【試合詳細】12・12 PANCRASEスタジオコースト大会 【ライト級KOP統一】久米鷹介vs雑賀ヤン坊達也 【ストロー級KOP】北方大地vs宮澤雄大 【バンタム級暫定KOP】井村塁vs中島太一
『PANCRASE 325』
日程:2021年12月12日(日)
開始:13時
会場:USEN STUDIO COAST
観衆:2222人(超満員)
[メインカード結果]
▼第1試合 ウェルター級 5分3R
●近藤有己(パンクラスイズム横浜)
判定0-3
○DARANI(PRAVAJRA)
▼第2試合 ライト級 5分3R
○丸山数馬(Tri.H studio)
2R 2分41秒、フロントチョーク(タップアウト)
●伊良波 心(NOVA UNIAO)
▼第3試合 ミドル級 5分3R
○内藤由良(リバーサルジム横浜グランドスラム)
判定3-0
●フェルナンド・マツキ(DAMM FIGHT JAPAN)
▼第4試合 バンタム級 5分3R
●花レメ紋次郎TK(リバーサルジム新宿Me,We)
1R 1分46秒、アームロック
○風間敏臣(和術慧舟會HEARTS)
▼第5試合 ライト級 5分3R
●松岡嵩志(パンクラスイズム横浜)
1R 1分16秒、TKO(スタンドのパンチ→レフェリーストップ)
○松本光史(M PLATIC)
▼第6試合 ライト級 5分3R
○金田一 孝介(K-PLACE)
判定3-0
●林 源平(和術慧舟會IGGY HAND’S GYM)
▼三浦広光 引退セレモニー
▼第7試合 バンタム級暫定王者決定戦 5分5R
●井村 塁(Nexusense)
2R 0分08秒、TKO(スタンドのパンチ→レフェリーストップ)
○中島太一(Lotus世田谷)
※中島が暫定王者となる
▼第8試合 コーメイン ストロー級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチ 5分5R
○北方大地(パンクラス大阪 稲垣組)
3R 2分28秒、TKO(スタンドのパンチ→レフェリーストップ)
●宮澤雄大(K-PLACE)
※北方が初防衛を果たす
▼第9試合 メインイベント ライト級キング・オブ・パンクラス 王座統一戦 5分5R
○久米鷹介(ALIVE)
2R 2分28秒、腕ひしぎ十字固め(タップアウト)
●雑賀ヤン坊達也(DOBUITA)
※久米が統一王者となる
[ポストリミナリーファイト結果]
▼第1試合 第27回ネオブラッド・トーナメント ストロー級決勝戦 5分3R
○大塚智貴(CAVE)
2R 3分34秒、三角絞め(タップアウト)
●孫悟空DATE(Team DATE )
▼第2試合 フェザー級 5分3R
●齋藤拓矢(ALLIANCE)
1R 0分44秒、KO(スタンドのパンチ)
○高木 凌(パラエストラ八王子)
▼第3試合 バンタム級 5分3R
○髙城光弘(リバーサルジム横浜 グランドスラム)
判定2-1
●水永将太(mma ranger gym)
▼第4試合 バンタム級 5分3R
○田嶋 椋(OOTA DOJO)
1R 4分50秒、TKO(スタンドのパンチ→レフェリーストップ)
●サイバー遼(トライフォース東中野)
▼第5試合 バンタム級 5分3R
●小川隼也(CAVE)
1R 3分51秒、TKO(スタンドのパンチ→レフェリーストップ)
○矢澤 諒(パンクラスイズム横浜)
▼第6試合 フライ級 5分3R
○田代悠生(パラエストラ千葉)
判定3-0
●渦巻DATE(Team DATE)
▼第7試合 ストロー級 5分3R
○植松洋貴(NEVER QUIT)
1R 4分03秒、リアネイキッドチョーク(タップアウト)
●佐藤良太(GRABAKA)
久米がヤン坊を制しライト級KOP統一王者に!北方がストロー級KOP初防衛!中島がバンタム級暫定KOP王座戴冠!三浦広光の引退セレモニーが実施
