学生プロレスサミット2016直前インタビュー[第4回]潮崎マジックミラー号(HWWA1年)
各大学のプロレス同好会・研究会が一同に会す『学生プロレスサミット』が、今年も2月26日に開催される。
2008年に復活した学生プロレスサミットも今年で8年目となり、今年はUWF関東学生プロレス連盟、SWSガクセイプロレス、日本大学プロレス研究会(NUWA)、九州産業大学プロレス研究部(KWF)の4団体に加えHWWA(一橋大学世界プロレスリング同盟)が5年ぶりに正式復帰。団体としては一年に一度のお祭りであり、選手としては卒業を目前にし学生プロレスラーとして最後の試合になる選手もいる。そんな彼らの生の声を聞くべく、各団体の選手にインタビューを行った。
四人目は一橋大学世界プロレスリング同盟(一橋大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、東京大学、津田塾など)に所属し、学生プロレス一年目ながらHWWA世界ヘビー級&東大ヘビー級二冠統一王者である荒井大樹(=潮崎マジックミラー号/一橋大学4年)選手に意気込みを聞いた。
<潮崎マジックミラー号(HWWA1年)>
――潮崎マジックミラー号選手というのはどのような選手なのでしょうか?
「まあ挙動不審といいますか、リングの上ではもちろん全力なんですけど、実際に試合の映像を自分で見ると、なんでこの人はこんなに動きが硬いんだろうか?と思うレベルですね」
――ご自身のファイトスタイルで大事にしている部分は
「わかりやすいということですね。どっちが攻めてるのか、どっちが追いつめられているのか、苦しいのはどっちなのかお客さんによく伝わるようにしたいなと思っています」
――なぜHWWAに入ろうと思ったのでしょう?
「私は元々HWWAのファンでした。学園祭で興行を見て腹抱えて笑っている一人でした。ところが一昨年の一橋祭の時に『来年は部員が足りないから、興行は開けないかもしれません』というアナウンスがありまして…それは非常に悲しいことだなと。誰かレスラーにならないかなと思っていたんですが、丁度その時に私の人生の中で挫折がありまして…このまま社会に出て、30歳になった時にあのきっかけでなにか新しい事を始めなかったということを後悔するんじゃないかなと思いまして、その新しいことってなんだろうって自分で考えた時にプロレスラー募集のチラシを見てしまったわけです」
――HWWAにとっては救世主だったわけですね
「私の学籍番号だけ見ればそういうことになります」
――HWWAのファンとのことでしたが、学生プロレス以外は触れていないのでしょうか?
「ファンの間はHWWA以外は触れることはなかったですかね。今は別け隔てなく見るようにはしてますけど、昔の方のを見てっていう風にはしてますね。渕正信さんですとか小林邦昭さんとか」
――先輩としては誰から指導を受けているのでしょう
「私がデビューしたての頃はチンカス・ハーンさん(=武蔵野美術大学OB)でした。大変多くご教授いただきまして。最近ですとシコリェですね」
――先ほどおっしゃられていた挫折というのはなんだったのでしょう?
「3つほどありまして、一つ目は行政書士の試験に落ちた。二つ目が人生で初めてできた彼女にフラれてしまった。三つ目がビジネスコンテストの結果が芳しくなかった」
――フラれてしまったのは行政書士の試験に落ちたから?
「いえ違います。人間て、距離感が人によってあるじゃないですか?ちょっと近よりすぎちゃったかなと」
――相手は彼女ですよね・・・?
「元々仲の良い友達だったんですけど、交際に発展したらちょっと近すぎたかなと。今はまた友達として連絡とりあう中です」
――行政書士は今後も目指すのでしょうか
「いや暇だったので勉強してただけです(苦笑)就活にもあったらいいかなと。法律にも詳しいとアピールできたらと思ったんですが、合格率5%なんですよね行政書士って。想像以上にちゃんとした試験でですね。簿記二級とは違うなと思いまして」
――就活はしてなかったと
「してたんですけど、就活でやったビジネスコンテストが自分の結果もよくなかったし、優勝したチームの内容も自分の思っていたことと違った。世間に評価されるビジネスプランっていうのはこんな感じなんだと違和感がありました」
――ちなみにそのプランは聞いても大丈夫ですか?
「世の中の課題を解決するプランを提示しろというお題でした。優勝したのは若い人の野菜不足を、栄養の偏りを解消するために煮こごりを作って提供するというのが1位でした。ちなみに2位はインドの露天市場が食べ物が腐って川に大量に流されてしまっているので、低額で借りられる冷蔵庫型のロッカーを提供しようというプランでして、僕はどう考えても一位と二位は逆だろうと思っていて。そうするとなんか世の中の大人にこのままストレートに入っていく事は自分にとって得策では無いのかもしれないと感じました」
――ちなみにマジックミラー号さんはどんなプランを
「日本の一極集中を問題視しまして、年金受給した時にすみやかに移住できるように、土地があって生活が安くすむ場所に40歳ぐらいのうちから少しずつ移住先に投資をしてセカンドライフに備えようと。これは落選して当然でした。それは置いておいて、世の中の評価っていうのが自分の考えと違うなと。お笑いのコンテストとかで『この人がこんな高得点なの?』ってありませんか?あれと同じ感覚でした」
――今回のインタビューでUWFのハス向井選手は「学プロは就活に有利だ」と、SWSのショーモ選手は「就活に弊害が出ます」と真反対の意見がありましたがHWWAとしてはいかがですか?
