロレスでハッピー”ってどうなの?』っていうのはあります」

――アイスリボンでは、試合後の座談会でプライベートのことも含めた思いを爆発させて次に繋げていく団体ではあった。今はハッキリ言えない空間ができている?
「座談会が無くなったっていうのがあるのかなとは思うんですけど、どうなんですかね?今のメンバーは座談会があったとて言わない気がするんですよね……って勝手に思ってます。座談会を復活させれば良いってもんでもないのかなと。純粋に、Twitterとかで言ってたりはするけど、やっぱり文章打って行動しても誤解しか生まれないこともあるし。私なんかは、別に文章で伝える必要はねーやって思っちゃう人間だから、『こじれるならこじれるでいいや』って思っちゃうんで。言うだけ言って、『“プロレスでハッピー”でいなきゃいけないから』って試合はニコニコやって。『それ、ハッピーなの?』って思うようなところも何回か見てるなって。その最たるものがベルトかなっていう気がしてて」

――ベルトの存在が選手たちの意識をおかしくしてしまっていると感じる?
「今回だって、私がちょっと前哨戦でYuuRIさんにポロっとちょっかいかけただけで、ベルトをとった途端『挑戦しろよ!』って。お前、ベルトの重みがどうたらこうたら言ってるくせに、そんな簡単に挑戦させてくれんの?みたいな。そういうのはすごい思っちゃいますし、そういうのがベルトの価値を落とすんじゃないかなって。さっきも言いましたけど、別に私は再デビューして1年経ってないし、そんな人に『ベルト挑戦しろよ!』って言ったり、そんな人がベルトに挑戦出来るようなアレなんですねって。ベルトが無いとプロレスとしてストーリーを作れないっていうのは、ただの怠惰なんじゃないかなって。それこそ色々話は転がっているのに。こないだなんか冷蔵庫に入れといた菓子を楓歩(松下楓歩)に食われたから、お前絶対許さねえ!って。そんなんでいいと思うんですよ、正直(笑)食い物の恨みは強いですから。しょーもない話ですけど、そんなんでいいんじゃないの?って思うんですよ」

――元々、アイスリボンはそういう団体のはずだった
「そうそうそう(笑)前に、Twitterで『ベルトは必要ない』って話をしてたら、楓歩に『そういうのは過去の人達への尊敬が無いんじゃない?』みたいなことを言われたんですよ。そうやってバンバン誰も彼も挑戦させてやってるベルトの方が失礼じゃないかと思うんで。だったら私は別にベルトが欲しくてプロレスをやっているわけじゃないから必要ないし、タイトルマッチって言われても『あぁ、いやぁ、大丈夫ですぅ』ってなっちゃうんで。防衛戦やれば話題が出来る!みたいのが、今すごい嫌だなって。ちょっと前の楓歩さんといぶさん(星いぶき)がシングルやったり色々してたけど、別にベルトが無くったって、いぶさんの思いもみんなに届けてもらえて。それも、楓歩がプロレスを通していぶさんの心を開いたからなのかな?って思うし、そういうのでいいじゃん。ベルトに頼るとなんか逆に、『とりあえずベルトをかけて誰と誰がやって防衛しました!やったー!』って言っても、みんな『そっかぁ~……』ってなるし、お客さんもそうだと思うし。私もお客さんだったら、『防衛戦なんだぁ~結構毎回やってんなぁ~』って思うと思うし。防衛戦をやるにもなにか理由があるならいいですけど」

――その思いをリング上で、王者になったYuuRI選手にぶつける形となった
「それこそYuuRIさんにちょっかいかけたときにTwitterでメッチャ書かれたけど、『裏切られた』『裏切られた』って書いてたんだけど……別に元々私とYuuRIさんにそんな信頼関係あったかしら?って。大前提として、そこがすごい気になってて。純粋な人だなぁ~って。裏切られたから、裏切りの行動の意味がわからないから挑戦しろって、それはそれで意味が分かんねえなぁ~って思って。前に、雫有希さんが持ってるBRS(ブルアーマーリングサービス)さんが管理してるSpunkyに挑戦ってなって、ブルタクさん(ブルアーマーTAKUYA)から指名されたときにお断りしたんですよ。お断りしたんですけど、大人たちがこぞって日程を決めたり、社長も向こうでOKって言ってるし、『ウソでしょ?!』って。本人が知らぬ存ぜぬ所でワーワー決まってたから。なので今回は、お断りするならちゃんと理由を話さないとな~と思って。この間は(記事内で)文章に起こしてくださったんで、それ見て『長々喋ってんなあ、コイツ』と思いましたけど(笑)まあ、それくらいベルトに挑戦するつもりが無かったので。そういうマイクでした、アレは」

