【試合結果】7・1 PANCRASE新木場スタジオコースト大会 【ウェルター級KOP】佐藤天vsグライコ・フランサ 久米鷹介vsアントン・クイバネン 若松佑弥vsマモル

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『PANCRASE 297』
日程:2018年7月1日(日)
開始:16:30
会場:東京・新木場スタジオコースト
観衆:2120人(超満員)

【第24回ネオブラッド・トーナメント】
▼第1試合 フェザー級準決勝 3分3R
●齋藤拓矢(ALLIANCE)
(判定0-3)
○DARANI DATE(Team DATE)

▼第2試合 バンタム級準決勝 3分3R
○大橋悠一(P’sLAB大泉)
1R 0分30秒、TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
●小川隼也(フリー)

▼第3試合 バンタム級準決勝 3分3R
●平岡将英(KRAZY BEE)
判定0-3
○野村優眞(NEVER QUIT)
※8月5日、大橋と野村で決勝戦となる

▼第4試合 フライ級準決勝 3分3R
●赤崎 清志朗(香取道場)
1R 2分21秒、チョークスリーパー
○杉山廣平(SPLASH)

▼第5試合 フライ級準決勝 3分3R
○鈴木千裕(P’sLAB吉祥寺)
判定3-0
●猿飛流(リバーサルジム川口REDIPS)
※8月5日、杉山と鈴木で決勝戦。

▼第6試合 ストロー級決勝戦 3分3R
●御代川 敏志(パラエストラ八王子)
判定0-3
○野田遼介(ALLIANCE)
※野田が同級優勝。

【本戦】
▼第1試合 フェザー級 3分3R
○滝田J太郎(和術慧舟會 東京本部)
判定3-0
●木村一成(パンクラスイズム横浜)

▼第2試合 バンタム級 3分3R
○東 陽子(和術慧舟會AKZA)
判定3-0
●直DATE(Team DATE)

▼第3試合 フライ級 5分3R
●ライカ(RIGHT THING ACADEMY)
判定1-2
○クセニヤ・グーセヴァ(MATTI TEAM)

▼第4試合 フライ級 5分3R
○小川 徹(TRIBE TOKYO M.M.A)
1R 2分50秒、TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
●タテキ・マツダ(フリー)

▼第5試合 バンタム級 5分3R
●TSUNE(リバーサルジム新宿Me,We)
2R 0分39秒、TKO(スタンドのパンチ→レフェリーストップ)
○瀧澤謙太(リバーサルジム東京スタンドアウト)

▼第6試合 フライ級 5分3R
○若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)
2R 0分39秒、TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
●マモル(シューティングジム横浜)

▼第7試合 セミファイナル ライト級 5分3R
●久米鷹介(ALIVE)
2R 4分56秒、TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
○アントン・クイバネン(GB Gym)

▼第8試合 メインイベント 第12代ウェルター級キング・オブ・パンクラス決定戦 5分5R
●佐藤 天(TRIBE TOKYO M.M.A)
4R 1分15秒、チョークスリーパー
○グライコ・フランサ(ASTRA FIGHT TEAM)
※フランサが新王者に。

PANCRASEを“元UFCファイター”が席巻!フランサが佐藤天を撃破しウェルター級KOP戴冠!ライト級KOPの久米鷹介がクイバネンにまさかの敗戦!

第1試合


 滝田は1973年生まれの45歳。2002年に29歳でプロデビューし、修斗やDEMOLITIONを経て2005年よりパンクラスに参戦している。ド派手な入場や寄生を上げながら取る「J」ポーズが話題となったが、「宇野薫が認めた男」として実力も備え、2008年にはマルロン・サンドロと第2代フェザー級KOPの座を争っている。まさに、日本の格闘技の黎明期〜黄金期を歩いてきた選手の1人だ。
 2013年、2014年は間が空いたが、昨年3月ハルク大城戦で復帰。その後また間が空いたが、今大会で元気に復帰した。

