パンクラスライト級調印式は和やかムード。王者・徳留はウェイトリフティング五輪代表の中山陽介とトレーニングを語り合う
8月10日午後、都内新宿区のパンクラスにて、ライト級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチの調印式がおこなわれた。この試合は「PANCRASE 280」(9月11日、ディファ有明)で、第6代王者・徳留一樹(パラエストラ八王子)に久米鷹介(ALIVE)が挑戦する。徳留と久米は揃ってスーツに身を包み、和やかな雰囲気の中、出場誓約書にサインした。
まず久米が「徳留選手という強い王者に挑戦させていただけることに感謝します。前回は怪我からの復帰戦でした。サポートしてくれた人たちにベルトを巻いた姿を見せられるよう、全力で闘います」と挨拶。
続いて徳留が「以前、お世話になったチームや選手と闘うのはいやだなという気持ちがありました。でも、極まったら話は別です。当日はいい試合を見せようと思っています」と話した。
挑戦者・久米は2011年よりパンクラスに参戦。2012年からはROAD FCで7戦し、4勝3敗の成績を残す。昨年からパンクラスに復帰し、奥野“轟天”泰舗、石川英司を判定で破っている。
王者・徳留は2010年よりパンクラスに参戦。2011年におこなわれたライト急グランプリ決勝では、惜しくもISAOに負けたものの、そのパフォーマンスの高さは今でも語り草となっている。その後、2013年〜2014年にかけてUFCに参戦し、4戦1勝3敗している。昨年3月からパンクラスに復帰。児山佳宏、JJ.アンブローズを倒して、同年11月、北岡悟と第6代王者の座を懸けて激突、シルバーのベルトを巻いた。今年4月にはアクバル・アレオラを1ラウンドTKOで破り、王者の貫禄を見せている。
——お互いの印象をお聞かせください
久米「強い相手をどんどん倒している。練習で肌を合わせたこともあるので、徳留選手が強いことはよく知っています。挑戦することが光栄に思える相手です。徳留選手は、自分の距離をつかんで倒しているように見えますが、強さはそれだけではないと思っています。ケージ際や、四つに組んだときの強さ。組み力の強さという部分を意識して練習に取り組んでいきます」
徳留「肌を合わせたことがあるので、強いのはわかっています。粘り強くテイクダウンを狙うなど、気持ちも強い選手ですね。競り負けないようにしたいです」
——一緒に練習したのは、いつごろですか?
徳留「UFCで、久米選手が闘ったことのあるナム・ウィチョルと試合をすることになったので(2014年3月、UFC Fight Night: Kim vs. Hathaway)、1週間くらい名古屋に出稽古させていただきました。でも、試合が決まったら、それは自分の仕事なので、感情とは別。自分のやってきたことをぶつけるのみです」
——徳留選手は初防衛戦です
徳留「初防衛戦だからといって、特に何も。5分5ラウンドをやりたくないな、というくらいです。長いので(笑)。でも、5分5ラウンドに対して身体がもつように、また、パフォーマンスが出るように作ってきているので、問題はないと思います」
——何回くらい防衛したいですか
徳留「考えていないですね。一戦一戦が全部大事で、しっかり勝っていくことだけ。何回防衛しようとか、そういうことは考えていないです」
――久米選手は、タイトルマッチということに関してはいかがですか。
久米「今までチャンスを逃して来ていて、ベルトはまだ一度も巻いていません。だから、絶対に獲りたいという思いが強いです。5分5ラウンドは初めてです。ナム選手とのときは、3ラウンドを想定しての4ラウンドをやっていますけど、エクストラ・ラウンドがあるということを聞いていた上での4ラウンドでした。今回は5分5ラウンドということが決まっているので、厳しい展開になるとは思いますが、5ラウンドをやり切るフィジカル、コンディションを作っています。5ラウンドということは、戦術面でもしっかり意識して作っていこうと思います」
——いま、間近にベルトをご覧になってみて、いかがですか
久米「すごくカッコいいです。作りもしっかりしていて…巻きたいですね」
——ところで、徳留選手は、ウェイトリフティングの中山陽介選手と親しいそうですね
徳留「はい。たまたま友人に山梨県の人が多くて、友達同士で集まったときに意気投合して仲良くなりました。練習とかは一緒にしないですけど、トレーニングの方法とかについて話したりしますね。友達がああいう大舞台で活躍する姿には刺激を受けます」
——久米選手はオリンピックはご覧になっていますか。
久米「日本人選手がニュースに出ているとチェックしますね。同じ日本人が頑張っている姿は、自分も頑張ろうと、いいモチベーションになります」
——さて、お2人にとって、タイトルマッチの先に見えるものは何でしょうか
徳留「そうですね、この試合にしっかり勝って、次はUFCに戻りたいという気持ちがあります。でも、今回は厳しい試合になると思います。いい試合をしてアピールしたいです」
久米「前々回も怪我からの復帰戦で、その直後にまた怪我をしてしまいました。一戦一戦の大切さを感じています。決められた一戦に全てを捧げて、倒すことに集中していきたいです」
試合はまだ1ヵ月先。和やかなムードの中、両選手は笑顔を見せながら質問に答えた。しかし、これからは急速に緊張感が高まっていくことだろう。久米はすぐに帰郷せず、出稽古をしていくという。
昨年11月の王座決定戦も至高の対戦だったが、今回のタイトルマッチも掛け値なしに実力者同士の激突だ。ヒリヒリと灼けるような試合になることは間違いない。果たして、あのベルトを巻くのはどちらなのか。見逃せない!
(写真・文/佐佐木 澪)