このタイミングで改名した近藤有己改め有己空、デビュー20年目を迎える伊藤、川原誠也の実弟・玲郁が公開練習
2月25日午後、神奈川県横浜市のパンクラス横浜道場で、伊藤崇文、近藤有己改め有己空(ともにパンクラスism)、川原玲郁(P’s LAB横浜)が公開練習をおこなった。3選手はともに『PANCRASE 256』(3月15日、ディファ有明)に出場する。伊藤は竹内幸司(HLCGYM)、有己空は鈴木槙吾(ALLIANCE)と対戦、川原は第20回ネオブラッド・トーナメントバンタム級にエントリーし、田中千久(パラエストラ八王子)と初戦でぶつかる。
伊藤と有己空は、たまたま来ていた松本浩代をレフェリーに、2分1ラウンドの打撃スパーリングを披露した。スピードのある打撃の応酬を終えると、松本が2人の手を挙げ「ドロー!」。
スパーリングを終えると、まず有己空が質問に答えた。「有己空」とは何なのか。14年間育ててきた一大ブランドとも言える「近藤有己」という名を、今このタイミングで変えるのはなぜなのか。
ーー今回、改名された理由は何だったのでしょう。
「自分でも何と言っていいかわからないです。急に『お!?』『うーん!?』と思って変えたくなった。常々考えていたというわけでもなく、ある日、突然思い立ちました。思いつきというのは、一晩寝て起きてみると『なんだ、大したことないな』と思い直すことも多いですけど、今回は一晩たっても気持ちが変わらなかった。だから改名することにしました。誰にも相談はしていません。自分で決めました。
外しましたが、『近藤』という名字はすごく大事に思っています。実家で家族に話したら『あ…そうなんだ』という感じで、少し残念そうでした。でも、自分の中では『近藤』は今まで以上に大事にしています。
また、『有』という字も大事にしたかった(※本名は「有」と書いて「たもつ」)ので、『有己』をそのまま使いました。
『空』は、昔から好きだったので使いました。空は、曇りのときもあれば雨のときもある。青空だけじゃない。空はまるで人生のようです。そういうイメージですね。
でも、意味は、今はまだないのかも知れません。名前というものは、使っていくうちにふくらんでいくものじゃないかなと思います。一種のブランドなんだからもったいないと言われますけど、だからこそ捨てたというのもあります。僕は思うまま、やっていきたい。格闘技を始めて、いまが一番楽しいんです。自分は格闘技が本当に好きなんだと、堂々と言えます。試合が楽しみで、勝てばもっと楽しめる、それが今の自分です。名前も、そのありのままの自分で決めました。どう呼んでもらってもいいんです。今まで通り『近藤』でもいいし、『空』でも『たもつ』でもいい。『バカ』でも構いません。ただし、ちょっとムッとするかもですけど(笑)」
ーー新しいリングネームは、今の有己空さんを表しているんですね。さて、では試合の話に移ります。相手の印象はいかがですか。
「パンチが強いですね。あと、時間内に決める試合が多くて、決め手が多い選手という印象をもっています。打撃で、どっちが倒すか倒されるか、そんな試合にしたいですね」
ーーキャリアも長くなりましたが、自分は今も伸びていると思いますか。
「髪の毛ぐらいですかね(笑)。いやいや、自分の中では全部伸びていると思います。人から見たらどうかはわかりませんけど、今の自分は20年前の自分より強いと思います」
ーー前回は残念でしたが、再びタイトルを目指しますか?
「闘っていく限り、目指します。でも、目指しているといえば目指しているけど、関係ないやと思うところもある。それが自分です。というのは、ベルトがいらないということではなくて、獲れるものなら獲りたいし、獲れなくたって頑張る、ということです。もし、どんなに勝ち続けてもタイトルマッチが組んでもらえないとしても、やり続けます。格闘技が好きだからやっているし、ずっと続けたいですね」
2000年に船木誠勝が引退してから、ファンの期待を背負うエースとして闘い続け、パンクラスの屋台骨を支えてきた「近藤有己」。今回の改名は、様変わりするパンクラスの流れの中で、しがらみや重圧から解放され、ようやく本来の自分を取り戻せたということなのかも知れない。有己空は今、何ものにもとらわれず、「格闘技が好きだ」というシンプルな境地に行き着いた。これからの格闘人生は、誰かのためにではなく、自分自身のために闘ってほしい。