【インタビュー】テキサス初の日本の女子プロレス大会を成功に導いた2人の立役者!東京女子プロレス事業統括役員とTOKYO STORY社長から見た可能性と課題

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 7月に、アメリカ・テキサスへ初めて日本の女子プロレス団体が進出。ヒューストン&ダラスでの3興行全てのチケットがソールドアウトになる大人気で幕を閉じた。

 この偉業を成し遂げたのは、サイバーエージェントグループの東京女子プロレスだ。
 東京女子プロレスは元SKE48の荒井優希や、アップアップガールズ(プロレス)のメンバーなども所属しており、オープニングでは選手によるアイドルライブも行われる。
 さらに海外では絶大な人気を誇る“THE CUTEST IN THE WORLD”伊藤麻希、173cmの長身でモデルも務める上福ゆき、大食い女優の上原わかな、中学3年生でデビューした現17歳のJKレスラー風城ハルなど、多種多少なキャラクターは海外ウケする要素の一つとなっていた。
 この興行を成功に導いた、サイバーファイト常務執行役員で東京女子プロレス事業統括部長の高橋晃さんと、テキサスでガシャポンや日本酒など日本コンテンツを広める会社TOKYO STORYの清水陽一郎社長に、今回の手応えや今後についてを聞いた。


――まず今回テキサスで興行を行う事になった経緯を教えてください
清水「元々僕はプロレスに詳しいわけではなかったんですが、周りにDDTプロレスが好きな人が多かったんですね。その繋がりで両国国技館大会を見に行かせていただく機会があり、東京女子プロレスの事もその時に知りました。テキサスでの可能性というものを薄っすらと感じていた時に、たまたま僕も所属する六本木のロータリークラブで髙木三四郎さんの講演がありまして、運命を感じて『一緒にやりましょう』とラブコールを送ったわけです」

――僕もその場にいましたが、一気に盛り上がり「やりましょう」となりましたね
清水「それが去年の9月なので、1年経たずに実現に漕ぎ着けました。おもちゃとアイドルはテキサスで日本文化を広めるのに最高だと常々思っているので、東京女子プロレスを映像で見た時にこれはいけると思ったんですよ。女子プロレスが商業的に成り立っているのが日本だけという部分が僕を動かしました。要はアメリカやヨーロッパのように女性の権利が強い国では、むしろ女性のレスラーは男性レスラーのおまけ的な存在で、女性のプロレス団体というのがコマーシャルには成り立ってない。でも日本では成り立ってると。そこに日本独特の文化の魅力がきっとあるはずだという風に思ったんですよ。今ではそれは確信に変わりました」

――高橋さんは三四郎さんからテキサス興行を聞いた時はいかがでしたか?
高橋「期待半分不安半分ですね。元々海外は増やしていこうとしていたんですが、今までは現地の団体にジョインして合同でやっていました。ですが今回、TOKYO STORYさんと協業とはいえ自団体単独で初の興行かつ初めての土地だったので、今までと違い東京女子プロレスの自力を試させる機会だなと。ある種の試金石になるんじゃないかとは思いましたが、大変だということも重々承知でしたので、大失敗したらもう次海外やるなんて言えないなという気持ちではいました」

――高橋さんは今まであまり表に出てくることはなかったですが、サイバーファイト内ではどのような立場なのでしょうか?
高橋「立場的には常務執行役員で、東京女子プロレスの事業統括をしています。その他にはDDTを含めた海外事業と法人営業も兼務していますね」

――DDTがサイバーエージェントグループになってからジョインされたと記憶しています
高橋「はい。2018年に入社しました。元々髙木さんと繋がりがありまして、前職を辞めようかと思っていた時に、髙木さんから法人営業を任せたいとお声をいただき入りました。中に入ると徐々に担当事業が増えていったのですが、一昨年の10月から東京女子プロレスの事業統括として数字を見る立場になっています。団体の運営面については引き続き甲田の指揮のもと現場を任せています」