第1試合
近藤は前人未到の3階級制覇、4度ベルトを巻いた、まさにパンクラスのレジェンド。1996年にデビューし、選手生活は25年。46歳を数えても、なお闘い続けている。昨年は2連敗を喫したが、前戦(今年5月)は鈴木淑徳に判定勝ち。このまま良いイメージで2021年を締めくくりたいところだ。
対するDARANIは近藤がデビューした1996年生まれの25歳。今年、Team DATE を離れ、新チームPRAVAJRAを立ち上げた。パンクラスデビュー以来フェザー級で闘ってきたが、前戦(※今年6月)はライト級、今回はウェルター級で闘う。
1R。前に出て行く近藤。DARANIは蹴りを出して距離を取るが、やや近藤の圧に押され気味か。DARANIは右ハイなど蹴りで攻める。
近藤は距離を縮めてパンチを出すが、なかなか良い距離にならない。DARANIが回転キックからテイクダウン。近藤はすぐ立つ。離れたDARANIを追う近藤だが、自分の距離にならない。ケージを回りながら蹴るDARANI、近藤もロー。
DARANIがローとミドル、近藤が右パンチを放ったところで終了。
ジャッジは三者10-9でDARANI。
2Rも同様の展開に。近藤は出ていくが、DARANIは距離を取る。間合いに入れない近藤。DARANIの攻撃はカットしているものの、なかなか手が出ない。距離を取るDARANI、詰めていく近藤。近藤が蹴りを出し、DARANIがスリップして尻もちをつくが、すぐに立つ。
近藤は距離を詰めて右フック。さらに出てパンチを打ち込んだところでブザー。
ジャッジは三者10-9でDARANI。
3R。近藤が間合いを詰めて左右パンチ。さらに圧をかけていくが、DARANIは距離を取る。DARANIのキックでのダメージはないが、近藤は攻め手が少なく、一気に攻めるしかない。
さらに詰めていく近藤だが、DARANIは避けてケージ内を回る。逃したくない近藤は走って追うが、パンチを入れられない。DARANIがスピンキックを放って終了。
判定は三者30-27、3-0でDARANIが勝利。
第2試合
丸山は2015年よりパンクラスに参戦中。同年NBTウェルター級で優勝している。昨年はコロナの影響もあり1試合のみだったが、12月大会で白川洸太を三角絞めで下している。今年に入り、6月に平信一に判定勝ち。勢いに乗り連勝を伸ばしたいところだ。
対する伊良波は昨年10月に初参戦。小島勝志にチョークスリーパーで一本勝ちしデビュー戦を飾った。今年はNBTで優勝している。
1R。走って出た丸山。フェイントをかける。伊良波は左ジャブ。伊良波の蹴り足を取り、丸山がテイクダウン! ハーフマウントへ。下から殴る伊良波、丸山はボディにヒジ連打。丸山は足がなかなか抜けないが、起き上がりたい伊良波を起きさせない。
両者立ち、がぶった丸山がパンチ連打で終了。
ジャッジは三者10-9で丸山。
2R。右ハイキックから組んだ丸山。ケージへ押し込んでヒザ。さらにすくってテイクダウン! ボディを殴りハーフマウントへ。
伊良波は下から殴るが、丸山がパウンド連打、さらにチョーク! 伊良波がタップアウト。丸山が快勝し、3連勝。
[丸山 ケージ上コメント]
「作戦は、練習でやってきたことをそのまま出すことでした。やってきたことをオールラウンドに出すのが課題でした。
これで3連勝なので、上位の選手なら誰でもいいですし、タイトルに絡ませてくれてもいいです。自分は他団体に行く考えはありません。上に行くのみです」
第3試合
P’sLAB横浜のキッズクラスでパンクラシストたちの薫陶を受けて育った内藤。レスリング全日本学生選手権2位の実力を持ち、昨年、満を持してパンクラスに参戦。村元佑成にリアネイキッド・チョーク(昨年9月)、荒井勇二をKO(同12月)、今年9月には渡部拓馬に腕十字とすべて1Rで連勝中。