 対する木村は1987年生まれの31歳。2015年、パンクラスに初参戦。2016年10月以降はパンクラスイズム横浜に移籍して闘っている。昨年はネオブラッド・トーナメントに2回目のエントリー、準優勝している。今回はNBT後、10ヶ月を経ての試合となる。
 お互いに2連敗はできない状態の両者は、どんな闘いを見せるのか。

 1R。滝田が、ローからいきなりタックル、テイクダウン。木村は立ちたいが動きが取れない。なんとか立って正対し、ケージへ押し込む。滝田はヒザを打ち込む。ブレイクがかかり、離れると滝田が再びタックル。これは展開なく一旦棚れる。
 木村がパンチで出ると、組んでケージへ押し込む滝田。木村はパンチで攻めるも、滝田はタックルで凌ぎ、テイクダウンしたところで終了。

 2R。打ち合ったあと滝田がタックルに入るが、木村はこれを切りパンチ。滝田は低く回り込むようなタックルでケージへ押し込む。入れ替える木村。しかし、滝田は離れて果敢にパンチを打って行く。今度は木村がタックルからケージへ押すが、滝田は背中をつけず、バックを取る。会場に、セコンド・北岡悟の檄が響き渡る。木村は指示通りに動けないまま終了。

 3R。パンチからタックルに入る滝田。木村は引き込むが、立とうとした時に滝田が首を狙う! さらにバックに回って殴る。逃れたい木村、逃がさない滝田。残り30秒、滝田がバックマウントから首を狙ったところで終了。
 判定は3-0で滝田が勝利した。

 滝田は45歳とは思えない動きとスタミナで木村に何もさせなかった。極められなかったのは惜しかったが、派手な入場とともに、まだまだ頑張ってもらいたい。
 一方、木村には、まだ独自の「色」が見えてこない印象。自分のスタイル、ポリシーを見せてほしい。31歳という年齢からも、そろそろ勝負の年なのでは。次戦では「格闘家・木村一成」の色を強く印象づける闘いを見せてほしい。

第2試合


 東は日体大柔道部時代、全日本強化選手にも選ばれ、数々の大会で活躍してきた柔道エリート。引退後は柔道コーチなどをしていたが、MMA転向を決意、昨年アマチュア修斗全国大会で優勝を収めている。
 また、昨年、パンクラスは『INVICTA FC』と日本独占提携を結び、日本人女子選手の育成を発表。東はその強化選手として昨年12月にパンクラス初参戦、MMA初試合を行ったが1本負けを喫した。
 今回は兵庫県から上京し、和術慧舟會AKZAに所属しての試合となる。

 直DATEはパンクラス初参戦。2014年、キックボクシングでプロデビューし、昨年はアイスリボンでプロレスにも参戦。故・橋本真也を目標としているという。

 1R。サイドキックを出す直DATEに、東がパンチを振るってケージへ押し込む。お互いヒザを入れるがブレイク。
東が積極的にパンチを出してテイクダウン! 上体を起こしてパンチを落とす。東がかぶさってパウンドを落とし、抱えたところで終了。

 2Rも東が積極的に前に出てパンチを振っていく。ケージへ押して直DATEに尻餅をつかせ、さらに背中をつけさせる。東はパンチを落として立たせない。直DATEは立てず、カカトを連打下のみで終了。

 3R。開始すぐにパンチを出していく東。直DATEは後退。東はケージへ押し込み、ヒザを打ち込んでテイクダウン! 殴り続ける東。暴れるが立てない直DATE。この状態のまま終了。
 判定3-0で東が勝利。
 直DATEに何もさせず初勝利を挙げた東は、一人息子をケージに呼び込み喜んだ。所属先も決め、今後ますますMMAにアジャストしていくことを期待したい。

第3試合


 ライカは元プロボクシング世界王者で、女子のパイオニア的存在。2014年から総合格闘技に転向し、2015年にパンクラス初参戦。翌2016年7月の中井りん戦のあと、パンクラスからは遠ざかっていたが、総合のスキルを磨き続け、6連勝している。なかでも昨年10月のTTFではチョークスリーパーで自身初の1本勝ちを挙げた。さらに今年3月のGLANDSLAMで判定勝ちを挙げ、波に乗っている。約2年ぶりのパンクラスで、さらに上を目指しアピールしたい1戦だ。

