日本の女子デスマッチ界の伝説が13年の選手生活に幕。世羅りさが鈴季すずとの引退試合で完全燃焼

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 12日、東京都・後楽園ホールにて『世羅りさ引退興行~蒼焔万丈~』が開催。世羅りさが13年2ヶ月の選手生活に幕を下ろした。

 世羅は広島県・世羅町長の娘であり、声優を目指して上京。元女子プロレスラーのMARUが手掛ける『水色革命』で役者としてプロレスに関わり、その後アイスリボンの新人デビュープロジェクトに参加して2012年11月10日にデビュー。
 そのルックスと実力から団体側は世羅が正統派エースになることを望んでいたが、世羅は凶器と血が舞い飛ぶデスマッチ路線に開眼。当時はまだ希少であった女子デスマッチレスラーの旗手として名を上げていく。
 アイスリボンとデスマッチ路線の相性が噛み合わなかったこともあり、世羅は2021年末を以て退団。世羅に付いていく決断をしてともに退団した柊くるみ、夏実もち、藤田あかね、鈴季すずの5名でデスマッチ&ハードコアユニット『プロミネンス』を結成。当初は全員フリーランスながらユニットとして活動をともにしていく形式であったが、プロミネンスとして興行を重ねる中で実質的に団体化。世羅は身も心も血に染めながらプロミネンスを牽引してきた。

 引退試合の相手に選ばれた鈴季すずは世羅のデスマッチに憧れて中学卒業とともにプロレス界に飛び込んだ選手。すずは世羅を姉のように慕い、世羅もすずを妹のようにかわいがってきたという関係性。
 プロミネンス結成直後の2022年1月には、全員へスターダムへ殴り込みをかけて因縁あるジュリアとの抗争を展開。プロミネンスメンバーも当初は外敵としてみなされていたが、その試合ぶりやジュリアと紡いでいったストーリー、アーティスト・オブ・スターダム王座(※6人タッグ王座)戴冠を果たすなどの活躍を見せ、スターダムファンからも“ともに団体を盛り上げてくれる仲間”として認識されるようになる。
 そんな中、2023年4月のプロミネンス1周年記念興行にてすずはプロミネンス脱退を宣言し、その5日後にはスターダムへの入団を発表。世羅もプロミネンスというとまり木からすずを巣立たせ、ライバルとして対峙する関係になった。

 世羅とすずは【百火涼乱】というタッグを組んでいたこともあり、意外にもシングルマッチで闘ったことは過去に2回しかない。


 1度目の対戦は2022年5月29日のプロミネンス新木場大会でのデスマッチ。待望の初対戦は大量の蛍光灯や凶器が舞う死闘となり、30分フルタイムドロー。2人はいつかの再戦を笑顔で誓い合った。

 2度目の対戦は2024年8月15日のスターダム後楽園ホール大会でのリーグ戦。心身ともにズタボロだった世羅はすずを相手に大苦戦を強いられるが、気力とド根性だけで勝利。
 自身が勝利したことが信じられないといった様子で指を3本立てながら何度もレフェリーに確認する世羅の姿が印象的であり、バックステージでは「負けるわけにはいかないんだよ、まだ。すずの年上であり先輩でありお姉さんだと思ってるんで、負けるわけにはいかない。その意地だけで今日勝ったと思ってる。今日の勝ちはマグレじゃないかと思ってる。自分が一番信じられない。『あのつえーすずに勝ったんだな』って。だからまだやりたいよね。どんなルールとも言わない。フツーのでいいから、すずとはやりたい。やらせてくれよ……」と絞り出すような声で語っていた。

 この2度目のシングル戦の前日には、試合中に急に息が出来なくなった世羅が突然控室へ帰ってしまい、そのまま病院へ直行するという事件があった。後の世羅が語るには、試合中に同症状が起きたことが過去に何度かあったという。
 プロミネンス旗揚げ1ヶ月後に発覚した元夫の浮気発覚からの離婚、プロミネンスを背負う重圧、その他諸々のストレスもあってか、世羅は通院の末にパニック障害の診断を受ける。この心の病と付き合いながらプロレスを続けていくことは無理だと判断した世羅は引退を決意。
 身体のダメージも大きい世羅だが、主な引退理由はヒザや腰の負傷ではなく心の病。それも「試合中に呼吸が出来なくなる人間は周りの人にも対戦相手にも心配をかけるし試合として成り立たないから辞めるしか無い」という世羅らしい他人を思い遣る気持ちからの決断だった。
 そんな世羅が引退試合の相手を考えたときに、真っ先に思い浮かんだのはやはり鈴季すず。すずも心の病を抱える中で世羅の介錯人を務めることとなった。