かつての師匠であるロッキー川村2との対戦を目標に、さらに連勝を重ねたいところだ。
一方のフェルナンド・マツキは初参戦。柔術黒帯の実力者で、今年4月にFighting NEXUSでMMAデビュー。大和に1RでのTKO勝ちを収めている。
極めもパワーも持つ両者。今回も、どちらかが決めるのか。
1R。プレッシャーをかける内藤。左ミドル。マツキがアッパーで飛び込むと、内藤が受け止めてテイクダウン! 内藤は相手を立たせない。マツキは下から腕を狙うが、内藤は一気に位置を変え、腕を抜いてパウンド。
マツキが立つと、内藤はヒザを入れ、片足を掴んで鮮やかにテイクダウン! 強いパウンドを打ち下ろす。ヒジさらにパウンド。マツキが立つが、内藤が顔面にヒザ! マツキがフロントチョークに取ると、内藤が外す。立ったマツキをケージへ押し込む。さらに両足を引っ張りテイクダウン! 上に乗りハーフマウント。さらに立ち上がった内藤がパウンドを落として終了。
ジャッジは三者10-9で内藤。
2R。お互い2Rに入るのは初めて。
内藤が前蹴り。続いてタックルから大きくテイクダウン! 内藤は肩固め狙いか。しかし外す。
マツキはボディを殴るが、内藤がパウンド、ヒジ連打。内藤が攻めまくる! 脱出を試みるマツキだが、内藤は逃さない。両足をかかえて寝かせ直し、さらにパウンド、ヒジを連打。カメになったマツキにボディブロー。終了。
ジャッジは二者10-9で内藤、1人が10-8で内藤。
3R。マツキがパンチで出る。しかし、内藤がカウンターのタックルで組み、ケージへ押し込む。マツキは腕を狙うが、内藤はバックマウントから殴る。あばらあたりにヒジ連打。
正対したマツキが殴り、ヒジ。残り30秒。マツキは殴り、腕を狙うが、内藤がガッチリ抱えたまま終了。
判定は二者30-27、1人が30-26、3-0で内藤が勝利。
今回フィニッシュはできなかった内藤だが、巧さ、強さを存分に見せ、ファンの期待感を高めた。
第4試合
花レメは2011年よりパンクラスに参戦。仕事の都合で2015年7月大会を最後に、マットを離れていた。しかし、2019 年、拠点を大阪から東京に移し、所属も総合格闘技道場コブラ会からリバーサルジム新宿Me,Weに移籍。昨年は7月に平岡将英、12月に土肥純を破り連勝中。今回は1年ぶりの試合。
風間は昨年より参戦。今年のNBTバンタム級優勝者で、早くもランキング入り。ランカーとの初試合となる。
1R。パンチから組んだ風間。片足を取ると投げてテイクダウン! そのまま腕を狙い、引っ張るとレフェリーが止めた。風間がランカー相手に鮮やかな一本勝利。
[風間 ケージ上コメント]
「しゃべるのが苦手なので、一言だけ。このあと、バンタム級の(タイトルマッチを)勝った方の選手、自分とやってくれませんか?」
第5試合
松岡は2011年よりパンクラスに参戦。当初はSTB Japanに所属していたが、フリーを経て2016年6月大会よりパンクラスイズム横浜所属にて闘っている。
昨年は平信一、岸本泰昭に判定勝ちし、今年6月には元UFCファイター・粕谷優介に1Rわずか22秒でKO勝ちしている。
対する松本は修斗・第12代世界ライト級王者。2019年10月、ONE日本大会でKOP久米鷹介に敗れ、リベンジを誓い修斗の王座を返上、パンクラスに参戦した。
昨年は上迫博仁に判定勝ち(10月)、今年5月にはアキラにTKO負けを喫している。
松岡と松本の対戦は、もともと、松本の初参戦時(2020年2月)に組まれていたカードだった。しかし、新型コロナの影響で大会が中止となり、8月に延期に。しかし、この大会も開始直前に陽性者が出たため、中止となった。1年10ヶ月ぶりに実現した試合を制するのはどちらか?