――上手くいった要因は
高橋「要素の一つとして、清水さんたちがプロレス業界の人ではないというのはあったと思います。今回宣伝やクリエイティブの部分を現地の感覚に全てお任せしました」
清水「事前の『TOKYO X』という3万人規模の日本文化系サブカルイベントに出展したのですが、その時に伊藤麻希さんの人気がものすごかった。そこから宣伝のビジュアルも伊藤麻希中心のものに変えましたね。あとは保守層の多いテキサスの一部では女性のショーマンシップに対する偏見もあり、女性が肌を見せて男性を喜ばせるようなショーではないんだということを特に強調する必要がありました。なので裏テーマでガールズパワー『In TJPW, Women are Heroes』というキャッチコピーもつけて、女性でも躍進できる、頑張ってる姿を見せるものなんだと。ここは重要だったと思います」

――高橋さんは事前に視察に行かれてましたが、その時に感じた日本とテキサスの違いのようなものはありましたか?
高橋「やっぱ土地土地の空気感みたいなところがあって、全体的におおらかな空気感を感じました。そんなに忙しくしてないとか、いい意味で余裕があるみたいなところは、プラスの牧歌的なオーラをすごく感じたので、前向きにポジティブに僕たちのコンテンツを受け入れてもらえるんじゃないかなっていう期待はすごく感じました。まだまだ女子プロレスは海外ではブルーオーシャンなので、テキサス経済圏に融合していけると思います」

――広告手法も日本とは違った
高橋「今回幹線道路に屋外広告を出しました。日本だと屋外広告は選択肢に入らないんですけど、実際に現地に行くと車社会なわけです。今回100万インプレッション保証で出稿して、ここに掲出されることである種のステータスになりイベント自体のブランディングになりました。でもダラスの会場は僕が思っていたところよりも都心部から遠いところだったので不安はありました。ただ逆に駐車場が広くある会場だったことで、結果的にお客さんに入ってもらえた。ロケーション的にそこが大事だったんですね」
清水「300ドルでお願いできるインフルエンサーにも何人かお願いして、その1人が瑞希選手をハイライト下した7秒の動画をアップしたんです。そしたらこれがバズって、1日で1万ドルのチケットが売れました」
高橋「そこからチケットの売上が順調に推移して、そこがゲームチェンジになりましたね。日本にいる感覚だとまだ分析しきれないんですけど、面白そうだからイベントに行ってみようと受け入れてくれる文化なんだと思います。東京女子プロレスは実際にチケットを買ってもらえる価値があるコンテンツなんだと、ある種今回自信になりました」

――プロレス自体のハードルも日本より低いですよね
高橋「そうですね。あと多分プロレスをコアに見る人自体も、会場の雰囲気見るとやっぱりあんまり多くなかったかなというのは思ってはいるんです。実は向こうに行って現地の方にも竹下幸之介にも言われたんですけど、テキサスはそもそもプロレスっていうものを楽しむベースがあるよと」

――メキシコの真横ですし、ルチャ・リブレの地元団体もあるそうで
高橋「僕も現地行った時に、同じホテル泊まってたおじいちゃんが昔からプロレス好きで、ボボ・ブラジルの話とかをされたんですけど、その人が次の日にロビー行ったら、朝6時ぐらいだったんですけど1人だけモーニングの会場に居てYouTubeで東京女子の動画見てて『おー!瑞希すごいよ!』って声かけてくれて。そういう昔っからプロレス見てる人にも東京女子が刺さったのがすごく自信になりましたし、会場の雰囲気とか見ても、それこそ中島翔子、あと渡辺未詩の試合とかも割と基本的な攻防が序盤多くてもしっかり湧いてくれて、アメリカの他の州よりかはしっかりプロレスをみんな見てくれたなと。矛盾はしてるんですけど、なんかプロレスのコアファンが少ないっていうところと、ゆるくプロレスというものを楽しむ会場の雰囲気みたいなところはテキサスならではなのかなっていうのはちょっと思いました」


