RIZINが1年間で作り上げた「ジャパニーズMMA最高峰」というブランド

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 12月29日と31日の2日間、さいたまスーパーアリーナで開催された「RIZIN FIGHTING WORLD GP2106」が大盛況のうちに幕を閉じた。
 無差別級トーナメントは大本命、ミルコ・クロコップが涙の優勝を飾った。18歳の「神童」那須川天心はMMAデビュー戦(29日)をKO勝ち、その場で直訴して決まった2戦目(31日)で一本勝ちを収めて、キック、ムエタイに続き、MMAでも「超逸材」であることを知らしめた。
 「ツヨカワクイーン」RENAがKO勝利でRIZIN3連勝を飾る一方で、山本美憂、山本アーセン親子は対戦相手にMMAの不慣れさを突かれて揃って一本負け。自らUFCとの契約を解除して念願のRIZIN参戦を果たした川尻達也は、クロン・グレイシーと凄まじい削り合いを演じたものの、フットスタンプで足を取られるミスから敗北。
 また、山本アーセンに一本勝ちした所英男は、先日急逝したZST時代の盟友、レミギウス・モリカビチェスのTシャツを着て「10年追いかけている」山本KIDに対戦を呼びかけ、そして「志半ばで亡くなった宮下(トモヤ)さん、レミギウス。こんなにレミーガのことが好きな人が日本にいることを伝えられてうれしいです。格闘技を長くやっていると頑張る理由が増えてきて、なかなかやめられないです。これからも応援お願いします」と話し、拍手を浴びた。

 29日と31日の2日間とも取材をして「RIZINのカラーが出来上がった」と感じた。象徴的だったのは、31日のミルコ対アリアックバリの決勝戦直前、客席から「RIZIN最高!」と声が上がり、拍手が湧き起こった場面だ。
 RIZIN名物の豪華な演出はそのままに、煽りVを短くして興行をテンポアップ。さらに川尻対クロンのような緊迫感のある好試合が見られたことで、観客は「ジャパニーズMMA」を存分に堪能できた。川尻がクロンのチョークを何とかしのぎ切り、1ラウンド終了ゴングが鳴った時、客席から「うぉぉー!」という地鳴りのような声が湧き上がった瞬間は、かつてのPRIDEを彷彿とさせた。
 観客がRIZINで見たいのはMMAだ。だから、他競技から「MMAに挑戦するため」に参戦してきたRENAや那須川天心、レスリングから転向した山本ファミリーに対してはどこまでも好意的だ。試合展開が多少膠着しようが、客席から不満の声が上がることはなかった。観客は彼らが懸命にMMAに取り組む姿勢を支持しているのだ。
 その一方で「異分子」には冷ややかな反応だった。リング上にジェロム・レ・バンナが上がって「2017年に150%の戦いをする」と宣言した時の客席の白けた空気。また、ギャビ・ガルシアに元スターダム王者のアルファ・フィーメルが対戦表明し、それを神取忍が「誰だよ、ふざけんな!」と一喝してリング上が混乱した場面では会場から失笑が起きた。
 世間的に知名度の高い選手の「顔見せ」よりも、無名だろうが若くて才能あふれる選手の「成長ぶり」が見たい。RENA、山本アーセン、クロン・グレイシー、そして今回の那須川と「RIZIN育ち」のファイターが大歓声を浴びていることからもそれは明らかだ。
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 昨年大みそかのRIZINは、10月に新たな大みそか格闘技イベントの開催を発表し、わずか3か月で「ライジン」という大会をPRして、世間の注目度を少しでも集めなくてはならなかった。そのため「曙対ボブ・サップ再戦」のような飛び道具を用意したり、K-1ルールやミックスルールの試合を組むなど「寄せ集め感」は否めなかった。
 だが、この1年でRIZINはイベントとして確立した。イベントの中軸に山本ファミリーやグレイシー一族という「ブランド」を据えて、さらに「小池の旦那」坂田対桜井マッハ、「エロツヨ」中井りん対「吉田沙保里を追い詰めた」村田夏南子といった異色対決を組み、目玉としてビッグネームを呼ぶ。今回はミルコ・クロコップがその役割をきっちりと果たした。
 選手からも「RIZIN」へのモチベーションの高さを感じる。那須川は試合後「RIZINでキック部門を作ってもらいたい。そこで僕がキックでもMMAでも両方出ていって、真のチャンピオンになっていきたい」と宣言。また、9月大会でRENAに敗れた後「すごくいい舞台で、RIZINのすべてが私をとりこにした」と語っていた山本美憂は、今回の試合後も「強い選手とやれば成長する幅も広いと思うし、スピードも早いと思うので、強い相手を用意してくれるRIZINは分かってるなと思うし感謝してる。次もチャンピオンでいい」とRIZINに全幅の信頼を寄せる。

 特筆すべきは審判団の質の高さだろう。入場時のボディチェックから厳密で(堀田祐美子が髪につけたオイルを何度も拭き取ったり、試合前のルール確認に時間を取るなど、空気に流されることなく進行していた)、試合のストップのタイミングは的確であり(止めるタイミングの遅いレフェリーもいる)、膠着時のブレイクやドントムーブもスムーズ。長南亮氏(TRIBE TOKYO.MMA代表)はツイッターで<Ryo Chonan @madchonan 「RIZINはとてもレフリングが良くなってる。選手は安心して試合出来るし、選手が試合作る形ですね」>と指摘。選手や指導者から見ても信頼できるレフェリングをしていることがうかがえる。審判団は縁の下の力持ちで、地味ではあるが「公平公正なイベント作り」には絶対に欠かせないところだ。

 ヴァンダレイ・シウバ、シェーン・カーウィン、神取忍、クレイジーホース・ベネットと欠場者が続出した今回のイベントだったが、選手の成長と頑張りによって2大会とも完成度の高いイベントになった。次回は4月16日、横浜アリーナ。2017年、RIZINはますます加速する。

(スポーツライター茂田浩司)

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