1R。鋭いパンチを放つ松本。松岡はキックから左右フック。松岡は出て行くが、松本のパンチをもらい効いた。ヒザを着いてしまうが、なんとかしのぐ松岡。離れた松本が放った右フックがヒット、松岡がダウン! レフェリーが試合を止めた。
[松本 ケージ上コメント]
「今日はスタジオコーストがラストということで、(自分は)思い入れはそんなにないですけど、パンクラスを長らく支えてくれたということで、ありがとうという気持ちです。来年、またパンクラスの新しい会場で試合をするのを楽しみにしています。
僕が(パンクラスに)来たのは、強い選手とやるためです。実力のある選手と闘いたいと思っています」
第6試合
金田一は2018年よりパンクラスに参戦。参戦前は、7年という長期のブランクがあったが、初参戦(2018年7月・大阪大会)で鈴木道場長に判定勝ち。その後、上田厚志をTKO、松岡嵩志をKOで勝利するが、その後さらに2年のブランクが空いた。
しかし、昨年12月、富樫健一郎に判定勝ち。試合後には次期挑戦者決定戦出場をアピール。また、暫定王者・雑賀ヤン坊達也の「RIZINに出たい」という発言に対して「だったらベルト返上してください」とケージ上で抗議している。
対する林は2013年より参戦している。昨年は9月に雑賀ヤン坊達也と暫定王者の座を懸け闘ったが、1ラウンドKO 負けでベルトには手が届かなかった。今年9月の葛西和希戦でも判定負け。今回が出直しの試合となる。再びの王座挑戦に向け、必ず取っておきたい一戦だ。
1R。金田一が蹴り、ジャブでプレッシャーをかけていく。林はローを返すが、金田一が組んでテイクダウン! パウンド連打。林は回って立ち、スタンドに戻る。
林が左右パンチ、右ミドル、金田一もパンチを返し、組んで片足を取り倒す。さらに回ってバックを取り殴る。殴り続ける金田一。マウントを奪いヒジ連打したところで終了。
ジャッジは三者10-9で金田一。
2R。林が蹴るが、金田一が組んでテイクダウン。カメになった林を殴り、バックマウント。
立った林に金田一がパンチ。林はハイキックを繰り出すが、金田一が組んでケージへ押し込む。パンチで離れた林。両者打ち合い、会場はヒートアップ! 金田一が上になり、ハーフマウントからアームロック。林はこれを外して逃げるが、金田一が追って抱える。
再び立った林。しかし、金田一がケージへ押し込む。林が蹴り。終了。
ジャッジは三者10-9で金田一。
3R。林が左ハイ。金田一が組んでテイクダウン! 鉄槌を落とし、ハーフマウントからサイドポジションへ。金田一がバックを狙うが、正対した林が肩パンチ。
離れるが、金田一が組む。テイクダウン。殴りながらバックに回る。林も殴るが、残りわずかで金田一が腕十字! これは決まらなかったが、パウンドを落として終了。
判定は三者30-27で金田一が3-0勝利。
今大会ではライト級正王者が決まる。金田一はベルトを目指してエンジンをかけた。
[金田一 ケージ上コメント]
「しっかり一本かKOで勝って言いたかったですけど、来年、日本の格闘技回は変わると思います。ライト級のチャンピオンは忙しいでしょうから、僕が暫定(王者)でパンクラスを守ります。上位とほとんどやっているので、いいですよね。組んでください!」
三浦広光 引退セレモニー
第10代ウェルター級パンクラシスト・三浦広光が引退を表明。テンカウントのセレモニーが行われた。