――断った結果、その日の夜に他団体での王座戦(8・11ガンバレ☆プロレス板橋大会 【王者】YuuRIvs【挑戦者】まなせあみ)がしれっと決まっていた
「ね。まなせあみさんと。こないだの土曜日(7月22日)にYuuRIさんにも『タイトルマッチするようななにかがあるんですね?』って言っちゃいましたけど(笑)聞けば初対決みたいじゃないですか?それがYuuRIさんの言うベルトの重みなんだったら、それで良いんじゃないですか?って思いますし。7月30日に利府でシングルやりますけど、今のところ分かり合える気はしないなって。決してYuuRIさんのことを元から嫌いとか、そういうのじゃないんですよ。なんなら、割と普段から仲良くしていただいていたし。ベルトがかかってからのYuuRIさんがあんまり好きじゃなくて。タイトルマッチが決まって前哨戦します、ってなってからのYuuRIさんがあまり好きじゃなくて。YuuRIさんのこと好きだったのになっていうのは個人的にありますけど。ベルトを持ってる間は私はYuuRIさんのことをあまり好きになれないのかなって。ベルトを持つと人は変わる、みたいのあるじゃないですか」

――藤本つかさ体制の後……現体制のアイスリボンになってからは、ベルトを持つ人間の背負うものが大きくなりすぎたが故に“プロレスでハッピー”で無くなっているように見えるというか、皆苦しそうに防衛戦をやっているように見受けられる
「やっぱ、藤本さんってアイスリボンのアイコンみたいな感じだし、存在がデカ過ぎるのはあるのかなーって。『チャンピオンになったからそこに取って代わらなきゃ!』みたいなのがあるのかなっていう気はすごくしていて。安納さん(安納サオリ)はそんな感じしませんでしたけど。自分は自分でいればいいのになって。傍から見てて。すげー他人事ですけど、そう思ってました」


■皆で心から『プロレスでハッピー!アイスリボーン!』って言えるようになるためだったら、私はどんな汚れ役でもやる

――初期のアイスリボンでは、“ハッピーメーカー”希月あおいさんが創り上げてきた「どんなに泣いていても最後は笑顔で帰れる」という『負けてもプロレスでハッピー』を提供してきた。その後、藤本体制となってからはベルトを中心とした闘いの中で「応援している人が勝って笑顔になり、悔しい思いをした人も次に勝ってハッピーになれる」という光景を魅せてきた。今のアイスリボンでは、何を以て“プロレスでハッピー”なのかが分からなくなっている
「分からなくなっているし、ベルトだけが中心になってるなって印象はあって。そんなんだったら『“プロレスでハッピー”にベルトは必要無いでしょ?』って私は永久に思っちゃってますけど」

――約10年前に希月さんの『負けてもハッピー』に対して、志田光選手が『負けたらハッピーじゃない』と否定してぶつかり合ったことがある。リング上で海乃選手が言った『負けてハッピーでした?』という問いかけには、志田選手のそれとは違う意味がある?
「『負けても楽しけりゃオールOK』と思ってはいますよ、ぶっちゃけ。だから、半分近くて半分違うなと思ってて。『負けてもハッピー』って言えるような顔してなかったんですよね、特にトトロさん(トトロさつき)は。負けても清々しくハッピーな顔してたら聞きませんよ。飛香さん(みなみ飛香)とひなたさんに関しては、私は試合をあまり見れていなかったのでどうだったのかは分からないですけど……絶対にタイトル戦ってプレッシャー無かった方がもっと楽しく出来たでしょ?って思っちゃってたんで。ハムさん(星ハム子)が『ベルト賭けてあげますよ!』って言って決まったけど……まあ、ハムさんたちの方が後輩だからっていうのはあるかもしれないけど、あんまり『いいぞいいぞ!』ってノれないなっていう感じでした」