――現地に行って思いましたけどテキサスは娯楽が少ないですよね
清水「アメリカではヒューストンやダラスは大都市と言われますけど、やっぱり東京や大阪と比べたら全然違いますよ。なのでとにかく新しいもの、珍しいものに対する感受性はまだまだ高いと思います。特に昨今のジャパンコンテンツブームということを考えると、やっぱり日本的なものに飢えてる土壌と市場というのはまだまだあると思います。そこに乗ったわけですね、我々は今回」

――男女比や年齢層はどうだったんでしょうか?
高橋「若い人はちょっと少なかったかな。ヒューストンは9割男性だったかなと思います。ダラスはカップルで来たりとかファミリーで来たりとか割合は多かったですが、それでも女性は10%~20%入ってるかな?と」

――TOKYO Xのブースで興味を持ってチケットを買ってくれた人は、ほぼカップルの女性か女性だけの集団でした。そういう点では今回の宣伝でリーチできなかった潜在客がまだまだいそうですね
清水「確かに女性の集団は何組かいまして、そのコアな方々は3日間全部来てました」
高橋「僕ももっと上手くリーチできればもっともっと伸ばせるんだろうなと思いましたし、今回現地で協力してくれたメイド喫茶チーム『Megami Maids』さんと渡辺未詩もずっとアイドルの話をしてましたし、アイドル文脈でもうちょっと押していけるだろうとも感じました」
清水「僕はもっとファミリー需要に食い込めると思ってます。最初は海のものとも山のものともわからないものに奥さんやガールフレンドを誘うのは難しかったと思います。今回一番協力してくれた夫妻も、奥さんは最初『不愉快だった』『キャバクラのパンフレットみたいなの置いていって、肌を露出してる若い女性を旦那の目に晒したくないというのは主婦としての本質でしょう』と言われました。でも『知れば知るほどそういうエンタメではないんだと分かった』と言っていただき、これは家族で見てキャーキャー騒げる楽しいエンタメなんだと。それを今後上手く伝えていきたいですね」

――では今後もテキサスで興行を続けると
清水「全米公演までもっていきたいですね。少なくとも来年はテキサス3都市(ヒューストン、ダラス、オースティン)で開催を目指します」
高橋「ダラスのキャパでそれぞれをいけたらいいですね」

――収支的には、それぞれの立場で違うと思いますがいかがでしたか?
高橋「チケットだけで日本円で2000万円以上売り上げていますから、事業としてはプラスです。スポンサーとかもそうですし、まだまだ伸ばせる余地がある。グッズも客単価で言えばプロレスファンだけの時はもっと高いので、ミートアンドグリートも初めての方々にはとても分かりづらかったなと反省してます。ただライト層が多かったという証拠でもあるので、イベント全体で考えたらとてもプラスなことです」
清水「ゲート収入だけで黒字になっているので、現地のスポンサーなどを今後は募れる事を考えると伸びしろの大きい黒字ですね」


―――ガシャポンのバンダイナムコグループの方も喜んでいたとか
清水「原宿ぽむさんがガシャポン使って大暴れしてくれて、とても喜んでいました」
高橋「あんだけ暴れて喜ばれるってなかなかないですよ(笑)普通『絶対壊さないでください』『ぶつけないでください』って言われるのに、『壊さない限りはなんでもやっていいですよ』と言っていただいて、選手が逆に驚いてました。そういうおおらかさがいい方向に作用して、会場でガシャポンコールが起きましたから。2500人のガシャポンコールが自然と起きるなんて狂ってますよ」
清水「プロレス界史上初だと思いますガシャポンコールは」
高橋「This is awesomeやholy shitは聞いたことありますけど、ガシャポンコールは聞いたことないですね。こっちから誘導したわけじゃなく自然と起きたことで広告効果も高かったんじゃないですかね。今後もこれを面白がって一緒にやってくれる企業は増えると思いますよ」