三浦は柔道をバックボーンに持ち、大学時代には正力杯ベスト8入賞。2004年パンクラスデビュー。2005年以降、DEEP、HERO’S、WECなどを歴戦。2010年にはプロボクサーとしてラスベガスでデビュー。2011年には日本スーパーミドル級1位となる。
2016年10月、パンクラスに復帰。村山暁洋からタイトルを奪取した。しかし2017年7月、阿部大治にTKO負けを喫し、王座陥落。2019年には元KOPレッツ豪太にTKO勝ちするも、今年6月、菊入正行にTKO負けしている。パンクラス戦績は11戦8勝3敗。
[三浦 コメント]
「デビュー戦から引退まで、パンクラスで闘うことができて光栄でした。本当にありがとうございました。
大学卒業まで柔道をやって、そのあとキックをやって、いろんな出会いがあって、それは全部、自分の財産です。この財産を、今後も大事にして行きたいと思っています。
同級生では、まだ格闘技をやっている選手もいます。悔いのないようやってほしいと思います」
第7試合
井村は昨年プロデビューし、同年NBTバンタム級優勝。全て1Rでの一本で勝ち上がり、MVPも獲得した。今年に入っても平岡将英にTKO(5月)、ジェイク・ムラタに三角絞めで一本勝ち(10月)。タイトルマッチまで一気に駆け上がった気鋭の若手選手だ。
試合前のインタビューでは「僕がレベル20だとしたら向こうは50ぐらい」と話していた井村。どのような試合になるのか、そして今回も1Rで決めることができるのか。
対する中島は2012年にパンクラスデビュー、同年NBTバンタム級で優勝している。組み技と決めの強さが際立っていたが、2014年3月には世界選抜ワールドスラムトーナメントでは後ろ回し蹴りでKO勝ち。新たな強さを見せている。
2015年、パンクラス ハワイ大会でフェザー級に転向、現UFCランカーのダン・イゲに勝利している。しかし、同年4月、フェザー級タイトル次期挑戦者決定戦でカイル・アグオンに判定負け。
2016年以降はロシアの格闘技イベントACBに参戦していたが、2018年9月パンクラスに復帰、田村一聖を破った。
今年5月にはフェザー級タイトルマッチでISAOに肉薄するも惜敗。実力を認められながらもベルトを巻けなかった中島。今回は本来の階級であるバンタムに戻し、暫定王者決定戦に臨む。
1R。プレッシャーをかけていく中島。井村は距離を取りロー。井村がパンチを出すが、中島のパンチの圧力が強い。さらに中島の右パンチで井村ダウン! 組んで立った井村だが、さらにパンチをもらいダウン。パンチで追撃する中島だが、離れてスタンドに。
井村がタックルに入るが、中島は潰して殴る。立つが、さらにヒジ連打。離れて中島がパンチ。井村は中島のパンチに押されている。タックルに入るが、中島は切る。再びタックルに入る井村だが、中島はまた切ってパウンド連打! 止められるかと思ったところで井村はブザーに救われた。
ジャッジは三者10-8で中島。
2R。開始すぐ、中島のパンチがヒット、井村ダウン! なんとか立った井村だが、さらに中島のパンチがヒット! レフェリーが試合を止めた。
認定証を受け取り、悲願のベルトを腰に巻いた中島は、感極まり涙。妻と一人娘をケージに上げ、ともに笑顔で戴冠を喜んだ。
デビューして10年。無冠の実力者がついにタイトルを手にした。実力だけでなく、奔放な発言や海外への挑戦でも注目された中島だが、古巣での戴冠は格別の喜びだっただろう。2戦連続でのタイトルマッチ挑戦となったが、適正階級での闘いで強さを存分に発揮した。