――飛香選手&ひなた選手は、さくらえみ体制の“プロレスでハッピー”で育てられてきた2人。しかし、17日の試合後にひなたは震えていてハッピーになっているようには見えなかった。藤本体制のベルトを中心とした“プロレスでハッピー”もトトロ選手には無かった。そう考えるとアイスリボンが積み重ねてきた“プロレスでハッピー”はあの大会には無かったと
「そうですね。それは違うんじゃなぁい?って。私はプロレス自体を見始めたのが3年前とかなので、リアルタイムで昔から見ていたわけじゃないです。でも、アイスに入る前くらいからアイスのことは色々調べたりとか動画で見たりとかしてて。昔のこういうところ、こういうのがアイスリボンなんだろうな~というのは感じました。チラシとか見てても『あっ、昔と比べて人が少ない……』って思ったりします。なにかが時代とともにズレてきて、今ズレ切っちゃってるのかなって思ってて。でも、それを変えたいなと思ったら1回じゃ絶対に無理だから」

――17日の横浜では、海乃選手は楽しそうに試合をしていた
「この間の横浜では私はキクさんとやりましたけど、裏で2人で『(凶器を)持って入っちゃえばこっちのもんだよね』って言って(笑)あれは2人して結構ルンルンでやってて、終わった後も血が垂れたりしても『超楽しかった!』とか言ってて、私の方がオロオロしてたり(笑)あの日は私とキクさんが、私たちが楽しい試合をしてたけど、それがお客さんに伝わってたかはわからないので。現に、YuuRIさんとかは私が凶器振り回して暴れてる人だと思ってるだろうからタイミングが悪かったんですけど(笑)自分たちが楽しまないと楽しいものって見せられないよなって思うけど、それだけをやってもどうしようもないというか。変わりきれないのかなって。だから色々とハッピーとは程遠いようなことを言い捨てて帰るとかしちゃってますけど(笑)それが私が今、“プロレスでハッピー”だと思ってないから、『プロレスでハッピー!』ってみんなで手は挙げたくない。皆で心から『プロレスでハッピー!アイスリボーン!』って言えるようになるためだったら、私はどんな汚れ役でもやるし、そのためだけにこれからもやっていきたいと思ってます」

――根底にあるのは、アイスリボンへの愛
「そうですね」

――海乃選手の中で、海乃選手の思う“プロレスでハッピー”に一番近いと思うのは誰か
「キューさんですよ。弓李さん。私も度々Twitterで“ハッピーの権化”って言ってるんで(笑)キューさんもお子さんがいらっしゃるのでビッグマッチに出られないとかが多いんですけど、キューさんのいる道場マッチの試合はもう……楽しくて楽しくて仕方ないですからね!負けても!(笑)1回シングルマッチやったんですよ。あれ、何分で負けたかな?メッチャ瞬殺で負けたんですよ、キューさんから。でも、楽しかったですからね。いつだったかなぁ~……?」

――4月8日の道場マッチ、第1試合で3分37秒で敗れている
「あっ!それです!3分37秒!(笑)メッチャ早かった(笑)瞬間で負けた!その後に喋ってた方が長かった」

――確かに弓李選手は色々な“プロレスでハッピー”を知っている選手ですね
「キューさんがいるときって、だいたい負けてもニコニコ笑って……悔しいは悔しいんですけどね?『でも、試合楽しかったなあ』って思える。それがキューさん。でも、私はキューさんみたいなことは出来ないので。あれはオンリーワンですよ」


■“プロレスでハッピー”というより『まずプロレスに対する向き合い方を考えてほしい』

――ベルトはYuuRI選手に獲られて流出したが、自身が外へ出て“プロレスでハッピー”を広めていきたいというよりも、今は内部を固めていきたい?
「そうですね。外を向いている場合じゃないなっていう。まずはアイスリボン自体がそうじゃないといけないし、『私が獲りに行くより誰かが獲りに行け』とも言えないし。まずはアイスリボンの中のみんなが“プロレスでハッピー”にならないと話にならないかなって」