 この日、世羅は合計3試合に出場するという大車輪の活躍を見せる。


 第1試合では、アイス時代からの盟友・雪妃真矢とのタッグ【アジュールレボリューション】で最後の出陣。ライディーン鋼&SAKI、大空ちえ&美蘭との3WAYタッグマッチを実施。
 ゴングが鳴る前から世羅との別れを惜しんで対戦相手が涙するという温かいムードの中で試合開始。世羅は溺愛する美蘭とともに一番ボロ泣きしていた鋼に集中砲火を見舞い、SAKIとは互いに得意とするカンパーナで競演。雪妃とも流石のタッグワークを見せ、お決まりだった「アジュレボ!行くぞーッ!」の掛け声からの連携攻撃が飛び出すと場内は大歓声に包まれる。
 ロリコンを自称する世羅が美蘭への攻撃をかばって余計なダメージを受けるコミカルな場面もあったが、終盤には3WAYタッグ戦というよりそれぞれ順番に世羅とシングルマッチをするかのような光景が広がる。アジュレボがダブルチョークスラムを繰り出していくと、皆が「せっかくだから」と順番に食らっていく流れになるが、美蘭がウラカン・ラナで切り返す。これを受け切った世羅が羅紗鋏で美蘭から3カウントを奪った。

 第3試合のバトルロイヤルでは、シン・広田・葛飾さくらが扮するシン・世羅りさが登場。その直後には、世羅が扮するシン・広田世羅が登場するというサプライズがあり場内は大爆笑。広田の入場曲をしっかり歌い切り、全員でポーズを決める。
 シン・世羅とシン・広田世羅がボ・ラギノール(※カンチョー攻撃)の鍔競り合いを行う中で引退興行でお決まりの“サヨナラトレイン”が行われるが、攻撃を被弾したのはシン・世羅の方。トレインの殿を務めたシン・広田世羅だったが、ボ・ラギノールを被弾して失格となり退場。
 最後まで勝ち残ったのはシン・世羅であったため、ある意味で世羅が第1試合に続いて連勝した形となった。

 メインイベントでは、満を持して世羅とすずが対峙。入場時から口を引き結んで涙を流していたすずに対して、世羅は自然体な様子で入場してくる。
 試合は2人が過去に道場で幾度となく練習したであろう基礎技の攻防に始まり、これを優位に終えた世羅が昨年7月のヒザの怪我(前十字靭帯並びに内側側副靭帯損傷)を負って以来のダイビング・ダブルニードロップを狙う。
 ここに世羅の技を継承した後輩でもある青木いつ希が飛び込んできて「ダブルニーは最後まで取っとけ!どうしてもやりたいなら私のヒザを使え!」と世羅を背負ってダブルニードロップ。これを皮切りに出場選手全員が世羅への愛を表現するサヨナラトレインを見せるなど試合中盤はコミカルな雰囲気で進行。

 しかし、終盤には2人がすべての想いをぶつけ合う壮絶な打撃戦に。泣きじゃくりながらエルボーを猛連打したすずが手を後ろに組みながら「最後だろ!全部来い!」と叫ぶ。これまで楽しい夢でも見ているかのように柔和な笑みで試合をしていた世羅も、この言葉を受けて涙が止まらなくなりながらもゴツゴツとしたエルボーを数十発打ち込み、約7ヶ月ぶりのダイビング・ダブルニードロップを解禁して羅紗鋏。
 世羅の全力を受け止めたすずは、「世羅!ありがとォ!」と絶叫しながらロコモーション式ジャーマン・スープレックス・ホールド3連発を見舞って3カウントを奪った。

 マイクを取ったすずは「世羅、ホントは今日という日が……来てほしくなかった。世羅は私の一番の憧れだった。ずっと、ず~っと、超えることが出来ない高い壁で、プロミネンスになってから、世羅と会うのが、世羅と試合するのがイヤになってたときもあった。それは自分が、世羅を超えられる自信がなかったから。だけど、今日はあなたの自信満々の一番弟子が、ついに師匠超えしました!ありがとうとか、そんな言葉じゃ足りねーんだよ!もっともっと!もっともっともっと大きい、大きい大きい気持ちがあなたにはあります。世羅はリングを降りるけど、私は、師匠の気持ちも背負って、これからもプロレスやります。今後とも末永くよろしくお願いします!」と座礼。
 世羅も「すずとは、ずっと一緒にやってきて、私から離れていく時、一度も引き止めることが出来ず送り出してしまったけど、あの時、本音を言うと、ずっと2人でやりたかった。でも、送り出して正解だったと思っています。あなたは新しいリングでこ~んなに強くなって、こ~んなに素敵なレスラーになって、私の前に最後に立ってくれた。本当に、本当にありがとうございました!」と語って座礼を返し、2人はガッチリと抱き合った。