コロナ禍で正王者のハファエル・シウバとの統一戦はまだ先になりそうだが、ぜひ見たい一戦。また、今後、中島がどのような格闘人生を歩いて行くのか、ますます楽しみだ。
連勝で期待の大きかった井村だったが、経験が浅かったか。パンチ一発にしても、中島との力の差は明らかだった。しかし、期待の選手であることに変わりはない。この経験を糧に、さらなる飛躍を期待したい。
[中島 ケージ上コメント]
「得意なジャブとカーフキックは当たると思っていました。見事、作戦通り行きました。
頑張って良かったな。10年かかっちゃいました。僕の考えが甘くて、(戴冠まで)こんなにかかっちゃいました。このチャンスをくれたパンクラスが獲らせてくれたと思っています。
これで、強い選手とやれるスタートラインに立てたと思います。パンクラスとは違う強い奴とやって行きたいです」
第8試合
北方は2010年パンクラスデビュー。地元・大阪大会を主戦場にしていたが、経験を重ね、東京大会に進出。2016年、室伏シンヤ、早坂優瑠を破って絶対王者・砂辺光久のベルトに挑戦するも一本負け。
しかし、その後も着々と勝ち続け、2019年4月、曹竜也を破り次期挑戦者に。さらに7月、砂辺光久をTKOで破り、念願のベルトを巻いた。
その後ONE、RIZINに出場したが、いずれも敗退。今年6月のRIZINに出場予定だったが、原因不明の高熱で欠場している。
今年3月に結婚したばかりの北方だが、4月には国の指定難病「後縦靭帯骨化症」にかかったことを公表。しかし、さまざまな思いの中から、格闘技を続けることを選んだ。担当医やトレーナーと相談しながら、手術は回避。以前と変わらない動きをできるトレーニングをしてきたという。
挑戦者・宮澤は2017年、SWATでデビュー。翌2018年からパンクラスに上がっている。参戦当初こそ連敗したものの、徐々に力を発揮し5勝1敗と力をつけてきた。今年5月、元ZST王者・八田亮を判定で下し、ついに王座への挑戦権を手に入れた。
調印式では、お互いだからこそ闘いたいと話した両者。どのような試合になるのか、そしてどちらがベルトを巻くのか。
1R。ジャブからプレッシャーをかける北方。パンチがヒット、宮澤効いた。宮澤はタックルに入るが、北方はガブり、殴らせない。宮澤は立って離れる。北方が出てパンチ、ミドルを打ち込む。さらに右パンチを効かせる。飛び膝で畳み掛ける北方だが、宮澤はとらえてケージへ押し込んだ。ブレイクがかかる。
宮澤は入りにくそう。左右パンチをもらうと、組んでケージへ押し込む。ヒザを入れ合って終了。
ジャッジは三者10-9で北方。北方のスピードとパンチの圧が際立った。インターバルの間、椅子に座らず立っている北方。
2R。お互いフェイント。宮澤が飛び込んでパンチ。北方もパンチ、左右ボディを打ち込む。北方が距離を取りローを打つと、宮澤はタックルからテイクダウン! しかし、すぐに立つ北方。
バックを取った宮澤はケージへ押し込み殴るが、北方はお尻をついていない。バックに回って宮澤におぶさる。降りるとロー。宮澤は殴り、ヒザ連打で終了。
ジャッジは三者10-9で宮澤。北方は1Rほど攻め手がなかった。
3R。北方が左右パンチ連打。離れてまたパンチを打ち込む。宮澤はタックルからケージへ押し込む。北方は正座のような形で背中をつかない。立って突き放す北方。
宮澤のタックルを潰し、バックに回った北方。喜多方のパンチが効いた! 宮澤もパンチを返すが、北方がパンチを打ち込んで行き、宮澤がダウン! 鉄槌を連打し、北方がKO!