――それで言うと、映画『THE CHALLENGER-希望のリング-』のプロレスラーデビュープロジェクトで練習をしているメンバーたちは楽しそうにプロレスをやっているように見える。海乃選手から見たこの映画プロジェクトはどう映っているか
「楽しんでくれてるんだろうなとは思いますけど、ちょっと厳しいことを言うと、ナメてんのかな?とは。最初の頃ってすごい向上心があったんですよ。もう、みるみる内に急成長してたんですけど、最近はなんか、結構1回言って理解して出来てた子が『あれぇ~?分かんなぁ~い』みたいなこと言うようになって。遊びに来てんのかお前ら?っていうのが見て取れるなって思ったり。そういうところも含めて、デビューが近付いてきて、『デビュー出来る!』みたいな安心感なのかな?」

――焦りというより、緩みを感じるようになった?
「そうですね。どっちかって言うと焦る時期じゃないの?って思うんですけど。緩くなっちゃってるんで、ぶっちゃけあんまり期待してないです」

――17日の公開練習はご覧になった?
「映像で見ました。その前のリハーサルをやってるのを見てイラッとしちゃったから、もう見ないと思って、終わってから映像で見ました。どうなんですかね?公開練習っていうものに対しての私の認識が違うのかも知れないんですけど、『余裕で私達は出来ます!』みたいのを見せる時間じゃないと思うんだよな、歯を食いしばって頑張ってるのを見て、お客さんが『デビュー戦に向けて頑張って行ってほしいな』って思ってもらう時間なんじゃないかなって思うんですよ。あんまり歯を食いしばって頑張るってより、『私達、これ出来ます!あれ出来ます!』みたいな発表会みたいだったからイラッとしちゃったんスけど……」

――そういう意味では、頑張りが見えた藤滝明日香さんが観客投票で1位になったのは順当だと
「それはあるんじゃないのかなと思います。『出来ない』っていうのをあの子は良くも悪くも隠さずTwitterとかに上げたりしてて、それを見ていたお客さんが『うわっ!出来るようになってる!』とかもあったと思います」

――あの投票結果は予想していた?
「比較的、こんなもんだろうなと思ったのとあんまり変わりはなかったですね。大幅に『えっ?!この子にこんなに点数入ってる?!』みたいのは無かったです」

――海乃選手自身は映画出演に興味はあるか
「まっったく無いです!『やるんだったら全然プロレスラーとして関係ないこの辺の役で』みたいなことを冗談で言ってました(笑)」

――8月26日後楽園ホール大会のデビューまで約1ヶ月。あのメンバーの中では現時点で“プロレスでハッピー”は期待できない?
「“プロレスでハッピー”というより、『まずプロレスに対する向き合い方を考えてほしいな』から始まってるんで」

――藤本つかさ選手も、志田光選手も似たようなプロジェクトから生まれた選手。同時期の松本浩代選手も2人に対して同じようなことを言っていた
「大前提として、どうしても身体張って一歩間違えたら命もかかるものじゃないですか。そういう認識が甘いのかなっていうのは思います。『危ないことをやっているんだよ?』って。多分、コーチ陣が優しいから。日高さん(日高郁人)も優しいし、MIO(紫雷美央)さんもメッチャ優しいんですよ」

――あの紫雷美央が、優しい……?
「紫雷美央が優しいんですよ!」

――それはおかしい
「子供3人いたら丸くなるんですかね?……やべっ、これ見られたらシバかれそう(笑)お2人共コーチがすごく優しい方なので、余計にその辺の意識が抜けてるのかな~って個人的には思ってます」

――最近の女子プロレス界だけで見ても大きな怪我が起きている。もっと危機感を持つべきだと
「そうですよね。受け身1つ間違えると翌日起き上がれないなんてことも全然ありますし。ちゃんと考えてほしい」


■動く根底にはアイスリボンと“プロレスでハッピー”があるよ

――海乃選手は現在アイスリボンで最もキャリアが若い選手ですよね
「そうですねぇ。同期の愛梨紗(しのせ愛梨紗)が1年欠場してたんで、まあなんともアレですけど(笑)」

――しかし、後進を育てていく立場になっている
「ぶっちゃけ、育てるキャリアじゃないんですよ(笑)まだ育ててほしいんですよ(笑)まだまだ育ててほしいんです。そんなことも言ってらんないんで、ハイ。アレですけど」