 その後の引退セレモニーでは、世羅の人望を表すかのように数十人の選手・関係者らが登場して花束や記念品を贈呈。
 出場したフリー選手たち(夏すみれ、VENY、小林香萌、関口翔、ウナギ・サヤカ、尾崎妹加、真白優希)、コミカル担当チーム(救世忍者乱丸、ハイビスカスみぃ、米山香織、シン・広田さくら、松本都、チェリー)、アイスリボン関係者(星ハム子、真琴、松澤さん、紫雷美央&タンク永井 with 子どもたち、はらあいリングアナ、植木嵩行)、レッスルBINGOのスポンサー、週刊プロレス、配信チームと視聴者代表、ショーンキャプチャー(日高郁人、青木いつ希、あびこめぐみ)、篠瀬三十七&しのせ愛梨紗、FREEDOMS(佐々木貴、葛西純、ビオレント・ジャック)、COLOR'S(SAKI、清水ひかり、櫻井裕子、網倉理奈)、STARDOM(葉月、羽南、HANAKO、梨杏、岡田太郎社長)、センダイガールズを代表して高瀬みゆき、マリーゴールド(石川奈青、桜井麻衣、田中きずな)、PURE-J(コマンドボリショイ、Leon、中森華子、ライディーン鋼、大空ちえ、久令愛)ディアナを代表して美蘭、WAVE(桜花由美、狐伯、咲蘭、GAMI、炎華)、世羅りさ終活実行委員会プロジェクトメンバーが続々と登場。

 世羅が参加した新人デビュープロジェクトの元同期たち(寺田浩子、235、山口ルツコ、若松江莉、竹田彩乃)が登場して記念品を贈呈すると、世羅は「なんでいるの?!」と驚愕しつつ泣き笑い。
 そして先日引退した宮崎有妃さん&加藤園子さん&本間多恵さんが登場すると、宮崎さんが世羅に恥ずかし固めをかけながら記念撮影。その後は特に縁が深かった豊田真奈美さん、雪妃真矢、鈴季すず、柊くるみ&夏実もちが登場し、最後は世羅のご家族がリングに上って“家族写真”の記念撮影を行った。

 その後、世羅は「13年と2ヶ月。長かったようで、終わってみると意外とあっという間でした。3年で辞める、5年で辞める、7年で辞める。じゃあ10年で辞めるって言って結局辞めなかった世羅が13年と2ヶ月という中途半端なタイミングで辞めてしまうとは……自分でも思わなかったんですけど、最後まで、強い世羅りさとして、リングに立てていたと思います。皆さんどうでしたか!?(※観衆から大歓声&大喝采)こう言っていただけることが、一番嬉しいです。本当に、幸せなプロレスラー生活でした。今まで、ありがとうございました!」と最後のマイク。
 スクリーンにエンドロールが流され、引退の10カウントゴング。最後の選手コールとともにリング上を埋め尽くす青の紙テープが舞い、最後は世羅がくるみ&もち&すず&雪妃&SAKIが組んだ騎馬に乗って会場を1周。世羅は笑顔で手を振りながら選手として最後の退場を終えた。

 バックステージに戻った世羅は「無事引退しましたねぇ。もう何も思い残すことはないです。『ホントにすずで良かったな』って試合しながら何度も思ったし、すずだったからこそ、普段は出せないような勇気みたいな、『コイツにだけはカッコ悪い姿見せらんねーぜ!』みたいのでダイビング・ダブルニー飛べたんじゃないかって。すごい怖かったけど、『最後だからどうにでもなれ!』って思ったら、全然痛くなくて、フツーに出来ちゃって(笑)『これなら連発しとけば良かったなぁ』ってちょっと思うくらい。唯一の心残り、それくらい。もうそれ以外はやり切りました。世羅は世羅のままで終われたんじゃないかなって。悔いは一切ないですね」と笑顔。

 引退後は広島県・世羅町で新団体『レッスルビンゴ!』を旗揚げしてプロデュース側に回ることを明かしている世羅は「心の病をやってから、人の気持ちをちゃんと考えようと思うことが出来たので、そういうちょっと落ち込むときの気持ちとかも分かるし、なんなら練習のつらさとかも分かるから、そういうのにすべて寄り添って。でも甘やかさないですよ、私。結構厳しいと思うんですけど、心も体も強いレスラーにしたい。すべてに於いて世羅りさより優れていてほしい」と抱負を語り「最後まで強くあれたと思っています。これからは1OBとして、そして良い指導者として残れるように、プロレス界に尽くしてまいりますので、レッスルビンゴ含めて応援よろしくお願いします!」と語って去っていった。

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