さまざまな困難を乗り越え、ひと回りもふた回りも成長した北方が初防衛を果たした。「息子たちに自分の生き様を見せたい」と話していた北方は、息子たちをケージに招き入れ、抱きしめた。ただ試合に勝った姿だけではなく、闘うということ、生きていくということを、息子たちは深く感じたことだろう。
心配された北方の体調だが、試合が進むうちに病気のことを忘れ、引き込まれた。難しい病気でも、覚悟と工夫があれば、人はここまでできるものなのだ。北方は「同じ病気の人の励みになれば」と話していたが、健康な人にも力をくれるような、熱く心震える一戦だった。
まさに、頼もしいKOP。今後、防衛を重ねていく姿が見たい。そして、大好きな格闘技を続けられるよう、心から祈らずにはいられない。
[北方 ケージ上コメント]
「僕は真面目なので、内容で反省しています。だからこそ、まだまだ強くなる。ここから3回、5回、10回と防衛して、パンクラスの歴史に残るチャンピオンになりたいです。
首の病気になって身体も衰えたし、気持ちも落ち込みました。でも、僕には頑張る理由がありました。それは息子たちです。この試合は、自分のためじゃなくて、周りの人たちのために闘いました。ホンマに周りの人たちのおかげでここに立てて、こういう結果を出すことができたと思っています。皆さん、本当にありがとうございます。
(息子たちに向かって)人生には、絶対につらいことがあるし、投げ出したくなることもある。でも、覚悟を決めたら何だってできるし、何にだってなれるんや」
[北方 試合後コメント]
「イメージ通り。テーマが結果的にできたのでよかった。でも、やっぱり反省点は2R。相手の盛り返そうとするところに少し付き合ってしまったところがあったんで、スキル的な反省もまだあるなと、改めて感じましたね。目標とするチャンピン像にはまだ遠いな、まだまだアカンと思いました。
見てもらった通り、身体はバッチリでした。もちろん、不安がなくなることはないんですけど、その中で最善の選択をして、最高の状態に持っていけたとは思っています。見る人に心配させたらファイターとしてアカンと思ってるんで。見て欲しいのは、そういう状況でもここまでやれるっていうところ。病気をアピールしてるんじゃなくて、みんな色々あるけど、でも出来るぞっていうところを見せたかった。そこを伝えたかったです。
チャンピオンやし、最高傑作を作りたいから、1Rから仕留めに行こうと思ったんですよ。その通りにちゃんと動けて。1Rからしっかり意識を持って実行できたんで良かったと思います。心配してくれている人や家族とか、支えてくれた人(に、その姿を見せられた)。治療科の人とかは心配してたんですけど、僕の身体をここまで戻してくれたんで。その人たちをホッとさせられたので、一安心したっていうのが一番大きい感情ですね。
(お父さまも喜んでいらっしゃいましたが)オトンは今日一番舞い上がってるでしょうね(笑)。支えてくれてる人が『良かった良かった、今日は気分がエエわ』と言ってくれたら僕は満足なんで。
(理想の父親像には、お父さまがある?)僕のオトンは別に理想じゃないですね(笑)。理想の男なんていうのは、もっともっととんでもない遠くにあって、僕はそこに達してないと思ってますし、途方もないですけど、これもできたほうがいい、あれもできたほうがいいと変わっちゃうし。でも、親父の武器は愛情なんで、僕をとことん愛してくれたんで、そこはすごく良いものをもらったと感じていますね。
(3位になった時から何も言わなくなったとおっしゃっていました)うん、そこは親父やから息子に何か言いたいっていうのはあるけど、3位になる前からもう言うことなんかなかったと思うんですけど、そこはまあ、言わせてあげようかな、みたいな(笑)、そんな感じです。
(ファンへ)パンクラスのチャンピオンとしてふさわしいのかふさわしくないのか、良かったのか悪かったのか、その判断はファンの人に委ねるんですけど、僕はチャンピオンとしてもっともっと良い内容で、エエもん見たなと思ってもらえるような試合をするつもりなんで、今後も見てもらえたら嬉しいなと思います」1