 対するグーセヴァはムエタイがバックボーン。MMAキャリアは4戦3勝1敗だという。

 1R。クセニヤがパンチ、ハイキック。打ち返したライカは足を散りたいが取れず。離れ側に1発入れる。左右に体を振るライカ。クセニヤはパンチ、蹴り上げ、パンチ、左ミドルとたたみかけていく。蹴り足をキャッチしたライカだが、倒せず。しかし、組みつくと投げ! さらにバックに回る。床に押し付けるようにし両足で固定し殴る。クセニヤは逃げたいが逃れられない。ライカが殴って終了。
 判定は三者10-9でライカ。

 2Rも先にパンチ、ハイキックを出していくクセニヤ。ライカは冷静に見て上下を打ち分ける。特にボディブローがいい。体を左右に振ってパンチを打っていくライカ。ボディが入った! 組んでケージへ押し込むが、ここは離れる。
 クセニヤは前蹴り。組むが、ライカは力負けせずケージへ。入れ替えたクセニヤがヒジ。ライカがさらに入れ替えてパンチ。離れたところで終了。
ジャッジは三者10-9でクセニヤ。

 五分で迎えた最終ラウンド。クセニヤが距離を取りながらパンチをヒットさせていく。ライカは組んでケージへ押し込むが倒せず離れる。ライカ左フック! しかしクセニヤもパンチを返す。首相撲に捉えたクセニヤがヒザ、ヒジを打ち込む。ライカが再びケージへ押し込んで組むが、クセニヤがテイクダウン! しかしライカ返した! 側頭部を殴るライカ。カカトを連打するクセニヤ。クセニヤが蹴り飛ばすようにして立つと、お互いの意地をぶつけるように両者打ち合う! ライカが組んでケージへ押したところで終了。
 判定は2-1でクセニヤが勝利。

第4試合


 2014年からパンクラスに参戦している小川は、2015年ネオブラッド・トーナメント スーパーフライ級優勝。順調に7連勝を重ねてきたが、昨年8月、上田将竜に敗れ連勝がストップ。続く10月には山本篤に勝利しているが、今年2月、翔兵に破れた。今回、同門の若松佑弥、佐藤天とともに出場するが、3人の中で唯一タイトルに絡めていない。
 「今しかできないことだから」と、仕事を抑え、格闘技中心の生活をするようになった小川。タイトルに手をかけるため、また、一番手で勝利して若松、佐藤につなげたい。

 マツダは元UFCファイター。パンクラスには2016年に初参戦、2017年3月の試合のあと、怪我で手術をし、1年4ヶ月ぶりに復帰した。所属もフリーとなり、出直しの一戦となる。入場時、晴れやかな表情を見せていたマツダ。いい結果を出すことができるか。

1R。プレッシャーをかけていく小川。マツダはロー。さらにプレッシャーをかける小川。マツダ、左右フック! 両者打ち合う。小川、ボディからロー、そしてパンチ! マツダがダウン! 小川はすかさずかぶさりパウンドラッシュ! レフェリーが止めた。
 TRIBEの斬り込み隊長・小川が先陣を切り、会心の勝利。

第5試合


 第2代王者・石渡伸太郎が休養中のため、先日、暫定王者決定戦が行われたパンクラスのバンタム級。ハファエル・シウバが暫定王者となったが、まだまだ上を狙う選手がひしめく。

 TSUNEは2015年よりパンクラスに参戦。成績は6勝1敗で、先日引退した上田将勝以外には全て勝っている。2位までつけてきており、ここで勝って次へのステップに手をかけたいところ。

 瀧澤も2015年よりパンクラスに参戦、コンスタントに試合を行っている。端正な顔立ちとは裏腹に、鼻を折られても折れない強靭な精神力で泥くさい闘いも厭わないファイターだ。瀧澤も当然ながらベルトを狙っており、この試合から飛躍したいところだ。

