【インタビュー】「最後に私が青野未来の殻を破ってあげますよ」とうとう引退を迎える"女子プロレス界の人間国宝"高橋奈七永インタビュー!

5.24代々木大会で引退を迎える高橋奈七永、いつも会場がぱあ~っと明るくなるわ一体感が出るわ、あの雰囲気がもう無くなるのか・・・と思ったらやっぱりお話を聞きすることにいたしました。(聞き手:スレンダー川口)@slender_kg
――5月4日の後楽園、スターダムの旗揚げメンバーだった二人が再び、かつご自身の後楽園ラストマッチ。素晴らしかったです!
「ありがとうございます。岩谷からすごい、いろんなパワー感じましたね。」
――思うところもあったんじゃないかと。
「いや、あんまりそこまで考えてなくて。もっと言ったら今年の初めからパッションカウントダウンって引退ロードみたいなものが始まったんですけど、あんまり日々を考えないようにして、今までのように一戦一戦集中して戦うってことだけにフォーカスを当てるようにしてたんです。」
――ああ、考えすぎないように。
「多分考えすぎたら、なんだろうな、ナーバスになっちゃうかもっていうのもあるし、だから結構ドライっていうか。ちょっと前に里村さんが引退された。自分のイメージは里村さんってなんか侍のようなイメージだったんですけど、結構引退が迫ってきてる中で泣いてる姿を見ることが多かったんですよ。『めっちゃ泣いてんな、里村さん…』って思ってたぐらいだったんです。」
――自分の引退ロードと重ねることもなく。
「そのぐらい一戦一戦楽しいっていうか、今までと同じようにやってた。なのに、岩谷に負けてしまった時、123聞いて天井を見たら、やっぱずっと見てきた後楽園の天井、『ああ、これが最後なんだ』って思って。そしたらなんかデビュー戦の時のこととかをば~って思い出しちゃって。」
――リングアナが沖田さんだったのも良かったですし、中西百重さんが「後楽園ホールの高橋奈七永、中西百恵で始まり岩田麻優で終わり」というツイートがもう泣かすわ~と。
https://x.com/momoracci0707/status/1919169785167851560?s=46&t=cLg4xlN3G2yyzh8GVyrFZA
「そうなんですよ!それも試合終わってから昔の写真見たら『沖田さんじゃん』って。なんかプロレスってすごいドラマですよね。」
――僕らなんかあの1枚だけでもぶわ~ってこうキちゃうんで、当事者はどんだけぐっとくるんだと。そこに岩谷麻優がやって来た。
「マリーゴールド所属一発目で13年ぶりのシングル、それがまあ最後のシングルっていう。自分がいなくなった後マリーゴールド大丈夫かなっていう声もやっぱもらってたし、ちょっと心配だなっていう部分もあった。でも、すごいパワーで岩谷がマリーゴールドに来てくれたっていうのが、状況がなんかもう嘘みたいだなって思って。」
――ここで来ますかっていうタイミングでね。チケットもぐっと売れましたし。
「岩谷が培ってきた力、数字的な部分でもそうだしプロレス力だったりとかも。そういうふうにいろんなパワーを持って私の前に来たから、『ああ、大丈夫だな。マリーゴールドは。』と。私以上に力を持っているなって思ったんで。」
――嬉しいですね。ぐんと成長して前に立ってくれるって。
「ほんと。素直にそう思わせてくれる人と最後の後楽園で試合ができたことが良かった。」
――ロックアップしたり力比べしたりクラシックに始まったと思ったら、イスでトペを迎撃し、南側に繰り出して階段落ちまでやっちゃうという。
「イスはブーイングされちゃいましたね(笑)」
――でもニヤリとしてましたよね(笑)。その後、イスに座っての張り合いなんてもう最高でしたよ!若手はあんまり張り合わないイメージあるので『これだこれだ!』と。
「でもマリーゴールドは私がけしかけてるから、結構多いと思います。」
――若い選手は「テメエこの野郎!」が足りないと思ってます。いろんなことやんなくても、もっと殴って蹴ってブッ飛ばすでもイイのに。
「そう見えるってことは、技に魂が乗ってないんですね(キッパリ)」
――後楽園は若手に「お前らここまで来いよ」って鼓舞してるような試合でした。
「凄かったって言ってくる子もいたんですけど、「凄かった」で終わらせないで欲しいなって思います。じゃあなんで凄かったのかってことを読み解いて、自分なりに糧にしてもらわないと。他人事で終わっちゃダメだと思う。」
――岩谷麻優は今の高橋奈七永を出し切れる相手だった気がします。
「ああ、そうですね。岩谷はほんと新種のプロレスラーなんですよ。新種すぎる(笑)。やりながら効いてんだか効いてないんだか分からない。だから自分のガツガツしたところが麻優によって引き出されたのかもしれない。」
――ほんと独特のキャラクターですし。
「独特です。なんか1mm単位で計算してんなこいつって思って。」
――そうなんですか!?