第9試合
久米は2016年9月、徳留一樹を破り第7代KOPとなった。その後、2017年12月に徳留一樹、2019年4月、トム・サントスの挑戦を退けている。
しかし、2019年10月、ONEで松本光史と闘ったあとは、2020年9月のRIZIN.24で北岡悟に判定勝ち、今年3月のRIZIN.27で武田光司戦で判定負けを喫すなど、強い相手を求めて他団体に上がっていた。2年8ヶ月ぶりのパンクラスで本領を発揮できるか。
一方の雑賀は、2019年7月、パンクラスに初参戦。以来、3戦連続1ラウンドKOでファンを驚かせ、昨年9月、林源平を下して暫定王者の座を手にした。
雑賀にとっては1年3ヶ月ぶりの試合。その間、他団体からのオファーもあったというが、統一戦を目指し、他団体に上がることなくこの機会を待ちわびていた。
2021年最終戦、USENスタジオコースト閉館前の最終戦と記念尽くしとなったこの一戦。真の王者となるのはどちらか。
1R。距離を取り、プレッシャーをかけながら回る久米。タックルに入り、雑賀に尻もちをつかせる。逃さず、ケージへ押し込んでいく。入れ替える雑賀。ヒザ、ボディを打ち込む。入れ替え合い、久米がケージへ押し込んで殴り、ヒザ。
両者離れ、パンチを打ち合う。雑賀のパンチがヒット、久米がダウン! 雑賀がすかさずパウンド連打! しかし、久米はギリギリしのいで腕を狙う。これはなんとか防ぐ雑賀。さらにアームロックを狙う久米を雑賀が殴り終了。
ジャッジは三者10-9で雑賀。久米は左目の下が青く腫れている。
2R。久米タックルをかわし、雑賀が上に。久米は引き込んで尻もちをつかせ、バックに回ってチョーク! しかし、しのぐ雑賀。久米はバックから腕十字! 腕が伸びた。堪える雑賀。久米がさらに力を入れると雑賀がついにタップ! 久米が統一王者の座を手にした。
KO負け寸前まで追い込まれた久米だったが、まさに大逆転。積み重ねたキャリアがものを言った。雑賀を“久米地獄”に引きずりこみ、見事に極めた。
負けはしたものの、雑賀の健闘も光った。今回は統一王者のベルトを巻くことはできなかったが、そのポテンシャルは高い。今後、日本の格闘技界において抜きん出た存在になっていくことは間違いないだろう。
[久米 ケージ上コメント]
「雑賀選手、強かったです。かろうじて勝てました。雑賀選手あっての試合です。皆さんに喜んでいただけて良かったです。ありがとうございます。
(1Rでダウン下が)応援していただいている人のことを思って(涙声)必死に闘っただけです。日頃から応援してくださる皆さんのおかげで闘えました。そして、強い雑賀選手の力があって勝てました。
(雑賀はなかなかタップしなかったが)このチャンスを逃せないと必死でした。
(今後は?)1戦1戦闘い続ける今年かできません。1戦1戦、大事にしていきたいです」
[久米 試合後コメント]
「(ダウンのあとは)記憶がないんです。でも、これまでの積み重ねで身体が動きました。実感するのは、要所要所で(日沖)発さんのクラスだったり、声が、他の記憶はなくてもそこだけは入って来てるんで……ちょっと不思議な感覚でした。
試合のテーマが『今までやって来たことを出す』ということだったので(2Rで引き込めたのも、それができたと思う)。グラップリングや柔術の練習をずっとやっている中で、今回やって来たところが助けてくれたんだなと思います」
2018年からパンクラスがホームとして来たスタジオコーストだが、来年閉館されるため、今回が最後の大会となった。若手の中には、スタジオコーストでしか試合をしたことのない選手もいる。スタジオコーストは、パンクラスにさまざまなドラマを生み、多くの選手を育ててきた。
ラスト興行には、パンクラスへの熱い思いがあり、親子の愛があり、ベルトへの執念があり、キャリアの重みがあり、若手の野望があり……さまざまな思い、感情が渦巻き、会場は熱く揺れた。
喜びも悲しみも、ここに全てがある。これこそがパンクラス、そう言いたくなる、素晴らしい大会だった。
(写真・文/佐佐木 三桜)