 1R。お互いに距離を取り、様子をみる。瀧澤が飛び込んでパンチを出しプレッシャーをかける。TSUNEはジャブ。瀧澤は右ハイキックから飛び込んでのヒザ! TSUNEは片足タックルを仕掛けるが、瀧澤は潰して付き合わない。お互いにパンチを出し合う。滝沢の方にやや圧力があるか。そのまま終了。手数と攻撃の種類で優る瀧澤が三者10-9と票を集める。

 2R。瀧澤が左ハイ。TSUNEは飛び込んでパンチ。TSUNEは手数が出ない。瀧澤が飛び込んでパンチ、TSUNEがダウン! 瀧澤がパウンドに入るとレフェリーが止めた。

<試合後コメント>
瀧澤謙太
「押忍! 今日はありがとうございました。KOできてすごく気持ちいいです。2位を倒したので、年内にタイトルマッチをお願いします!」

田村彰敏あいさつ


 昨年2月の試合後、急性硬膜下出血で緊急搬送され、引退した田村彰敏さんが来場、あいさつをした。
 パンクラスでは、ユニファイドルールに準拠したルールを採用しているが、そのために、セコンドがタオルを投入して試合を止めることができない。また。ドクターによる試合ストップもできないことになっている。田村さんは、自身の経験からこのルールに異を唱え、リハビリに励むかたわら、ルール改正に尽力していた。

田村さんコメント
「昨年2月、僕はこのケージの中でKO負けしました。試合後に急変しましたが家族、仲間、救急隊員の対応が良かったため、素早く搬送されたのち、手術をして一命を取り留めました。それと引き換えに選手生命は絶たれました。
正々堂々と闘った末の結果であり、全力を尽くしてきたので選手生活に後悔はありません。
 ですが、格闘技はスポーツです。これからの格闘技界で僕と同じ様な命の危険にさらされる選手を出したくないとの思いが強くあります。
パンクラスの現状ではアメリカの興行並みにドクターの数を増やして待機させるのは困難です。また日本では格闘競技に対する保険制度も整っていません。ユニファイドルールをそのまま取り入れるのはどうなのかと考え、
 この度、安全面でのルール改正案のアイデアを提出させて頂きました。
 僕の事故を無駄にしない為にと、提案に前向きな姿勢を取って下さったパンクラスに感謝しております。
 これからの総合格闘技界の発展を心より願っております。ご清聴ありがとうございました」

 酒井正和・パンクラス代表もケージインし、「田村君から提案をもらい、1年ほどかかってしまいましたが、ルールを改正させてもらいました。格闘技はスポーツです。これからも、安全・公正をポリシーにしていきます」と話し、田村さんとガッチリ握手を交わした。
 ルールの改正点は以下。
①セコンドのタオル投入により試合をストップできるようにする。
現状のパンクラスルールでは第7章第27条(4)において試合場内にいかなるものを投げ入れてはならないとなっております。
こちらの文言を試合放棄を示すオフィシャル赤青タオルのみ投げ入れる事ができる。セコンドによる試合放棄を示せるに改定します。
②ドクターが試合中いつでもドクターチェックの申し入れをできるようにする、またドクターによる試合終了も可能にする。
現在、試合の終了はレフェリー以外にできないようになっています。
こちらをドクターの医学的見地により試合を終了できるように改定します。
③ドクターはダウンやKO負けの選手の経過を追う配慮を怠らない、主催者は緊急搬送がある場合、試合進行を止める可能性がある事に同意する。
リングドクターとの情報交換を蜜にとり有事の際には人命、健康を最優先に考え行動します。
④プレミナリーファイト出場選手もメインカード出場選手と同様の試合前検診を義務付けるものとします。