「過去の人達を見ていると有利なんだろうなと思います。OBの方々の就職先を見てますとそうそうたるものですよ。OB訪問させてくださいっていう感じで。ほぼ公表している人ですとブランコ・オギーソさんはN経済新聞社。その他にもマスコミ関係には強いですし、コンサルに行った方も多いですし自動車会社もいるし、そう考えると特に不利に働いている過去はなさそうだと感じます」
■HWWA(一橋大学世界プロレスリング同盟)とは
――サミットには久々の復活となりますが、今のHWWAはどのような状況なのでしょう?
「自分達とOBさんで文化祭の興行ができるぐらいの規模ではあります。具体的な人数で言いますと10数人います。2年生が3人、皆そろって3年生になる…と思います。今年1年は6人ですかね。興行を見て入ってくれたっていう子も居ますし、そもそもプロレスが好きで武蔵野美術に入学する前からうちで練習初めていた子も居ますし、カンフー映画が好きでプロレスなら近い事できるんじゃないかと入ってきた人もいますね」
――久々に復活されるということで、サミットにかける思いというのはありますでしょうか?
「やっぱり関東3団体っていう言葉は私たちは少し悲しいですね。僕達も38年の歴史があって、色んな選手を排出していて、色は違うかもしれないですけど、確かに僕達も学プロ団体なんですよ。そのプライドはあるので、ファンの方、もしくは今回初めて学プロに触れるという方に一橋にもプロレスはあるんだと知っていただければと。その機会になればと思います」
――今HWWAはどのような学校に所属している方で構成されているのでしょう?
「武蔵野美術大学、東京造形大学、東京大学の選手もいますし、津田塾の人もいますね」
――HWWAは完全に復活しましたね
「そう思っていただいて問題ないと思います」
――先輩達でプロとして活躍されている方を見てどのような思いがありますか?
「あまりお会いした事ないですけど、OBになってから活躍されている方、アントーニオ本多さんや竜剛馬(=プロレスリングBASARA)さん、金的桜ヶ丘(=今成夢人/ガンバレ☆プロレス)さんのご活躍は話題になります。やっぱ憧れというよりかは、すごいなと。この世界でお金をもらって食べていくという凄さは感じますね」
――HWWAといえばコミックマッチがどこの団体にも負けないというイメージがありますが、今も変わらずですか?
「そこに関しては私達は他の団体と横一列に見てもらっては困る(テーブルを叩き)。そこには色んな意味が込められていて、一番面白いのはうちだとそういう自負は持っていて、それをご提供できるようにどこよりも知恵を絞っています」
■HWWA世界ヘビー級&東大ヘビー級二冠統一王者として
――プロレスに触れたのは完全にHWWAが初めてですか?
「プロレスはそこが初めてでした。本当に苦労が耐えないです。自分はプロレスわかってないんだなと思う事が多いですね」
――元々プロレスファンじゃなかったということですが、ベルトへの思いや憧れというのはどのようにお持ちなのでしょうか?
「現状二冠王者(HWWA世界ヘビー級/東大ヘビー級)ですが、私の先代が痴女大会さんなんですけど、その方は3年近くお持ちでした。僕個人としては理屈抜きの憧れはそんなにないんです。このベルトとかタイトルにかける他の皆様の思いを聞くと、ものすごく重要なものなんだなというのは頭ではわかると」
――OBの選手がベルトを持っており、それを現役が取り返した形だと思うのですが、やはり今の時代に戻すという思いはありましたか?
「それはありました。社会人の方がいつまでも持ってるっていうのは…別にいいと思うんですけど、実際問題タイトル戦を興行のメインにしようと思うと仕事を休んでもらうということになる。団体の今後を考えると僕が獲るしか無いだろうと」
――学プロレスラー1年目でベルトを獲るというのはすごい事だと思いますが
「ラッキーだったと思いますよ」
――HWWAのエースとしては
「僕はHWWAのエースはシコリェだと思っています。実際東大で防衛戦をして、ベルトこそ僕にまた戻ってきたんですけど。はっきり言って試合を見ていただいた方はわかると思うんですけど、完全にシコリェペースでしたし、最後僕が錯乱状態になって気づいたら勝ってたという試合でしたので、実力は彼のほうが確実にあると思います」
――王者として、HWWAを今後どう表現していきたいですか?
「HWWA全体ということでいうと、ともすれば一橋っていう大学にあるイメージですよね、硬いとか堅実であるとか現実思考であるとか、そういったもののアンチテーゼでありたいと思っています。馬鹿馬鹿しくて、無益で、空想爆発で、そういう一橋の中にある反体制っていうのは守っていきたいなと思いますね」