【インタビュー】PANCRASE325でデビュー7戦目の井村塁がバンタム級暫定王座獲りへ!「タイトルを取って世界に行きたい」
パンクラス2021年最終戦となる『PANCRASE 325』。この大会では3大タイトルマッチが組まれているが、バンタム級暫定王座決定戦はデビュー7戦目の井村塁と10年目のベテラン・中島太一が闘う。
フェザーからバンタムに戻した中島は自他ともに認めるベテランで実力者。これまで6戦連続一本勝ちでタイトルへの切符を手にした新鋭・井村は、どのように立ち向かうのか。タイトル戦に向け練習に励む井村に話を聞いた。
(11月8日、東京・立川市Nexusenseにて)
――タイトルマッチが目前に迫っている心境はいかがですか。
井村「心境ですか。デビューして1年ちょっと、まだ2年経ってないんで、トントンと来てるなと。去年の今頃はネオブラの決勝だったんで、そう考えると成長してるのかなと思っています」
――ここまで来たのは早いと思いますか?
井村「早いと思います」
――いつも冷静なイメージがあるんですが、タイトルマッチに際して『やってやるぞ』みたいな気持ちはありますか。
井村「ありますね。毎試合、毎試合そうですけど。冷静に見えるねって言われますけど、実はいつも心臓バクバクだし、ケージに入る瞬間までずっとすごい緊張してるんです。タイトルマッチだからというより、毎試合、気持ちはバクバクしてます」
――少し、井村選手自身についてお聞きします。格闘技を始められたのはNexusenseですか。
井村「そうです」
――いつごろ始められたんでしょう。
井村「僕が高校1年から通わせて頂いているので、7年か8年になりますね。そう考えると長いかなとは思いますね」
――その前は、どんなスポーツをされていたのでしょうか。
井村「野球をやっていました」
――ここに入ろうと思ったきっかけというのは何だったのでしょうか。
井村「しっかり植松(直哉)さんから習いたいっていうのもあったんですけど、僕、地元が福生なんですけど、福生には格闘技がなかったので、立川に植松さんのジムができると聞いて入ろうと思いました」
――ずっと植松代表のことをご存じだったんですか?
井村「そうですね。とりあえず1回、ここらへんで探そう、八王子はすごく遠いなと思って。そうしたら、立川に植松さんがジムを出すっていうので入りました」
――植松代表は柔術やMMAをやっていらっしゃいますけど、井村選手は格闘技の何をやりたくて始めたんでしょうか。
井村「最初は柔術だったんです。柔術のできるMMAの選手とか好きだったんで、そういう感じでMMAを始めようと思ってやり始めました」
――ジム生として入った当時は、柔術とかMMAとか全部のクラスに出たとか?
井村「そうですね。最初の頃は楽しかったですね、やられるのも」
――井村選手がやられている姿が全然想像つかないですけど。
井村「ハハハ、最初はすごいやられてましたね。でも、それからハマって行きました」
――どういうところが楽しかったんでしょうか。
井村「柔術1回のスイープだったり。ああ、こんな感じか、と。出来たと思ったけど、次こういうのもあるんだ、みたいな感じでやられていってるうちに『楽しいな』と思って。気づいたら毎日(ジムに)行ってたって感じですね」
――初めての試合はいつごろでしたか?
井村「入門して1年経ったぐらいですね。柔術でしたけど、その時は2回戦か3回戦で負けちゃいましたね。でもそれで、もっとハマっていきました」
――試合をするのが楽しそうに見えます。
井村「そうですか? 柔術もMMAも変わらないですけど、試合の前は必ず心臓がバクバクしてます(笑)緊張しぃです」
――柔術は何帯ですか?
井村「紫です」
――柔術から始めて、MMAに移ったきっかけは何だったのでしょうか。
井村「もともと、昔からDREAMとか見ていて、そこに出ている人たちの一歩先みたいな感じでUFCを見ていました。UFCっていうのがあるんだ、僕もやってみたいなと思ってMMAを始めました。で、やるならやっぱり海外へ行きたいなというのもあって本格的に始めたっていう感じです」
――最初から世界を目指して、という感じだったんですね。
井村「そんな感じですね。(MMAを)やるなら1回海外で試合をしてみたいなという気持ちがあったので。理由がすごく漠然としてますけど」
――ちなみに。好きな選手は?