 セコンドは、選手と苦楽を共にし、選手のことを最も間近で見ている最高の理解者であり、選手が最も信頼している存在だ。試合を止められたい選手はいないが、せめてセコンドの判断であれば、という部分は大きいのではないか。また、タオル投入の権利がセコンドに、ドクターが試合を止める権利がそれぞれ与えられたことで、より安全な大会運営に繋がるのは確実だ。田村さんの提案によるこのルール改正は、すべての選手が感謝していることだろう。
 試合はもう見られないが、田村さんはこの「タムラ・ルール」により今後もパンクラスとともに歩んでいく。
 どんな境遇になっても格闘技を愛し続ける田村さん。心からの感謝とともに、第二の人生に幸多かれと祈りたい。

第6試合


 ランキング1位の若松と2位マモルの対戦。ともに現王者・仙三に敗れて以来の試合となる。

 23歳の若松は、今年2月、仙三のタイトルに挑戦した。まさに死闘と言える試合は、今年最初の大会にしてベストバウトの呼び声高い一戦となった。
 最後はKOされ、パンクラス初黒星を喫した。大きなダメージを負ったが、若松は「負けて、まだまだ甘かったというところに気づくことができました。もし、あそこで勝っていても、あのままだったらどこかでつまづいていただろうと思います。あの試合があったから今があると思います」と、今後の選手生活のターニングポイントになった試合と話していた。
 再び上を目指すために立ち上がった若松。どのような闘いぶりを見せてくれるか。

 対するマモルは41歳。昨年3月、神酒龍一を破り第4代王者となったが、同年8月、仙三に敗れタイトルを失っている。
 その後、今年4月に春日井健士戦が組まれていたが、春日井の欠場のため試合が消滅していた。マモルは公開計量で「4月の予定がなくなって、次はランキングが下の相手とやるのかなと思っていたら、パンクラスは上位ランカーを当ててきて。どれだけおじさんを責めるのかと」と笑っていたが、若松と仙三の試合には非常に刺激を受け、若松をリスペクトしていると話していた。
 18歳差の両者。どのような試合展開となるのか。

 1R。フェイントをかけるマモル。若松は距離を取り、入ってパンチ、ヒザを打ち込む。さらにパンチで多々マイかける若松。マモルはじわじわとプレッシャーをかけていく。若松がパンチからロケットのようなタックル! しかしグラウンドの展開にはならず。若松が立ち、ブレイクがかかる。
若松はうまく距離を取り、マモルに攻めさせない。再びボディ、ジャブ、ローと攻めていく。マモルはプレッシャーをかけるのみで終了。
 ジャッジは三者10-9で若松を指示。

 2R。若松のパンチがヒット、マモルがダウン! すぐに立ったが、ゆるゆるとした動き。効いている。若松はさらにケージ際でラッシュ!マモルは手が出ない。マモルは崩れ落ちそうになりながらもタックルに。しかし、レフェリーが試合を止めた。

<試合後コメント>
若松佑弥
「TRIBE TOKYO M.M.Aの若松佑弥です。今日はたくさんのご来場ありがとうございます。
 マモル選手はすごく強くて、この試合が決まったときは、前回みたいに負けたらどうしようと気持ちが落ちていました。でも、勝ててよかったです。
 パンクラスのベルトもいいですけど、最近人気があるONEに出たいです」

第7試合


 ライト級王者・久米は約7ヶ月ぶりの試合となる。前線戦は昨年12月の防衛戦で、徳留一樹にパンチでTKO勝ちしている。
 今回の相手は元UFCファイターのアントン・クイバネンだ。クイバネンはUFCで1勝2敗の成績を残しており、2013年にリリースされた後は、地元・スウェーデンで闘ってきている。物静かな雰囲気の選手だが、計量時に見せた背中の筋肉にポテンシャルを感じさせた。
 王者になっても「いつも挑戦者の気持ちで挑んでいる」と話す久米も、素晴らしい仕上がりを見せた。今回はノンタイトル戦だが、王者としての存在感を新たに示したいところ。

