「俺たちの後輩にカッコがつかない」事故死した長尾一大心さんに見せる全日本プロレスの未来。男を通す生え抜き2人が全力ファイト

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 22日、東京都・後楽園ホールにて全日本プロレス『旗揚げ記念シリーズ2025』が開催。53周年の旗揚げ記念日となる今大会で故・長尾一大心さんに捧げる試合が行われた。

 安齊はジャンボ鶴田さんや諏訪魔ら数々の名プロレスラーを輩出してきた名門・中央大学レスリング部出身であり、華々しい成績を残して鳴り物入りで2022年4月に全日本プロレスに入団し同年9月にデビュー。
 端正な顔立ちに188cm 105kgという恵まれた体格を持ち、将来の全日本プロレスのヘビー級エースとしての期待を背負って活躍。2024年3月には24歳10ヶ月で三冠ヘビー級王座戴冠を果たし、宮原健斗が持っていた最年少戴冠記録(26歳11ヶ月)を大幅に更新。現在では誰もが認める全日本の顔の1人となっている。

 そんな安齊に対して、ひときわ対抗心を燃やすのが井上凌。
 2022年1月デビューの井上は高校3年間のレスリング経験はあるものの、安齊のような華々しい肩書はない。安齊の先輩でありながら、デビューからトントン拍子に頂点まで駆け上がった安齊とは違いデビューから3年半あまり泥にまみれながら暗中模索をしている最中だ。
 井上はことあるごとに安齊への対抗心や嫉妬を口にし、安齊との対戦となれば普段以上に獰猛なファイトを見せてファンを魅了。今月井上が3度目の世界ジュニア王座挑戦を経てさらなる成長のきざしを見せている中、今回の安齊との一騎打ちは“何か”が起きるのではないかと期待が集まっていた。

 試合は2人が道場で何千何万回と繰り返してきたであろうじっくりとしたレスリングの攻防に始まり、井上が気迫とスピードで上回って多彩な蹴撃を連打。井上はかつて安齊を倒すために編み出したプリンスキラー(※足関節技)を軸に攻め込んでいき、安齊が怯むとハイキックやバズソーキックといった大技で仕留めにかかるアグレッシブな姿勢を見せる。
 井上は苧環(※リフトアップ式コンプリートショット)から奥の手の大観音スープレックス(※リストクラッチ式バックドロップ・ホールド)を狙うが、これを振り払った安齊がプリンスキラーをかわしてジャーマン・スープレックス・ホールド。井上は雄叫びを上げながら突っ込んでいくが、安齊はジャンピングニーで迎撃。さらにロープに振ってジャンピングニーを叩き込み、最後はギムレットを決めて3カウントを奪った。


 試合を終えた井上は「まあいろいろ今までいろいろ怨念、いろいろ反則攻撃とかやったけどさ、やっぱり、やっぱり、そんなん無しで真っ直ぐぶつかるのが楽しくなってさ。安齊はいろいろこのあと組むこともあるけど、また対角線なったときにバチバチやろう。俺も倒したいから。そしてお前から3カウント狙えるように俺もどんどん強くなる」と吹っ切れ、さらなる成長のきざしを見せる。
 そして「あともう1個、忘れちゃいけないこと。今日10月22日。去年、俺が長尾一大心のデビュー戦の相手を務めた。絶対今日も後楽園ホールのこのリングのエプロンで俺らを見てるはずだ。また彼に届くようにしっかりやっていきますよ」と今は亡き後輩への思いを語った。

 安齊も「出たり入ったりする人、よそから来た外国の選手、そんなん全部関係ない。この全日本で育って、全日本で男通してる俺と井上さんが一番盛り上げてみせます。そうしないと、俺たちの後輩にカッコがつかないんで」と生え抜きの後輩へ言葉を捧げた。

 長尾さんは、2024年10月22日にデビューした全日本の生え抜き新人。
 柔道の他に中学までアイスホッケーをやっていたというプロレス界では一風変わったスポーツ歴を持ち、人懐こい性格で先輩やファンから愛されて未来の全日本ジュニアを担うことを期待されていた選手。しかし、長尾さんは今年5月に巡業バスと接触する事故にあい、9月7日に敗血症により亡くなってしまった。

 長尾さんの思いも背負い、生え抜きの2人はさらに飛躍していくことだろう。

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