井村「最近は、ライト級のチャールズ・オリベイラですね。けっこう見本にさせてもらっています」
――世界のトップファイターの試合を参考にしている。
井村「そうですね、“見て盗む”じゃないですけど、そういう感じで。見たものをやってみてダメだったらやらないし、出来そうだったら一度やってみよう、みたいな。練習でやってみて、モノに出来そうだったらモノにしますね」
――試合は、そうして普段やっていることを出すものでしょうけど、急にポンと何か思い付きとかありますか。
井村「いや、ないですね。ないですね。普段からやっていること、身体に染み付いていることしか(できない)。この間の試合もそうでしたけど、下からって、自分はあれしかないんで」
――そんなことはないでしょうけど、狙いどきには行くっていう感じですか。
井村「もう行きますね。じゃないと勝ち目がないと思ってるんで、僕は」
――決めないとスタミナが切れたりとか、そういうことは考えますか。
井村「はい、考えます。考えてるんで、一回つかんだらもう離さないっていうか、極めなきゃダメなと思ってるんで」
――中島選手のフィジカルを評価されていましたが、井村選手は、フィジカル的なトレーニングはどのようなことをされているのでしょうか。
井村「そこ(ジム内)でスクワットをやったり、ベンチプレスをやったり、ぐらいですかね。あとはダッシュしたり、いろいろ。自分でできることはやってますね。トレーナーについたりとかは、今のところないです」
――食事に関してはいかがですか。
井村「あんまり食べすぎないってことですね。まあ、普段からそんなに暴飲暴食するわけじゃないですし、食事にはなるべく気をつけています。内容は、あんまり脂が乗ってないところ(を選ぶの)と、鶏肉でいってますね、最近は」
――これから変えたいとか、強くしたいと頃はありますか。
井村「足腰ですかね。CAVEに出稽古に行かせて頂いてるんですけど、石渡(伸太郎)さんに『足腰がちょっと弱いから鍛え直した方がいいよ』って言われたんで、最近ちょっとやるようにしました。いつも以上に追い込むようにはしてます」
――現在の練習は?
井村「月水金は昼間CAVEさんで練習させていただいて、夜はNexusenseで練習みたいな感じですね。で、土曜日は夕方からCAVEさんでMMAの練習に行かせて頂いてます。という感じです、今のところ。プロ練はCAVEさんだけですね」
――スパーリングはどのくらいやっていますか?
井村「けっこうやってると思いますよ。極めとかはスパーリングの中で確認しながらやっています」
――NBTで優勝して、ずっとフィニッシュを続けてタイトルマッチ挑戦となっりましたが、ここまでの道のりはいかがだったのでしょうか。
井村「フィニッシュできたのは嬉しいですけど、そんな簡単には行ってないです。次が本当の正念場だと思っているので」
――次の試合は、ここまでとは違うという感じですか。
井村「そうですね。レベルが一気に20ぐらい上がった感じですよね。中島選手ですから。僕がレベル20だとしたら向こうは50ぐらいだと思ってるんで。けっこう差はあるのかなと思ってますね」
――ということは、試合展開もこれまでとは変わってくるのでしょうか。
井村「変わってくると思いますね」
――どんな試合になると考えていますか。
井村「最初は見合う感じになっちゃうかなって思ってます。でも、向こうも1Rはけっこう警戒してくるのかなと思ってます。僕、ほとんど1Rで終わらせているので。でも、僕は極めないと多分勝てないんで、2R〜3Rで仕留めたいですね」
――仕留めるイメージはできていますか。
井村「もうできてます」
――中島選手の動きや特徴を研究して。
井村「そうですね。何試合か見たんですけど、やることはパターン化してるので、それをどう崩すかっていう感じですね」
――井村選手は、ここまで無敗で勝ち上がってきた勢いがあります。そのほかに武器や、有利なことは何でしょうか。
井村「勢い……は、あんまりないと思うんですけど(笑)、でも、経験の差は埋めようがないので、勢いでどんどん潰して行くしかない。でも、中島選手に勝てないと、たとえば外へ行ったとしても勝てないなと思ってるんで、通らなきゃダメだと思ってますね」
――ベルトを獲ったら、すぐにでも海外へ?