――TOKYO STORYの事業との親和性は間違いなかった証拠ですね
清水「そうですね。やっぱりそれを繋ぐのは東京女子の選手のキャラクターがあったからこそです。プロレスとガシャポンだけじゃなくて、原宿ぽむという稀代の奇才がいて、ビッグ怪獣中島翔子が空カプセルをリングにばらまいて、伊藤麻希という大人気キャラクターがいたからこその結果です」
高橋「日本とやってることをみんなそのまま、変にローカライズせずにやってそのままウケて、なんだったら日本以上に跳ねてみたいなところとか非常に良かったなと思ってます。やっぱり僕たち東京女子って、見終わってなんかみんなちょっとハッピーな気持ち、幸せな気持ちで帰ってほしいなっていう思いはあるんですけど、まさにそんな感じだったと思うんで3大会とも。団体の理念とかビジョンはそのまま通用したなってのはすごい良かったなと思いましたね」
清水「ディズニーキャラクターみたいになるチャンスが東京女子プロレスは1番あると思ってますね」

――今後も東京女子プロレスとしてはTOKYO STORYと協業していく方針ですか?
高橋「そうじゃないと最大化できない気がしますね。正直現地で動いてくれて、現地の感覚とか繋がりがあるからこそ今回最大限できたと思っているので、単独では絶対この結果を出すのは無理でした。日本に居て日本だけで全部コントロールするのは絶対ムリだというのも今回わかったことです」
清水「この2ヶ月毎日毎日SNSなどへ動画も投稿して、反応を見ながら修正したり地道な努力も多かった」
高橋「そこはすごく助かった部分ですね」
清水「東京女子プロレスさんが我々と一緒にやっていくと言ってくれる限りは、東京女子プロレスさんだけとお付き合いします。結婚です結婚」
高橋「僕も全く同じです。清水さんの方が離れる事がない限りは、一緒にやっていきます」

――今後は1年に1回ですか?
高橋「そこは決めきれてないです。1年に1回だと長いなって感覚するんですけど、世の中的な感覚では1年て結構あっという間かなっていう感じが少し思ってて。1年ぶりにあの時のあれが来るんだみたいなところで、そんなにファン離れを起こさないんじゃないかなと。根拠があるわけじゃないですけど、いま現時点ではそのような感覚を持ってたりはします。来年の7月ということではなく、時期を多少早めたり遅めたりというのはあると思いますね」

――テキサスでは小さいプロレスイベントも増えてきていますがそこはどう考えていますか?
清水「チャンスだと思ってます。小さい市場を独占してもあんまり意味があると思っていなくて、市場のパイそのものが大きくなることの方が大事だと思いますね。ANIME MATSURI(5万人規模の日本文化イベント)さんがプロレスやってましたけど、認知度を上げること自体はいいことなんじゃないですかね。差別化するためには差別化する相手が必要なわけで、唯一のプレーヤーになるよりも、我々とはちょっと違うことをやってる人たちが色々いるということの方がマーケットのパイは大きくなるんじゃないかなと思ってます」

――テキサスから女子レスラーを発掘するとかは考えていますか?『Megami Maids』からプロレスデビューするとか
清水「面白いですね。将来的に東京女子プロレスのUSAを作りたいとは思っています」
高橋「TJPWって名称を変えなくていいのもいいですね。テキサス女子プロレスみたいな。TJPWグループで、テキサスを中心に全米展開の礎にしていきたいです。これは目標というか野望ですけど、しっかりと落とし込んで全米展開まで持っていくのが次のステップですね」
清水「TJPW同士の人材交流ができると刺激になりますね」
高橋「全然夢ではないと思ってます。TJPWフランチャイズが広がっていく事を目指します」
清水「これは本当に振り出しというか、第1歩だと思ってます。これから伝説を作っていくつもりです。伝説を一緒に作りましょう」

 東京女子プロレスとしても、過去最大集客数を更新したテキサス興行。オーソドックスなプロレススタイルだけではない強みが海外で最大限に発揮された。今回の興行が海外進出のターニングポイントになったことは間違いないだろう。
 初回から大成功で終えた本興行の様子は、WRESTLE UNIVERSEで全試合視聴が可能だ。

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