「まだまだスターダムには底上げが必要」底辺からのし上がった水森由菜が悲願のハイスピード王座戴冠

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 24日、東京都・後楽園ホールにて『STARDOM YEAREND X'mas NIGHT 2025』が開催。水森由菜が星来芽依を下して悲願のハイスピード王座初戴冠を果たした。

 NEO女子プロレスから受け継がれる歴史深きベルトであるハイスピード王座。
 伝統あるベルトだが、2025年から現王者の星来芽依の提案により新ルールで運用することに。以前は通常のプロレスルール(+場外カウント10カウント)で30分1本勝負での試合が行われていたが、【合計10分の中で3本勝負】【10分終了時に同点引き分けの場合は王座防衛】という変更が為された。
 新たな時代を創ろうとしていた星来だったが、9月に7度目の防衛に成功した後には「この10分3本勝負に対して、結構批判が多かったんですよ。自分はハイスピードの歴史を変えるっていうのに必死になりすぎてちょっと焦りすぎたかな」と憂いを帯びた表情で語り、10月の防衛戦は15分1本勝負で月山和香と闘いコミカルな試合運びながらも10分25秒でチェックメイト。そして、11月ではかつてハイスピード王座戦線の象徴とされてきた葉月を下して防衛回数を重ねる。

 ここ数年のスターダムを見ていないプロレスファンにとっては意外かもしれないが、水森由菜は今のハイスピード王座戦線の中心にいる。
 かつての水森は“ぽっちゃり女子”を売りにしており、恵まれた体格を活かしてのパワーファイトが持ち味としていた選手。しかし、体重を約15kg落とす肉体改造に成功してからは持ち前のパワーにスピードも手にし、同期でもある星来が持つハイスピード王座を強く意識するようになっていった。

 今年9月にも水森は星来に挑戦しているが、その際には10分フルタイムドロー決着。
 この試合は両者が本当にノンストップで動き続けた濃密な10分の死闘であり、星来が10分3本勝負のルールで初めて相手を仕留めきれなかった試合。水森のハイスピードファイターとしての資質を存分に魅せるものとなった。
 試合後に2人は再戦を約束するものの、ダイレクトリマッチとは行かず約3ヶ月半が経過。その間にも星来は2度の防衛を重ねており、さらに高みへ登った上で水森を迎え撃った。


 今回の2人のハイスピード王座戦は15分1本勝負の通常ルールで実施。
 ゴングが鳴るなり互いに変則的なロープワークで攻撃をかわし合う攻防が展開され、水森がアームドラッグで先制するも星来はひらりと起き上がる。水森はショルダータックルでなぎ倒していくが、星来は続く攻撃をカニバサミで倒してエプロンからのドロップキック。さらにブーメラン・アタック式のミサイルキックを狙うが、水森も同時にロープへ飛び乗ってスワンダイブ式フェイスクラッシャーで切り返すひらめきを見せる。
 星来もエプロンからロープ越しのドロップキックを見舞い、足をリバース・インディアン・デスロックに固めながらのキャメルクラッチで絞り上げる。これはブレイクされるも、星来はギアを1つ上げて素早いフットスタンプからのぶっこ抜きブレーンバスター。