井村「それもありますね。もう最短で行きたいです。この間のVTJの修斗の平良(達郎)くんにも良い刺激をもらっているので。あと西川(大和)くんだったり、若いチャンピオンが続いてるんで、それに続きたいなっていうのはありますね」
――常に情報を集めて、どうやって世界へ行くか常に考えていますか。
井村「考えてますね」
――このタイトルマッチはステップアップの1つですか。
井村「そうですね。じゃないと(世界には)行けないので」
――いろいろな観点から、中島選手をどう評価していますか。
井村「この間の5月のISAO戦を見ていて、打撃もできるので、プラス壁レスとかってあると攻略しづらいと思うんですけど、そうですね、結局は最後スクランブルで勝ってやろうかなと思ってます。フィジカルとかは、向こうの方が何倍も上かも知れないですけど、スクランブルだったら負けないんで。ポジションを取ってフィニッシュしてやろうかなと思ってますね」
――ここぞという時には、極めのセンサーが働く?
井村「はい、そういうのはありますね。柔術をやっていると、大体そういうのは身についてくるんで、そういうのはありますね」
――ということは、試合のキーは、キワの攻防だったり、動きの中のタイミングとか、そういうところですか。
井村「そうですね」
――打撃勝負になった場合というのは、どう描いていますか。
井村「しっかり距離を取って。リーチは僕の方が長いんで、距離を取って自分の攻撃を当てて、自分のスタンスで持って行きたいですね。打撃もしっかり練習してるんで、負けないです」
――世界を目指すためには、ベルトと“オールフィニッシャー”の称号が欲しいところです。今回もやはり何らか極めて勝つと。
井村「はい。自信はありますね」
――パンクラスのベルトについてはどう思っていますか。
井村「格闘技というか、武道デビューしてから、ベルトってけっこう意識はしてきたんで、そう考えるとやっぱりトントン拍子に来てるんで、獲らなきゃダメだと思ってます」
――ベルトを巻いてケージの中にいるっていうイメージはありますか。
井村「一応あります、あります! なきゃダメだと思ってるんで」
――この大会は、パンクラス2021年の締めの大会であり、スタジオコースト最後の大会でもあります。スタジオコーストへの思いはありますか。
井村「そうですね、デビューからずっとスタジオコーストだったんですけど、最後の大会でタイトルマッチを組んでいただけるというのはすごく光栄なので、しっかり結果を残して終わりたいと思います」
Nexusense代表・植松直哉は「これまで、いろんな幸運も重なって、彼の持っている力以上のものが結果として出ていると思っている。井村は良く言えば自分を強く持っている、悪くいえば人の話に興味がないので、どこのジムに行っても今のような彼になっていたと思う。パンクラスは歴史のあるベルトなので、いくつかあるベルトの中でも価値があると思っている。そこに、うちの道場生え抜きの選手が挑戦できるなんてビックリしている。
相手の中島選手は私も少し教えていたことがある。しかも今は、私の友人の八隅(孝平)のところにいて、いろんな縁を感じる試合。中島選手は修羅場をいくつもくぐり抜けて来た選手で、そこは補うことができない。一筋縄ではいかないと思っている。あとはやれるだけのことをやるしかない。5Rやったことがないので、どうなるのか分からず、怖い部分もある。持っているものを出して、ベルトを巻くという結果になればいい。競り合って決めてくれれば。私が思っている以上に井村がストロングハートであることを祈ります」と話した。
闘うのは選手本人同士だが、作戦や試合中の心理には、セコンドの存在は小さくない。オールドファンには、こちらも見どころとなるだろう。
(写真・文/佐佐木 三桜)