【インタビュー】新型コロナウイルスに揺れる新宿三丁目商店会と連携するプロレス団体が大会中止を決断!「ファンを危険に晒してまで開催は出来ない」
今月13日、21日に新木場1stRINGにて大会を行う予定だったTTTが政府からの新型コロナウイルス感染拡大によるイベント中止・延期要請を受け大会の中止を決断。この判断を下したガッツ石島と石川国由CEOがその真意を語った。
TTT(TOTAL TRIUMPH TEAM)とは、ターザン後藤に薫陶を受け、ミスター雁之助を師に持つ黎明期インディープロレスの後継者的存在であるガッツ石島が今年1月に“インディープロレス統一”を掲げて旗揚げした新団体。当団体は石川CEOの経営する株式会社イロノハのスポーツ事業部内の組織として運営され、通常の興行の他にも地方自治体および商店街・町会を中心にアプローチをかけてイベントでのプロレス興行や子供向けの体操教室を開催している。
そしてTTTは石川CEOが会長務める新宿三丁目の末広通り商店会と連携して町おこしに尽力。末広通りのど真ん中にリングを立てての無料興行を開催するなどの活動を行っている。
昨今の新型コロナウイルス流行を受け、プロレス界でもメジャー・インディー問わず大会の中止・延期を決断する団体が相次いでおり、動画配信インフラを持つ団体は無観客試合を無料放送するなどの施策を取っている。
そして、TTTも大会を1週間前に控えて中止を決断。TTTは旗揚げして約1ヶ月半の団体であり、本興行もこれが3度目。スタートダッシュをかけたい新興インディー団体としては今大会の中止は相当な痛手となるが、この決断を下した意図をガッツ石島と石川CEOに聞いた。
――3月21日の新木場1stRING大会は中止となってしまいました
石川CEO「政府からの自粛要請が出ているというのももちろんですけど、僕ら自身でもリスクが高いと判断しての中止ですね。僕らが大会をやる新木場、王子(王子BASEMENT MON☆STAR)なんかは100人~200人くらいの規模でお客様の席と席の間も近いので、こちらがどう対策を取っても感染リスクは拭いきれないと判断しました。感染者が出てしまった場合、会場にもご迷惑をおかけすることになりますし」
ガッツ「見に来てくれるお客さんあってのプロレスなんで、ファンを危険に晒して大会をやるってのはちょっと俺としてもどうかなあと思った部分はあるんですよ」
――ガッツ選手個人としては大会を実行したかった?
ガッツ「そりゃ、プロレスラーとしては試合はしたいですよ。それに若い所属選手たちを預かる立場としても、TORUや佐山(佐山駿介)に自分のところの団体で試合をさせてやれないってのは悔しいですし、本人たちも悔しがってます。俺もね、3月も半ばなのにまだ一試合もしてないんですよ。月末にかけても他団体からのオファーを貰ってたんですけど、コロナの影響で全部飛んじゃって……。月に1試合もしなかったなんて、15年やってて何回有るか無いかですよ。プロレスラーなのに試合が出来ないっていうのにはもどかしさを感じますよ」
――それでも中止を決断したのは“仕方なく、渋々”という気持ち?
ガッツ「いやいや、そうでもないんですよ。僕が13年やってたガッツワールドの時代から新宿三丁目の末広通り商店会さんとは一緒にいろんな取り組みをさせていただいていて、路上にリングを立ててプロレスをやらせていただいたりもするんですけど、今、その商店会の方々が感染防止のために色々動いているのを見ると、俺達だけ好き勝手に動くわけにはいかないなあという気持ちになるんです」
石川CEO「末広通り商店会は居酒屋とかの飲食店が多い街で、新型コロナウイルスの影響で宴会自粛の風潮になったり、昼は昼でいろんな学校が臨時休校になって学生さんが来なくなったりで商店会全体でお客さんが減ってきてて。店の方でも衛生面で相当力を入れて、お客さんを入れる数を絞って席の間隔を空けたり、営業時間を短縮したり、色々試行錯誤しながら安全な状況を作ってなんとか集客を増やそうとしている状況です」
ガッツ「商店会の皆さんがそうした努力をしている中、俺たちが大会を強行して、もし万が一そこから感染が拡大してしまったら、俺達はファンの皆さんにも応援してくれている街の皆さんにも顔向けが出来ないんですよ」
石川CEO「結局の所、これがいつ収束するかも分からないわけだから。みんなに試合をさせてあげたかったけど、長い目で見ると今はやらないのが正解かなと」
――TTTと末広通り商店会はどのようなつながりがあるのでしょう