――そうなると、技術先行で育てていくことになる
「そうですねえ」

――アイスリボンでは8月6日のスカイツリーイベントなど、業界の外でやるプロレスやマットプロレスも多い。そうしたプロレスに対して海乃選手はどう思っているか
「そういう地域密着って楽しそうだなって。私、やったこと無いんですよ。初めてなんです、今回。自分が参加するのが今回初めてで。ワクワクはしてるんですけど、熱いの死ぬほど苦手なんで……炎天下……この気温かぁ~……。その一瞬だけエアコンとかメッチャかかんないかな。まあ、炎天下でも見に来てくださるお客さんがいたり、楽しんでくださるお客さんがいるなら、どんな暑かろうが……そのあと死ぬほどビールを浴びるほど飲んでるんだろうなと思うんですけど(笑)」

――マットプロレスはこれからやっていきたい?
「やってみたいです。『リングが無くてもプロレスは出来る』っていうのは、すごい先輩に言われたことがあって、『確かに!』と思って。藤本さんもホウキと試合をしていたりとか、他の団体さんでも透明人間と闘ってたりするじゃないですか。『あれもプロレスだよな』って思うので。逆に、『対戦相手がいなくても出来るんだったらリングが無くても出来るよね』って思うので。そういうのも私はやっていきたいです。面白そうなことはやりたいです」

――過去のアイスリボンで言えば、山手線一周プロレス、シネシティ広場(トー横)でのプロレス、サンリオピューロランドでのプロレスなど、色々な路上プロレスがあった
「スッゲー気になってて。山手線が気になり過ぎてて。またその企画やってくれないかなぁ~?私そういうの大好きなのでやりたいです。そういう面白そうなことは全部やっていきたいです」

――そうやって“プロレスでハッピー”を外へ広めていく存在が海乃選手になっていくかもしれない
「まずは、まずは団体内を……。団体内が“プロレスでハッピー”になってくれれば、『そしたらみんなも勝手に外に出たがるよ』と思うんですけどね、私は」

――海乃選手がアイスリボンに入るキッカケの1人となった朝陽選手は外に出て広めている部分はあるが、朝陽選手について今思うことは
「私は変わらずに大好きです。でも、中々会うタイミングが無いので会えてないですし、向こうがどう思っているかわからないですけど。『アイスリボンに戻っておいで』とは私は口が裂けても言えないけど、でも、朝陽さんとプロレスしたいなって」

――改めて30日の利府リボンですが、久々に藤本選手のいる前でのアイスリボンの大会になる。そこでYuuRI選手を相手に見せたい“プロレスでハッピー”とはどのようなものか
「ぶっちゃけ、お客さんがハッピーになるプロレスは他が存分にしてくれると思うので。後の4試合のカードも豪華ですし。私は、YuuRIさんの思いが知りたいなって個人的には思ってます。まあ、セミだとは思ってなかったんですけど(笑)そう思って提案したはずなのに、『あっ、試合順セミなんだ?!』って。この間藤本さんがツイキャスで言ってたらしいんですけど、『元々利府で考えてたカードは仙女さんのDASH・チサコさん』って。……私、DASH・チサコさん大好きなので、そのカードはいつか藤本さんに寝下座でもして叶えていただいて(笑)」

――ひっそりとDASH・チサコ選手との試合が流れていたことについて後悔はあるか
「なんか、そういうのって全部、『今じゃなかったんだろうな』って思うようにしてるんで。後悔とかしたら永久にずっと言ってるんで。私メチャクチャ根に持つタイプなんで。あのとき言ってなかったらって永久に言っちゃうんで、今はDASH・チサコさんと試合するタイミングじゃなかったんだ。きっと今はYuuRIさんとやるタイミングだったんだって思うようにしてます」

――ありがとうございました。最後にファンにメッセージをお願いします
「私は基本的には、なにも考えずに動いているわけではないつもりだし、『動く根底にはアイスリボンと“プロレスでハッピー”があるよ』っていうのだけ念頭に置いてもらって。『アイツ頭おかしい行動してんな~』と思ったら生暖かい目で見ていてください」

『利府リボン2023』
日程:2023年7月30日(日)
会場:宮城県・利府町総合体育館メインアリーナ
開始:13:00

▼セミファイナル シングルマッチ30分1本勝負
YuuRI(ガンバレ☆プロレス)
vs
海乃月雫

▼メインイベント 藤本つかさ1日限定復帰 6人タッグマッチ30分1本勝負
アジャコング(超花火)/藤本つかさ/松下楓歩
vs
星ハム子/橋本千紘(センダイガ-ルズ)/星いぶき

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