 それでも“熊本の不沈艦”の二つ名は伊達ではない。星来の連撃を受けてもすぐに立ち上がり、ダイビングショルダータックルから変形ゆりかもめで絞り、ダイヤル固めを始めとした多彩な丸め込みを連発して星来のスタミナを削ってからの変形三角絞め。星来は苦悶の表情を浮かべながらもなんとかロープを掴む。
 水森は再び丸め込み攻勢をかけるが、星来も丸め込みの上手さと多彩さでは負けていない。エビ固めのシーソーゲームの中で星来がいつの間にか有利な状況を作っており、キックアウトした水森の顔面にトラースキック。星来はジャーマンを狙うが、振り払った水森が強烈なエルボー。そのまま打撃戦となるが、パワー対決となれば水森が圧倒的に有利。星来は手数では勝るも、水森のエルボー一発で星来が吹き飛ばされていく。
 ならばと星来はなりふり構わぬ顔面蹴りを連発していくが、水森が左右の往復ビンタから変形ファイナルカット。星来もジャーマン・スープレックスで対抗。ここで2人がダブルダウンで大の字になるまでの10分間ノンストップで動き続けていた。
 残り5分となる中、水森は熊本の不沈艦(※ラリアット)を狙うが、かわした星来がコーナーから飛びつくダイビング式コードブレイカー。水森も身体を横向きに抜ける高度な変形トペ・スイシーダと身軽な動きを見せていき、ハリケーン・ドライバーから武者返しを放つも、星来が剣山で迎撃し顔面をぶち抜くドロップキック。
 これを受けた水森が即座に起き上がると星来はさよならピースを狙うが、着地した水森がスーパーガール。これを返した星来がフィッシャーマン・バスターからジャックナイフ式エビ固めもカウントは2。ならばと星来はチェックメイトの体勢に入るが、これを振り払った水森がゼロ距離での熊本の不沈艦。星来も意地で返してチェックメイトを決めるが、これもカウント2。
 星来は2発目のチェックメイトを狙うが、水森がカウンターで強烈な熊本の不沈艦を叩き込み、最後はロープに飛んで渾身のラリアットからスーパーガールで押さえ込んで3カウントを奪った。

 水森はベルトを受け取ると、泣きながら愛おしそうに抱きしめる。
 そして「すぐにベルトを巻けちゃうくらい天才の同期のアンタだけどさ、天才なだけじゃなくて本当はすごく努力して頑張っているのを私は知ってる。芽依がチャンピオンじゃなかったら、私は本気でこのベルト追っかけてないし、本気でハイスピード選手になってないよ。今日までありがとう!」と星来への思いをぶつける。
 星来も水森に感謝の言葉を伝えた後に握手を求めると、水森はこれに応じながらグイッと引き寄せて抱擁を交わした。


 その後に水森が初防衛戦の相手を募ると、向後桃、月山和香、フキゲンです★、金谷あんね、儛島エマ、狐伯と若手からベテランまで続々とリングに上ってきて大混乱に。
 そんな中、かつてアイスリボンのICE×∞王座戴冠歴を持つも、スターダムでは主に若手興行や第0試合に出場している真白優希が「ちょっとまったぁ~!」と物言いを付けながら一番最後に入ってくる。
 水森は「ハイスピードなのに一番遅く入ってきやがって」とぼやきつつ「アンタさぁ、今本戦も出ずに第0でシングル頑張ってるんだって?いいよ、決まった。初戦は真白優希」と挑戦者に指名した。

 バックステージに戻った水森は「ブレずにここまで来て、本ッ当によかった!同期の星来芽依は本当に天才で、だからこそ私は人一倍身体も絞って、人一倍この1年間自分と向き合って、技も動きも全部変え続けてきたんです。芽依がいなかったらハイスピード選手にはなってなかったと思う。これから私がハイスピードチャンピオンになった意味、それはこのスターダムでもっともっとハイスピードの選手を増やすこと。底上げすること。面白い奴をもっともっと増やすこと!最後いっぱいリングに上がってきたけど、初めて見るメンツや若手の子、常連の人もいたけど、まだまだスターダムには底上げが必要だと改めて思いました。それが出来るのは水森由菜しかいないって思ってます」と決意表明。

 そして真白については「アイツ、すごい面白そうです。よく第0試合で闘ってた昔の私がちょっと重なるんだけど、ゴリゴリのハイスピード選手らしいから期待してます」とシンパシーを感じていることを明かしつつ、2026年の目標としてAZMが持つ最多防衛記録(12回)の更新を誓った。

 水森vs真白のハイスピード王座戦というカードは、1年前には想像もつかなかったカード。
 肝心なときにはいつも雨が降るという雨女だった水森だが、この日は晴れやかな笑みを浮かべる結果に終わった。新チャンピオンとなった水森は、今までのスターダムでは見られなかった雨上がりの世界を見せてくれるかもしれない。

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