「営業妨害みたいになるから言わない方が良いのかな(笑)。でもそんぐらい計算してますよ。そんぐらいコントロールできる視野の広さを持っていると思います。」
――ナチュラルにやってる、やっちゃってるように見えます。
「そこも多分計算してんじゃないですか。うん、本当に上手い人は上手さを感じさせないので。そういう深い部分での戦いになったと思います。私も結構そういうタイプではあると思うので、自分で言うのはあれなんですけど(笑)。だからすごく奥が深いプロレスになったのかなと。」
――岩谷選手は今のプロレスっていう試合ですけど、昭和のプロレスファンもしっかり付いてるのは、無意識にその深さを感じてるのかも知れないですね。
「それはね、あの子の根っこにちゃんと『根性』があるからなんですよ。新種ではあるけど、ちゃんと『ド根性』の部分があるんです。だから私達も共鳴できたんだと思うんです。スタイルは全然違うけど、スターダムの旗揚げメンバーでもあるから、同じ釜の飯を食ったというか同じ血はどっかで流れてるので、そのせいもあるんだろうなって思います。」
――試合後、良い試合ができたと共に今後のマリーゴールドも大丈夫とお話されてて、みんなのこと見てるな~って伝わってきました。だから余計に良い試合だったと感じます。
「すごいな、プロレスファンの鏡ですね(笑)」
――若手にはぜひ「凄かった」を読み解いて欲しいです!
「うん、そうですね。一個一個の技をどれだけ、さっきも言ったけど魂込められるかっていうことですよね。私も今やってる技はやっぱめちゃくちゃ練習してきた技だし、本当にどうやって人を殺せるかって毎日考えて考えて、ラリアットとか特に。」
――殺しの練習(汗)
「あの~、前川久美子さんっていう全女の時に大嫌いな先輩がいまして(笑)」
――出ました!
「試合中に死んじゃったら事故になるから大丈夫じゃない?と思って、もう毎日どうやって殺してやろうかなって考えてました(笑)」
――物騒過ぎる!
「それってもう極限なんですけど、そこまで行っちゃいけないとは思うんですけど、そこまでの気持ちになったことがあるっていうのが、やっぱり私の強みではあるかなと思います。」
――エルボー打って拳を振り抜いたりとか、感情が乗りすぎちゃうやつ。
「あ~、そうですね。でも戦ってるわけですしね。プロレスは戦い、プロレスラーが一番にリング上で表現してくれないとお客さん乗れないと思うし。」
――いろいろ振り返りたいところですが、それは自伝で読んでもらうことにしましょう(笑)
「ふふ。でもこのタイミングで本を書くことによって、自分でも振り返れたんですよ。去年の12月から最近まで書いてて。あ、昨日で終わったんですけど(笑)。入稿が5月8日。改めて、ああ、自分っていろんなことをやってきてなって。全女が解散しちゃったところから転々として自分でやったりもして。最終的にマリーゴールドにたどり着いたんですけど。」
――渡り歩きましたもんね。
「やっぱ日本人って特に一つのところでずっと続けるのが美徳みたいな部分があるし、自分でもそうできない自分を認められない部分があったんですよ。でもやっと「私はいろんな人にパッション注入するためにいろんなところ渡り歩いてきたんじゃないかな」って思える。だから全部意味があったんだろうと今は思えてます。」
――パッション注入したZONES選手、ジャングル叫女選手に奈七永さんのことをお聞きしましたが、お二人とも「両手を広げて『さあ来い』って言われてる感じがする」と。
「それはもちろん。底力を出してあげたいっていう気持ちもあるし。どうやって自分を出したらいいのかわからない子が多いんですよ。その殻を破られたい人ばっかりなんですよね。だから私が破ってあげるんですよ。もう出ておいで~って。で、破れたらその殻脱いで向かって来いよっていう。だから私もガツガツ行くし、やった分受け止めるし。お前の攻撃全部受けたって私は負けないよって形で勝ちたい。それはずっと新人の時から思ってること。だから新人の頃はそれで負けたりしてました(笑)」
――その戦い方は受け止める力がつくまでは負けもあるでしょうね。
「相手のこと全部受け止めて勝った方がカッコイイと思うし。私が見てた先輩たちはみんなそうだし、それでお客さんを喜ばせてるのを見てきたから、自分もやっぱそうなりたいって思って、そういうふうなものを目指してずっとやってきます。」