 1R。久米から先にパンチで前に出る。クイバネンもパンチを返す。クイバネンのヒザから、パンチを打ち合う。さらに前に出る久米。片足タックルからケージへ押し込む。久米がテイクダウン! しかし、立ちそうになりながらクイバネンが上になり、ケージへ持っていく。久米立った! クイバネンはケージへ押し込みヒザ。久米がロー、ヒザから入れ替えると、すぐにクイバネンも入れ替える。
 パンチを打ってくるクイバネンに対し、久米は左ハイキック、ロー。さらにパンチで攻めていく。クイバネンは胴タックルからケージへ押し、ボディを攻める。久米はケージを背にして組んだところで終了。
 ジャッジは三者10-9で久米を支持。

 2R、このラウンドも久米が先に仕掛ける。ローからパンチ、左ハイキック。久米がケージへ押していくが、展開なく離れる。
 お互いにパンチを出し合う。久米がクイバネンの蹴り足をキャッチしケージへ押し込むが、クイバネンは入れ替え、持ち上げ叩きつけて上に! しかし、久米は尻餅状態に戻し、立つ。
 しかし、クイバネンがケージに押し込み、再びテイクダウン。久米は立って入れ替えるが、クイバネンに入れ替えられてしまう。ヒザをもらい、久米にやや消耗が見えるか。
 クイバネンがパンチを打ち離れると、久米が飛び込んでパンチ! しかし、カウンターをもらい、久米が前のめりにダウン! すぐに立ったが、ケージ際でクイバネンがパンチ、これが効きふらつく久米。残り10秒でクイバネンがラッシュ! ここでレフェリーが試合を止めた。

 王者・久米が衝撃のTKO負け。これで再びライト級が混沌としてきた。ライト級には現DEEPライト級王者であり、古巣パンクラスのベルトも狙う北岡悟、井上雄策、冨樫健一郎を破っているトム・サントスらとどう絡んでいくか。北岡、サントスはともにRIZIN.11(7月29日)への参戦が決まっているため、当然、久米も立て直してくるだろう。秋以降の展開に注目したい。

<試合後コメント>
アントン・クイバネン
「小さい頃からパンクラスで闘うのが夢でした。昔からバス・ルッテンなどの選手に憧れてきて、やっとここに立つことができ、全てを注ぎ込んで勝つことができました。ありがとうございました」

第8試合


 昨年7月、阿部大治が三浦広光を破り手にしたウェルター級王座。しかし、阿部は同年9月、UFCに参戦。引き続きUFCに参戦するため返上した。空位となった王座をかけたタイトルマッチとなる。

 佐藤は2013年よりパンクラスに参戦、翌2014年にはネオブラッド・トーナメントで優勝。2015年12月のエリック・マイケル・フォート戦のあと、負傷のため1年半戦線離脱したが、2017年4月、アントン・ラッドマン戦で復帰。その後は唯一敗れている高木健太にリベンジを果たし、元同級王者の村山暁洋にも勝利。さらに、今年3月にはGLANDSLAMで元ZST王者・濱岸正幸を破り、4試合連続で1ラウンドTKO勝ちと勢いに乗っている。
 今年は約1ヶ月半、2度目のアメリカ修行も経験し、絶好調だ。今後UFC参戦を熱望する佐藤。ここでベルトを巻いて、次へのステップにしたいところだ。

 一方のフランサは元UFCファイターで、TFUブラジル4優勝者で、パンクラスには今年2月に初参戦。手塚裕之をパンチでぐらつかせると、逆転を狙う手塚の攻めをしのいで2ラウンド判定勝ちを収めている。
フランサもUFCへの再びの参戦を狙う。次への足がかりを掴むのはどちらか。

 試合に先立ち、佐藤がシンガポールのイヴォルブで2週間行った練習で交流ができた那須川天心が両者に花束を贈呈した。

 1R。距離を取り、パンチを出しながら様子をみる。フェイントをかけるフランサ。佐藤はパンチを打ってすぐ離れる。佐藤はいいタイミングでボディブローを入れていく。プレッシャーをかける佐藤。フランサは右ミドルからボディ、さらにパンチを打つ。組んでケージへ押すと、フランサのヒザがローブローとなりタイムストップ。しかしダメージは少なく、すぐ再開される。再開してすぐラウンド終了となる。
 ジャッジは三者10-9で佐藤。

