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　22日、東京都・新木場1stRINGにて行われた我闘雲舞『2019今年もよろしく新木場大会』にて、スーパーアジア王座を巡って里歩とコマンド・ボリショイが対戦した。

　里歩は8歳でプロレスを始め、当時小学生レスラーとして地上波で特番が組まれるほど注目を浴びた。その後欠場期間もほぼなくキャリア13年を迎え21歳に。イギリス、タイ、台湾、香港などの団体にも参戦し、昨年10月にはシンガポールでSPW（シンガポールプロレス）が管理するシングル王座であるクイーン・オブ・アジア選手権を戴冠するなど世界を股にかけて活躍している。
　そんな里歩だが、現在アイドルユニット『ガトームーブ』のセンターとしても活動しており、女子プロレス団体5団体13選手が参加した『アイドル×レスラー展』では大胆なグラビアを披露し、明治15年創業の老舗アパレルメーカー・福助の“足袋タイツ”のモデルに抜擢されるなどリング外でも引っ張りだこの人気選手。
　さらにIWA三冠統一王座（AWF世界女子＆IWA世界ヘビー＆IWA世界ジュニアヘビー）が封印されたことを受けて新設されたスーパーアジア初代王者として一昨年9月に君臨して以降は絶対王者として防衛を続け、この日7度目の防衛戦を迎えた。
　
　その相手はPURE-Jのトップ選手、コマンド・ボリショイ。
　ボリショイは1991年にジャパン女子プロレスでデビューし、1992年のJWP旗揚げからその最期までを看取った後に2017年にPURE-Jを旗揚げ。児童養護施設出身の“女タイガーマスク”であるボリショイは施設の子どもたちへの募金活動を長年続けるなど、リング外でも尊敬を集める“レジェンド”として知られている。
　しかし、長年闘い続けたボリショイの身体は悲鳴を上げ、7年前に進行性の難病である黄色靭帯骨化症・脊柱管狭窄症を患い、手術を受けて一時は快復したものの最近また脊椎の神経症状が出始めたということで、4月21日のPURE-J後楽園ホール大会での引退を発表。
　ボリショイは「私は里歩ちゃんと引退前にもう1度闘いたい」と今月6日のPURE-J亀アリーナ大会で里歩と対戦し勝利したが、その後里歩はボリショイを自らの持つスーパーアジア王座の防衛戦の相手に指名し、事実上最後の決戦が行われる運びとなっていた。

　試合序盤はグラウンド戦を交えての腕の取り合いを展開し、ボリショイは多彩なテクニックで、里歩は身軽な身体能力を生かしてそれぞれ腕を取り返していく。隙を突いてジャンピングニーを決めた里歩は一気呵成に攻め立てていくが、ボリショイは小柄な体躯からの強烈なエルボーや里歩の攻撃の後の先を取って関節地獄に引きずり込む老獪なテクニックを見せる。
　619、ザ・グレート・カブキ直伝アッパーブロー、タイガースープレックスホールド、ピコロックと攻勢をかけるボリショイだったが、里歩はボリショイの攻め疲れを見逃さず、隙を突いてのクイックの蒼魔刀、後頭部への蒼魔刀、正調蒼魔刀と畳み掛け逆転勝利を奪った。
　
　試合後、ボリショイは自身を挑戦者に指名した里歩に礼を言い、「引退をするからと言って挑戦してはいけないと思っていたタイトルマッチ、私の背中を押してくれてありがとう。私は引退する直前までプロレスラーとしてトップを、チャンピオンを目指していこうと決めました」と残りの約3ヶ月を全力で駆け抜ける覚悟を語る。
　そして、「さくらえみ、私はどちらかと言うと私はあなたのことが苦手だけど、本当に素晴らしい選手を沢山女子プロ界で育てていて、本当にすごいと思っています。（リング下にいたさくらが得意げに両手を突き上げる）……そういうのがムカつくんです。PURE-Jもこれからどんどん、さくらえみが育てた選手、里歩選手のような選手に負けないような選手をどんどん育てていきたいと思っています」と女子プロレスを背負う者としての気持ちも語った。

　バックステージに戻った里歩は、「ホントにこのベルトを失うかもって試合中に何回も思って、もう諦めようかなと正直思った。でも最後、自分のもとに帰ってきてくれたから、安心したし、これからもまだまだ頑張っていいんだなって思いました」と涙ぐみながら試合を振り返る。
　そして、「自分がベルトを巻いて一年半くらい経っちゃうんですよ。だからみんなも『里歩さんだから』『里歩さんはすごいから』って遠慮してる部分があると思うんです。自分が突っ走ってやれることはもうやってしまったと思うので、挑戦する気持ちをみんなに持ってほしいなと最近は思っています。自分以外の誰かがトップに立ってる我闘雲舞を見てみたいです」と、孤高の王者としての複雑な心境を述べた。