初代ウェルター級トーナメントは「非情」に徹した久保優太が優勝!ネパールの剛腕、モハン・ドラゴンは大声援をバックに準優勝!
9月18日、さいたまスーパーアリーナコミュニティアリーナで開催された「K-1WORLDGPJAPAN」。注目の初代ウェルター級(67・5キロ)トーナメントは「人類最激闘区」のキャッチコピー通り、凄まじいKO、ダウンシーンの連続。激闘を制したのは、63㎏(K-1WORLDMAX日本王者)や65㎏(グローリー-65SLAM)で実績を持つ久保優太だった。
久保は1回戦で「元同門」木村フィリップミノルから右フックで2度のダウンを奪って勝利すると、準決勝では足にダメージのある塚越仁志をロー攻めでKO。決勝では消耗の激しいモハン・ドラゴンのブンブンフックをかわし、蹴りとパンチで攻め込んで2度のダウンを奪って判定勝利。終わってみれば、危なげない優勝だった。
だが、試合後のリングで久保は号泣。「今回がラストチャンスのつもりで、負けたら引退しようと思ってました」という。かつては圧倒的な強さを誇った久保だが、新生K-1スタート後は思うような結果が出なかった。昨年3月の65㎏日本代表決定トーナメントでは山崎秀晃にKO負け。「『久保は終わった』と言われて、自分でも自信がなかった」。そんな久保は階級を上げて巻き返しをはかるにあたり、練習環境を見直した。「自分のジムを作って独立してから結局自分のペースで練習してしまう。それで20歳から見て貰ってる矢口(哲雄)トレーナーにお願いして週6日、苦しい練習をしました。筋肉痛が酷くて寝られない、なんて3、4年ぶり(苦笑)」。
矢口トレーナーはかつて木村を指導していたこともあり、前日会見で久保が矢口トレーナーとのコンビを復活させたことを知った木村が「敵が増えた」「(二人とも)地獄を見せる」と感情をむき出しにする場面もあったが、久保にとって矢口トレーナーは自分に喝を入れ「強い久保優太」を取り戻すための最後の切り札。「矢口トレーナーとの練習で、倒れた相手に蹴りを入れるような、ギラギラした昔の久保優太に戻れた」という。
今年10月に30歳になる久保。リング上では交際中の彼女へのプロポーズ宣言も飛び出し、引退後は「マレーシアのコンドミニアムでのんびり過ごす」という計画もあるそうだが「ベルトを獲ったのでもう1回、ベルトの価値を上げるために頑張ります」と久保。
大会を盛り上げたMVPはモハン・ドラゴンだろう。ブンブン振り回す「モハンフック」が炸裂! 1回戦で渡部太基を1RKOすると、準決勝でも山際和希(メルシック・バダザリアンは負傷のため棄権)を2RKO。決勝戦でも久保に1発を当てて動きを止めた場面もあり「あわや」と思わせた。モハンは「K-1はテレビの中の夢の舞台。まだ夢の中にいるようです。毎日(村上)塾長の厳しい特訓を受けて、1日7リットルぐらい、汗かおしっこか分からないぐらい流してきた(笑)。試合前、塾長に『30秒で倒されても、倒してもいいですか?』と聞いたら『いい』と。私は観客を感動させる試合をして、出来るところまで行こう、と。やるだけやったから悔いはないです」。40歳のモハンの激闘ぶりには、AbemaTVで解説をした魔裟斗さんも「同年代の人も、明日から頑張ろうと思うんじゃないですか」と絶賛。終了ゴングまで相手を倒しに行く「これぞK-1」という戦いだった。
なお、スーパーファイトに登場した3王者は三者三様の結果に。55㎏王者武居由樹は、伊澤波人のローをほぼ完封し、ハイキックとパンチで3度ダウンを奪って鮮やかなKO。60㎏王者大雅(たいが)はスタウロス・エグザコスティディスのパンチを浴びて1RKO負け。57・5kg王者武尊はワン・ジュングンの「武尊対策」に苦戦。武尊がパンチ連打の「倒すモード」に入ろうとすると、ワンは両手で武尊の体を押して連打させない。武尊は判定勝ちで初防衛に成功したものの「スピード、パワー、テクニックで僕より上の選手は一杯いて、僕は気持ちでカバーしてる。世界最強の男はどの部分も上回らないといけないんで、スピード、パワー、テクニックをもっと上げないと。(1年間全試合KOを逃し)また来年の課題です」と反省しきりだった。
次回のK-1は11月23日(木・祝)。初代ヘビー級王座決定トーナメントが開催される他、スーパーファイト(ワンマッチ)は卜部功也対クリスチャン・スペトゥク、大和哲也対中澤純、平本蓮対佐々木大蔵が決定している。
(スポーツライター茂田浩司)