石川CEO「新宿三丁目に末広亭っていう寄席があるんだけど、ここが僕の母親の実家なんですよ。だから僕も小さい頃は末広亭の上に住んでてね。母親も末広亭の裏にある『楽屋』っていう喫茶店をやってるんですよ。今は母も高齢なので週1くらいしか店に出てないけど、妹がずっとやってる店で。だから僕も新宿三丁目からあまり離れたことがないんですよね。だからその流れでここに会社を作ってずっとやってたら、いつの間にか商店会長になっちゃった(笑)」
ガッツ「俺と石川さんの共通の知り合いが声をかけてくれて、俺が花園神社のお祭りで新宿三丁目のお神輿を担がせていただいたことがあるんですけど、そこで石川さんと出会って意気投合したのが出会いですね。それで、今回俺が新しく団体を作ろうとなったときに『じゃあ一緒にやっていこうか』という話になったのがTTTの始まりなんですよ。昔から関わりはあったけど、団体の経営は石川さんに任せて、俺が現場を仕切るという役割分担が出来たのは大きいかなと。俺たちを支えてくれる商店会の皆さんとのつながりが出来たのも石川さんのおかげですよ」
石川CEO「いや、まあ、あそこに会社を作ったのは偶然というか、末広亭は母の実家で母も外へ嫁いでるから僕が継げるってわけでもないし。まあ、この辺を離れがたいからこの辺で商売してるんだろうねえ」
――新宿三丁目というと末広亭が象徴的な存在かと思いますが、この新型コロナウイルス感染拡大下で末広亭はなにか対応は取っているのでしょうか
石川CEO「特にどういう対応も取っていないんじゃないかな(笑)でも、今みたいに世の中が暗くなったり不景気になったりすると、みんな笑いを求めて寄席に集まってくるものなんですよ。でも今の末広亭には全然お客さんが入ってない。相当不景気なんだろうなって(笑)」
――TTTは1月に旗揚げして今大会が本興行としては3回目でした。団体運営のスタートダッシュをくじかれる形となりますが、それでも大丈夫だという余裕はあるということでしょうか
ガッツ「いやいやいや、余裕は無いですよ!(笑)」
石川CEO「無いねえ(笑)でも、目先の利益を拾いに行って、もっと大きなものを失ったら馬鹿らしいじゃない」
――次回開催予定にある4月11日の新木場大会の開催についてはいかがでしょう
ガッツ「現段階では、自粛要請の範囲からは外れているのでやるつもりで動いています。真GUTS軍(TTTの前身)から数えると、去年の5月から月に1回以上の大会は開催してきたんで、1ヶ月以上空けるとファンの心も離れてしまうかもしれないという怖さはありますからね。やる前提で考えてはいますよ。ただ、これからコロナ問題がどうなっていくのかは誰にも分からないから、日が近づいてきたらまた考えます。自分たちの生活が苦しくなるからってお客さんにリスクを背負わせる形でやっちゃったら、回り回って結局自分たちの首を絞めることになるわけだから」
石川CEO「ただね、TTTの大会が終わるといつもレスラー・スタッフ全員で末広通り商店会の店で打ち上げをやるんだけど、今回中止が決まってから個人的に行ったら『次は必ずやってくださいね!』って言ってくれるところも多いんだよ。それだけ商店会でも楽しみにしてくれる人も多いってのは励みになるし、大所帯で店に行くことが貢献になるなら是非やらないと(笑)最近は一時期に比べて活気も戻ってきたし、4月はやりたいねえ」
ガッツ「やりましょう!4月の新木場大会は成功させて、その後は新宿三丁目の末広通り商店会に戻って、みんなで飲むぞっ!(笑)」
『SCRAMBLE3』
日程:2020年4月11日(土)
開始:19:00
会場:東京都・新木場1stRING
▼「THEぶつかり合い!」 30分1本勝負
ウルトラソーキ(琉球ドラゴン)
vs
後藤恵介(フリー)
▼「VIOLENCE STAGE」 30分1本勝負
[アライヴァル]松崎和彦(フリー)/怨霊(666)
vs
黒田哲広(フリー)/洞口義浩(フリー)
▼「真GUTS軍vs渡鳥連合」 30分1本勝負
[真GUTS軍]マスクドミステリー
vs
[渡鳥連合]木村太輔(アライヴアンドメジャーズ)
▼「インディージュニア闘争」 45分1本勝負
バナナ千賀(フリー)/忍(666)/阿部史典(BASARA)
vs
政岡純(紫焔)/木下亨平(ダブ)/瀧澤晃頼(フリー)
▼「真GUTS軍vs#STRONGHEARTS」 60分1本勝負
TORU/河原成幸(北都プロレス)
vs
[#STRONGHEARTS]T-Hawk(OWE)/エル・リンダマン(OWE)
▼「凶器持ち込みフリーウエポンマッチ」 時間無制限1本勝負
[真GUTS軍]ガッツ石島/佐山駿介
vs
[渡鳥連合]藤原秀旺(アライヴアンドメジャーズ)/塚本拓海(BASARA)