「神童」那須川天心、MMAデビュー戦勝利後、まさかの「もう1試合組んでください!」12・31RIZINに異例の連続参戦決定!

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 ヴァンダレイ・シウバの欠場により29日最大の目玉カードだった「ミルコ・クロコップ対シウバ」が消滅。どうなることかと思ったが、選手たちの奮闘が興行を救った。第1試合の北岡悟が大流血からの逆転1本勝ちを見せて会場に火をつければ、注目の女子は中井りんが経験とパワーの違いを見せて村田夏南子に一本勝ち。そしてメインイベントではミルコが急遽参戦のキング・モーに貫禄のTKO勝ちを収めてきっちりと締めて、終わってみれば観客満足度の高い興行だったと思う。

 最大のサプライズは18歳の「神童」那須川天心だ。12月5日の新キックボクシングイベント「KNOCK OUT」では初めての「ヒジ打ちありルール」挑戦ながら、現役のルンピニースタジアム認定スーパーフライ級王者をバックスピンキック一撃で失神させる離れ業を演じた。そのわずか3週間後にまさかのMMA初挑戦。今度こそ苦戦するのか、いや、規格外の天心なら今回も楽々とクリアしてしまうのか。
 結果は、やはり「神童」、モノが違った。対戦相手のニキータ・サプンはテコンドーをベースに3年前からMMAに挑戦。アマチュアMMA準優勝、プロMMAデビュー戦で勝利した実績を持つ。などMMAの経験値は那須川よりも上。試合でも構えを左右にスイッチして、後ろ蹴りを放つなど変則的な戦い方を見せた。
 これに対して、那須川は冷静に鋭い左ローを返すと、サプンの蹴り足を取って倒し、上からパンチを打ち込む。だがサプンは那須川の腕を掴むと、下から腕十字へ。これで那須川の腕が伸び切り、あわや一本負けかと思われたその時、那須川は体を回転させて角度を変えて脱出。そして立ち上がると、中腰の体勢から力強いパウンドを連打。これで動きの止まったサプンを見て、レフェリーが割って入ってストップ。那須川は、ムエタイルールデビュー戦に続き、MMAデビュー戦でも1ラウンドで勝負を決めてしまった。

 だが、驚きはここからだった。マイクを掴んだ那須川は、息を切らせながらこう話した。
「ちょっと疲れました(笑)。このルールで初めて試合をして、少し焦ってしまって極められそうになったんですけど、キックボクサーでもこのルールで勝てることを証明できたと思います」
 そして、まさかの一言が飛び出した。
「31日、もう1試合組んでください。高田さん、お願いします!」
 高田統括本部長は榊原実行委員長と協議。ここで「やれんのか!」と問いかける「高田劇場」の開演かと思いきや、その返答は意外なものだった。
「その心意気は受け止めました。ただ1回預からせてください。(客席を見て)将来のあるファイターですから。お願いします」
 と、腕十字で伸び切った天心の腕をドクターがメディカルチェックした上で31日の出場を判断する、とした。
 その後、天心はドクターチェックを受けて「靭帯は伸びているが、ドクターストップは掛かっていない」(榊原実行委員長)とのことで31日の出場が決定。対戦相手は30日に発表される。

 試合後、天心は「すごい怖かった。キックはずっとスタンドで、すぐ倒せると思うけど、MMAは下があるから注意しないといけない」とルールの違いへの戸惑いもあったと告白。それでも、31日のRIZIN出場を直訴したのは「格闘技といえば大みそかだし、みんながやったことのないことをやっていきたいので、挑戦したくて言いました」。そして、こう続けた。
「日本だけでとどまりたくない。世界と戦って、海外で活躍していきたい」
 ムエタイルール初挑戦で現役王者をKOした時に「俺が日本の那須川天心だ!」と叫んだ天心。キックとMMAの二刀流、ムエタイ王者をKO、そして「中1日」でのMMA2戦目と、常に人の想像を越えていくさまは、まさに「格闘技界の大谷翔平」。まだ18歳で、未来ある逸材だけに「くれぐれも無理をさせないように、腕の状態を随時確認しつつ問題がないならば」という条件付きで、31日の試合にも大いに期待したい。今、天心は1戦ごとに経験値を大幅に増やし、ファイターとして凄まじいスピードで成長している。数年後には海外を主戦場にしている姿も容易に想像できる。だから「2016年末の那須川天心」をしっかりと見て、記憶に刻んでおいてほしい。のちのち「18歳の天心を見たよ」と自慢できる日が必ず来ることだろう。

(スポーツライター茂田浩司)

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