「今はっきり言えるよ!俺幸せ者だよ!」ホームレスのドン底から這いつくばって頑張ってきたレスラー2人の王座戦に観客も涙
7月10日、大田区総合体育館にてガンバレ☆プロレス(以下ガンプロ)『WRESTLE SEKIGAHARA』が開催。メインイベントでは、今成夢人の持つスピリット・オブ・ガンバレ世界無差別級王座に大家健が挑戦した。
ガンプロとは、悪い女に騙されたりホームレスになったりと生来の逃げ癖からズンドコ人生を歩んできた大家健が『もう一度プロレスをメジャーなスポーツにしたい!』という熱い想いを持って、自らの境遇の袋小路に入っていた今成夢人らとともに2013年に旗揚げした団体である。
波口修率いる浪口軍や、シバター率いる炎上軍などとの抗争を行いながら、それぞれの人生やプロレスラーとしての生き様を赤裸々に見せる闘いに、観客も日々を頑張って生き抜く糧としてファミリーのように成長を見届けてきた。
2015年には藤田ミノルの試合後の激白が話題を呼び、2016年には日本インディー大賞のベスト興行賞を受賞するなど成長を続けるが、2017年に株式会社DDTプロレスリングがサイバーエージェントグループ入りすると、ガンバレ☆プロレスもサイバーグループ入りしメジャー団体と言える立場に。
翔太、岩崎孝樹、石井慧介、勝村周一朗、まなせゆうな、YuuRI、渡瀬瑞基と着実に仲間も増えていくが、メジャー入り後の団体の空気と結婚して落ち着き始めた大家に反発した今成夢人が『今成革命』を宣言。以降はぽっちゃり女子プロレス旗揚げや、大谷晋二郎とともにホットジャパンを結成し、アジャコングやエル・リンダマンなども参加するプロレス業界を股にかけた一大勢力へ。スピリット・オブ・ガンバレ世界無差別級王座が設立されると、初代王者となった高岩竜一から今成がベルトを奪還するなど、いつしか大家ではなく今成が団体の中心となっていった。
そんな中決まった大田区総合体育館でのガンバレ☆プロレス史上最大のビッグマッチ。大家は「俺は改めてガンプロを引っ張っていくって決めたんだよ。7月10日大田区、俺に挑戦させろ!21年のプロレス人生と、9年ガンプロを続けてきた意地と根性で、俺は今成から絶対にベルトを獲ります」と挑戦を表明する。
かつて心身を鍛えるために行っていた炎の特訓ならぬ、元バトラーツの澤宗紀、フィットネスビキニのミホトレーナー、スパルタンレースの土田尚人トレーナーの3人から高負荷トレーニングを受け肉体改造に励み、肉体だけではなく精神的にもハングリーさを取り戻して、大家はこの日のメインイベントに臨んだ。
大家のBAD COMMUNICATIONと今成のPOISONで入場から会場のテンションが最高潮になり、大きな歓声が飛ぶ中で試合開始。
じっくりとお互いを確かめ合うようなショルダータックルのぶつかり合いやエルボーでの殴り合いを続け、場外乱闘では今成が「絶対勝つぞ!」と雄たけびを上げる。
今成はスーパーフライを狙うが、大家が落とされても落とされてもエルボーを受けながら何度も正面に登り、ついに雪崩式ブレーンバスターで今成を投げ捨ててカミカゼ。勢いに乗るのも束の間、今成がSTFで捕らえて絞り上げ、大谷に捧げる顔面ウォッシュを放つがこれは大家がキャッチして投げ捨てる。大家は澤直伝の伊良部パンチを狙うも、これを迎撃した今成が得意のルーテーズプレス。だがこれを切り返した大家が炎のスピアーを連続で叩き込んでいくが、耐えきった今成がタイガードライバーからロープを往復してのラリアットでなぎ倒し3カウントを奪った。
今成は涙を流しながら「私は、幸せものです!大家さんが、ガンバレ☆プロレスを作ってくれて、俺のしょうもない人生が息を吹き返しました。毎日徹夜する俺を、朝大家さんが出勤して、大変そうだなって言ってくれて、どんだけ救われたと思ってんだよ大家健!どんだけ、理解力あんだお前!なぁ!2人っぽっちで、プロレスキャノンボールいっぱい恥かいたけど、あそこでかいた恥は俺の宝物だ!大家健!9年間、俺、この9年間大変だったけど、今はっきり言えるよ!俺幸せ者だよ!」と絶叫。
大家は負けながらも今成を見て嬉しそうに笑顔を見せながら「今成に負けて悔しいです!ただね、俺はさ、ホームレスになったこともあるんですよ。人生終わったと思いましたよ。でもさ!人生終わったと思ってた今成夢人が不死鳥のごとく蘇った!こういう人をどんどん増やしていきたいんですよ僕は!そう思って、ガンバレ☆プロレスを立ち上げたんですよ!だからまだまだ人生捨てたもんじゃねーぞオイ!お前ら苦しくて悔しくて悲しいことあったって、最後に良いことあるよ!それを信じて最後まで!頑張り続けましょう!」と想いを叫ぶ。
最後に今成は「ジャパンテクニカルアート社、世界一のプロレス中継の技術を持っているチームだと思っています。本当に今日は僕の試合を中継してくださってありがとうございます。2013年に浪口に襲われてから、僕は恥をかこうって思いました。大家さんが、自分の子供には『恥をかけ!』って言ってるらしいです。僕は恥をかくことを恐れてない。恥をかいても這いつくばってでも、生きることを謳歌したいなって。本当にこのガンバレ☆プロレスはそういうことを気づかせてくれたんだなと思います。本当に、俺の人生クソでしたけど、ガンバレ☆プロレスに、大家健に出会って本当に良かった。それが今日結実した1日だったと思います。ガンバレ☆プロレスを見て、『羨ましい』って思ってるやつ、もしかしたらいると思うんですよ。自分たちの恥晒して、思い切りクソまみれになってる輝きを見て『羨ましい』って思ってるやつを増やして、もっともっとそういう奴をここのリングに集めさせたいなって。だから今日の興行を見て、自分の心の中にあるガンバレ☆プロレスとか、自分の心の中にある大家健とか、そういうものに気付いたら、選手・レスラー・スタッフになりたい奴ら、いつでもいい。待ってます。俺たちはいつでも門戸を開放してるんで。いつでも来てください。そういう奴らとどんどん大きな輪を広げていきたいなと思ってます」と、王者として気持ちを新たにガンプロを引っ張る思いを語った。
ビッグマッチを終えたガンプロは来週17日に王子大会を予定。8月13日には後楽園ホール大会を予定しており、新たな闘いに向けて頑張り続ける。