 2R。フランサが右のロー。佐藤が前に出ると、フランサが左手を前に出して突き放そうとしたところで、フランサの指が佐藤の目に入ってしまう。ドクターチェックののち再開。
 フランサはパンチで前に出てくる。さらにパンチ! 佐藤がケージへ吹っ飛ぶかのような圧力だ。さらにタックルを仕掛け、ケージに押し込む。佐藤も投げで打開を狙うが、フランサは押し込み続ける。佐藤は右目から出血、疲れが見え始める。フランサはバックを取り離さない。ケージへ押し込んでヒザ。ブレイクとなると同時に佐藤の右目にドクターチェック。再開後、両者はパンチを打ち合い、佐藤の左フックがヒット! しかし、ここで終了。お互いに効いているようだ。
 ジャッジは三者10-9でフランサ。

 3R。佐藤が左ジャブ、ヒジからケージに追い込み、パンチのラッシュ! 止められるかと思うほど追い詰める。さらに佐藤が倒して背後からパウンド! フランサはカメになり、鼻から出血しながら耐える。
 中盤ごろから佐藤に消耗が見え始め、勢いが弱まってくる。フランサは爆マウントからチョークを狙うが、佐藤が上に! 素晴らしい闘争心を見せる。
 しかし、フランサは足にしがみつき、食らいつく。お互いの、何が何でも勝ちたいという気持ちがぶつかり合う。
 フランサが片足を取り、ケージへ押し込んで潰し殴ったところで終了。
ジャッジは三者10-9で佐藤。

 4R。フランサも消耗しているのか、よろよろとした感じのタックルからケージへ。佐藤にも疲れが見える。フランサが崩してバックマウント! 側頭部を殴る。なんとか立ちたい佐藤だが、フランサのチョークが極まりタップ。フランサが新王者となった。

 激闘を制したフランサは、マットに突っ伏し歓喜の涙を流した。また、最近亡くなってしまったアラン・ドス・サントスさんの写真を掲げ、喜びを爆発させた。

<試合後コメント>
グライコ・フランサ
「オハヨウ。(日本語)
今日の勝利は、最近亡くなってしまった私の友人でファイターの、アラン・ドス・サントスにこの勝利を捧げます。
私は日本で闘うことをとても光栄に思っています。ありがとうございます! 押忍(日本語で)。
パンクラスは素晴らしい団体です。モルセゴ(※バンタム級暫定王者のハファエル・シウバ)と一緒にパンクラスを盛り上げて行きたいです。
佐藤選手、闘ってくれてありがとうございました。素晴らしいファイターです。そして、この試合を組んでくれた酒井社長、ありがとうございました。
今までいろんな試合をしてきましたが、UFCでも闘って行きたいと思っています。どうか応援してください」


 なお、今大会より、元女子選手のWINDY智美がパンクラス審判団に加わることとなった。
 現在はまだ見習い中で、先輩レフェリーの指導を受けながら、選手のボディチェックなどを行った。素早く、しかし入念にクセニヤ・グーセヴァ選手のコスチュームを直す様子を見て、女子選手のチェックはやはり女性の方が適任なのではないかと感じた。
 WINDYは旧パンクラスismに所属した唯一の女子選手。男子選手に混じり、鈴木みのるらの厳しい練習に耐えた。それだけに、パンクラスに対する愛情は深い。その選手が、立場を変えて再びパンクラスに関わるのは嬉しいことだ。さらに、競技を知り抜いている元選手がレフェリーを務めることは、選手にとっても心強いことなのではないか。
 女子選手で初めてパンクラスのメインを務めたWINDYが、今度はパンクラス初の女子レフェリーに。今のところ未定だが、年内にはレフェリーとしてケージに入れればとのこと。今後に期待したい。

(写真・文/佐佐木 澪)

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