――下田選手と三田選手がLLPWとの対抗戦の時、北斗さんに「勝つことばっかり考えやがって!」「心のプロレスしろバカヤロー!!」ってバッチバチに殴られたやつ。あのイズムですね。
「伝説ですよね・・・。でもやっぱお互い爆発してやり合わないと、プロレスは非日常のものなんだからプロレスラーが大声出して立ち向かっていかなかったら、ぶつかり合わなかったら、何を見せるんだって思うんですよ。今でもマリーゴールドで一番声出してるのは奈七永だって言われるんですけど、「じゃないだろ!お前ら若者よ!」って思ってますよ。」
――また高橋奈七永の声は通りますからね~(笑)
「はい(笑)」
――「この子、殻破れたな」って思う選手はいますか。
「う~ん・・・。後藤智香は最近面構えが変わってきたなって思います。まだまだなんですけどね。「やるやればできる、やらなきゃできない、やってやる!」っていうのが私達2人の合言葉なんです。まだ言ってるほどはやってないなっていうのが実感なんですけど、あの子なりには殻を破ろうとしてて、うん。もっともっと頑張れよとは思いますけど、肝は座って来てるのかな。」
――何よりもまずタッパがありますからね。
「単純に有利ですよね。どんだけちっちゃい子が頑張ったって到達できないところに行ける可能性を持ってるんだから。なんか自分の体をまずはコントロールできるように、自分で磨かないともったいない。」
――昨年末はジャイアントスイング強化のために「私もっと体幹鍛えます」と。
「分かってんだったらやれよって思いますよ(笑)。ブリッジが弱いというか、すべての面においてまだまだなんですけど、キャリアがないからっていう言葉に甘えるのか甘えないのかもう自分次第です。でも私、マリーゴールドの中では一番あの子にやれよって言ってますね。もったいない。」
――殻破って欲しいです。
「あとは山岡聖怜。タッグベルトいっしょに巻いて、あんなにキャリア無いのに、また18歳でプレッシャーしかないのに、どうにか喰らいつこうとしてきてくれてるので、なんかもう娘のような存在。」
――レスリングの基礎がありますけど、それに甘えず一生懸命やってる感じが伝わります。
「まあでも今は本当に一生懸命やるっていうのが何より大事なことだと思うので、大丈夫だと思います、聖怜は。」
――さて、5.24代々木でとうとう引退試合、青野未来と戦います。
「ほんとは戦いたい相手はいました。けど様々な事情でかなわなかった中で声をあげてきてくれたのが青野。じゃあその気持ちを受け止めようと決めました。」
――青野選手、記者会見で張ってきましたね。
「あれでたぶん鼓膜イかれてて、実は今聞こえづらいんですよ。青野とは1回シングルやっただけなんですけど、蹴りとかもめちゃくちゃ痛いし、良いもの持ってると思いますよ。」
――青野選手、多分自分に気合を入れたかったんだと思うんです。もの凄く尊敬もしてるけど熱く戦うんだっていう決意。
「うんうん、それめちゃくちゃあると思います。ボロボロボロボロ泣いてたし。「これは汗だ」って言ってましたけど(笑)。最後に私が殻を破ってあげるのが青野になるんでしょうね。久々に観に来てくれる方もいると思うんで、ファンの皆さんには絶対物足りない想いはさせたくないし、お互いに少しでも進化した状態で迎えられたらなって思います。」
――今日は元気をもらえました。だからみんな応援するんだな~(納得)
「ふふふ。皆さん、ぜひ会場でお会いしましょう!パッショーン!」

『マッスルバージャパン presents マリーゴールド1周年記念大会 SHINE FOREVER 2025 〜A Glorious Celebration!〜』
日程:2025年5月24日(土)
会場 : 国立代々木競技場第二体育館
開始 :14:00
『マリーゴールド1周年&高橋奈七永引退パーティー』
日程:2025年5月24日(土)
会場 : 東京・飯田橋 ホテルメトロポリタンエドモント
開始 :20:30
■書籍情報
『終わりよければすべてパッション!』
引退の日の5月24日、代々木第二体育館大会にて先行発売!!!
高橋「今までの歴史を少しずつ紐解いております。いい事ばかりじゃない。いい人間でもない。でもここまでパッションで立ち上がってきた高橋奈七永の人生が詰まった本になります。どうやって立ち上がってきたのか、パッションの秘密みたいなものが少しでも伝わるといいなと思っています!代々木第二体育館を超満員にするのもひとつの夢!!!みんな来てくれ!そして本もゲットしてくれー!パッション!!!」